建築物飲料水水質検査業の登録基準と申請方法について

水滴

飲料水の水質維持は国民の生活に直結する重要なインフラのひとつです。このため建築物の所有者には、建築物内における飲料水の水質を定期的に検査する義務を負いますが、専門的な知識を必要とする検査を建物所有者自身が実施することは現実的ではなく、これを外部の建築物飲料水水質検査業者に委託することができます。

建築物の飲料水について検査を行う事業は建築物飲料水水質検査業と言われ、8業種ある建築物衛生管理業のひとつに数えられ、一定以上の基準を満たす事業者を優遇する事業者登録制度の対象となっています。

そこで本稿では、建築物飲料水水質検査業の登録制度に関するガイダンスとともに、登録を受けるために必要となる手続きや登録の基準等について詳しく解説していきたいと思います。

建築物飲料水水質検査業

建築物飲料水水質検査業とは、建築物における飲料水について、「水質基準に関する省令」に掲げる方法により水質検査を行う事業事業を言います。8業種(下表)ある建築物衛生管理業のうちでは「4号業務」に該当し、他の業種と同様、特に手続きを経ることなく営業を開始することができますが、後述する基準をすべて満たす事業者は、申請することにより、都道府県知事の登録を受けることができます。

なお、建築物の飲料水貯水槽(受水槽、高置水槽等)の清掃を行う事業は建築物飲料水貯水槽清掃業事業(5号業務)、排水管清掃を行う事業は建築物排水管清掃業(6号業務)に該当するそれぞれ別の業種となります。

1号建築物清掃業建築物内の清掃を行う事業(建築物の外壁や窓の清掃、給排水設備のみの清掃を行う事業は含まない)
2号建築物空気環境測定業建築物内の空気環境(温度、湿度、浮遊粉じん量、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、気流)の測定を行う事業
3号建築物空気調和用ダクト清掃業建築物の空気調和用ダクトの清掃を行う事業
4号建築物飲料水水質検査業建築物における飲料水について、「水質基準に関する省令」の表の下欄に掲げる方法により水質検査を行う事業
5号建築物飲料水貯水槽清掃業建築物の飲料水貯水槽(受水槽、高置水槽等)の清掃を行う事業
6号建築物排水管清掃業建築物の排水管の清掃を行う事業
7号建築物ねずみ昆虫等防除業建築物内において、ねずみ昆虫等、人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物の防除を行う事業
8号建築物環境衛生総合管理業建築物における清掃、空気調和設備及び機械換気設備の運転、日常的な点検及び補修(以下、運転等)並びに空気環境の測定、給水及び排水に関する設備の運転等並びに給水栓における水に含まれる遊離残留塩素の検査並びに給水栓における水の色、濁り、臭い及び味の検査であって、特定建築物の衛生的環境の維持管理に必要な程度のものを併せ行う事業

建築物飲料水水質検査業の登録

建築物飲料水水質検査業のうち、後述する基準をすべて満たす事業者は、都道府県知事に対して申請を行うことによって、その登録を受けることができます。

すでにお伝えしているように、この登録は建築物飲料水水質検査業を開始するための要件ではありませんが、特定建築物の清掃を受注することができたり、公共事業の入札参加資格を獲得できたりする等のメリットを享受することができるようになります。

申請は各都道府県の窓口(多くの場合は保健所)において、おおむね以下の書類を提出することにより行います。

  • 登録申請書
  • 営業所の所在地がわかる付近見取図
  • 事務所及び保管場所を記載した施設平面図
  • 設備・機器名簿
  • 監督者等名簿
  • 作業実施方法等
  • 登記簿謄本(法人)
  • 機械器具の写真
  • 機械器具等の納品書、リース契約書など、登録しようとする営業所にて所有、占有していることを証する書類
  • 清掃作業監督(再)講習会修了証書の写し及び原本(原本照合のため)
  • 清掃作業監督者の健康保険証の写し又は従事証明書(雇用されていることが証明できるもの)
  • 検査室の写真
  • 水質検査実施者の卒業証明書と実務従事証明書又は衛生検査技師又は臨床検査技師の免状の写しと実務従事証明書又は技術士登録証の写し及び原本(原本照合のため)
  • 水質検査実施者の健康保険証の写し又は従事証明書(雇用されていることが証明できるもの)
  • 登録手数料35,000円〈都道府県収入証紙〉

