千葉県における特定再生資源屋外保管業の許可基準について
千葉県では、スクラップヤード等規制条例(正式名称:特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例)を定め、金属スクラップヤード等の特定再生資源屋外保管業をはじめる際に、あらかじめ知事の許可を受けることを義務付ける等の規制を行っています。
令和6年4月1日から施行された新しい条例ではありますが、既存事業者に対しても許可の取得を義務付ける等、適用範囲は新たに事業をはじめようとする事業者にとどまりません。
また、要求される手続きは煩雑(はんざつ)であり、かつ、許可を受けるために求められる基準が難解であることから、いざ手続きを行うときには、相当な苦行を強いられることになるのではないかと思います。
そこで本稿では、千葉県内において金属スクラップヤード等の特定再生資源屋外保管業の許可を取得するために適合させるべき基準について、詳しく解説していきたいと思います。
本稿では、千葉県における特定再生資源屋外保管業の許可を受けるための基準について、それなりのボリュームで解説しています。最下段には、千葉県における特定再生資源屋外保管業の許可申請サポートについても記載していますので、最後までご確認いただければ幸いです。
また、この規制は既存事業者にも及ぶことから、既存事業者であっても、1年間の経過措置期間内に条例の各規定へ適合させる必要があります。
なお、許可を受けることなく営業をしていることが発覚した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されることがあるのでご注意ください。
目 次
特定再生資源屋外保管業許可
特定再生資源屋外保管業を行おうとする場合には、既存事業者も含め、金属スクラップヤード等規制条例に基づく許可を受ける必要があります。
手続きの大まかな流れは下表のとおりですが、申請前には事前協議及び住民への周知が要求される等、全体としてそれなりにボリュームのある手続きとなります。
住民への周知
特定再生資源屋外保管業を行おうとする者は、あらかじめ、申請に係る特定再生資源屋外保管事業場の周辺地域の住民に対し、説明会の開催その他の特定再生資源屋外保管業の内容を周知させるため、以下のいずれかの措置を講ずる必要があります。
- 特定再生資源屋外保管事業場の敷地境界線からの水平距離が300m以内の区域(以下、特定区域)に居住する住民に対し、特定再生資源屋外保管業の内容についての説明会を開催すること
- 特定再生資源屋外保管業の内容を記載した書面を特定区域に居住する住民に配布すること
- 特定再生資源屋外保管業の内容を特定再生資源屋外保管事業場又はその周辺の適当な場所に掲示するとともに、その内容をインターネットを利用して住民の閲覧に供すること
許可申請
許可を受けようとする者は、事前協議及び住民への周知を経た後、以下の書類を千葉県環境生活部ヤード・残土対策課金属スクラップヤード対策班に提出することにより申請を行います。
- 特定再生資源屋外保管業許可申請書(別記第一号様式)
- 住民への周知措置を講じたことを証する書面
- 事業計画の概要を記載した書類
- 特定再生資源屋外保管事業場の位置図及び付近の見取図
- 特定再生資源屋外保管事業場の構造を明らかにする平面図、立面図、断面図、構造図及び設計計算書
- 特定再生資源屋外保管事業場の土地の登記事項証明書及び公図の写し
- 申請者が特定再生資源屋外保管事業場の土地の所有権を有すること(申請者が所有権を有しない場合には、使用する権原を有すること)を証する書類
- 住民票の写し(申請者、役員、発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する株主、出資額の100分の5以上の額に相当する出資をしている者、法定代理人)
- 定款又は寄附行為及び登記事項証明書(法人)
- 欠格事由に該当しない者であることを誓約する書面
- 標準作業書
★標準作業書
標準作業書には、以下の事項を記載する必要があります。
- 特定再生資源屋外保管事業場の維持に関する計画
- 油水分離装置及びこれに接続している排水溝の管理の方法
- 電池、潤滑油その他の火災の発生又は延焼のおそれがあるものの回収及び処理の方法
- 保管等の場所から保管等に伴って生じた汚水の飛散、流出及び地下浸透並びに悪臭の発散の防止の方法
- 保管等に伴う騒音又は振動による生活環境の保全上の支障の発生の防止の方法
- その他知事が定める事項
★特定再生資源の区分
金属スクラップ | 保管をする特定再生資源が金属のみの場合 |
プラスチック類 | 保管をする特定再生資源がプラスチックのみの場合 |
雑品スクラップ | 保管をする特定再生資源が金属スクラップ又はプラスチック類以外の場合 |
★申請窓口
千葉県環境生活部ヤード・残土対策課金属スクラップヤード対策班
千葉市中央区市場町1-1千葉県庁本庁舎4階
★申請手数料
申請手数料は、千葉県収入証紙(千葉県収入証紙の購入場所について)により納付します。
特定再生資源屋外保管業許可申請 | 56,000円 |
特定再生資源屋外保管業変更許可申請 | 31,000円 |
許可の基準
申請したとしても、基準に適合しないと認めるとき、又は申請の手続きが条例若しくは条例施行規則の規定に違反していると認めるときは、許可を受けることができません。
