建築物飲料水貯水槽清掃業の登録基準と申請方法について

貯水槽

貯水槽(受水槽)を使用する建物には、規模の大小を問わず、貯水槽の点検や清掃、検査が義務づけられています。水槽の有効容量が10㎥を越えるものについては水道法、10㎥以下のものについては各自治体の条例による規定が適用されます。

建築物衛生管理業における事業登録制度の全体像については下のリンク先記事に解説を委ねることにして、本稿ではその5号業務である建築物飲料水貯水槽清掃業の登録を受けるために必要となる基準や書類作成上のポイントについて解説していきたいと思います。

建築物飲料水貯水槽清掃業とは

1号建築物清掃業建築物内の清掃を行う事業(建築物の外壁や窓の清掃、給排水設備のみの清掃を行う事業は含まない。)
2号建築物空気環境測定業建築物内の空気環境(温度、湿度、浮遊粉じん量、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、気流)の測定を行う事業
3号建築物空気調和用ダクト清掃業建築物の空気調和用ダクトの清掃を行う事業
4号建築物飲料水水質検査業建築物における飲料水について、「水質基準に関する省令」の表の下欄に掲げる方法により水質検査を行う事業
5号建築物飲料水貯水槽清掃業建築物の飲料水貯水槽(受水槽、高置水槽等)の清掃を行う事業
6号建築物排水管清掃業建築物の排水管の清掃を行う事業
7号建築物ねずみ昆虫等防除業建築物内において、ねずみ昆虫等、人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物の防除を行う事業
8号建築物環境衛生総合管理業建築物における清掃、空気調和設備及び機械換気設備の運転、日常的な点検及び補修(以下「運転等」という。)並びに空気環境の測定、給水及び排水に関する設備の運転等並びに給水栓における水に含まれる遊離残留塩素の検査並びに給水栓における水の色、濁り、臭い及び味の検査であって、特定建築物の衛生的環境の維持管理に必要な程度のものを併せ行う事業

上に掲げた建築物衛生管理業8業種のうち、建築物飲料水貯水槽清掃業とは、受水槽、高置水槽等建築物の飲料水貯水槽の清掃を行う事業を言います。単に建物の清掃を行う事業は建築物清掃業(1号業務)、空調ダクトの清掃を行う事業は建築物空気調和用ダクト清掃業(3号業務)、排水管清掃を行う事業は建築物排水管清掃業(6号業務)に該当します。

建築物飲料水貯水槽清掃業の登録

建築物飲料水貯水槽清掃業のうち、後述する基準をすべて満たす事業者は、都道府県知事に対して申請を行うことによって、その登録を受けることができます。

この登録は建築物飲料水貯水槽清掃業を開始するための要件ではありませんが、特定建築物の清掃を受注できたり、公共事業の入札参加資格を獲得できたりといったメリットを享受することができるようになります。

登録の基準

登録は、その営業所ごとに、営業所の所在地を管轄する都道府県知事が行います。登録を受けるためには、登録を受けようとする営業所について、以下の基準をすべて満たすことが求められます。

  • 揚水ポンプ、高圧洗浄機、残水処理機、換気ファン、防水型照明器具、色度計、濁度計及び残留塩素測定器を有すること
  • 機械器具を適切に保管することのできる専用の保管庫を有すること
    • 機械器具に雨水等がかかるおそれのない構造であること
    • 機械器具を置く棚、箱などは水切り、水抜きが簡単にでき、水が溜まらない構造であること
    • 機械器具を保管するのに適切な規模であること
    • 他の用途に用いる機械器具類も併せて保管している倉庫の一部が保管庫となっているような場合には、貯水槽清掃作業に用いる機械器具を保管する場所が独立して設けられており、他のものと誤用するおそれがないようになっていること
    • 保管庫は施錠でき、みだりに機械器具を持ち出せないようになっていること
  • 営業所ごとに1名以上の貯水槽清掃作業監督者が配置されていること
  • 貯水槽清掃作業に従事する者が、次の要件に該当する研修を修了したものであること
    • 研修は貯水槽の清掃作業に従事する者のすべてが受講できるものであること
    • 登録を受けようとする者又は厚生労働大臣の登録を受けた者が、実施主体となって定期的に行われる研修であること
    • 貯水槽の掃除方法、貯水槽の塗装方法及び消毒方法並びに貯水槽の清掃作業の安全及び衛生に関する研修であること
    • 研修の指導にあたる者は、指導するのに適当と認められる者(貯水槽清掃作業監督者又は建築物環境衛生管理技術者等)であること
  • 飲料水の貯水槽の清掃作業及び飲料水の貯水槽の清掃作業に用いる機械器具その他の設備の維持管理の方法が、厚生労働大臣が定める基準に適合していること

