明石市においてラブホテル、パチンコ店及びゲームセンターを始める際の注意点│明石市教育環境保全条例について

明石城ひつじさるやぐらと石垣

兵庫県明石市内において新たにラブホテル、パチンコ店及びゲームセンターを始めようとする際は、教育環境保全のためのラブホテル、パチンコ店及びゲームセンターの建築等の規制に関する条例(以下、条例)の厚い壁が立ちふさがります。

この条例は、明石市内におけるラブホテル、パチンコ店及びゲームセンターの建築等について必要な規制を行うことにより、良好な教育環境を保全し、もって青少年の健全な育成を図ることを目的として制定されています。

そこで本稿では、この条例で定められている規制の内容や、必要とされている手続き等について詳しく解説していきたいと思います。

事前届出

旅館・ホテル営業又は簡易宿所営業の用に供する施設(以下、ホテル等)の新築、増築、改築、移転、大規模の修繕、大規模の模様替、用途変更又は市長が定める軽微な変更を除く構造若しくは設備の変更(以下、建築等)をしようとする者は、市長に対してあらかじめ以下の書類を提出する必要があります。建築基準法に基づく建築確認を要する場合は、建築確認の申請をする日の90日前までに提出します。

  • 建築届出書
  • 配置図
  • 各階平面図
  • 立面図
  • 断面図
  • 完成予想図
  • その他市長が必要と認める書類

市長は、この届出を受けたときは、そのホテル等がラブホテルに該当するか否かを判定し、その結果を、ホテル等審査結果通知書により届出者に対して通知します。

★ラブホテル

条例では、以下の構造及び設備を有しないホテル等をラブホテルとして定義しています。このため、ホテル等について以下の構造若しくは設備を変更する場合には、市長に対する建築届出が必要になります。

  • 外部から内部を見通すことができ、かつ、営業時間中に自由に出入りすることのできる玄関
  • 受付及び応接の用に供する帳場、フロント等の設備
  • 宿泊又は休憩のために客室を利用する者が通常利用するもので、帳場、フロント等から各客室に通じる共用の廊下、階段、昇降機等の設備
  • 自由に利用することができ、かつ、客室数に応じた広さを有するロビー、応接室、談話室等の設備
  • 会議、催物、宴会等に使用することができ、かつ、客室数に応じた広さを有する会議室、集会室、大広間等の設備
  • 食堂、レストラン等及びこれらに付随する調理室、配膳室等の設備
  • 自由に利用することのできる男女別便所
  • 付近の良好な教育環境を損なわない外観
  • 個々の客室の出入口に自動車の車庫又は駐車場が接続せず、又は接近していない構造
  • その他市長が審査会の意見を聴いた上で規則で定める構造又は設備

市長の同意

ラブホテルの建築等をしようとする者は、市長に対してあらかじめ以下の書類を提出し、同意を得る必要があります。市長は、この同意をする場合においては、ラブホテルの施設の色彩、屋外広告物その他の施設の外観(以下、外観等)についての条件その他の教育環境の保全のために必要な条件を付することができます。

  • ラブホテル建築同意申請書
  • 配置図
  • 各階平面図
  • 立面図
  • 断面図
  • 完成予想図
  • 土地所有者の同意書
  • その他市長が必要と認める書類

同意の基準

ラブホテルの敷地が以下の区域に位置するときは、建築等が周辺の良好な教育環境を害するおそれがないと市長が認める場合を除き、市長の同意を得ることはできません。

  • 商業地域以外の用途地域
  • 市街化調整区域
  • 以下の施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む)の周囲おおむね200m以内の区域
    • 学校教育法に規定する学校、専修学校及び各種学校
    • 図書館
    • 児童福祉施設
    • 博物館及び博物館に相当する施設
    • 公民館
    • スポーツ施設及びこれに類する施設で市が設置するもの
  • 以下の施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む)の周囲おおむね150m以内の区域
    • 障害者支援施設のうち知的障害者を対象とするものその他これに類する施設として規則で定めるもの
    • その他市長が審査会の意見を聴いた上で規則で定める施設
  • 市長が告示で定める通学路の側端からおおむね50m以内の区域

なお、市長の同意は、申請者が同意を受けた日の翌日から起算して1年以内に建築等に着手していないときは、その効力が失われます。ただし、市長が災害その他の特別な事由があると認めたときは、この期間を1年を超えない範囲内で延長することができます。

着手届と完了届

市長の同意を得た者(以下、建築主)は、建築工事等に着手したときはラブホテル建築着手届を、建築工事等が完了したときにはラブホテル建築完了届を、いずれも市長に対して速やかに提出します。

完了した建築工事等が申請の内容及び同意の条件に適合している場合は、市長からラブホテル建築適合確認通知書により通知がなされます。

事前説明会

ラブホテルの建築等であって建築確認を要するもの(※)をしようとする者は、ラブホテルの敷地内で公衆の見やすい場所に計画の概要を記載した標識を設置し、市長に対して、速やかに標識の内容及び設置状況がわかる写真を提出します。