許可の基準は、ざっくりと「計画の妥当性」及び「特定再生資源屋外保管事業場の構造設備」について定められており、いずれの基準にもすべて適合することを求められます。
なお、この許可には、許可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最小限度のものに限り、かつ、特定再生資源屋外保管業者に不当な義務を課することとならない範囲内において、条件又は期限を付されることがあります。
特定再生資源屋外保管業の計画
申請に係る特定再生資源屋外保管業の計画は、以下すべての基準に適合させることが求められます。
- 特定再生資源屋外保管事業場からの保管物の崩落又は飛散及び特定再生資源屋外保管事業場における火災の発生又は延焼を防止するため、積み上げられた保管物の高さが規則で定める高さを超えないようにすること
- 特定再生資源屋外保管事業場における火災の発生又は延焼を防止するため規則で定める措置を講ずること
- 保管等の場所から保管等に伴って生じた汚水が飛散し、流出し、及び地下に浸透し、並びに悪臭が発散しないように必要な措置を講ずること
- 保管等に伴う騒音又は振動によって生活環境の保全上の支障が生じないように必要な措置を講ずること
保管物の保管の高さ
保管物の高さは、特定再生資源の区分ごとに、下表のとおり定められているため、特定再生資源屋外保管業者はこれを遵守する必要があります。
① | 金属スクラップ又はプラスチック類 | 保管の場所の囲いに直接負荷部分がない場合(④の場合を除く) | 保管の場所の任意の点ごとに、地盤面から、当該点を通る鉛直線と保管の場所の囲いの下端(下端が地盤面に接していない場合にあっては、下端を鉛直方向に延長した面と地盤面との交線)を通り水平面に対し上方に50%の勾配を有する面との交点(交点が2以上ある場合にあっては、最も地盤面に近いもの)までの高さ |
② | 保管の場所の囲いに直接負荷部分がある場合(④の場合を除く) | 基準線(直接負荷部分の上端から下方に垂直距離50cmの線(直接負荷部分に係る囲いの高さが50cmに満たない場合にあってはその下端)から保管の場所の側の任意の点ごとに、 地盤面から、その点を通る鉛直線と鉛直線への水平距離が最も小さい基準線を通る水平面との交点までの高さ | |
③ | 保管の場所の囲いに直接負荷部分でない部分がある場合にあっては、①又は②に規定する高さのうちいずれか低いもの | ||
④ | 保管の場所の三方の囲いに直接負荷部分がある場合 | ㋐若しくは㋑のうちいずれか低いもの又は②若しくは③の高さ ㋐保管の場所の三方以外の方向から、特定再生資源屋外保管業の用に供する施設(保管の場所を除く)又は特定再生資源屋外保管事業場の敷地の境界線への水平距離のうち最小のものの2分の1に相当する高さ ㋑直接負荷部分の基準線の高さ | |
⑤ | 雑品スクラップ | 保管の場所の囲いに直接負荷部分がない場合(⑦の場合を除く) | ①の高さ又は5mのうちいずれか低いもの |
⑥ | 保管の場所の囲いに直接負荷部分がある場合(⑦の場合を除く) | ②若しくは③の高さ又は5mのうちいずれか低いもの | |
⑦ | 保管の場所の三方の囲いに直接負荷部分がある場合 | ④の高さ又は5mのうちいずれか低いもの |
火災の発生又は延焼防止のための措置
特定再生資源屋外保管業者は、火災の発生又は延焼防止のため、以下の措置を講ずることを義務付けられています。
- 保管物(特定再生資源の区分が雑品スクラップに該当する場合に係るものに限る)に電池、潤滑油その他の火災の発生又は延焼のおそれがあるものが含まれる場合にあっては、技術的に可能な範囲でこれらを適正に回収し、処理すること
- 保管物の一の保管の単位の面積を200㎡以下とすること
- 隣接する保管物の保管の単位の間隔は、2m以上仕切りが設けられている場合を除く)
- その他知事が必要と認める措置
汚水対策に関する基準
事業計画において、保管等の場所から保管等に伴って生じた汚水が飛散し、流出し、及び地下に浸透しないように、必要な措置を講ずる必要がありますが、これを示すものとして、書類及び図面によって、以下の事項を定めることを要求されています。
- 保管等の場所ごとに、保管等の場所において行う保管又は破砕等の作業その他の工程による汚水の発生の有無を示したもの
- 汚水の回収及び処理の方法(汚水を事業場外に放流せず循環利用する方法、汚水を処理し事業場外に放流する方法その他の汚水の飛散、流出及び地下浸透の防止に有効な方法に限る)
- 必要な措置として、以下の措置を講じることを定めていること
- 汚水を処理し事業場外に放流する場合にあっては、その水質を生活環境保全上の支障が生じないものとするために必要な排水処理設備の設置その他放流によって生活環境の保全上の支障を生じないものとするために必要な対策を講じること
- 汚水の飛散、流出及び地下浸透の防止の方法を具体的に記載した標準作業書を常備し、当該標準作業書に基づき従業者に必要な教育を行うこと
悪臭対策に関する基準
事業計画において、保管等の場所から保管等に伴って生じた悪臭が発散しないように、必要な措置として、特定再生資源屋外保管事業場の立地状況、周辺環境等に応じ、悪臭の発散の防止の方法を具体的に記載した標準作業書を常備し、標準作業書に基づき従業者に必要な教育を行うことを定める必要があります。
