宅地建物取引業免許の申請方法について
不動産(宅地建物)の取引は一般的には人生で最も高額な取引となることも多く、その取引については法令で厳しく規制されています。このため不動産の取引を取り扱う宅地建物取引業を営むためには、宅地建物取引業免許を受ける必要があります。
建設業や産業廃棄物処理業等で運用されている「許可制」ではなく、酒類販売業等で採用されている「免許制」であることから、建設業等の「許可」よりも一段高いハードルが設定されているものと考えることもできます。
そこで本稿では、宅地建物取引業免許の取得を検討する皆さまに向けて、宅地建物取引業を営むために必要となる免許申請及び手続きの方法について詳しく解説していきたいと思います。
目 次
宅地建物取引業免許
宅地建物取引業(以下、宅建業)とは、宅地もしくは建物(建物の一部を含む)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為を業として行うものをいいます。このうち自己所有の物件を賃貸する行為は業として行うか否かにかかわらず宅建業には該当しません。
なお、「業として」とは、不特定多数の人を相手方として、反復または継続して取引を行うこととされていることから、一度限りの売買もしくは交換については宅建業には該当しないことになります。
区分 | 自己物件 | 他人の物件の代理 | 他人の物件の媒介 |
---|---|---|---|
売買 | 該当 | 該当 | 該当 |
交換 | 該当 | 該当 | 該当 |
賃借 | 非該当 | 該当 | 該当 |
宅地建物取引業を営もうとする者は、個人であるか法人であるかを問わず、以下の区分に応じて、都道府県知事もしくは国土交通大臣に対して申請を行い、その免許を受ける必要があります。
1つの都道府県内に事務所を持つ場合 | 都道府県知事免許 |
2つ以上の都道府県に事務所を持つ場合は国 | 国土交通大臣免許 |
上記の区分はあくまでも事務所の所在地に基づく区分であるため、受ける免許が知事免許であったとしても、全国どの都道府県においても宅建業者としての取引を行うことが可能です。
なお、宅建業の免許の有効期間は5年間とされており、有効期間満了後も引き続き宅建業を営もうとする者は、その有効期間が満了する日の90日前から30日前までに免許の更新申請を行う必要があります。
宅地建物取引業免許の基準
宅地建物取引業の免許を受けるためには、大まかに以下の3点について基準を満たす必要があります。
- 「欠格事由」に該当しないこと
- 「事務所の形態」を整えていること
- 「専任の宅地建物取引士」を設置していること
欠格事由
申請者が以下のいずれかの事由に該当する場合は、宅地建物取引業者としての適格性を欠く者として免許を受けることはできません。
「5年間」免許を受けられない場合 | 免許不正取得、情状が特に重い不正不当行為または業務停止処分違反をして免許を取り消された場合 |
免許不正取得、情状が特に重い不正不当行為または業務停止処分違反をした疑いがあるとして聴聞の公示をされた後、廃業等の届出を行った場合 | |
禁錮以上の刑又は宅地建物取引業法違反等により罰金の刑に処せられた場合 | |
免許の申請前5年以内に宅地建物取引業に関して不正又は著しく不当な行為をした場合 |
免許を受けられない場合 | 成年被後見人、被保佐人または破産者で復権を得ない者 |
宅地建物取引業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな場合 | |
事務所に専任の取引士を設置していない場合 | |
事務所の基準
事務所とは、本店、支店その他継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所であって宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くものをいいます。
事務所とするためには、宅地建物取引業を継続的に行える機能をもち、事務所として認識される程度の独立した形態を備えていることが条件となることから、戸建住宅や集合住宅の一部を事務所として使用すること、シェアオフィスやレンタルスペース、又は仮設建築物や移動の容易な施設等を事務所とすることは原則として認められていません。
専任の宅地建物取引士の設置
宅建業の事務所においては、業務に従事する者5名につき1名以上の割合で専任の宅地建物取引士(以下、宅建士)を設置し、重要事項の説明等の職務にあたらせる必要があります。
また、専任の宅地建物取引士の数が不足した場合は、不足した日から2週間以内に補充する等必要な措置を取る必要があります。
事務所に設置する宅建士は、事務所ごとに常勤であり(常勤性)、かつ専ら宅建業の業務に従事する者(専従性)である必要があります。
★専任に当たらない例
- 他の法人の代表取締役、代表者又は常勤役員を兼任する場合
- 会社員や公務員のように他の職業に従事する場合
- 個人事業を営むなど社会通念上の営業時間に、事務所に勤務することが不可能な状態にある場合
- 通常の通勤が不可能な場所に住んでいる場合
(※)申請する会社の監査役は専任の宅地建物取引士に就任することは出来ません。
免許取得までの流れ
免許基準を満たしていることを確認した後は、必要となる書類を作成、収集し、申請に進みます。書類に不備がなければ申請は受理され、申請内容についての審査が行われます。
審査が完了すると免許庁から免許通知が届きますが、①営業保証金の供託及び届出、又は②保証協会への加入のいずれかの手続きが完了するまでは免許証は交付されず、営業を開始することはできません。
なお、ご自身での申請を検討する方については、免許申請の前に担当窓口と協議することをお薦めしています。
申請書類の準備 | |
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免許申請 | |
