ホストクラブ等の売掛金等に起因するトラブルと消費者契約法の適用について

オープン前のホストクラブ

近年は、ホストクラブ等の利用客が、高額な利用料金の売掛けによる借金を背負い、その返済のために、売春させられる等の事例が相次いでいることが問題視されています。

このようなケースにおいて、刑事事件として検挙された実例があることはもちろんのこと、消費生活センターや女性相談支援センター等の相談機関には、本人やその家族から、日々多くの相談が寄せられているというのが実情です。

弊所は風営法上の手続きに接する機会が多く、風俗営業であるホストクラブについても、相応の知己と知見を有しますが、それだけにこのような事案があることに心を痛めているところです。

そこで本稿では、ホストクラブ等を経営し、もしくはこれから経営しようと検討される皆さまが、健全な経営を心がける上で習得すべき法令の基礎知識について詳しく解説していきたいと思います。

ホストを取り巻く法令等

ホストクラブを運営する上では、特に留意すべき法令がいくつか存在します。ここでは、ホスト及びホストクラブに関し、押さえておくべき法令等について紹介していきます。

風営法

ホスト及びホストクラブを取り巻く諸法令において、まず念頭に置くべきものが、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)です。風営法においてホストクラブは、「風俗営業」の社交飲食店(1号営業)に該当します。

風営法は、おもに「風俗営業」としてのホストクラブを取り締まる法律であり、具体的には、営業許可を受けるための基準や、風俗営業者としての遵守事項を定めています。

職業安定法

職業安定法第63条では、①暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事すること、及び②公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事することを禁じています。

これを噛み砕いて具体的に解説すると、①マインドコントロール等の手段により精神的自由を不当に拘束して、借金等を返済させるために仕事を紹介すること、及び②性風俗や売春などの仕事を紹介することが禁止されることとなります。

なお、この規定に違反した場合には、1年以上10年以下の懲役、又は、20万円以上300万円以下の罰金の対象になります。

★公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務

公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務とは、社会共同生活において衛生上他人に危害を与えるような業務又は社会共同生活上守られるべき道徳を害する業務を指します。

例えば、店舗型性風俗特殊営業店(ソープランド等)において、女性従業員に不特定の男性客を相手に手淫又は口淫等の性交類似行為をする業務や、わいせつビデオ映画の製作販売会社が制作するわいせつビデオの女優として稼働する業務がこれに該当するものとされた裁判例があります。

労働基準法

労働基準法第24条では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」ものとされています。このためホストが労働基準法上の労働者に当たる場合には、ホストの賃金から客の売掛金を控除することは、労働基準法違反に該当する可能性があります。

なお、ホストが労働基準法上の労働者に当たるかどうかについては、契約の名称や形式によらず、使用従属関係の実態の有無によって判断されることになります。

売春防止法

売春防止法では、売春そのものを禁止するほか、これを周旋(間に立って話しがまとまるように働くこと)したり、強要することを禁じています。

★売春

売春とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいいます。

消費者契約法

消費者契約法では、ホストクラブ等において、好意の感情を不当に利用した契約(デート商法)など、不当な勧誘により締結された契約は、同法に規定する要件に該当すれば、消費者が意思表示することにより、後からこれを取り消すことができることを定めています。(後述)

自治体条例

都道府県及び市区町村では、上記の法令を補足、強化(上乗せ規制)する条例が設けられていることがあります。また、より具体的にホストによる売掛を禁止する条例を策定しようとする動きも出てきています。

検挙事例について

全国各地の警察では、ホストクラブ等の売掛金等に起因する違法行為について、売春防止法違反、職業安定法違反等による検挙を行うほか、ホストクラブに対する立入りにより、風営適正化法の遵守を徹底するなどの取組を推進しています。

また、厚生労働省においては、ホストクラブ従業員等が性風俗・売春等の仕事の紹介を行うことが違法である旨の周知を行っているほか、労働基準監督署においても警察と連携して、労働基準法に基づきホストクラブへの立入りを実施する等、対策に取り組んでいます。

