個人医師のクリニック・(歯科)診療所の開設に関する手続きについて
医師という存在が、いつの時代も畏敬と羨望の対象であったことは間違いありません。人類史のはじめから存在し、現在もなおその発展に寄与する職種であることは、世界中の誰もが知るところだと思います。
そんな医師の皆さまが開業医と言われるためには、もちろん医療施設を開設する必要があるのですが、医療法においては、病院と診療所とを区分した上で、医師が開業する際に必要となる手続きや診療所に関する基準について定めています。
そこで本稿では、これから個人でクリニックや(歯科)診療所を開設しようとされている医師の皆様のために、その基準や手順など、開業の際に最低限必要となる手続きに関する基礎知識について、改めて案内させていただきたいと思います。
なお、本稿でご案内する内容はあくまで「個人」で診療所を開設するお医者様についてですので、「法人」での開設をご検討のお医者様については別記事でご案内させていただきたいと思います。
ご多忙なお医者さまには、行政手続きの専門家である行政書士が保健所等への事前相談から申請書類の作成、提出の代行までをフルサポートさせていただきます。
目 次
病院と診療所
医療法その他の法律では、病院と診療所について、それぞれ次のように定義して明確に区分しています。
病院とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であって、20人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。病院は、傷病者が、科学的でかつ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、かつ、運営されるものでなければならない。
(医療法第1条の5)
診療所とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であって、患者を入院させるための施設を有しないもの又は19人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。
(医療法第1条の5の2)
まさに「釈迦に説法」ですが、簡単に説明すると、患者を入院させるためのベッドが20床以上ある医療機関を「病院」、19床以下の医療機関を「診療所」と区分し、さらに入院設備のない医療施設を「無床診療所」と定義しています。このため、診療所に該当する医療機関は、その名称中に「病院」を用いることができません。
この他に「助産所」「特定機能病院」「地域医療支援病院」及び「臨床研究中核病院」といった区分の方法がありますが、本稿では割愛しています。
なお、一般的に用いられる「クリニック」という名称は、「診療所」とほぼ同義であるものと捉えて差し支えありません。
診療所・歯科診療所の開設
診療所・歯科診療所を開設するにあたっては、医療法その他の法律に基づき、その要件を満たした上で、適切な手続きを行う必要があります。
医師個人が(歯科)診療所を開設することについて許可制は採用されておらず、原則として(歯科)診療所の所在地を管轄する保健所に対する「届出」という形式の手続きになります。ただし、一部許可を受ける必要がある手続きもあります。(後述)
①事前協議
医療法のほかにも、診療所を建築基準法、消防法などの各法令に適合させる必要があるため、(歯科)診療所を開設する前には、保健所に図面等を持参して協議を行う必要があります。
②診療所の開設
人員や施設の要件を整え、いつでも診療を開始できる状態を維持します。
③開設届の届出
開設後10日以内に所管官庁へ届け出ます。また、診療用エックス線装置を設置する場合は、開設届提出の際、または設置後10日以内に、診療用エックス線装置備付届を届け出ます。
④実地検査
開設届提出時に決定した検査日に、保健所の職員が訪問して実地検査を行います。実地検査は先着順となっていて、保健所側のスケジュールの都合もあるので、開設後はできるだけ早期に開設届を提出するようにしましょう。検査の際は、原則として開設者又は管理者が立ち会うことが求められています。
⑤保険医療機関指定の申請
地方厚生局に保険医療機関の新規指定の申請をし、必要に応じて施設基準届の届出を行います。
⑥その他の手続き
必要に応じて、次のような公的支援の医療機関としての指定を受けるための手続きを行います。
- がん指定検診医療機関
- 結核指定医療機関
- 障害者自立支援法に基づく指定医療機関の指定
- 麻薬施用者免許申請
- 生活保護法指定医療機関
開設の要件
医療施設の開設には、施設の構造や設備に関する基準と、管理医師に関する人的基準をクリアする必要があります。
構造設備基準
