大阪市における特区民泊の特定認定の基準について

大阪城

国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(以下、特区民泊)とは、外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるとともに、施設の使用方法に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業として政令で定める要件に該当する事業です。

近畿圏では、大阪府、大阪市、八尾市及び寝屋川市が国家戦略特区の区域として指定されており、この制度による取組みが実施されています。コロナ禍では需要も供給も落ち込んだ事業形態ですが、最近は弊所においてもお問い合わせの多いコンテンツのひとつとなっており、特に大阪市内における民泊に関するご相談が急増しています。

他方、特区民泊をはじめようとする際には市長による認定(特定認定)が必要とされており、認定を受けるための手続きはそれなりに煩(わずら)わしい作業を強いられます。また、そもそも認定の基準に満たない物件については、認定を受けることができません。

そこで本稿では、これから大阪市において特区民泊事業をはじめようと検討する皆さまに向けて、特区民泊を営むために特定認定の基準についてについて分かりやすく解説していきたいと思います。

営業可能地域

特区民泊は、建築基準法第48条により、原則として「ホテル・旅館」の建築が可能な用途地域(第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域及び第1種住居地域)においてのみ営業することができます。このうち第1種住居地域にあっては、棟あたりのその用途に供する部分の床面積の合計が3,000㎡以下であることという制限があります。一方で、旅館業でよく問題となる「近隣に公園や学校等が存在すること」による規定はありません。

また、外国人滞在施設経営事業を実施することが可能な用途地域と実施することができない用途地域とにまたがる建築物については、実施可能な用途地域の面積が、その敷地面積の過半である場合は実施することができます。

なお、諸法令及び都市計画により例外的な制限を受ける場合がある点については十分にご注意ください。

実施予定施設が、都市計画法上のいずれの用途地域にあたるかについては、マップナビおおさか(下記リンク先)にてご確認ください。

特定認定の要件

特定認定を受けるためには、営業可能地区内に設置する施設であって、以下の要件をすべて満たすものである必要があります。

  • 事業の用に供する施設の所在地が大阪市内にあること
  • 施設を使用させる期間が(2泊)3日から(9泊)10日までの範囲内において施設の所在地を管轄する都道府県(保健所設置市又は特別区の区域にある場合にあっては保健所設置市又は特別区)の条例で定める期間以上であること
  • 施設が構造設備基準をみたすこと
  • 施設の使用の開始時に清潔な居室が提供されること
  • 施設の使用方法に関する外国語を用いた案内、緊急時における外国語を用いた情報提供その他の外国人旅客の滞在に必要な役務が提供されること
  • 施設、事業者の事務所及び事業者から滞在者名簿の備付けに係る事務を受託した者の事務所に滞在者名簿が備えられ、これに滞在者の氏名、住所、職業並びに滞在者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは国籍及び旅券番号が記載されること
  • 特定認定の申請前に、施設の周辺地域の住民に対し、施設が特区民泊の用に供されるものであることについて、適切な説明が行われていること
  • 施設の周辺地域の住民からの苦情及び問合せについて、適切かつ迅速に処理が行われること
  • 事業の一部が旅館業に該当するものであること
★滞在者名簿

滞在者名簿には、滞在者の氏名、住所、職業並びに滞在者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは国籍及び旅券番号を記載し、その作成の日から3年間保存することが義務付けられています。

欠格事由

上記の要件をすべて満たす施設であっても、申請者について以下のいずれかの事由があるときは、特区民泊運営の適格性を欠く者として、特定認定を受けることができません。

  1. 精神の機能の障害により国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業を的確に遂行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
  2. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  3. 特定認定を取り消され、その取消しの日から起算して3年を経過しない者(特定認定を取り消された者が法人である場合にあっては、当該取消しの日前30日以内にその法人の役員であった者で当該取消しの日から起算して3年を経過しないものを含む)
  4. 禁錮以上の刑に処せられ、又は国家戦略特別区域法若しくは旅館業法の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過しない者
  5. 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から起算して5年を経過しない者
  6. 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合にあっては、その役員を含む)が上記のいずれかに該当するもの
  7. 法人であって、その業務を行う役員のうちに1から5までのいずれかに該当する者があるもの
  8. 暴力団員等がその事業活動を支配する者

