建設業とカネ│建設業許可に必要な財産的要件とは
工事を請け負っていた業者がある日突然倒産し、途中で工事を投げ出すことを想像してみてください。建設業において建設業者の資金力が重要な要素であることがお分かりいただけると思います。
また、専門工事は請負金額も高額となりがちで、なおかつ危険な作業が伴うことなどから、重大なミスや予期せぬ事故が発生した場合には、その補償や賠償に応ずる必要が生じるケースも十分にありえます。
このような事情から、建設業許可制度においては許可要件の一つとして財産的要件を定めているのです。
今回は建設業許可において求められる財産的要件についてご案内していきたいと思います。
建設業許可の全体像について
目 次
一般建設業における財産的要件
一般建設業の許可を受けようとする場合は、次の3つのうちのいずれかの条件をクリアしている必要があります。
- 直前の決算において自己資本の額が500万円以上であること
- 銀行の預金残高証明書(発行日より1か月以内)で、500 万円以上の資金調達能力を証明できること
- 許可申請直前の5年間継続して営業した実績を有すること
自己資本の額
新規設立の法人にあっては、創業時における財務諸表で確認が行なわれます。1期目の決算を終了し確定申告期限を経過した場合は、申請時直前の決算期における財務諸表および以下の書類で確認されることになりなります。
個人 | 所得税の確定申告書のうち、税務署の受付印のある1表+2表+青色申告決算書または収支内訳書+貸借対照表 |
法人 | 法人税の確定申告書のうち、税務署の受付印のある別表1+決算報告書 |
資本金の額について、申請時までに増資を行うことによって基準を満たすこととなった場合には、資本金の額に関する基準を満たしているものとして取り扱われます。なお、これはあくまでも資本金に対する自己資本についてはこの取り扱いはありません。
★個人事業主における自己資本
自己資本 =(期首資本金+事業主借勘定+事業主利益)-事業主貸勘定+利益留保性の引当金・準備金
資金調達能力
金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書の原本を提出することにより証明を行います。この証明書は、残高日から申請までの期間が1か月以内であることが必要です。残高証明書の発行日から1か月ではない点についてはご注意ください。
また、複数の金融機関の預金残高を合算することは問題ありませんが、残高の証明日は必ず一致していることが求められます。なお、500万円以上の残高があったとしても、預貯金通帳のコピーは提出資料として認められません。
営業実績
更新の際は、許可を受けて申請直前の5年間継続して営業した実績があれば、この基準に合致するものとみなされます。
特定建設業における財産的要件
特定建設業の許可を受けようとする場合は、直前の決算における貸借対照表において、次の基準を全てみたしている必要があります。
なお、一般建設業許可の財産的要件をみたすものとして認められる「許可申請以前の過去5年間継続した営業をした実績は、特定建設業許可の財産的要件をみたすものとしては認められていないことにご注意ください。
- 欠損額が資本金額の20%を超えていないこと(欠損比率)
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金額が2,000万円以上であること
- 自己資本額が4,000万円以上であること
欠損比率は20%以下であることが必要とされていますが、その比率は次の計算式によって求めます。
個人 | 欠損の額 ÷ 期首資本金額 × 100% |
法人 | 欠損の額 ÷ 資本金額 × 100% |
また、欠損の額は次の計算式によって求めます。
個人 | 事業主損失 - (事業主借勘定 - 事業主貸勘定 + 利益留保性引当金 + 準備金) |
法人 | マイナスの繰越利益剰余金額の絶対値 - (資本剰余金+利益準備金+その他の利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)) |
なお、法人において以下のケースのように欠損額が生じない場合は、欠損比率を求める必要はありません。
- 繰越利益剰余金がマイナスではないケース
- 繰越利益剰余金がマイナスでも、その絶対値の額を「資本剰余金、利益準備金、その他の利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)」の合計額が上回るケース
流動比率
流動比率は75%以上であることが必要とされていますが、その比率は次の計算式により求めます。
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100%
資本金額
資本金額はそれぞれ以下の額を指しますが、この額は2,000万円以上であることが必要とされています。
株式会社 | 払込資本金 | |
特例有限会社 | 資本金の総額 | |
合資会社、合名会社 | 出資金額 | |
個人事業主 | 期首資本金 |
利益事項全部証明書(商業登記簿)に資本金2,000万円以上の登記がされていることを確認することにより証明がなされます。なお、資本金の額について、申請時までに増資を行うことによって基準を満たすこととなった場合には、資本金の額に関する基準を満たしているものとして取り扱われます。
自己資本額
自己資本額は4,000万円以上であるこがとが必要とされていますが、その額は次の計算式によって求めます。
個人 | (期首資本金 + 事業主借勘定 + 事業主利益)- 事業主貸勘定 +(利益留保性の引当金 + 準備金) |
法人 | 純資産の合計額 |
新規設立の法人にあっては、創業時における財務諸表をもって確認が行なわれます。
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