豪邸条例?風俗営業ができない?芦屋市を巡る華麗なるルールの数々

芦屋市の街並み

弊所は尼崎市という立地にあることから、兵庫県と大阪府の両府県の案件がバランス良く入ってきます。この点において、ビジネス面では非常に恵まれた環境にあるように思います。兵庫県に関して言えば、尼崎市内はもちろんのこと、西宮市、神戸市、伊丹市、宝塚市、川西市といったいわゆる「阪神地区」のほかにも、明石市、加古川市、姫路市、高砂市、たつの市、三木市、相生市などに受任経験があります。

ところが何故か、同じ「阪神地区」であるはずの「芦屋市」では、いまだ受任経験がただの1件もありません。(海事代理士としては、受任経験があります。)厳密に言えば、過去に数件問い合わせはあったものの、いずれも許可が不要な事案であったため受任には至りませんでした。

弊所は業務を特化させているわけではありませんが、受任する業務は風俗営業に関する事案が多く、このことで条例をはじめとする芦屋市を巡る規制の数々とバッティングしてしまい、結果として弊所の「芦屋進出」が遅れている原因のひとつとなっていることは間違いなさそうです。

そこで本稿では、芦屋市近隣の方に向けては改めてその華麗さを再確認していただくため、また、遠方の方に向けてはトリビア的なネタとしてご利用いただくため、芦屋市を巡る数々のルールを紐解いて紹介していきたいと思います。

芦屋国際文化住宅都市建設法

芦屋市の象徴ともされている、いわゆる地方特別法といわれる形式の「法律」です。形式が「法律」であるため、「兵庫県条例」よりも優先的に適用されるほか、例えば同じく「法律」である「都市計画法」に対しても、「特別法」として優先的な規定を設けることが可能です。成立が昭和26年と古く、全部で7条のコンパクトな法律ですが、「芦屋国際文化住宅都市建設計画」や「芦屋国際文化住宅都市建設事業」について定められています。なお、そのお隣りの神戸市においては、同趣旨の「神戸国際港都建設法」という地方特別法が定められています。

景観法による景観地区の指定

芦屋市では、芦屋川沿いの区域を「芦屋川特別景観地区」、それ以外の市内全域を「芦屋景観地区」に指定しています。このため、芦屋市内における全ての建築物及び認定工作物に関わる新築又は新設、屋外広告の掲出等の行為は、景観法に基づく市長の認定を受ける必要があります。

したがって、後述する遊技場やホテルに限らず、芦屋市内に新たに出店しようとする際は、一般の建築物であったとしても、他地域よりも高いハードルをクリアすることが要求されることになります。

芦屋市生活環境保全のための建築等の規制に関する条例

平成8年に施行されたこの条例が、芦屋市内にパチンコ店やラブホテルが1軒もない街並みを構成する基盤となっています。規制の対象とされているのは、遊技場(風営法の第4号営業・第5号営業に該当するマージャン屋、パチンコ店、ゲームセンター)や(ラブ)ホテルですが、分かりやすく解説するために、「パチンコ店」を例にとって、「兵庫県条例」の規定と対比して考察してみることにしましょう。

兵庫県条例芦屋市条例
営業禁止区域第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域、これらの用途地域に接し、なおかつこれらの用途地域から50m以内の区域、市街化調整区域
保全対象施設病院・入院施設のある診療所、学校教育法に定めのある学校(幼稚園・小学校・中学校・高等学校)、中等教育学校・特別支援学校、大学・高等専門学校、認可保育所・認定こども園(特定認可外保育施設型認定こども園を除く)、図書館病院・入院施設のある診療所、学校教育法に定めのある学校(幼稚園・小学校・中学校・高等学校)、中等教育学校・特別支援学校、大学・高等専門学校、児童福祉法に規定する児童福祉施設、図書館、公民館、博物館、芦屋市公園条例に規定する公園、JR芦屋駅、阪神芦屋駅、阪神打出駅、阪急芦屋川駅、芦屋市立打出教育文化センター、芦屋市民会館、芦屋市谷崎潤一郎記念館、芦屋市立美術博物館、芦屋市立体育館・青少年センター、芦屋市立上宮川文化センター、兵庫県立海洋体育館
保全対象施設からの距離制限保全対象施設から最大100m以上離れていることが必要保全対象施設から常に200m以上離れていることが必要

風俗営業の許可申請を請け負っていると、この基準をクリアすることが、いかに不可能に近いことであるのかがよく分かります。国の法令や都道府県条例を超えるいわゆる「上乗せ規制」になりますが、この「上乗せ規制」については、各地で時折論争の対象となっています。

芦屋市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例

巷では豪邸条例と言われている条例がこちらになります。このように表現されるに至ったのは、この条例中において、以下のような規定が設けられているためです。

建築物の敷地面積は、別表第2ア項の計画地区の区分に応じ、それぞれ同表オ項に掲げる面積以上でなければならない。(略)

(芦屋市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例第7条)

全国的に有名になったのは、六麓荘(ろくろくそう)町地区地区整備計画区域における建築規制であり、具体的にこの地区では、敷地面積400㎡以上、高さ10m以下の一戸建て以外の建築物を新築することが禁止されています。さらにこの地区においては、住民と六麓荘町内会との間で、地区内における営業行為を一切禁止するという「協定」が締結されており、実際に六麓荘町では、自動販売機すら1台も見かけることがありません。門外漢である小生がとやかく言うのは野暮な話しですが、この厳粛な規定が芦屋市のイメージを保護する礎となっていることは間違いないでしょう。

まとめ

東の田園調布、西の芦屋と称されるほど、高級住宅街の代名詞ともなっている芦屋ですが、このイメージを維持するために、古くから住民による不断の努力があったことは間違いありません。重要なのは、住民にとって「住みよい環境」であるかどうかです。近くて遠い国の「尼崎市民」である小生ですが、同じく「尼崎」に誇りと矜持を持って生活しています。

多分。笑

さて、前置きは長くなりましたが、弊所はもちろん芦屋市の業務にも対応しています。規制が厳しいということは、それだけ要求される手続きも煩(わずら)わしいということになります。具体的には屋外広告の許可申請や建築協定の認可申請などをサポートさせていただきます。芦屋市でも「尼崎」のツナグ行政書士事務所を宜しくお願いいたします^^

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