大阪でラブホテルの新規開業が可能であるかどうかを考察するエントリー
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)では、店舗を設けて性的サービスを提供する営業を店舗型性風俗特殊営業として定義し、該当する営業を厳しく規制しています。
いわゆるラブホテルと言われる施設も店舗型性風俗特殊営業(4号営業)に該当し、風営法等による厳しい規制の対象となっています。
店舗型性風俗特殊営業に対する規制は、風営法に規定される営業形態に対するものの中でも最も厳しいものですが、さらにその条文中には「善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があるときは、条例により、地域を定めて、店舗型性風俗特殊営業を営むことを禁止することができる」旨の定めが設けられており、これにより各自治体では、風営法に上乗せする形での規制強化が図られています。
この条例は、皆さまが想像する以上に手厳しく、過去数回にわたり相談を受けてきた店舗型性風俗特殊営業の新規開業をことごとく阻んできました。そのため弊所にとっては、店舗型性風俗特殊営業の新規開業を成就させることは、行政書士としての悲願ともなっています。
そこで本稿では、おもに風営法及び大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(以下、府条例)を下敷きにして、大阪府において新たにラブホテルを開業することができる可能性について、詳しく考察していきたいと思います。
店舗型性風俗特殊営業
店舗型性風俗特殊営業とは、読んで字の如く、店舗を設けて性的サービスを提供する形態の営業を指します。以下のとおり6つの営業形態に区分されており、規定のある条項の号数をもって「○号営業」と呼称しています。
1号営業 | 浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業 | ソープランド |
2号営業 | 個室を設け、個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業 | 店舗型ファッションヘルス |
3号営業 | 専ら性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場を経営する営業 | ヌードスタジオ、のぞき劇場、ストリップ劇場、個室ビデオ店 |
4号営業 | 専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む)の用に供する施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る)を設け、宿泊に利用させる営業 | ラブホテル、レンタルルーム、モーテル |
5号営業 | 専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープなどを販売し、又は貸し付ける営業 | アダルトグッズショップ |
6号営業 | 店舗を設けて、専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を希望する者に対し、店舗内においてその者が異性の姿態若しくはその画像を見てした面会の申込みをその異性に取り次ぐこと、又は店舗内に設けた個室若しくはこれに類する施設において異性と面会する機会を提供することにより異性を紹介する営業 | 出会い喫茶、ハプニングバー |
このうち「専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む)の用に供する施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る)を設け、宿泊に利用させる営業」は、4号営業として定められているため、モーテルやラブホテル等はこれに該当することになります。
ラブホテルへの該当性
風営法を実務上運用するために警察庁が公表する風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(PDF:661KB)(以下、解釈運用基準)では、以下の要件に当てはまる施設をモーテル、ラブホテル等として規制の対象としています。
- 専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む)の用に供する施設であること
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(以下、風営法施行令)第3条第1項に定める施設であること
- 風営法施行令第3条第2項又は第3項に定める構造又は設備を有する個室を設ける施設であること
1.については、「専ら」(もっぱら)とされていることから、宿泊客の7割ないし8割が異性のカップルであることを想定した規定となっています。ジェンダーレスな風潮を考慮すれば、将来的には「異性」のワードが削除されるかもしれません。
2.の風営法施行令第3条第1項に定める施設には、以下の施設が該当します。解釈運用基準中には、収容人数、食堂及びロビー等の定義や、面積の計算方法についても細かく説明がありますが、ざっくりと言えば、一般的な感覚として、ホテル・旅館の構造とは異なる特殊な構造を有する施設がモーテル、ラブホテル等に該当することを定めています。