具体的に、警察による検挙が行われた事例としては、以下のようなケースがあります。

当時ホストクラブ従業員であった者が、店での売掛金の返済名目で客の女性に現金を要求し、スカウトマンを介し、ソープランド従業員に紹介して売春をさせた事案

(同ホストクラブ従業員であった者、同スカウトマンその他関係者について、売春防止法違反、職業安定法違反等で検挙) 

ホストクラブ経営者らが、客の女性に対し、店での売掛金を返済するよう要求し、同女を指定したビジネスホテルに居住させた上、売春をさせた事案

(同ホストクラブの経営者らについて、売春防止法違反で検挙)

ホストクラブの店長らが、店での売掛金を支払わせるため、客の女性をソープランド経営者に売春婦として紹介した事案

(同ホストクラブの店長その他関係者について、売春防止法違反及び職業安定法違反で検挙) 

消費者契約法の適用について

近年、一部のホストクラブ等において、その従業員であるホストが若年女性に対して、その好意の感情を不当に利用して、困惑させ、飲食などの提供を受ける契約を結ばせるという事例が報告されています。

消費者契約法第4条第3項第6号では、消費者の利益を守るため、消費者契約について、不当な勧誘による契約の取消し等を規定しており、好意の感情を不当に利用した契約(デート商法)について、取消権を定めています。

ホストクラブ等における飲食などの契約も、消費者契約法上の消費者契約に当たり得るため、消費者契約法で定める要件に該当する不当な勧誘により締結した契約について、消費者が契約の相手方である事業者に対して取消しの意思表示をすることで、その契約を取り消すことができる可能性があります。

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

(中略)

当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること

(消費者契約法第4条第3項第6号)

具体的には、ホスト等ホストクラブの従業員が、客(消費者)に飲食などの契約を勧誘する際に、客が社会生活上の経験が乏しいことから、①ホストに対して恋愛感情など好意の感情を抱き、かつ、②ホストも客に対して同様の感情を抱いているものと誤って信じていることを知りながら、これに乗じ、飲食などの契約を締結しなければ(酒類などを注文してくれなければ)、ホストと客の関係が破綻することになる旨を告げることにより、客が困惑し、飲食などの契約の申込み等をしたときは、消費者契約法に基づき、この契約を取り消すことができます。

好意の感情の不当な利用

仮に、ホストが恋人間の個人的なやり取り(売掛金の立替えなど)だと主張している場合であっても、ホストが消費者契約法上の事業者に該当する場合であって、消費者契約法の要件に該当する不当な勧誘をしていれば、その契約は取り消すことができます。

また、ホスト等ホストクラブの従業員が、客に飲食などの契約を勧誘する際に、価格や内容を偽って結ばせた契約や、客が店から退去する意思を示しているにもかかわらず退去させずに結ばせた契約なども、同様に本法で定める要件を満たせば、取り消すことができます。

ただし、消費者契約法は民事ルールであることから、客である当事者が契約の取消しを主張した上で、原則として当事者間で解決する必要があり、最終的には、個別具体的な事案に即し、司法の場で判断されることになります。

なお、消費者契約法上の要件に該当するかどうかにかかわらず、年齢18歳未満の者(未成年者)が、両親等の法定代理人の同意を得ずに結んだ契約については、民法第5条に基づき、原則として取り消すことができます。

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

この規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

(民法第5条第1・2項)

まとめ

ホストクラブ等のナイトビジネスについては、世間や行政から厳しい目が向けられているという現実があります。法令がその存在を認め、規制内容を遵守する限りにおいて、ホストもホストクラブも立派なビジネスモデルです。

ホスト及びホストクラブを運営していく上で、周辺法令等について知識を蓄えることや、社会情勢を見極めることも、重要な要素であるように思います。

弊所は関西圏を中心に、年間数十件の店舗と300件以上もの申請に携わります。そのうちの多くは風俗営業の許可申請や深夜酒類提供飲食店の届出が占め、風営法関連の手続きは弊所におけるキラーコンテンツのひとつとなっています。また、最近は首都圏・四国圏・東海圏・中国圏・九州圏からも発注があり、着々と活動地域を拡大しています。

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