大阪府における風俗営業の保全対象施設について

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)では、キャバクラやホストクラブ等の社交飲食店、雀荘、ぱちんこ店及びゲームセンター等営業等を風俗営業として規制しています。
風俗営業をはじめようとするときは、公安委員会の許可を取得する必要がありますが、風営法の許可要件の重要部分については、その多くが各自治体の条例に委ねられているため、「どこに店を構えるか」は、許可を取得する上で非常に重要なキーポイントになります。
大阪府においても、大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(以下、府条例)が定められており、営業可能区域について規制が実施されています。
特に「保全対象施設」と言われる施設の存在は、これから風俗営業をはじめようとされる方にとって、許可を取得する上での最大のハードルとなります。
せっかく良い物件に巡り会えても、その場所がそもそも営業を禁止されている区域であれば元も子もありません。このようなことを回避するため、まずは営業所を設置する場所が風俗営業を行うことができる区域に該当するかどうかをしっかりと確認し、慎重に物件を選択するように心がけましょう。
時折、「この場所で風俗営業はできますか?」という内容のお問い合わせをいただくこともありますが、気軽に回答することができる事項ではなく、責任や作業負担も大きいため、申請代行までをサポートする場合を除き、無料相談の内容には含めていません。
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風俗営業が可能な地域
私の個人的な見解はさて置いて、酔客や際どいコスプレ姿のお姉さん達が、閑静な住宅街を闊歩(かっぽ)したり、学校にほど近い施設に出入りするような環境はやはり好ましいとは言えません。
このような考え方から、風俗営業を行うことが認められているのは、イメージ通りの繁華街であったり、住宅地には馴染みにくい地域に限定されることになります。
都市計画法には、市街地における建築物の用途の混在を防ぐことを目的として各自治体が設定する「用途地域」という地域区分がありますが、府条例では、この地域区分に基づき、以下の用途地域内に所在する営業所に限定して風俗営業を認めています。
- 商業地域
- 近隣商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
- 無指定地域
そもそも商業地域や近隣商業地域は商業を振興するための地域ですし、工業地域のように住宅街を形成しにくい場所であれば住民や青少年に与える影響も少なくて済みます。逆に言えば、住宅密集地を想定した以下の用途地域内では、原則として、風俗営業を行うことは認められていません。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
したがって、賃貸契約書の用途地域欄に「○○住居地域」の記載がある場合には、原則として風俗営業を行うことができません。
ただし、大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例施行規則では、第一種住居地域、第二種住居地域又は準住居地域であって、下表の道路の側端から25m以内にある地域又は西日本旅客鉄道(東海道本線、大阪環状線、関西本線、片町線及び阪和線)、近畿日本鉄道(奈良線、大阪線、南大阪線及び長野線)、南海電気鉄道(南海本線及び高野線)、京阪電気鉄道(京阪線)、阪急電鉄(神戸線、宝塚線、京都線及び千里線)若しくは阪神電気鉄道(本線及び西大阪線)の鉄道線路の各駅の出入口の周囲50m以内にあること地域については、例外として風俗営業を行うことが認められています。
名称 | 区域 |
---|---|
国道1号 | 枚方市、寝屋川市、守口市及び大阪市の区域 |
国道2号 | 大阪市の区域 |
国道25号 | 大阪市の区域 |
国道26号 | 大阪市、堺市及び高石市の区域 |
国道43号 | 大阪市の区域 |
国道163号 | 大阪市、守口市、門真市及び寝屋川市の区域 |
国道170号(大阪外環状線に限る) | 高槻市、枚方市、寝屋川市、四條畷市、大東市、東大阪市、八尾市、柏原市、藤井寺市、羽曳野市及び富田林市の区域 |
国道176号 | 豊中市及び大阪市の区域 |
国道309号 | 富田林市、堺市、松原市及び大阪市の区域 |
国道310号 | 堺市、大阪狭山市及び河内長野市の区域 |
国道479号 | 大阪市及び守口市の区域 |
府道京都守口線 | 枚方市、寝屋川市及び守口市の区域 |
府道大阪高槻京都線 | 大阪市の区域 |
府道大阪和泉泉南線 | 大阪市、堺市、高石市、和泉市及び岸和田市の区域 |
府道大阪池田線 | 大阪市及び豊中市の区域 |
府道大阪高石線 | 大阪市の区域 |
府道茨木寝屋川線 | 茨木市の区域 |
府道大阪臨海線 | 大阪市、堺市、高石市及び泉大津市の区域 |
府道大阪中央環状線 | 堺市、松原市、八尾市、東大阪市、大阪市、門真市、守口市、摂津市及び茨木市の区域 |
府道大阪生駒線 | 大阪市、大東市及び四條畷市の区域 |
府道大阪八尾線 | 大阪市の区域 |
府道住吉八尾線 | 大阪市の区域(平野区喜連二丁目1番5地先から同区瓜破南二丁目1953番地までに限る) |
府道泉大津美原線 | 堺市の区域(美原区菅生503番2から美原区平尾164番2までに限る) |
府道堺富田林線 | 富田林市及び堺市の区域(富田林市本町487番8から堺市美原区平尾164番2までに限る) |
大阪環状線 | 大阪市の区域 |
中津太子橋線 | 大阪市の区域 |
