決算未到来の法人の添付書類について│建設業許可と法人成り
建設業許可を取得するためには、さまざまな要件をクリアする必要があります。そして、これらを証明するために必要となるのが、財務諸表や工事経歴書といった添付書類です。
通常、財務諸表については、直近の確定申告書に記載された決算を基に作成し、工事経歴書についても、実際に請け負った工事を基に作成することになります。
さて、ここで困ってしまうのが、創業したばかり法人成りしたばかりで決算期を一度も迎えていないような会社のケースです。
決算を一度も迎えていない訳ですから、当然確定申告書は存在しませんし、法人が成立してまだ日が浅ければ、工事の経歴もありません。
このような場合、決算期の到来を待ってから申請をするしか方法がないのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。新設したばかりの法人であっても、ちゃんと添付書類を作成すれば、当然のことながら受け取ってもらえます。
本稿では、法人成りと同時に建設業許可を取得しようとされる方のために、必要となる添付書類の作成方法についてご案内したいと思います。
財務諸表
そもそも財務諸表は、申請者の財産的基礎を証明するために必要となる書面です。既に説明したとおり、創業後間もない法人は、一度も決算期を迎えていません。ですから、このような法人の場合、建設業許可申請における財産的基礎要件の適否は、創業時の資本金の額等を基準に判断されることになります。
財産的基礎要件
一般建設業許可であれば、資本金が500万円以上、特定建設業であれば、資本金が4,000万円以上を有することが財産的基礎要件となります。
もし資本金が上記の額を下回っている場合には、純資本がこれらの額を下回っている法人と同様の扱いになり、資本調達力を証明するための書類として、預金残高証明書等を添付する必要があります。
決算期未到来のまま増資を行った場合、その時点で既に「創業時」とは評価されなくなっているため、増資した資本金のみをもって財産的基礎要件を満たしていることにはならないという点についてはご注意ください。
開始貸借対照表
上記は、一般建設業許可を取得しようとする新規設立法人、ツナグ設備工業の開始貸借対照表です。このように、決算期未到来の法人の場合、財務諸表に代えて「開始貸借対照表」を添付することになります。通常は上記のようにシンプルな表になります。また、以下の書類を添付する必要はありません。
- 損益計算書
- 完成工事原価報告書
- 株主資本等変動計算書
- 注記表
工事経歴書
新規設立した法人の代表に、個人事業主としての工事経歴があったとしても、それは法人の実績とはならないので、工事経歴書に記載することはできません。したがって、該当する様式には「決算未到来のため実績なし」と記載して提出することになります。
同様に、「直前3年の各事業年度における工事施工金額」についても、「決算未到来のため実績なし」と記載して提出します。
ただし、経営業務管理者(経管)や専任技術者(専技)の要件を確認する際には、専門工事の経歴が問われますので、工事経歴を証明する書類(発注書、請書、請求書等)は別に添付する必要があります。
まとめ
説明したとおり、はじめて決算を迎える前の新設法人にあっては、決算書や工事経歴書等の作成が大幅に簡素化されます。許可申請が決算を迎えてしまった後である場合には、通常の許可申請と同様に、複雑で面倒なこれらの書類の作成を求められる上、確定申告が整うことを待つ羽目になるので、予定よりも申請時期が遅れてしまうことも考えられます。
このようなことからも、創業間もない法人や法人成りと同時に建設業許可を取得しようとされる方については、決算期を迎える前に許可申請をすることをお薦めしています。
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