非医師(法人等)によるクリニック・(歯科)診療所の開設に関する手続きについて

診療所

診療所・歯科診療所は、医療法その他の法律に基づき、その要件を満たした上で、適切な手続きを行う必要があります。医師個人が(歯科)診療所を開設することについて許可制は採用されておらず、原則として(歯科)診療所の所在地を管轄する保健所に対する「届出」という形式の手続きになりますが、医師若しくは歯科医師でない者が診療所を開設しようとするときは、開設地の都道府県知事等の許可を受ける必要があります。

このように非医師による診療所開設について許可制が採用されているのは、医療の安全、医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図ることを目的としています。

そこで本稿では、これから法人等でクリニックや(歯科)診療所を開設しようとされている皆さまに向けて、許可基準や手順等、手続きに関する基礎知識について詳しく解説していきたいと思います。

病院と診療所

医療法においては、医師や歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業(歯科医業)を行う場所であって、20人以上の患者を入院させるための施設を有するものを「病院」、患者を入院させるための施設を有しないもの(無床診療所)又は19人以下の患者を入院させるための施設を有するものを「診療所」と定義しています。

このように病院と診療所とを明確に区分していることから、診療所に該当する医療機関について、その名称中に「病院」を用いることができません。

診療所・歯科診療所の開設

医師若しくは歯科医師が診療所を開設しようとするときは、届出をすれば足りますが、医師若しくは歯科医師でない者が診療所を開設しようとするときは、開設地の都道府県知事に対して申請し、その許可を受ける必要があります。

なお、診療所を開設しようとする場合であって、開設地が保健所を設置する市又は特別区の区域にあるときは、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長に対して申請し、その許可を受けます。

また、臨床研修等修了医師(臨床研修等修了歯科医師)でない者で診療所を開設したものが病床数等の事項を変更しようとするとき、診療所に病床を設けようとするとき、又は診療所の病床数、病床の種別(精神病床、感染症病床、結核病床、療養病床及び一般病床の別)等の事項を変更しようとするときについても、原則として、診療所の所在地の都道府県知事の許可を受ける必要があります。

開設の要件

医療施設の開設には、施設の構造や設備に関する基準と、開設者や管理医師に関する人的基準をクリアする必要があります。基準については医療法のほか、医療法施行規則及び都道府県条例の定めるものにすべて適合させる必要があります。

加えて医療法第7条第4項には、「営利を目的として診療所を開設しようとする者に対しては、許可を与えないことができる。」という規定があるため、非医師による診療所の開設には、一定の制限が設けられています。

診療所の開設者

前記したとおり、営利を目的として診療所を開設しようとする者に対しては許可を与えないことができるという規定があるため、原則として、営利を目的とする個人や法人(株式会社等)による診療所の開設は認められません。

医療法に定める開設者とは、医療機関の開設・経営の責任主体を指しますが、開設・経営の責任主体とは、以下の内容を包括的に具備するものとされています。

  1. 開設者が医療機関を開設・経営する意思を有していること
  2. 開設者が、他の第三者を雇用主とする雇用関係(雇用契約の有無に関わらず実質的に同様な状態にあることが明らかなものを含む)にないこと
  3. 開設者である個人及び医療機関の管理者については、原則として医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないこと
  4. 開設者である法人の役員については、原則として医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないこと
  5. 開設者が、医療機関の人事権(職員の任免権)及び職員の基本的な労働条件の決定権などの権限を掌握していること(医療機関の幹部職員に定款、内部規程等の規定により権限を委任している場合はこの限りではない)
  6. 開設者が、医療機関の収益・資産・資本の帰属主体及び損失・負債の責任主体であること

なお、診療所に必要とする土地、建物又は設備を他の第三者から借りる場合においては、貸借契約書は適正になされ、借料の額、契約期間等の契約内容(建物が未完成等の理由で契約未締結の場合は、契約予定の内容)が適正であり、かつ借料が診療所の収入の一定割合とするものでないことが求められます。

管理医師

医療施設では、その施設ごとに、以下の要件を満たす医師を、開設者の任命を受けて管理・運営について責任を持つ者(管理者)として選任し配置する必要があります。

  • 原則として開設者が管理者であること(※1)
  • 他の診療所等の管理者でないこと
  • 臨床研修を修了し、臨床研修修了登録を済ませている者であること(※2)
  • 管理責任があり常勤であること
  • 研究のために大学病院等の医局に籍を置く場合には、管理者になることについての大学病院等の承諾書を添付すること

(※1)開設者以外の者を管理者とする場合や、開設者が別の(歯科)診療所の管理医師になる場合(2か所管理)には所管官庁から許可を受けることが必要となります。

(※2)医籍登録が平成16年3月31日以前(歯科医籍登録の場合は平成18年3月31日以前)の場合には、臨床研修を修了していなくても管理医師となることができます。

また、開設者である個人及び医療機関の管理者については、原則として医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないことが要求されています。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は、開設者である個人及び医療機関の管理者について、医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務することが例外的に認められています。

