景観法16条の届出│景観計画区域内における規制と行為の届出について分かりやすく解説

山と田園の風景

景観行政団体(後述)が定める一定の土地の区域における良好な景観の形成に関する計画を「景観計画」といい、この計画において定められた区域を「景観計画区域」と呼んでいます。

景観計画区域内において一定の行為をしようとする者は、あらかじめ景観行政団体の長に対して一定の事項を届け出る必要がありますが、この手続きは意外に見落とされやすく、あるいは軽視されがちな手続きであるように思います。

そこで本稿では、景観法において定められている規制の内容と、求められる手続きについて詳しく解説していきたいと思います。

なお、自治体ごとに規制内容や手続方法が異なることも多いため、実際に手続きを行う際は、併せて各自治体の条例の内容も確認するようにしてください。

景観行政団体とは

景観行政団体とは、景観法に基づいて景観計画を定める等の景観行政を司る行政機構を指し、区域ごとに以下の地方公共団体が担当します。

指定都市の区域指定都市
中核市中核市
その他の区域都道府県
指定都市及び中核市以外の市町村であって、景観行政事務を処理することを都道府県知事と協議し、同意を得た市町村の区域当該市町村

景観法16条の届出

景観計画区域内において、以下の行為をしようとする者は、あらかじめ景観行政団体の長に対し、行為の種類、場所、設計(又は施行)方法、着手予定日、行為をしようとする者の氏名及び住所(法人その他の団体にあっては、その名称及び主たる事務所の所在地)並びに行為の完了予定日を届け出る必要があります。

  • 建築物の新築、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更(以下、建築等)
  • 工作物の新設、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更(以下、建設等)
  • 都市計画法に規定する開発行為
  • 地下に設ける建築物の建築等又は工作物の建設等
  • 仮設の工作物の建設等
  • 除伐、間伐、整枝その他木竹の保育のために通常行われる木竹の伐採
  • 枯損した木竹又は危険な木竹の伐採
  • 自家の生活の用に充てるために必要な木竹の伐採
  • 仮植した木竹の伐採
  • 測量、実地調査又は施設の保守の支障となる木竹の伐採
  • 法令又はこれに基づく処分による義務の履行として行う行為
  • 建築物の存する敷地内で行う行為であり、かつ、次のいずれにも該当しないもの
    • 建築物の建築等
    • 工作物(敷地に存する建築物に附属する物干場、道路(私道を除く)から容易に望見されることのない物干場その他の工作物及び消火設備を除く)の建設等
    • 木竹の伐採
    • 屋外における土石、廃棄物、再生資源その他の物件の堆たい積(1.5m以下の高さのものを除く)
    • 特定照明
  • 農業、林業又は漁業を営むために行う行為であり、かつ、次のいずれにも該当しないもの
    • 建築物の建築等
    • 高さが1.5mを超える貯水槽、飼料貯蔵タンクその他これらに類する工作物の建設等
    • 用排水施設(幅員が2m以下の用排水路を除く)又は幅員が2mを超える農道若しくは林道の設置
    • 土地の開墾
    • 森林の皆伐
    • 水面の埋立て又は干拓
  • その他良好な景観の形成に支障を及ぼすおそれのある行為として景観計画に従い景観行政団体の条例で定める行為

届出に必要となる書類

届出にあたっては、以下の書類を提出する必要がありますが、景観行政団体の長により、一部の書類の添付を省略されることがあります。

  • 届出書
  • 建築物又は工作物の敷地の位置及び当該敷地の周辺の状況を表示する図面で縮尺2,500分の1以上のもの(建築物の建築等又は工作物の建設等の場合)
  • 敷地及び敷地周辺の状況を示す写真(建築物の建築等又は工作物の建設等の場合)
  • 敷地内における建築物又は工作物の位置を表示する図面で縮尺100分の1以上のもの(建築物の建築等又は工作物の建設等の場合)
  • 建築物又は工作物の彩色が施された2面以上の立面図で縮尺50分の1以上のもの(建築物の建築等又は工作物の建設等の場合)
  • 開発行為を行う土地の区域並びに区域内及び区域周辺の状況を表示する図面で縮尺2,500の1以上のもの(都市計画法上の開発行為の場合)
  • 開発行為を行う土地の区域及び当該区域の周辺の状況を示す写真(都市計画法上の開発行為の場合)
  • 設計図又は施行方法を明らかにする図面で縮尺100分の1以上のもの(都市計画法上の開発行為の場合)
  • その他参考となるべき事項を記載した図書
  • その他添付が必要なものとして景観行政団体の条例で定める図書

