特定動物の飼養又は保管の許可について

木の枝で遊ぶ子熊

人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物として政令で定める動物のことを特定動物といいます。その動物が交雑することにより生じた動物も、特定動物に含まれます。

令和2年6月以降、愛玩目的(ペット)による特定動物の飼養又は保管をすることはできなくなってしまいましたが、動物園や試験研究など、特定の目的をもって特定動物の飼養又は保管を行う場合には、都道府県知事又は政令指定都市の長の許可を取得することにより、これを行うことができるものとされています。

そこで本稿では、特定の目的をもって特定動物の飼養又は保管を実施しようとされている皆さまに向けて、必要となる手続きや許可の基準について詳しく解説していきたいと思います。

特定動物とは

特定動物とは、人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物として政令により定められている動物のことをといいます。全種が脊椎動物であり、人に害を与える恐れのある生物であっても、サメやクラゲのよう水中でしか生きられない動物や、スズメバチ、サソリ又は毒グモ等のように哺乳類、鳥類及び爬虫類以外は特定動物とはみなされません。

特定動物の種類

動物の愛護及び管理に関する法律施行令及び特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律施行令では、特定生物を以下のとおり特定し、飼養や保管等について規制を設けています。

霊長目

アテリダエ科アロウアタ属(ホエザル属)全種
アテレス属(クモザル属)全種
ブラキュテレス属(ウーリークモザル属)全種
ラゴトリクス属(ウーリーモンキー属)全種
オレオナクス・フラヴィカウダ(ヘンディーウーリーモンキー)
おながざる科・てながざる科ケルコケブス属(マンガベイ属)全種
ケルコピテクス属(オナガザル属)全種
クロロケブス属全種
コロブス属全種
エリュトロケブス・パタス(パタスモンキー)
ロフォケブス属全種
マカカ属(マカク属)全種(特定外来生物であるタイワンザル、カニクイザル、アカゲザルを除く)
マンドリルルス属(マンドリル属)全種
ナサリス・ラルヴァトゥス(テングザル)
パピオ属(ヒヒ属)全種
ピリオコロブス属(アカコロブス属)全種
プレスビュティス属(リーフモンキー属)全種
プロコロブス・ヴェルス(オリーブコロブス)
ピュガトリクス属(ドゥクモンキー属)全種
リノピテクス属全種
センノピテクス属全種
シミアス・コンコロル(メンタウェーコバナテングザル)
テロピテクス・ゲラダ(ゲラダヒヒ)
トラキュピテクス属全種
てながざる科全種
ヒト科ゴリルラ属(ゴリラ属)全種
パン属(チンパンジー属)全種
ポンゴ属(オランウータン属)全種

食肉目

いぬ科カニス・アドゥストゥス(ヨコスジジャッカル)
カニス・アウレウス(キンイロジャッカル)
カニス・ラトランス(コヨーテ)
カニス・ルプス(オオカミ)のうちカニス・ルプス・ディンゴ(ディンゴ)及びカニス・ルプス・ファミリアリス(犬)以外のもの
カニス・メソメラス(セグロジャッカル)
カニス・スィメンスィス(アビシニアジャッカル)
クリュソキュオン・ブラキュウルス(タテガミオオカミ)
クオン・アルピヌス(ドール)リュカオン・ピクトゥス(リカオン)
くま科・ハイエナ科くま科全種
ハイエナ科全種
ねこ科アキノニュクス・ユバトゥス(チーター)
カラカル・カラカル(カラカル)
カトプマ・テンミンキイ(アジアゴールデンキャット)
フェリス・カウス(ジャングルキャット)
レオパルドゥス・パルダリス(オセロット)
レプタイルルス・セルヴァル(サーバル)
リュンクス属(オオヤマネコ属)全種
ネオフェリス・ネブロサ(ウンピョウ)
パンテラ属(ヒョウ属)全種
プリオナイルルス・ヴィヴェルリヌス(スナドリネコ)
プロフェリス・アウラタ(アフリカゴールデンキャット)
プマ属(ピューマ属)全種
ウンキア・ウンキア(ユキヒョウ)

長鼻目・奇蹄目・偶蹄目

ぞう科・さい科・かば科ぞう科全種
さい科全種
かば科全種
きりん科・うし科ギラファ・カメロパルダリス(キリン)
ビソン属(バイソン属)全種
スュンケルス・カフェル(アフリカスイギュウ)
ねこ科アキノニュクス・ユバトゥス(チーター)
カラカル・カラカル(カラカル)
カトプマ・テンミンキイ(アジアゴールデンキャット)
フェリス・カウス(ジャングルキャット)
レオパルドゥス・パルダリス(オセロット)
レプタイルルス・セルヴァル(サーバル)
リュンクス属(オオヤマネコ属)全種
ネオフェリス・ネブロサ(ウンピョウ)
パンテラ属(ヒョウ属)全種
プリオナイルルス・ヴィヴェルリヌス(スナドリネコ)
プロフェリス・アウラタ(アフリカゴールデンキャット)
プマ属(ピューマ属)全種
ウンキア・ウンキア(ユキヒョウ)