  • ①営利法人等から医療機関が必要とする土地又は建物を賃借する商取引がある場合であって、営利法人等の規模が小さいことにより役職員を第三者に変更することが直ちには困難であること、②契約の内容が妥当であると認められることのいずれも満たす場合であって、かつ医療機関の非営利性に影響を与えることがないものであるとき
  • 営利法人等との取引額が少額である場合

法人の役員

開設者である法人の役員については、原則として医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないことが要求されています。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は、開設者である法人の役員(監事を除く)の過半数を超える場合を除き、法人の役員について、医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務することが例外的に認められています。

  • 営利法人等から物品の購入若しくは賃貸又は役務の提供の商取引がある場合であって、開設者である法人の代表者でないこと、営利法人等の規模が小さいことにより役職員を第三者に変更することが直ちには困難であること、契約の内容が妥当であると認められることのいずれも満たす場合であって、かつ医療機関の非営利性に影響を与えることがないものであるとき
  • 営利法人等から法人が必要とする土地又は建物を賃借する商取引がある場合であって、営利法人等の規模が小さいことにより役職員を第三者に変更することが直ちには困難であること、契約の内容が妥当であると認められることのいずれも満たす場合であって、かつ医療機関の非営利性に影響を与えることがないものであるとき
  • 株式会社企業再生支援機構法又は株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法に基づき支援を受ける場合であって、両機構等から事業の再生に関する専門家の派遣を受ける場合(開設者である法人の代表者とならないこと)であって、かつ医療機関の非営利性に影響を与えることがないものであるとき
  • 営利法人等との取引額が少額である場合

非営利性の確認

営利を目的とするか否かの判定は、診療所の開設主体、設立目的、運営方針及び資金計画等を総合的に勘案して行なわれます。また、医療法において医療法人の制度が設けられている趣旨等を考慮すれば、その開設の主体についても、公共的な目的を達成できるような体制を整えることが適当であるものと考えられます。 

以上を踏まえ、非営利性を担保するためには、以下の要件をすべて満たすことが要求されています。

  1. 医療機関の開設主体が営利を目的とする法人でないこと(専ら法人の職員の福利厚生を目的とする場合はこの限りではない)
  2. 医療機関の運営上生じる剰余金を役職員や第三者に配分しないこと
  3. 医療法人の場合は、法令により認められているものを除き、収益事業を経営していないこと

開設・経営に関する資金計画

診療所の開設許可の申請時には、開設・経営に関する資金計画について、以下の内容が審査されます。なお、開設者が医療法人の場合にあっては、設立後2年間の事業計画及びこれに伴う予算書をもって資金計画に代替することができます。

  • 収入見込の根拠となる患者数等の見込みが過大でないこと
  • 支出見込の根拠となる人件費等の見積りが適正であること
  • 必要な自己資本が確保されていることを金融機関等の残高証明で確認できること
  • 借入金がある場合は、その借入が確実なものであることを金融機関等の融資証明等によって確認できること
  • 第三者から資金の提供がある場合は、医療機関の開設・経営に関与するおそれがないこと

構造設備基準

診療所は、清潔を保持するものとし、その構造設備は、衛生上、防火上及び保安上安全と認められるものであることを求められます。以下は医療法施行規則において定められている全国的な基準ですが、これらの基準に加え、都道府県条例において定められている構造設備基準について、そのすべてをクリアする必要があります。