原則として自動車を保管庫とすることはできませんが、作業件数がきわめて多く、その都度機械器具の積み降ろしをすることが繁雑な場合には、次の要件を満たしている場合に限り、保管庫として認められることがあります。

  • 機械器具に雨水等がかかるおそれのない構造であること
  • 機械器具を置く棚、箱などは水切り、水抜きが簡単にでき、水が溜まらない構造であること
  • 機械器具を保管するのに適切な規模であること
  • 自動車は貯水槽清掃作業専用であって、他の用途には用いないこと
  • 自動車を適切に保管できる車庫(施錠でき、屋根、壁、シャッターなどで囲まれ、みだりに人が出入りすることができない構造のもの)を有すること
  • 冬季等長期にわたって作業のない時期に機械器具を自動車から降ろす場合には、別途専用の保管場所が用意されていること

貯水槽清掃作業監督者

貯水槽清掃作業監督者の登録要件

貯水槽清掃作業監督者は、上のフローを経て貯水槽清掃作業監督者を修了した国家資格者です。また、建築物環境衛生管理技術者の免状の交付を受けた者を貯水槽清掃作業監督者とすることもできますが、事業登録の有効期間経過後、引き続き貯水槽清掃作業監督者として再登録を受けようとする場合は、再講習の課程を修了し、その修了した日から6年を経過していない者でなければなりません。

貯水槽清掃作業監督者は、登録しようとする営業所について、1名以上配置する必要があります。また、1人の貯水槽清掃作業監督者を2以上の営業所又は業務の監督者等とすることや、特定建築物における貯水槽建築物環境衛生管理技術者との兼務は認められていません。

維持管理の方法の基準

  • 受水槽の清掃を行った後、高置水槽、圧力水槽等の清掃を行うこと
  • 貯水槽(貯湯槽を含む。)内の沈でん物質及び浮遊物質並びに壁面等に付着した物質を洗浄等により除去し、洗浄を行った場合は、用いた水を完全に排除するとともに、貯水槽周辺の清掃を行うこと
  • 貯水槽の清掃終了後、塩素剤を用いて2回以上貯水槽内の消毒を行い、消毒終了後は、消毒に用いた塩素剤を完全に排除するとともに、貯水槽内に立ち入らないこと
  • 貯水槽の水張り終了後、給水栓及び貯水槽内における水について、下の表に掲げる事項について検査を行い、当該各号の下欄に掲げる基準を満たしていることを確認すること
  • 基準を満たしていない場合は、その原因を調査し、必要な措置を講ずること
  • 貯水槽の清掃作業に用いる機械器具その他の設備について、定期に点検し、必要に応じ、整備又は修理を行うこと
残留塩素の含有率遊離残留塩素の場合は100万分の0.2以上
結合残留塩素の場合は100万分の1.5以上
色度5度以下であること
濁度2度以下であること
臭気異常でないこと
異常でないこと

必要となる書類

  • 登録申請書(WARD:46KB)
  • 付近見取図、施設平面図等
  • 設備・機器名簿
  • 監督者等名簿
  • 研修実施状況(計画)
  • 作業実施方法等
  • 登記簿謄本(法人)
  • 機械器具の写真
  • 機械器具等の納品書、リース契約書など、登録しようとする営業所にて所有、占有していることを証する書類
  • 保管庫の写真(施錠できることが確認できるもの)
  • 保管庫での機械器具等の保管状況のわかる写真
  • 貯水槽清掃作業監督(再)講習会修了証書の写し及び原本(原本照合のため)
  • 貯水槽清掃作業監督者の健康保険証の写し又は従事証明書(雇用されていることが証明できるもの)
  • 建築物環境衛生管理技術者の免状の写し等、研修の指導にあたる者が、指導者として適当であることを証する書類(登録を受けようとする者が研修を行う場合)
  • 厚生労働大臣の登録を受けた者が実施主体となって行う従事者研修を受講した場合は、修了証書の写し
  • 検便の検査成績書等の写し(実施していない場合は、確実な実施日を作業実施方法等の欄に記入し、必ず実施することが書面上で約束されていること。)
  • 登録手数料35,000円〈都道府県収入証紙〉