だちょう目

ひくいどり科ひくいどり科全般

たか目

コンドル科ギュンノギュプス・カリフォルニアヌス(カリフォルニアコンドル)
サルコランフス・パパ(トキイロコンドル)
ヴルトゥル・グリュフス(コンドル)
たか科アエギュピウス・モナクス(クロハゲワシ)
アクイラ・アウダクス(オナガイヌワシ)
アクイラ・クリュサエトス(イヌワシ)
アクイラ・ファスキアタ(ボネリークマタカ)
アクイラ・ニパレンスィス(ソウゲンワシ)
アクイラ・スピロガステル(モモジロクマタカ)
アクイラ・ヴェルレアウクスィイ(コシジロイヌワシ)
ギュパエトゥス・バルバトゥス(ヒゲワシ)
ギュプス・アフリカヌス(コシジロハゲワシ)
ギュプス・ルエペルリイ(マダラハゲワシ)
ハリアエエトゥス・アルビキルラ(オジロワシ)
ハリアエエトゥス・レウコケファルス(ハクトウワシ)
ハリアエエトゥス・ペラギクス(オオワシ)
ハリアエエトゥス・ヴォキフェル(サンショクウミワシ)
ハルピア・ハルピュヤ(オウギワシ)
ハルピュオプスィス・ノヴァエグイネアエ(パプアオウギワシ)
モルフヌス・グイアネンスィス(ヒメオウギワシ)
ニサエトゥス・ニパレンスィス(クマタカ)
ピテコファガ・イェフェリュイ(フィリピンワシ)
ポレマエトゥス・ベルリコスス(ゴマバラワシ)
ステファノアエトゥス・コロナトゥス(カンムリクマタカ)
トルゴス・トラケリオトス(ミミヒダハゲワシ)

かめ目

かみつきがめ科かみつきがめ全種(特定外来生物であるカミツキガメを除く)
どくとかげ科どくとかげ科全種
おおとかげ科ヴァラヌス・コモドエンスィス(コモドオオトカゲ)
ヴァラヌス・サルヴァドリイ(ハナブトオオトカゲ)
にしきへび科モレリア・アメティスティヌス(アメジストニシキヘビ)
モレリア・キングホルニ(オーストラリアヤブニシキヘビ)
ピュトン・モルルス(インドニシキヘビ)
ピュトン・レティクラトゥス(アミメニシキヘビ)
ピュトン・セバエ(アフリカニシキヘビ)
ボア科ボア・コンストリクトル(ボアコンストリクター)
エウネクテス・ムリヌス(オオアナコンダ)
なみへび科ディスフォリドゥス属(ブームスラング属)全種
ラブドフィス属(ヤマカガシ属)全種
タキュメニス属全種
テロトルニス属(アフリカツルヘビ属)全種
コブラ科・くさりへび科コブラ科全種
くさりへび科全種(特定外来生物であるタイワンハブを除く)

わに目

アリゲーター科全種
クロコダイル科全種
ガビアル科全種

特定動物の飼養・保管

すでに説明したように、特定動物の飼養又は保管は原則として禁止されています。ただし、以下のいずれかに該当する場合には、例外的に飼養又は保管を行うことが認められます。なお、愛玩(ペット)の目的をもって特定動物の飼養又は保管を行うことはできないためご注意ください。

  • 許可を受けて飼養又は保管をする場合
  • 診療施設において獣医師が診療のために特定動物の飼養又は保管をする場合
  • 動物園その他これに類する施設における展示
  • 試験研究又は生物学的製剤、食品若しくは飲料の製造の用
  • 生業の維持
  • 次に掲げる要件に該当する特定動物の個体の飼養・保管に係る許可の有効期間の満了又は許可に係る申請事項の変更の際現に許可を受けた者が飼養又は保管をしている個体に係る特定目的以外の目的
    • 動物愛護法(令和元年改正法)によりなおその効力を有することとされた改正前の規定による許可に係る特定動物
    • 動物愛護法施行令の規定による許可に係る特定動物
  • 許可を受けて特定動物の飼養又は保管を行う者が死亡した場合であって、死亡した日から60日を経過した後において相続人が行う個体の飼養又は保管
  • 上記のほか、動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止することその他公益上の必要があると認められる目的