恵美須城東線 | 大阪市の区域 |
阿倍野木津川線 | 大阪市の区域 |
難波足代線 | 大阪市の区域 |
浜口南港線 | 大阪市の区域 |
三宅中55号線 | 松原市の区域 |
豊里矢田線 | 大阪市の区域 |
淀川北岸線 | 大阪市の区域 |
大阪府下の保全対象施設
大阪は古くから商売人の街であり、至るところに商業地域や繁華街が存在しています。商業地域では比較的自由に営業形態を選択することができるので、用途地域を事前に確認することで、許可取得への第1ハードルは無難にクリアできるのではないかと思います。
他方、無事に第1ハードルをクリアしたとしても、病院や学校等、風俗営業の影響から遠ざけるべき施設の付近では、やはり風俗営業を行うことができません。
これらの施設は「保全対象施設」と呼ばれ、施設の種類と離すべき距離は各自治体条例において指定されますが、府条例では以下の施設を保全対象施設として指定しており、これらの施設から、100m(保全対象施設自体が商業地域内にある場合には50m)を超えた場所においてのみ、風俗営業の営業所を設置することを認めています。
- 学校教育法第1条に規定する学校
- 学校教育法第134条第1項に規定する各種学校のうち主として外国人の幼児、児童、生徒等に対して教育を行うもの
- 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第2条第7項に規定する幼保連携型認定こども園
- 児童福祉法第7条第1項に規定する保育所
- 医療法第1条の5第1項に規定する病院若しくは同条第2項に規定する診療所(患者を入院させるための施設を有するものに限る)
各施設の定義については後述しますが、ここではどのような施設が保全対象施設とされているのか、規制の目的を含めてしっかりとイメージするようにしてください。
保全対象施設の特例地域
説明したとおり、物件選びは慎重にならざるをえませんが、府条例では、場所的な制約を受けることなく、風俗営業を行うことが認められる「保全対象施設の特例地域」という地域を設けています。
いわゆる繁華街の中でも、府条例に定める以下の地域では、古くから風俗営業が地域に根ざしてともに発展してきたという歴史的背景があることから、現在においても、近隣に保全対象施設が所在していたとしても、場所的制約を受けることなく風俗営業を行うことが許容されています。
本来であれば、近隣を調査する作業は大変根気が必要となる工程ですが、この辺りのおおらかさは、さすがは商売人の街といったところです。
大阪市北区/キタエリア | 梅田1丁目(1番〜3番・11番) 角田町(1番・5番〜7番) 神山町(2番〜10番) 小松原町曾根崎1丁目・2丁目 曾根崎新地1丁目 太融寺町 兎我野町 堂島1丁目 堂島浜1丁目 堂山町(1番〜13番・16〜17番) 西天満6丁目 |
大阪市中央区/ミナミエリア | 心斎橋筋1丁目(5番・6番) 心斎橋筋2丁目 千日前1丁目・2丁目 宗右衛門町道頓堀1丁目(1番〜10番) 道頓堀2丁目 難波1丁目・2丁目・3丁目・4丁目 西心斎橋2丁目(3番〜8番・13番〜16番) 東心斎橋1丁目(5番・6番・15番・16番) 東心斎橋2丁目 |
保全対象施設の種類
たとえば、ひとことで「学校」と言っても、その種類は膨大です。英会話教室やカルチャースクールも見方によっては「学校」ですし、自動車教習所や学習塾のようなものまでその範疇に入れてしまうとなると、もはや風俗営業はどこにも行き場を失ってしまいます。
ここでは府条例における保全対象施設の種類とその定義について解説していきたいと思います。また、本章で解説する保全対象施設の定義は、あくまでも府条例においての解釈であり、他の都道府県では同じ文言でも異なる定義付けがなされていることがあるのでご注意ください。
学校
府条例において保全対象施設として指定される「学校」とは、学校教育法第1条に規定するもの及び同法第134条第1項に規定する各種学校のうち主として外国人の幼児、児童、生徒等に対して教育を行うものをいいます。
まず学校教育法第1条では、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校を「学校」として定義しています。
これらの学校は、学校教育法第1条に規定があることから、「1条校」と呼ばれ、同法第124条・第134条に規定される「非1条校」(専修学校及び各種学校)とは区別されています。
このうち耳馴染みの薄い「義務教育学校」とは、現行の小・中学校とは異なる、小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う学校のことです。
また、「特別支援学校」とは、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者、または病弱者等に対し、幼稚園、小学校、中学校または高等学校に準ずる教育を施すための学校です。
加えて府条例では、同法第134条第1項に規定する各種学校(学校教育に類する教育を行うもの)のうち主として外国人の幼児、児童、生徒等に対して教育を行うものについても保全対象施設として指定しているため、知事の認可を受けた「外国人学校」も保全対象施設に該当します。
幼保連携型認定こども園
就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第2条第7項では、幼保連携型認定こども園とは、「幼保連携型認定こども園を、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとしての満3歳以上の子どもに対する教育並びに保育を必要とする子どもに対する保育を一体的に行い、これらの子どもの健やかな成長が図られるよう適当な環境を与えて、その心身の発達を助長するとともに、保護者に対する子育ての支援を行うことを目的として、同法の定めるところにより設置される施設」としています。