その後建築確認の申請をする日の60日前までに、建築予定地周辺の住民、教育機関の関係者等(以下、住民等)を対象とした事前説明会を開催し、ラブホテルの建築等の計画について説明を行う必要があります。

(※)あくまでもラブホテルの建築等であって建築確認を要するものが対象であるため、建築等であっても、建築確認が不要なものをしようとする場合にはこれらの規定の適用外となります。

用途変更で確認申請が必要となるのは、特殊建築物の用途となる部分が面積200㎡を超える場合に限られているため、変更部分が200㎡未満である用途変更の場合、これらの規定については適用外となります。

事前説明会の開催方法

事前説明会の開催者は、市長に対して事前説明会開催通知書を提出した後、建築予定敷地の周囲200m以内の地域に居住する住民及び地域を活動地域とする自治会等の役員に対し、事前説明会を開催する旨を周知します。開催場所については、住民等が参加しやすい場所に設定するよう努めるものとされています。

事前説明会では、参加した住民等に対し、建築計画の概要を記載した書類及び図面を配付し、建築計画の内容について、具体的かつ平易に説明を行います。

事前説明会実施結果報告書

事前説明会の開催者は、開催日を含めて10日以内に、市長に対して以下の書類を提出します。

  • 事前説明会実施結果報告書
  • 事前説明会で配付又は使用した書類及び図面
  • 事前説明会以外で住民等への周知に使用した書類及び図面

パチンコ店及びゲームセンター

条例では、パチンコ店及びゲームセンターの建築等についても、事前協議、事前説明会の開催等の規定が設けられています。

事前協議

パチンコ店又はゲームセンター(以下、パチンコ店等)の建築等をしようとする者は、市長に対してあらかじめ以下の書類を提出し、構造及び外観等について協議をする必要があります。建築基準法に基づく建築確認を要する場合は、建築確認の申請をする日の90日前までに書類を提出します。

  • 建築届出書
  • 配置図
  • 各階平面図
  • 立面図
  • 断面図
  • 完成予想図
  • その他市長が必要と認める書類

市長は、パチンコ店等の構造及び外観等がその周辺の良好な教育環境を害するおそれがあると認めるときは、その建築主等に対し、パチンコ店等の構造及び外観等の変更その他の教育環境の保全のために必要な措置をとることを求めることができます。

事前説明会の開催

以下の区域において、パチンコ店等の建築等であって建築確認を要するもの(※)をしようとする者は、パチンコ店等の敷地内で公衆の見やすい場所に計画の概要を記載した標識を設置し、市長に対して、速やかに標識の内容及び設置状況がわかる写真を提出します。

その後建築確認の申請をする日の60日前までに、住民等を対象とした事前説明会を開催し、パチンコ店等の建築等の計画について説明を行う必要があります。

  • 商業地域以外の用途地域
  • 市街化調整区域
  • 以下の施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む)の周囲おおむね200m以内の区域
    • 学校教育法に規定する学校、専修学校及び各種学校
    • 図書館
    • 児童福祉施設
    • 博物館及び博物館に相当する施設
    • 公民館
    • スポーツ施設及びこれに類する施設で市が設置するもの
  • 以下の施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む)の周囲おおむね150m以内の区域
    • 障害者支援施設のうち知的障害者を対象とするものその他これに類する施設として規則で定めるもの
    • その他市長が審査会の意見を聴いた上で規則で定める施設
  • 市長が告示で定める通学路の側端からおおむね50m以内の区域

(※)あくまでもパチンコ店等の建築等であって建築確認を要するものが対象であるため、建築等であっても、建築確認が不要なものをしようとする場合にはこれらの規定の適用外となります。

用途変更で確認申請が必要となるのは、特殊建築物の用途となる部分が面積200㎡を超える場合に限られているため、変更部分が200㎡未満である用途変更の場合、ラブホテルの建築等と同様、これらの規定については適用外となります。

なお、事前説明会の開催方法等については、ラブホテルの建築等におけるものと同様の規定が設けられています。

まとめ

市長の同意を得ることが困難であることから、明石市におけるラブホテルの新設は事実上不可能と言える状況にあります。パチンコ店及びゲームセンターについては、新設することがまったく不可能という訳ではありませんが、他の地域にはないハードルが設けられているため、営業開始に至るまでの手続きは、より一層煩(わずら)わしいものとなっています。

また、手続きが大幅に増加することから、他地域における営業許可申請よりも、許可取得までの必要期間は1〜2か月以上長めに見積もる必要があります。

それでもなお明石市において新たにこれらの営業を始めようとする際は、このようなリスクやデメリットもしっかりと踏まえ、専門家にも相談した上でしっかりと計画を進めるようにしましょう。

事務所の最新情報をお届けします