危険防止措置診療の用に供する電気、光線、熱、蒸気又はガスに関する構造設備については、危害防止上必要な方法を講ずること
病室病室は地階又は3階以上の階には設けないこと(地階に特定主要構造部を耐火構造とする場合は、3階以上に放射線治療病室を設けることができる)
療養病床の病室の病床数は4床以下とすること
療養病床に係る病室の床面積は、患者1人につき6.4㎡以上(内法)とすること(小児だけを入院させる病室の床面積は、6.3㎡を下限として、上記の病室の床面積の3分の2以上とすることができる)
療養病床に係る病室以外の病室の床面積は、患者1人を入院させるものにあっては6.3㎡以上、患者2人以上を入院させるものにあっては患者1人につき4.3㎡以上とすること(小児だけを入院させる病室の床面積は、6.3㎡を下限として、上記の病室の床面積の3分の2以上とすることができる)
機械換気設備機械換気設備については、感染症病室、結核病室又は病理細菌検査室の空気が風道を通じて診療所の他の部分へ流入しないようにすること
精神病室精神病室の設備については、精神疾患の特性を踏まえた適切な医療の提供及び患者の保護のために必要な方法を講ずること
感染症病室及び結核病室感染症病室及び結核病室には、診療所の他の部分及び外部に対して感染予防のためにしや断その他必要な方法を講ずること
直通階段2階以上の階に病室を有するものにあっては、患者の使用する屋内の直通階段を2以上設けること(患者の使用するエレベーターが設置されているもの又は2階以上の各階における病室の床面積の合計がそれぞれ50㎡(特定主要構造部が耐火構造であるか、又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物にあっては100㎡)以下のものについては、患者の使用する屋内の直通階段を1つとすることができる)
直通階段及び踊場の幅は、1.2m以上(内法)とすること(無床診療所又は9人以下の患者を入院させるための施設を有する診療所(療養病床を有する診療所を除く)には適用しない)
直通階段の蹴上げは0.2m以下、踏面は0.24m以上とすること(無床診療所又は9人以下の患者を入院させるための施設を有する診療所(療養病床を有する診療所を除く)には適用しない)
直通階段には適当な手すりを設けること(無床診療所又は9人以下の患者を入院させるための施設を有する診療所(療養病床を有する診療所を除く)には適用しない)
3階以上の階に病室を有するものにあっては、避難に支障がないように避難階段を2以上設けること(直通階段のうちの1つ又は2つを建築基準法施行令上の避難階段としての構造とする場合は、その直通階段の数を避難階段の数に算入することができる)
廊下精神病床及び療養病床に係る病室に隣接し、患者が使用する廊下の幅は1.8m以上(内法)とすること(両側に居室がある廊下の幅は2.7m以上(内法)としなければならない)(無床診療所又は9人以下の患者を入院させるための施設を有する診療所(療養病床を有する診療所を除く)には適用しない)
患者が使用する上記以外の廊下の幅は、1.2m以上(内法)とすること(両側に居室がある廊下の幅は1.6m以上(内法)としなければならない)
消毒設備感染症病室又は結核病室を有する診療所には、必要な消毒設備を設けること
歯科技工室歯科技工室には、防じん設備その他の必要な設備を設けること
調剤所調剤所は採光及び換気を十分にし、かつ、清潔を保つこと
調剤所には冷暗所を設けること
調剤所には、感量10mgのてんびん及び500mgの上皿てんびんその他調剤に必要な器具を備えること
防火措置火気を使用する場所には、防火上必要な設備を設けること
消火用の機械又は器具を備えること

手続きの流れ

診療所の新規開設(移転・法人化を含む)を予定している開設者は、必要書類を診療所所在地の保健所に提出することにより申請を行います。

①事前協議

医療法のほかにも、診療所を建築基準法や消防法等の各法令に適合させる必要があるため、(歯科)診療所を開設する前には、保健所に診療所の図面や法人の定款草案等を持参して協議を行う必要があります。

法人設立

保健所との事前協議後、医療法の規定に基づき法人を設立します。

許可申請

保健所に対し、以下の書類を揃えて提出します。

  • 診療所(歯科診療所)開設許可申請書
  • 開設者・管理者・診療に従事する医師(歯科医師)の臨床研修等修了登録証・免許証の写し
  • 開設者・管理者・診療に従事する医師(歯科医師)の職歴書
  • 土地・建物の登記事項証明書(原本)または賃貸借契約書の写し
  • 各種図面(縮尺100分の1以上のもの)
    • 敷地周囲の見取図
    • 敷地の平面図
    • 建物の平面図
    • 診療所への案内図
  • その他行政官庁が求める書類

④診療所の開設

人員や施設の要件を整え、いつでも診療を開始できる状態を維持します。また、開設後10日以内に、「診療所開設届出書」を提出する必要があります。

⑤実地検査

許可申請時若しくは後日調整した検査日に、保健所の職員が診療所を訪問して実地検査が行われます。検査の際は、原則として開設者又は管理者が立ち会うことが求められています。

⑥保険医療機関指定の申請

地方厚生局に保険医療機関の新規指定の申請をし、必要に応じて施設基準届の届出を行います。

⑦その他の手続き

必要に応じて、次のような公的支援の医療機関としての指定を受けるための手続きを行います。

  • がん指定検診医療機関
  • 結核指定医療機関
  • 障害者自立支援法に基づく指定医療機関の指定
  • 麻薬施用者免許申請
  • 生活保護法指定医療機関

診療所開設許可申請サポート

弊所では、関西圏全域において診療所開設に関する手続きの代行を承(うけたまわ)っています。関係各所との事前協議から、書類作成及び立会の同行に至るまで、まるっとしっかりとサポートさせていただきます。下記の報酬は概算額ですが、弊所は「傾聴ができる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。診療所の開設でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

診療所開設許可申請154,000円〜
診療用エックス線装置備付届27,500円
医師免許の書き換え27,500円
施設基準届44,000円
生活保護指定医療機関27,500円
※税込み

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