構造設備基準

大阪市における特区民泊については、施設の構造や設備について以下のような基準が定められており、これらすべての基準に適合させることが求められています。

施設全般出入口及び窓は、鍵をかけることができるものであること
適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備を有すること
台所、浴室、便所及び洗面設備を有すること
寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理のために必要な器具又は設備及び清掃のために必要な器具を有すること
居室居室の床面積は、壁心で25㎡以上(少数点の切り上げや切り下げは考慮しない)であること(風呂、トイレ、台所、クローゼットを含み、ベランダは含まない)(1人当たりの床面積の目安として、風呂、トイレ、台所、クローゼットを除き3.3㎡以上あることが望ましい)
居室と他の居室、廊下等との境は、壁造りであり、天井は原則として隙間がなく、平滑で清掃が容易に行える構造であること
換気設備外気に面して開放することのできる換気口を設けるなど自然換気設備により衛生的な空気環境を十分に確保するか、または、内部の汚染空気の排除、温度、湿度の調整等を行うため適当な機械換気設備(空気を浄化し、その流量を調節して供給・排出をすることができる設備)若しくは空気調和設備(空気を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供 給・排出をすることができる設備)を有するものであること
外気取入口は、汚染された空気を取り入れることができないように適当な位置に設けるか、外気の清浄度が不十分なときは、空気を浄化する適当な設備を設けること
送風機、風道の要所、給気口、排気口その他の重要な部分は、保守点検、整備が容易にできる構造であること
給気口及び排気口(排気筒の頂部を含む)には、雨水又は昆虫、鳥、ほこりその他衛生上有害なものの侵入を防止するための設備を備え付けること
浴室浴室は、湯気を適切に排出でき、また、床面等の底面は、排水が容易に行えるようおおむね100分の1.5以上の適当な勾配を付け、すき間がなく、清掃が容易に行える構造を有することが望ましい
やけど防止のために、放熱管及び給配湯は、露出せず、直接身体に接触させない設備が望ましい
洗面所洗面設備は、不浸透性及び耐熱性の材料を用いて作られ、清掃が容易に行え、かつ、流水受槽式の構造であって、十分な大きさ(1給水栓当たり幅員0.6m、奥行0.5m以上) を有するものが望ましい
便所手洗設備は、洗面所に係る基準に準じて設けること
便所は、悪臭を排除するため適当な換気設備を備え付けることが望ましい
台所台所には調理用の台を有するとともに、台所及び洗面設備は別に設け、水道水その他飲用に適する水を供給することができる流水設備を設けること
調理器具調理器具は、電子レンジ、コンロなど加温できるものであること
寝具布団、枕、マットレスその他これに類するものは、適当な大きさを有し、容易に破れない材質の布で覆われているものが望ましい
清掃機具清掃機具として、掃除機、雑巾、ごみ箱を有していること

マンション又は戸建てで、居住しながら、一部の部屋のみを滞在施設として認定を受けることの可否については、居室と併せて、風呂、トイレ、台所を賃貸借により滞在者に独占的に使用させることが必要であり、施設の持ち主が居住しながら、ホームステイのような形態で一部の部屋のみを貸し出すような営業はできません。

また、居室と併せて、風呂、トイレ、台所を賃貸借により滞在者も独占的に使用させることが必要であることから、戸建一棟、あるいは居室全体を1つの契約で貸すことは可能ですが、マンションや戸建ての建物について、風呂、トイレ、台所を共用にして、個室を別々の契約で貸し出すような営業も認められていません。

(担当課)大阪市保健所環境衛生監視課(旅館業指導グループ)

〒541-0055 大阪市中央区船場中央1丁目2番1-B119号(船場センタービル1号館地下1階)

Tel:06-6647-0692

関係法令の適合に関する事項

民泊を運営するためには、国家戦略特別区域法や旅館業法といった民泊を直接的に規制する法令や条例のほか、建築基準法や消防法といった関連法令による基準にもすべて適合させる必要があります。

建築基準法に基づく用途について

特区民泊の施設については、建築基準法上「住宅」、「長屋」、「共同住宅」又は「寄宿舎」として扱うこととされているため、これらの用途へ適合するように留意してください。また、3日から6日までの滞在期間で住宅を利用して特区民泊事業を行う場合は、以下の項目等(例示)について基準に適合させる必要があるため、事前に建築士等に相談するようにしてください。(基準に適合しない場合は建築基準法上の用途を「旅館」として法適合する必要があります。)

  • 非常用照明装置の設置
  • 警報器の設置等
  • 滞在者が利用する部分の階(耐火建築物を除き3階以上の階に、滞在者が利用する部分を設けないこと)
  • 滞在者が利用する部分の床面積