騒音・振動対策に関する基準
事業計画において、保管等に伴う騒音又は振動によって生活環境の保全上の支障が生じないように、必要な措置として、特定再生資源屋外保管事業場の立地状況、周辺環境等に応じ、以下の措置を講じることを定める必要があります。
- 早朝及び夜間において、特定再生資源の搬出入及び積卸し、保管及び破砕等の作業その他の騒音又は振動を発生する行為を制限すること
- 騒音又は振動による生活環境の保全上の支障の発生の防止の方法を具体的に記載した標準作業書を常備し、当該標準作業書に基づき従業者に必要な教育を行うこと
特定再生資源屋外保管事業場
特定再生資源屋外保管事業場は、以下のいずれにも該当するものであることが求められます。また、特定再生資源屋外保管事業場には、現場責任者を配置する必要があります。
- 保管の場所の周囲に囲いが設けられていること
- 保管物の荷重が直接囲いにかかり、又はかかるおそれがある構造である場合にあっては、荷重に対して囲いが構造耐力上安全であること
- 特定再生資源に用いられ、又は付着している油が保管又は破砕等の場所から流出し、又は地下に浸透するおそれがある場合にあっては、保管等の場所の底面が不浸透性の材料で覆われているとともに、油水分離装置及びこれに接続している排水溝が設けられていること
底面の不浸透措置の基準
「保管等の場所の底面が不浸透性の材料で覆われている」とは、以下の基準を満たすものであることが求められます。
- 油を含む汚水の地下浸透を防止するため、床面をコンクリート敷設することその他鋼板との併用等によってこれと同等以上の効果を有する舗装の措置が講じられていること
- 保管物の自重、積み上げる作業の用に供する機械及び出入りする運搬車両の荷重等により、破損等を生じないものとすること
- 底面には、油を含む汚水が自然に排水溝に集水されるよう適切な傾斜(排水勾配)を設けること
- 書類及び図面によって、底面の形状、構造、材質等を明らかにし、当該底面が油を含む汚水の地下浸透を生じさせるおそれがないものであることを十分に示すこと
なお、現に破損等により油を含む汚水が地下に浸透するおそれがあると認められるものについては、基準に適合しないものであると判断されます。
油水分離装置等の設置の基準
「油水分離装置及びこれに接続している排水溝が設け られている」とは、以下の基準を満たすものであることが求められます。
- 不浸透性の材料で覆われた底面の上を流れる油を含む汚水が保管等の場所から流出しないように、底面に設けた傾斜(排水勾配)に合わせて、保管等の場所の周りに排水溝を設置すること
- 排水溝によって集水した油を含む汚水から油を分離し、回収するため、排水溝と接続する適当な場所に油水分離装置を設置すること
- 油水分離装置及び排水溝は、流入する油を含む汚水を処理することのできる十分な容量のものを設置すること(このとき、油を含む汚水の量だけでなく、流入する雨水等の量も勘案すること)
- 書類及び図面によって、油水分離装置及び排水溝の形状、構造、材質等を明らかにし、当該油水分離装置及び排水溝が油を含む汚水を保管等の場所から流出させるおそれがないものであることを十分に示すこと
欠格事由
上記の基準にすべて適合していたとしても、そもそもの前提条件として、許可を受けようとする者が以下のいずれかの事由に該当する場合は、特定再生資源屋外保管業者としての適格性を欠く者として、許可を受けることはできません。
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 金属スクラップヤード等規制条例又はこの条例に基づく処分に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
- 特定再生資源屋外保管業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
- 千葉県暴力団排除条例第2条第3号に規定する暴力団員等(以下「暴力団員等)
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む)が上記のいずれかに該当するもの
- 法人でその役員のうちに上記のいずれかに該当する者のあるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
特定再生資源屋外保管業許可取得サポート
特定再生資源屋外保管業は専門性が高く規制も厳しいことから、許可申請については非常に難易度の高い手続きとなっています。また、申請に必要となる書類も複雑かつ膨大な量で、時間と労力というコストを考えれば、自ら申請を行うことはあまりお薦めできません。
そこで弊所では、千葉県全域を対象に、特定再生資源屋外保管業許可の取得をサポートするプランを用意しています。事案ごとに難易度が異なるため都度見積もりとなりますが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。特定再生資源屋外保管業許可申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
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