したがって、保全対象施設として指定される保連携型認定こども園は、知事から認定を受けたものに限られます。
保育所
府条例において保全対象施設として指定される「保育所」とは、児童福祉法第7条第1項に規定するものをいいます。
同項では、児童福祉施設について定義していますが、「保育所」については、同法第39条第1項において、「保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設(利用定員が20人以上であるものに限り、幼保連携型認定こども園を除く)」と定義されています。
このことから、単に「保育所」や「保育園」と名称にある施設が、必ずしも「児童福祉法第7条第1項の保育所」となるわけではありません。
条文では「保育所」を「利用定員が20人以上であるものに限る」としていることから、そもそも利用定員が20人未満の小規模保育事業所については、児童福祉法第7条第1項の前提となる同法第39条の保育所としてみなしていません。
また、企業主導型の保育所のような認可外保育所についても、保全対象施設からは除外されます。
病院又は診療所
医療法では、20人以上の人を入院させることができる設備を有する施設を「病院」、19人以下の人を入院させる設備を有する施設を「診療所」と定義しています。
診療所のうち保全対象施設となるのは、1人でも入院させる設備のある「有床診療所」であって、入院設備のない「無床診療所」は保全対象施設から除外されています。
ごく稀に歯医者や◯◯クリニックでも入院設備を有することがあるため、注意が必要になります。
重要なポイント
多くの自治体では、「営業所」の位置を用途地域の基準としていますが、大阪府においては全国的に珍しく、「保全対象施設」の位置を基準としています。
たとえば営業所が商業地域内に所在していたとしても、近隣商業地域内にある保全対象施設が100m内に所在している場合は、場所的要件を満たさず、風俗営業許可を受けることはできません。
また、距離制限を受けるのは、保全対象施設の建物を含む敷地についてであり、たとえば病院に駐車場が附属する場合、病院の建物だけではなく、駐車場の敷地も保全対象施設に含まれます。
なお、現に保全対象施設としての用に供しているもののほか、その施設の用に供することが決定した土地も保全対象施設に含まれます。
よく「スナックビルだから」とか「近くにパチンコ屋があるから」という理由で「ここなら大丈夫」と判断される方がいらっしゃいますが、かつては「大丈夫」であったとしても、申請後に保全対象施設が設置されることは珍しくないので、周りの状況だけで即断することは危険です。保全対象施設に関する規制は、あくまでも風俗営業許可を申請する時点のものであることに十分留意するようにしてください。
調査方法
まずはインターネット上のマップと自治体が運営するマップサイトによりざっくりとした位置関係や用途地域を確認します。ただしこれはあくまでも簡易的な事前調査であって、実地調査は「足」を使うアナログ式で行います。
100m(50m)とはいえ全方向ですから、これを把握することは並大抵の作業ではありません。実際に歩いてみると、その範囲の広さには驚かされることになります。
インターネットが発達した現代であっても、実際に歩きながら確認していくと、デジタル式の調査方法では見えてこない多くの情報に気付きます。インターネットの情報も、常に最新情報をアップデートしてくれているとは限りませんから、マップ上に「あるはずのお店」が閉店していたり、逆に「なかったはずのお店」がオープンしていたりすることも珍しいことではありません。
保全対象施設に関しては、診療所や歯科診療所の多さに気付きます。道中で診療所が目にとまれば、実際に聞き取りを行いますし、場合によっては登記簿謄本を取り寄せて確認を行うこともあります。保育所について認可があるのかないのかについてはしっかりと担当部署に確認を行います。また、サテライト型の学校が駅周辺にひっそりと所在していることもあるので注意が必要です。
せっかく良い物件に巡り会えて意気揚々と契約したものの、申請後に不許可処分や取下要請がされる等ハシゴを外されることが無いように、現地調査はしっかりと行うようにしてください。
風俗営業許可申請サポート
風俗営業は法令や条例の規制をダイレクトに被る営業形態です。規制は各市区町村条例に及んでいることも多いため、市区町村によっては都道府県条例よりもさらに厳しい条例(いわゆる上乗せ条例)が施行されている地域も存在します。
このように想定外の落とし穴にはまってしまうこともあるため、風俗営業の見切り発車は非常にリスクの大きい行為です。知人の風俗営業者が色々と入れ知恵してくれたとしても、それがその時期その地域その営業形態にすべて合致する正しい情報とは限りません。いずれにせよ風俗営業をはじめようとする際は、所轄の警察署や風営法に精通した行政書士に相談することを強くお薦めします。
弊所では、大阪府内全域において風俗営業許可申請の代行を承っています。事前調査、書類作成、関係各所とのやり取り、書類提出及び実査の立会いに至るまで、まるっとフルサポートさせていただいています。また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。「サイトを見た」の言葉で、大阪付限定の特別料金を提示する準備もあります。大阪府内で風俗営業許可を取得しようとする際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。