開設する診療所の構造と設備については、以下すべての基準をクリアする必要があります。
- 他の施設と機能的かつ物理的に明確に区画されていること
- 建築基準法に適合していること
- 各施設は原則として一体性が確保されていること
- 医療用コンセントは3Pコンセントとすること
- 火気使用箇所に防火上必要な設備(消火用機械器具の設置など)を設けること
- 診察室や処置室等診療に使用する室は他の室と固定壁等で区画すること(また室が通量として使用されないこと)
- エックス線室は他と区画され、外に線量が漏洩しないこと
また、設置する室についても、それぞれ以下のとおり基準が設けられています。
室名 | 標準面積 | 内容 |
---|---|---|
診察室 | 9.9㎡以上 | 診察室と処置室を兼用する場合には、処置室として使用する部分をカーテン等で区画することが望ましい |
待合室 | 3.3㎡以上 | |
調剤所 | 6.6㎡以上 | ①採光、換気を十分にし、かつ清潔に保つこと ②冷暗所(又は電子冷蔵庫)を設けること ③感量10mgの天びん及び500mgの上皿天びんその他調剤に必要な器具を備えること(分包調剤の薬品のみを扱い、他は処方箋を発行する場合等、診療所の実態に応じて備付けを省略できる) ④調剤所を設けない場合は、診療所、歯科診療所内に鍵のかかる貯蔵設備を設けること |
歯科治療室 | 1セットの場合6.3㎡以上 2セット以上の場合1セットあたり5.4㎡以上 | ①他の室と明確に区画されていること ②他の室への通路となるような構造でないこと。 |
歯科技工室 | 6.6㎡以上 | ①防じん設備その他必要な設備(防火設備、消火用機械・器具等)を設けること ②十分な採光、換気装置、ダストコレクターの設置、作業台やその他歯科技工に必要な器具機械を備えること ③給水設備を設けること ④歯科技工室を設けない場合も石膏トラップを設置すること |
管理医師
医療施設では、その施設ごとに管理を行う医師を選任して配置する必要があります。
- 原則として開設者が管理者であること
- 他の診療所等の管理者でないこと
- 臨床研修を修了し、臨床研修修了登録を済ませている者であること
- 管理責任があり常勤であること
- 研究のために大学病院等の医局に籍を置く場合には、管理者になることについての大学病院等の承諾書を添付すること
開設者以外の者を管理者とする場合や、開設者が別の(歯科)診療所の管理医師になる場合(2か所管理)には所管官庁から許可を受けることが必要となります。
なお、医籍登録が以下の時期以前の場合には、臨床研修を修了していなくても管理医師となることができます。
医籍登録 | 平成16年3月31日以前 |
歯科医籍登録 | 平成18年3月31日以前 |
必要となる書類
診療所の新規開設(移転・法人化を含む)を予定している開設者は、必要書類を診療所所在地の保健所に提出することにより届出を行います。
- 診療所(歯科診療所)開設届
- 開設者・管理者・診療に従事する医師(歯科医師)の臨床研修等修了登録証・免許証の写し
- 開設者・管理者・診療に従事する医師(歯科医師)の職歴書
- 土地・建物の登記事項証明書(原本)または賃貸借契約書の写し
- 各種図面(縮尺100分の1以上のもの)
- 敷地周囲の見取図
- 敷地の平面図
- 建物の平面図
- 診療所への案内図
- その他行政官庁が求める書類
まとめ
診療所開設の手続きは、難関資格である医師国家試験を突破し、さらに臨床研修を修了したお医者様にとっては、さほど難易度の高いものではないように思います。
とはいえ手続きに手間と時間を取られることは紛れもない事実です。特に開業準備中は、それだけで神経を大きくすり減らす期間となります。無理なく院をスタートさせるためにも、手続きについては専門家に任せ、本業に注力することをお薦めいたします。
弊所では、関西圏全域において診療所開設に関する手続きの代行を承(うけたまわ)っています。関係各所との事前協議から、書類作成及び立会の同行に至るまで、まるっとしっかりとサポートさせていただきます。下記の報酬は概算額ですが、弊所は「傾聴ができる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。診療所の開設でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
診療所開設届 | 121,000円 |
診療用エックス線装置備付届 | 27,500円 |
医師免許の書き換え | 27,500円 |
施設基準届 | 44,000円 |
生活保護指定医療機関 | 27,500円 |
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