①レンタルルームその他個室を設け、その個室を専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設
②ホテル等その他客の宿泊(休憩を含む)の用に供する施設であって、次のいずれかに該当するもの
(イ)食堂(調理室を含む)又はロビーの床面積が、収容人員の区分ごとにそれぞれ以下の数値である施設
収容人員 | 食堂の床面積 | ロビーの床面積 |
---|---|---|
30人以下 | 30㎡未満 | 30㎡未満 |
31人から50人 | 40㎡未満 | 40㎡未満 |
51人以上 | 50㎡未満 | 50㎡未満 |
(ロ)施設の外周に、又は外部から見通すことができるその施設の内部に、休憩の料金の表示その他の当該施設を休憩のために利用することができる旨の表示がある施設
(ハ)施設の出入口又はこれに近接する場所に、目隠しその他施設に出入りする者を外部から見えにくくするための設備が設けられている施設
(ニ)フロント、玄関帳場その他これらに類する設備にカーテンその他の見通しを遮ることができる物が取り付けられ、フロント等における客との面接を妨げるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める状態にある施設
(ホ)客が従業者と面接しないで機械その他の設備を操作することによってその利用する個室の鍵の交付を受けることができる施設その他の客が従業者と面接しないでその利用する個室に入ることができる施設
3.の風営法施行令第3条第2項又は第3項に定める構造とは、2.に該当する施設につき、以下のいずれかに該当する構造をいいます。
①客の使用する自動車の車庫が通常その客の宿泊に供される個室に接続する構造
②客の使用する自動車の車庫が通常その客の宿泊に供される個室に近接して設けられ、その個室が当該車庫に面する外壁面又は当該外壁面に隣接する外壁面に出入口を有する構造
③客が宿泊をする個室がその客の使用する自動車の車庫とその個室との通路に主として用いられる廊下、階段その他の施設に通ずる出入口を有する構造
なお、解釈運用基準の義務以上に特段の「フロント業務」を行うものについては、構造規制の対象からは除外されますが、これは一流ホテルの「フロント業務」と同程度の行為を常態として行っているものを想定した特例です。
また、3.の風営法施行令第3条第2項又は第3項に定める設備とは、施設の区分ごとにそれぞれ以下に該当する設備をいいます。
レンタルルームその他個室を設け、その個室を専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設 | 動力により振動し又は回転するベッド、横臥している人の姿態を映すために設けられた鏡(特定用途鏡)で面積が1㎡以上のもの又は2以上の特定用途鏡でそれらの面積の合計が1㎡以上のもの(天井、壁、仕切り、ついたてその他これらに類するもの又はベッドに取り付けてあるものに限る)その他専ら異性を同伴する客の性的好奇心に応ずるため設けられた設備 |
性的好奇心をそそる物品を提供する自動販売機その他の設備 | |
長椅子その他の設備で専ら異性を同伴する客の休憩の用に供するもの | |
ホテル等その他客の宿泊(休憩を含む)の用に供する施設であって、2.の(イ)〜(ハ)のいずれかの構造を有するもの | 動力により振動し又は回転するベッド、横臥している人の姿態を映すために設けられた鏡(特定用途鏡)で面積が1㎡以上のもの又は2以上の特定用途鏡でそれらの面積の合計が1㎡以上のもの(天井、壁、仕切り、ついたてその他これらに類するもの又はベッドに取り付けてあるものに限る)その他専ら異性を同伴する客の性的好奇心に応ずるため設けられた設備 |
性的好奇心をそそる物品を提供する自動販売機その他の設備 | |
ホテル等その他客の宿泊(休憩を含む)の用に供する施設であって、2.の(イ)〜(ハ)のいずれかの構造を有するもの | 宿泊の料金の受払いをするための機械その他の設備であって、客が従業者と面接しないで当該料金を支払うことができるもの |
なお、3.については、全ての個室について構造又は設備を有する必要はなく、一部でもこの構造又は設備を有するものであれば、モーテル、ラブホテル等に該当するものと思われます。
長々とした解説になりましたが、要するにラブホテルの特色とも言える
- 一般ホテルとは明らかに異なる構造
- フロント含めて誰とも対面しない構造
- 派手な装飾や性的好奇心をそそる設備
等を有する宿泊施設が、モーテル、ラブホテル等であるものと解釈されています。
営業許容地域
府条例によると、大阪府において、ラブホテルは、「商業地域」以外の用途地域では営業をすることが認められていません。
また、モーテル、ラブホテル等のうち、個室に自動車の車庫が個々に接続する特殊な構造を有する施設(連れ込み部屋)の営業については、大阪市北区のうち堂山町、曽根崎新地一丁目、曽根崎一丁目、曽根崎二丁目、小松原町及び角田町並びに中央区のうち東心斎橋二丁目(一番及び二番を除く)、宗右衛門町(一番、三番及び七番を除く)、西心斎橋二丁目(一番及び十番を除く)、千日前一丁目、千日前二丁目、道頓堀二丁目及び難波二丁目に限り営業することが認められています。
あれ?そんなに難しくなさそう?