特定動物の飼養又は保管の許可

先述した特定の目的で特定動物の飼養又は保管を行おうとする者は、特定飼養施設の所在地ごと特定動物の種類ごとに、特定動物の飼養又は保管のための施設(特定飼養施設)の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受ける必要があります。許可を受けようとする者は、以下の事項を記載した申請書を都道府県知事に提出します。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
  • 法人にあっては、役員の氏名及び住所
  • 特定動物の管理責任者
  • 特定動物の種類及び数
  • 飼養又は保管の目的
  • 特定飼養施設の所在地
  • 特定飼養施設の構造及び規模
  • 特定動物の飼養又は保管の方法
  • 特定動物の飼養又は保管が困難になった場合における措置に関する事項申請に係る特定動物の飼養又は保管を既に行っている場合における特定動物の数及び特定動物に係る措置の内容に係る情報

都道府県知事は、許可をする場合において、特定動物による人の生命、身体又は財産に対する侵害の防止のため必要があると認めるときは、その必要の限度において、その許可に条件を付することができます。

なお、許可の有効期間は、特定動物の種類に応じ、5年を超えない範囲内で都道府県知事が定めるものとされています。

変更の許可等

許可を受けた者(特定動物飼養者)は、規模の増大が延べ床面積の30%未満であるもの等軽微な変更を除き、特定動物の種類及び数、飼養又は保管の目的、特定飼養施設の所在地、特定飼養施設の構造及び規模、特定動物の飼養又は保管の方法、特定動物の飼養又は保管が困難になった場合における措置に関する事項を変更しようとするときは、都道府県知事の許可を受けなければならないものとされています。

特定動物飼養者は、軽微な変更があったとき、又は氏名若しくは名称及び住所並びに法人の代表者の氏名に変更があったときは、その日から30日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならないものとされています。

許可の基準

都道府県知事は、許可の申請が以下の基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならないものとされています。

  • 飼養又は保管の目的が上記の目的に適合するものであること
  • 特定飼養施設の構造及び規模が基準を満たしていること
  • 特定動物の飼養又は保管の方法が、人の生命、身体又は財産に対する侵害を防止する上で不適当と認められないこと
  • 特定動物の飼養又は保管が困難になった場合における措置が講じられていること
  • 欠格事由に該当しないこと

特定飼養施設の基準

特定飼養施設の構造及び規模は、以下の基準を満たすことが必要とされています。

  • 特定動物の種類に応じ、その逸走を防止できる構造及び強度であること
  • 申請に係る特定動物の取扱者以外の者が容易に当該特定動物に触れるおそれがない構造及び規模であること(動物の生態、生息環境等に関する情報の提供により、観覧者の動物に関する知識を深めることを目的として展示している特定動物であって、観覧者等の安全性が確保されているものとして都道府県知事が認めた場合を除く)
  • 特定動物の種類ごとに環境大臣が定める特定飼養施設の構造及び規模に関する基準の細目を満たしていること(動物の生態、生息環境等に関する情報の提供により、観覧者の動物に関する知識を深めることを目的として展示している特定動物であって、観覧者等の安全性が確保されているものとして都道府県知事が認めた場合を除く)

欠格事由

申請者が次のいずれかに該当する場合、許可を受けることはできません。

  • 動物愛護法又は動物愛護法に基づく処分に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 許可を取り消され、その処分のあった日から2年を経過しない者
  • 法人であって、その役員のうちに上記のいずれかに該当する者があるもの

このほか、特定動物の飼養又は保管の方法が、人の生命、身体又は財産に対する侵害を防止する上で不適当と認められないことや、 特定動物の飼養又は保管が困難になった場合における措置が、譲渡先又は譲渡先を探すための体制の確保、殺処分(譲渡先又は譲渡先を探すための体制の確保が困難な場合であって、自らの責任においてこれを行う場合に限る)のいずれかであることも、許可の基準とされています。

許可申請に必要な書類

  • 許可申請書
  • 登記事項証明書(法人)
  • 特定飼養施設の構造及び規模を示す図面
  • 特定飼養施設の写真並びに特定飼養施設の付近の見取図
  • 申請者(申請者が法人である場合にあっては、その法人及びその法人の役員)が欠格事由に該当しないことを説明する書類
  • 獣医師又は行政機関が発行したマイクロチップの識別番号に係る証明書(マイクロチップによる措置が講じられている場合)
  • 脚環の識別番号に係る証明書及び装着状況を撮影した写真(脚環による措置が講じられている場合)(鳥綱に属する動物に限る)
  • 特定動物の飼養又は保管に係る管理の体制を記載した書類(管理責任者以外に特定動物の飼養又は保管を行う者がいる場合に限る)
  • 特定飼養施設の保守点検に係る計画

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