(担当課)大阪市計画調整局建築指導部建築確認課

〒530-8201 大阪市北区中之島1丁目3番20号(大阪市役所本庁3階)

Tel:06-6208-9291

消防法令の適用について

大阪市内において特区民泊事業の用に供する施設の消防法令上の用途は、消防法施行令別表第1(5)イ「旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの」とされているため、この用途に適合した消防設備の設置、防炎物品の使用及び防火管理者の選任等が義務付けられることがあります。また、従前にマンションや一般住宅であった建物の全部又は一部を特区民泊の施設として使用する場合は、建物全体の消防法令の規制が変わることがあるため、事前に所轄消防署(予防担当)に相談するようにしてください。

★主な消防設備の規制について

消防法施行令別表第1(5)イの用途となる外国人滞在施設は建物の延面積にかかわらず、その部分に自動火災報知設備(住宅部分に設置されている住宅用火災警報器とは異なる設備)の設置が必要になります。また、その他の消防設備も規模等に応じて新たに必要になることがあります。

★防火管理体制について

特区民泊施設を含む建物全体の収容人員が30人以上の場合、防火管理者の選任・届出が必要になります。また、防火管理者はその管理について権原を有する者(管理権原者)が選任し届け出ることとなっているため、管理権原者が複数ある場合、複数の防火管理者が選任されることになります。さらに一定の要件に当てはまる建物については、各管理権原者は協議して統括防火管理者を選任し、届け出る必要があります。

消防法令適合通知書について

特定認定の申請書類には、所轄消防署(予防担当)で交付される消防法令適合通知書の写しを添付する必要があります。交付申請後、消防職員が立入検査を実施し、消防法令に適合していることが確認された場合に交付されます。交付申請の際は施設を管轄する消防署の予防担当に対し、以下の書類を提出することにより行います。(交付申請に係る費用は無料)

  • 交付申請書
  • 特定認定の申請書の写し
  • 認定に係る部分の建築図面の写し
  • 付近見取図
  • その他必要とされる書類

★防火対象物使用開始(変更)届出書

特定認定申請の添付書類ではありませんが、建物の用途が変わるときは、変更の7日前までにその旨を所轄消防署(予防担当)に届け出る必要があります。

新たに防火管理者の選任がある等、防火対象物使用開始(変更)届出書の他にも届出が必要となる場合があります。また、届出時期や必要添付書類等については届出の種類ごとに異なるので事前に所轄消防署(予防担当)に確認するようにしましょう。

施設所在地の消防署の所在地や電話番号については、リンク先にてご確認ください

廃棄物について

施設の滞在者が出すごみは、施設を運営する事業者(認定事業者)が排出責任を有する「事業系ごみ」となるため、事業者自身が収集するか、事業者において廃棄物処理業許可業者に収集を依頼する必要があります。産業廃棄物の処理委託を行う際には、「収集・運搬業者」「処分業者」のそれぞれと書面による契約を締結し、その業者名について、環境局に報告する必要があります。

これらの報告は、特定認定の申請要件となっているため、特定認定の申請前までに必ず行うようにしましょう。

産業廃棄物担当課)大阪市環境局環境管理部環境管理課(産業廃棄物規制グループ)

〒545-8550 大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目5番1号あべのルシアス13階

Tel:06-6630-3284

(事業系ごみ担当課)大阪市環境局事業部一般廃棄物指導課(一般廃棄物指導グループ)

〒545-8550 大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目5番1号あべのルシアス13階

Tel:06-6630-3271

特区民泊事業認定申請サポート

弊所では、大阪市、八尾市、寝屋川市を含む大阪府を中心に国家戦略特区全域にわたり、特区民泊事業認定申請手続きの代行を承(うけたまわ)っております。面倒な書類の作成から、関連機関との調整並びに申請及び立入調査の同行に至るまで、しっかりとフルサポートいたします。下記は市場価格を反映して設定した報酬額ですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。特区民泊事業認定申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

新規認定申請198,000円~
変更認定申請99,000円~
変更届55,000円~
※税込み
★注意点

弊所は先払い原則、不許可の場合は書類取得等に要した実費を除く全額返還のお約束で業務を請け負っております。最近は支払いが数ヶ月にわたって滞る事案もあり、相応の措置を採らざるを得ないケースも発生しております。大変恐縮ではありますが、この点のみご了承いただければ幸いです。

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