大阪にはいたるところに商業地域(いわゆる繁華街)が点在しています。連れ込み部屋的な構造を有するラブホテルはともかくとして、確かに条件が商業地域での営業のみであるならば、そんなに高いハードルではありません。
保全対象施設からの距離制限
風営法では、清浄な風俗環境を保全すべき対象となる施設を保全対象施設として定め、風俗営業等の影響をできる限り排除するように配慮しています。「商業地域での営業」というハードルをクリアしたとしても、この「保全対象施設からの距離制限」こそが、ラブホテルの新規開業を阻む最大の壁として立ちふさがります。
- 一団地の官公庁施設(都市計画において定められた一団地の国家機関又は地方公共団体の建築物及びこれらに附帯する通路その他の施設)
- 学校教育法第1条に規定する学校
- 学校教育法第124条に規定する専修学校のうち高等課程を置くもの
- 学校教育法第134条第1項に規定する各種学校のうち主として外国人の幼児、児童、生徒等に対して教育を行うもの
- 図書館
- 児童福祉法第7条第1 項に規定する児童福祉施設
- 病院又は有床診療所
- 社会教育法第20条に規定する公民館
- 博物館又は博物館に相当する施設
- 都市公園
- 地方公共団体の設置する一般の利用に供するための体育館、水泳プール及び運動場
- 公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律第6条に規定する共同利用施設
- 老人福祉法第5条の3に規定する特別養護老人ホーム
- 社会教育調査規則第3条第11号に規定する青少年教育施設
上記の14施設が、風営法及び府条例で定められいる店舗型性風俗特殊営業に対する保全対象施設です。ラブホテルを含む店舗型性風俗特殊営業は、これらの施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む)の周囲200mの区域内においては、これを営むことができません。
これがいかに厳しい数字であるかは、普段風俗営業の許可申請を取り扱っているとよく分かります。キャバクラや雀荘といった風俗営業にも、別に保全対象施設の概念がありますが、その制限距離は100m(又は50m)です。この距離内に存在する保全対象施設を調査するだけでもそれなりに骨の折れる作業になりますが、その倍(面積で言えば4倍)ともなれば、調査するにもとんでもない苦行を強いられます。
とは言え、この投稿をご覧になられている皆さまは恐らく行政書士ではありません。より分かりやすく説明するならば、下の地図のとおり、梅田の東通りがすっぽり収まってもまだ足りない範囲が半径200mという広さです。この範囲内で14施設が存在してはいけない訳ですから、これがいかに高いハードルであるのかがお分かりいただけるのではないかと思います。
ちなみに言えば、かつて相談のあった事案では、13施設までをクリアしたことがあります。このとき引っかかったのが「都市公園」です。参考までに大阪府の都市公園の一覧表を貼り付けますので、一緒にあのときの絶望感を共有してください。笑
旅館業法等による規制
ここまでは風営法周りの法令であったり条例のお話しでしたが、忘れてはならないのが、ラブホテルもまたれっきとした旅館業のひとつであるという事実です。
旅館業法に規定する「旅館業」に該当する施設は、都道府県知事からの許可を受けることなくその営業を開始することができません。つまりラブホテルの場合であれば、まず前提として旅館業の許可を取得した後、風営法上の店舗型性風俗特殊営業として届出を行わなければならないという建て付けになります。
厄介なのが、旅館業の許可を取得する上で適合させるべき構造の基準が、王道的なラブホテルの構造を認めない規定となっている点です。
代表的な規定を以下に例示するので、風営法とバッティングもしくは加重される規定を洗い出し、両者をすり合わせながらイメージするようにしてください。
善良の風俗が害されるような文書、図画その他の物件を旅館業の施設に掲示し、又は備え付けないこと
善良の風俗が害されるような広告物を掲示しないこと
旅館業法施行令第3条
善良の風俗を保持する必要がある地域として規則で定める地域内においては、外壁、屋根、広告物その他外観は、周囲の善良の風俗を害することがないよう、意匠等が著しく奇異でなく、かつ、周囲の環境に調和するものであること
上記に規定する地域内においては、従業員が、宿泊者その他の利用者の出入りを容易に見ることができ、かつ、これらの者と直接面接できるフロント、玄関帳場又はこれらに類する設備を設けること
大阪府旅館業法施行条例第7条第1項第4号・5号
市条例による規制
仮にここまでの要件をすべて満たしていたとしても、まだハードルは残されています。ここまではおもに法令や都道府県条例による規制を説明しただけに過ぎません。都道府県下には市町村が存在するわけですが、当然ながら市町村が制定する市町村条例の規定にもすべて適合させる必要があります。
都道府県条例は風営法よりも厳しい規定を設けていることが多いですが、市町村条例では、これよりもさらに厳しい規定が上乗せされていることがあります。
兵庫県下ではありますが、かつて弊所の申請を阻んだ条例を以下に紹介しています。いずれにせよ、ラブホテルの新規開業には、とてつもなく高いハードルが設けられていることをご理解ください。
性風俗関連手続きサポート
弊所は兵庫県大阪府京都府を中心に数多く性風俗関連特殊営業の手続きに関与しているほか、年間2桁以上の風俗営業許可を取得しています。また、最近では四国・東海・関東・九州・沖縄圏においても業務をいただく機会が増えました。このため風営法関連の手続きに関しては、相当熟達しているという自信があります。
ラブホテルについては、事前調査の段階からサポート可能ですが、相当な作業工程を強いられることから、有料(事前お支払い)でのみお受けしています。また、調査の結果、ラブホテルの開業が不能であることが判明した場合でも、返金に応ずることはできません。ただし、調査の結果、営業が可能であり、かつ、その後の手続きをご依頼いただける場合に限り、この額を手続き報酬額に算入いたします。大阪府における性風俗関連特殊営業に関する手続きでお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
ラブホテル開業可能性調査 | 110,000円 |
ラブホテル開業手続き | 要見積もり |
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