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審査 | ➡ |
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営業保証金の供託 | 保証協会への加入 |
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届出 | ⬇ |
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免許証の交付 | |
★知事免許の相談窓口
★大臣免許の相談窓口
免許の申請方法
免許申請は下段の必要書類を提出することにより行います。知事免許であれば都道府県知事、大臣免許であれば国土交通大臣が免許権者となり、申請書の宛先もこの区分に応じて以下のとおりとなりますが、書類の提出先はいずれの場合も主たる事務所を管轄する都道府県庁である点はご注意ください。
区分 | 申請書宛先 | 提出先 | 提出部数 | 標準処理期間 |
---|---|---|---|---|
知事免許 | 都道府県知事 | 主たる事務所を管轄する都道府県庁 | 正副各1部 | 30〜40日 |
大臣免許 | 地方整備局長等 | 主たる事務所を管轄する都道府県庁 | 都道府県の定める部数 | 100日程度 |
免許申請の際は登録免許税を納付する必要がありますが、免許区分及び新規・更新の別により納付額は以下のとおりとなります。
区分 | 登録免許税(新規) | 登録免許税(更新) |
---|---|---|
知事免許 | 33,000円 | 33,000円 |
大臣免許 | 90,000円 | 33,000円 |
免許申請に必要となる書類
- 免許申請書(第1面~第5面)
- 宅地建物取引業経歴書(第1面、第2面)
- 誓約書
- 専任の取引士設置証明書
- 相談役、顧問、100 分の5以上の株式を有する株主(又は100 分の5以上の額に相当する出資をしている者)の一覧表【法人申請のみ】
- 事務所を使用する権原に関する書面略歴書資産に関する調書【個人申請のみ】
- 宅地建物取引業に従事する者の名簿
- 身分証明書
- 登記されていないことの証明書
- 代表者の住民票【個人申請のみ】
- 法人の履歴事項全部証明書【法人申請のみ】
- 貸借対照表及び損益計算書(直前1年分)【法人申請のみ】
- 納税証明書
- 事務所付近の地図(案内図)
- 事務所の写真
営業保証金の供託
営業保証金とは、宅建業者と消費者との間でトラブルが生ずることに備え、開業前から一定の資金をプールさせるために設けられた制度です。
営業保証金は「供託」という方法が採用されており、免許通知が申請者に届いた後、免許日から3ヶ月以内に、本店の所在地を管轄する供託所に対して事務所の区分及び数に応じて、以下の営業保証金を供託することになります。
主たる事務所(本店) | 1000万円 |
従たる事務所(支店等) | 500万円/1店 |
免許申請の手続きとしては、営業保証金の供託が完了し、営業保証金供託済届出書(2通)を免許通知の原本及び写し(1通)と併せて都道府県に届け出ることによりようやく免許証が交付されます。このため「免許日から3ヶ月以内」という期日を経過しても供託がなされていない場合には、後述する保証協会への加入がない限り、免許そのものが取り消されることになります。
保証協会への加入
宅地建物取引業における損害金は高額になるケースが多いことから、営業保証金も最低1,000万円と高額です。そこで法令では、弁済業務保証金分担金を供託して宅地建物取引業者の団体である宅地建物取引業保証協会(以下、保証協会)に加入すれば、営業保証金を自ら供託することが免除されるという「弁済業務保証金分担金制度」が設けられています。
現在保証協会には、(社)全国宅地建物取引業保証協会及び(社)全国不動産保証協会の2団体があり、このいずれかの団体を選択し、事務所区分に応じて以下の額を弁済業務保証金分担金として支払って加入すれば営業保証金は免除されることになります。
主たる事務所(本店) | 60万円 |
従たる事務所(支店等) | 30万円/1店 |
その他の手続き
免許証の受領後、専任の宅建士となった者は、宅地建物取引主任者証、入社証明書及び本人の印鑑を持参し、勤務先(事業者名)及び免許証番号を、資格登録をしている都道府県知事に対して届け出る必要があります。
また、宅建業者となった者は、公衆の見やすい場所に、縦30cm横35cm以上の大きさで、宅地建物取引業者である旨の標識(業者票及び報酬額表)を掲示する必要があります。
宅建業免許申請サポート
弊所では、宅建業免許申請を代行するサポートを承(うけたまわ)っています。面倒な書類の作成から、関連機関との調整、申請の代行及び宅建業保証協会への加入手続きの代行に至るまで、しっかりとフルサポートいたします。下記は市場価格を反映した上で当初から割引して提示する報酬額ですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。
近年は扱いやすい見積もりサイトが台頭していますが、プロ側には厳しい制約や極めて高い手数料が設定されているため、対応に柔軟性がなく、また経験の浅いプロが多く登録していることからもお薦めすることはできません。
無駄なコストは時間も料金もカットするのが最良です。宅建業免許申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
個人新規申請(知事) | 99,000円~ |
法人新規申請(知事) | 110,000円~ |
新規申請(大臣許可) | 165,000円~ |
個人更新申請(知事) | 55,000円~ |
法人更新申請(知事) | 77,000円~ |
更新申請(大臣) | 110,000円~ |
各種変更届 | 22,000円~ |
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