なお、行為の規模が大きいため上記の縮尺の図面によっては適切に表示できない場合には、行為の規模に応じて、景観行政団体の長が適切と認める縮尺の図面をもってこれらの図面に替えることができます。

変更の届出

届出をした者は、その届け出た事項のうち、設計又は施行方法であってその変更により届出に係る行為が適用除外となる行為(後述)に該当することとなるもの以外のものを変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を景観行政団体の長に届け出る必要があります。

景観行政団体の長による勧告

景観行政団体の長は、届出(変更の届出含む)があった場合において、その届出に係る行為が景観計画に定められた制限に適合しないと認めるときは、届出のあった日から30日以内に、その届出をした者に対し、届出に係る行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することができます。

適用除外となる行為

以下の行為については、上記の規定は適用されないため、届出も必要ありません。

  • 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
  • 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
  • 景観重要建造物について、許可を受けて行う行為
  • 景観重要公共施設の整備として行う行為
  • 景観重要公共施設について、許可(景観計画にその基準が定められているものに限る)を受けて行う行為
  • 景観農業振興地域整備計画の区域の農用地区域内において許可を受けて行う開発行為
  • 国立公園又は国定公園の区域内において、許可(景観計画にその基準が定められているものに限る)を受けて行う行為
  • 景観地区内で行う建築物の建築等
  • 景観計画に定められた工作物の建設等の制限の全てについて景観地区工作物制限条例による制限が定められている場合における当該景観地区内で行う工作物の建設等
  • 形態意匠、建築物又は工作物の高さの最高限度又は最低限度壁面の位置の制限又は建築物の敷地面積の最低限度の制限その他届出を要する行為ごとの良好な景観の形成のための制限で景観計画に定められたものの全てが、地区整備計画、特定建築物地区整備計画、防災街区整備地区整備計画、歴史的風致維持向上地区整備計画、沿道地区整備計画又は集落地区整備計画において定められている場合における地区計画等の区域内で行う土地の区画形質の変更、建築物の新築、改築若しくは増築、工作物の新設、改築若しくは増築又は建築物若しくは工作物の形態意匠の変更
  • その他政令又は景観行政団体の条例で定める行為

変更命令

景観行政団体の長は、良好な景観の形成のために必要があると認めるときは、特定届出対象行為(届出を要する行為のうち、景観行政団体の条例で定めるもの)について、景観計画に定められた建築物又は工作物の形態意匠の制限に適合しないものをしようとする者又はした者(届出があった日から30日以内に限る)に対し、制限に適合させるため必要な限度において、その行為に関し設計の変更その他の必要な措置をとることを命ずることができます。

また、景観行政団体の長は、この処分に違反した者又はその者から当該建築物又は工作物についての権利を承継した者に対して、相当の期限を定めて、景観計画に定められた建築物又は工作物の形態意匠の制限に適合させるため必要な限度において、その原状回復を命じ、又は原状回復が著しく困難である場合に、これに代わるべき必要な措置をとることを命ずることができます。

行為の着手の制限

届出をした者は、景観行政団体がその届出を受理した日から原則として30日を経過した後でなければ、届出に係る行為(根切り工事、山留め工事、ウェル工事、ケーソン工事その他基礎工事を除く)に着手することはできません。ただし、特定届出対象行為について受けた命令に基づき行う行為については、この限りではありません。

景観行政団体の長は、届出に係る行為について、良好な景観の形成に支障を及ぼすおそれがないと認めるときは、この期間を短縮することができます。

まとめ

景観法は、「美しく風格のある国土の形成」「潤いのある豊かな生活環境の創造」「個性的で活力ある地域社会の実現」を図ることにより、国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的としており、その対象範囲は農山漁村等に限らず都市部にも及んでいます。

地元でもなければ案外見落としがちな規制であるため、本稿で説明した行為を行うにあたっては、管轄する自治体に対して、必ず事前確認を行うようにしましょう。

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