また、登録期間中に登録申請事項に変更が生じた場合には、変更があった日から30日以内に変更の届出を行う必要があります。

書類作成のポイント

登録申請書

法人の場合、登録申請書の氏名欄には、登記簿に記載されている名称及び代表者氏名に加え、代表者住所を漏れなく記入します。

付近見取図、施設平面図等

営業所の所在地がわかる付近見取図と、事務所及び保管場所を記載した施設平面図を添付します。

設備・機器名簿

  • 機械器具等は営業所ごとに所有、占有されていること
  • 登録要件である機械器具等の名称をすべて記載し、すべての写真を添付すること
  • 型式の欄には、製造会社名と型式の両方が記載され、添付する写真で確認できること
  • 購入年月日欄には、納品書等の日にちが記入され、納品書等の写しが添付されていること

監督者等名簿

  • 貯水槽清掃作業監督者は、2以上の営業所又は業務の監督者等として登録されていないこと
  • 貯水槽清掃作業監督者は、特定建築物における建築物環境衛生管理技術者を兼務していないこと

研修実施状況(計画)

研修は、貯水槽清掃作業監督者又は貯水槽清掃作業監督者と同等以上の知識、技能を有する者(建築物環境衛生管理技術者等)が、1年に1回以上、貯水槽の清掃作業に従事する者すべてを対象にして、貯水槽の掃除方法、貯水槽の塗装方法及び消毒方法並びに貯水槽の清掃作業の安全及び衛生について指導を行うものです。

日にちは分けて実施しても構いません。研修の時間数については、おおむね7時間とされています。

新規登録の場合は過去1年間、再登録の場合は過去6年間の研修実績を、今後1年間の研修計画とともに記載します。なお、研修計画の参加従事者数については記載する必要はありません。

作業実施方法等

  • 同一の監督者が2以上の班を編成していることがないようにすること
  • 告示に定める基準に合致する作業及び機械器具等の維持管理の方法を記入すること
  • 告示に定める基準に次の内容を含ませること
    • 作業工程(貯水槽清掃後における貯水槽の水等の検査方法に関する事項を含む。)
    • 使用する塩素剤の名称及び使用方法
    • 機械器具の洗浄、作業衣等の消毒の方法
    • 機械器具等の点検の方法
    • 保管庫の管理責任者の氏名
    • 従事者の検便等の時期及び検査機関(おおむね6ヶ月に1回実施すること)
    • 作業報告作成の手順・記入する内容(作業報告書の添付に替えることも可能。)
  • 点検等の定期的に行われなければならない項目については、明確に実施回数を記載すること(例 : ○月に○回以上)
  • 貯水槽の清掃作業及び貯水槽の清掃用機械器具等の維持管理は原則として自ら実施すること
  • 業務委託の有無を○で囲むこと
  • やむを得ず業務を委託する場合は、以下の内容を記入すること
    • 委託を受ける者の氏名(法人は名称)、委託する業務の範囲及び業務を委託する期間を建築物維持管理権原者に通知するとともに、受託者から業務の実施状況について報告を受けること等により、受託者の業務の方法が告示に定める基準に掲げる要件を満たしていることを常時把握すること
    • 委託を受ける者の氏名(法人は名称)
    • 委託する業務の範囲
    • 受託者の業務の方法が、告示に定める基準に掲げる要件を満たしていることを把握する方法
  • やむを得ず業務を委託する場合で、委託先が建築物衛生管理業の登録を受けている場合は、登録番号を記入し、登録証明書の写しを添付すること
  • やむを得ず業務を委託する場合で、委託先が登録を受けていない場合は、業務が正しく行われていることを把握するために、委託先にも「設備・機械名簿」「監督者等名簿」「監督者としての資格を証明するもの」「研修実施状況(計画)」「作業実施方法等」の必要書類を提出してもらい、それらを添付すること
  • 建築物維持管理権原者又は建築物環境衛生管理技術者からの貯水槽の清掃作業及び貯水槽の清掃作業に用いる機械器具その他の設備の維持管理に係る苦情及び緊急の連絡に対して、迅速に対応できる体制を整備しておくこと
  • 緊急連絡先の24時間対応可能な電話番号を記入し、24時間対応可能である旨についても明記すること

まとめ

貯水槽は生活に欠かせないライフラインのひとつであり、その衛生的環境の維持管理を目的とする貯水槽清掃事業も、重要なインフラ整備事業として位置づけられています。

今後は衛生面の維持に加え、防災や感染症対策といった予防的観点からも、その社会的責任の範囲は拡大していくことが予測されます。既存事業者の皆さまには、次の一手に備えて、登録制度の利用を検討することを強くお薦めしています。

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変更届等22,000円
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