伊丹市では旅館業や風俗営業を営業することができないって本当?伊丹市教育環境保全のための建築等の規制条例について

大阪国際空港(伊丹空港)

兵庫県伊丹市において、新たに旅館業や風俗営業を営もうとするときは、伊丹市教育環境保全のための建築等の規制条例(以下、条例)の厚い壁によって阻まれます。

弊所の所在する尼崎市とは隣接する市であることから、年に数件のお問い合わせをいただくものの、実際にこの条例の規制は厳しく、事実上伊丹市におけるこれらの新規営業許可取得はほぼ不可能に近い状況となっています。

そこで本稿では、この条例で定められている規制の内容や、特例として新規営業が認められるケース等について詳しく解説していきたいと思います。

規制の対象

伊丹市教育環境保全のための建築等の規制条例は、青少年の健全な育成を図るため、教育環境を阻害するおそれのある建築物の建築等を規制することにより、教育環境の保全に資することを目的として制定されています。

条例の規制対象となるのは、旅館業、風俗営業及び有害広告物です。旅館業とは宿泊料を受けて人を宿泊させる営業(旅館業法第2条第2項、第3項および第4項に規定するもの)、風俗営業とは風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)第2条第1項に規定するもの、有害広告物とは屋外広告物であって条例の目的を阻害するものを指します。

★旅館業の種別

旅館・ホテル営業施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの
簡易宿所営業宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの
下宿営業施設を設け、1か月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業

★風俗営業の種別

1号営業キャバレー、待合、料理店、カフェその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業キャバクラ、ラウンジ、ホストクラブ
2号営業喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計った営業所内の照度を10ルクス以下として営むもの低照度飲食店
3号営業喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5㎡以下である客席を設けて営むもの区画席飲食店
4号営業まあじゃん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業雀荘、ぱちんこ店
5号営業スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業ゲームセンター、アミューズメント施設

規制の内容

条例第3条では、旅館業又は風俗営業を目的とする建築物を建築(増築、改築および用途変更を含む)しようとする者(以下、建築主)について、あらかじめ市長に建築の同意を得なければならない旨を規定しています。

また、条例第8条では、建築主がこの同意を得ず旅館業又は風俗営業を目的とする建築物を建築する場合、市長は建築の中止を命ずることができることを規定しています。

え?たったそれだけ?

確かにこの部分にのみ着目すれば、市長からの同意を得さえすれば、新たに旅館業や風俗営業を営むことが可能であるかのように読み取れますし、実際そのとおり、市長の同意さえ得ることができれば旅館業や風俗営業を新たに営業することは可能です。

何や、簡単やん♪

いやいや、それほど簡単に事は運びません。何せこの条例における規制の肝は、後述するとおり、市長から同意を得ることの難しさにこそあるからです。

市長は、条例第3条の規定に基づき建築の同意を求められた場合において、その位置が規制区域内にあるときは、条例の目的に反しないと認められる場合を除き、建築の同意をしないものとされています。つまり、規制区域内に営業所を設ける場合は、いかに市長といえど自由に同意を与えることはできません。

じゃあ規制区域外で営業すればええやん。

誰しもがこのように考えるでしょうし理屈は合っています。確かに規制区域外であれば市長から同意を得ることは可能です。これ以上あまりもったいぶらずに、規制区域に指定されている場所について一緒に確認していくことにしましょう。

規制区域

条例において定められている旅館業又は風俗営業を目的とする建築物を建築することができない区域は以下のとおりです。

  • 教育文化施設、公園、児童遊園地または児童福祉施設等の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む)の周囲200mの区域内
  • 通学路の両側それぞれ20mの区域内
  • その他市長が教育環境の保全のため必要と認める場所
教育文化施設学校教育法第1条に規定する学校および同法第134条第1項に規定する各種学校ならびに公民館、図書館、博物館、文化会館その他これらに類する集会の用に供する公の施設
公園、児童遊園地公園および児童遊園地
児童福祉施設等児童福祉法第7条に規定する児童福祉施設その他社会福祉施設
通学路幼児、児童および生徒が通園通学のために、平常登下校園している道路で学校園長が通園通学路と定めているもの

伊丹市の地図を確認すれば、この規制区域の網をかいくぐることが、いかに不可能に近いことであるのかをご理解いただけるのではないかと思います。

それでは規制区域内において市長の同意を得ることが全くできないのかと言えば必ずしもそうではありません。前述した条例の規定には、「条例の目的に反しないと認められる場合」について規制対象から除外することが明記されており、別途この特例に対する適用基準が設けられています。

★有害広告物に対する規制

市長の同意に関する規定は旅館業および風俗営業に関するものですが、この規制区域内にある有害広告物の広告主または管理者について、市長はその広告内容の変更もしくは撤去を命ずることができるものとする規定も設けられています。

商業地域における特例

営業所が都市計画法上の商業地域に該当する場合、それぞれ一定の要件を満たした上で手続きを経ることにより、規制区域内における旅館業又は風俗営業について、市長の同意を得ることができるものとされています。

この特例に該当する場合又はその他必要があると認めるときは、市長は伊丹市教育環境審査会(以下、審査会)に対して諮問(意見の聴取)を行います。

なお、市長の同意はあくまでも市長の任意の裁量によるものであり、特例に該当するからといって必ずしも同意を得ることができる訳ではありません。

★旅館業の要件

  • ラブホテルは勿論、ラブホテルらしい疑惑を市民から持たれないようその趣旨を徹底してホテル経営を行うこと
  • 善良な風俗と清浄な風俗環境を保持し、特に青少年の健全な育成に必要な教育環境の保全には積極的に取り組み、必要な対策を実践すること
  • 営業時間中、自由に出入りすることのできる玄関を有すること
  • 自由に利用することのできるロビー、応接室、談話室等の施設を設けること
  • 客との面接を行うフロント、玄関帳場その他これらに類する施設等は1か所とし、その施設等の位置はロビー等と接して設置すること
  • 客との面接はオープン形式(相互に上半身以上での面接が可能な形式)で行うものとすること
  • フロント、玄関帳場その他これらに類する施設より各客室に通じる共用の廊下、階段、昇降機等の施設は宿泊又は休憩のために客室を利用するものが通常使用する構造のものとすること
  • 駐車場からは直接客室に入室できない構造とすること
  • 会議、催物、宴会等に使用することのできる会議室、集会室又は大広間(宴会場)等の施設を設けること
  • 食堂、レストラン又は喫茶室及びこれらに付随する厨房、配膳室等の施設を設けること
  • 客室の床、天井又は壁等には横臥している人の姿態を映すために設けられた鏡その他専ら異性を同伴する客に応ずるための設備を設けないこと
  • 客室の窓は採光を充分取れるもので、室内に面する部分に装飾等を施さないものとすること
  • 浴室、シャワー場の内部が客室から見通せない構造のものとすること
  • 客室に特殊構造ベッド(振動・回転・ローリングベッド等を含む)を用いないものとすること
  • 性的好奇心をそそる写真、本、フィルム、ビデオテープ又はビデオ装置その他これらに類する物品を備えないこととすること
  • 駐車施設の内部を外部から通常見通すことのできない構造等としないものとすること
  • 屋外に設置する看板、広告板、広告塔、ネオンサイン等の表示方法は周囲の環境に調和した形状、面積、色彩及び意匠となる設備とすること
  • 青少年の健全育成及び付近の住居の環境を損なわない素朴な外観とすること

なお、既に旅館業を営む者が行う既設旅館の増改築については、既に旅館の用に供して営業を営んでいる現実を考慮し、適用区域については、建築物が存する位置をもって充てるものとされています。

★風俗営業の要件

  • 射幸心をそそることなく、社交と憩いの場の提供であることを十分認識し、経営を行うこと
  • 善良な風俗と清浄な風俗環境を保持し、特に青少年の健全な育成に必要な教育環境の保全には積極的に取り組み、必要な対策を実践すること

★近隣商業地域における特例

近隣商業地域内で現に営業しており、同敷地又はその隣接地において、公共事業を原因として改築等を行い、再び継続して営業を行う場合は、その規模が改築等を行う前と同程度であり、かつ、従前の営業において周辺の教育環境を阻害していなかったと認められ、営業の再開によっても教育環境を阻害しないと見込まれるときも、この特例が適用されます。

★審査会

審査会の委員は、委員5人以内で組織し、学識経験者、学校園を代表する者、市長が特に必要と認める者のうちから市長が委嘱します。審査会は、委員の過半数が出席しなければ会議を開くことができず、その議事は、会議に出席した委員および臨時委員の過半数をもって決し、可否同数のときは会長の決するところによります。

★意見の聴取

市長が審査会に諮問する場合は、意見の聴取を行おうとする日の7日前までに意見の聴取を行う事項、期日および場所を告示した上で、あらかじめ建築物の建築に利害関係を有する者の出席を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならないものとされています。

同意の申請

建築主が建築の同意を求めようとするときは、旅館風俗営業建築同意申請書を市長に提出して申請を行います。市長は申請書を受理した日から60日以内に同意の可否を決定し、同意申請結果通知書により通知を行います。

この申請は、ある程度旅館業や風俗営業の本申請の目処が立った状態で行う必要があり、また、具体的な図面の提出を求められるなど、添付書類のボリュームも膨大になりがちです。このため他地域における同申請よりも、許可取得までの必要期間を1〜2か月以上長めに見積もる必要があります。

さらに賃貸物件での営業を目指すのであれば、許可が下りるまでの間に営業することができない状態であっても家賃を支払い続けなければならず、そもそも市長の同意を得ることができなければ、せっかく押さえた物件を使用することができないというリスクを背負うことになります。

かつて伊丹市内においてぱちんこ店を建築しようとした建築主が、市長の行った不同意処分の取消しを求めて訴え出た裁判がありましたが、この裁判では被告となった市長が全面的に勝訴しています。(神戸地方裁判所、昭和61年(行ウ)31号判決)

それでもなお伊丹市において新たに旅館業や風俗営業を始めようとする際は、このようなリスクやデメリットもしっかりと踏まえ、専門家にも相談した上でしっかりと計画を進めるようにしましょう。

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