また、登録期間中に登録申請事項に変更が生じた場合には、変更があった日から30日以内に変更の届出を行う必要があります。

登録の基準

登録を受けるためには、登録を受けようとする営業所について、以下の基準をすべて満たすことが求められます。

  • 高圧蒸気滅菌器及び恒温器、フレームレス-原子吸光光度計or誘導結合プラズマ発光分光分析装置or誘導結合プラズマ-質量分析装置、イオンクロマトグラフ、乾燥器、全有機炭素定量装置、pH計、分光光度計又は光電光度計、ガスクロマトグラフ-質量分析計、電子天びん又は化学天びんを有すること
  • 水質検査を適格に行うことのできる検査室を有すること実験台、流し台、作業台、測定台及び薬品戸棚の配置が検査実施者の作業にふさわしい配置となっていること
    • 実験台等の上の機械器具の配置に余裕があり、使用しやすい配置となっていること
    • ドラフトチャンバーが設置されていること
    • 必要な換気扇、水栓、ガス栓、コンセントが設けられていること
    • 細菌学的検査を行う場所と理化学的検査を行う場所は区別されていることが望ましいこと
    • 天びん台など必要な部分に防震措置が施されていること
  • 営業所ごとに1名以上の清掃作業監督者が配置されていること
  • 水質検査及び水質検査に用いる機械器具その他の設備の維持管理の方法が、厚生労働大臣が次に定める基準に適合していること

水質検査実施者

水質検査実施者は、以下のフローを経た国家資格者ですが、他の建築物衛生管理業7業種とは異なり、単に講習会を修了すればいいというわけではなく、一定の資格とともに実務経験を有することがその要件とされています。

登録しようとする営業所においては、貯水槽清掃作業監督者を1名以上配置する必要がありますが、同一の貯水槽清掃作業監督者を複数の営業所又は業務の監督者等とすることや、特定建築物における貯水槽建築物環境衛生管理技術者と兼務させることは認められていません。

水質検査実施者の登録要件

維持管理の方法の基準

飲料水の水質検査に用いる機械器具その他の設備が、以下の方法により維持管理されていることが求められています。

  • 水質基準に関する省令の表に掲げる事項について水質検査を行う場合は、同令に規定する厚生労働大臣が定める方法により行うこと
  • 水質検査は試料の採取後速やかに行うこととし、試料を保存する場合は、試料の水質が変化しないよう冷暗所に保存すること
  • 水質検査の結果を5年間保存すること
  • 水質検査に用いる試薬及び標準物質は、施錠できる保管庫等に保管すること
  • 水質検査に用いる機械器具その他の設備について、定期に点検し、必要に応じ、整備又は修理を行うこと
  • 使用する機械器具その他の設備の点検等の記録を、機械器具その他の設備ごとに整理して保管すること

設備・機器名簿

機械器具等は、営業所ごとに所有又は占有されていることが求められているため、登録要件となっている機械器具等については、設備・機器名簿内においてその名称をすべて記載し、写真を添付する必要があります。

型式の欄には、製造会社名と型式の両方が記載された上、添付する写真からこれを確認できること、購入年月日欄には、納品書等の日にちが記入され、納品書等の写しが添付されていることが求められています。

作業実施方法等

作業実施方法等については、以下の事項をすべて網羅する内容である必要があります。

  • 同一の監督者が2以上の班を編成していることがないようにすること
  • 告示に定める基準に合致する作業及び機械器具等の維持管理の方法を記入すること
  • 告示に定める基準に次の内容を含ませること
    • 水質検査の方法(試料の採水に関する事項を含む)
    • 試薬及び標準物質の保管方法
    • 検査室の整理及び清掃の方法並びに管理責任者の氏名
    • 機械器具の点検等の方法並びにこれらの記録の保管方法
    • 測定結果報告作成の手順・記入する内容(測定結果報告書の添付に替えることも可能。)、測定結果の保存方法及び保存責任者の氏名
  • 点検等の定期的に行われなければならない項目については、明確に実施回数を記載すること(例 : ○月に○回以上)
  • 水質検査及び水質検査に用いる機械器具その他の設備の維持管理は原則として自ら実施すること
  • 業務委託の有無を○で囲むこと
  • やむを得ず業務を委託する場合は、以下の内容を記入すること
    • 委託を受ける者の氏名(法人は名称)、委託する業務の範囲及び業務を委託する期間を建築物維持管理権原者に通知するとともに、受託者から業務の実施状況について報告を受けること等により、受託者の業務の方法が告示に定める基準に掲げる要件を満たしていることを常時把握すること
    • 委託を受ける者の氏名(法人は名称)
    • 委託する業務の範囲
    • 受託者の業務の方法が、告示に定める基準に掲げる要件を満たしていることを把握する方法
  • やむを得ず業務を委託する場合で、委託先が建築物衛生管理業の登録を受けている場合は、登録番号を記入し、登録証明書の写しを添付すること
  • やむを得ず業務を委託する場合で、委託先が登録を受けていない場合は、業務が正しく行われていることを把握するために、委託先にも「設備・機械名簿」「監督者等名簿」「監督者としての資格を証明するもの」「研修実施状況(計画)」「作業実施方法等」の必要書類を提出してもらい、それらを添付すること
  • 建築物維持管理権原者又は建築物環境衛生管理技術者からの水質検査及び水質検査に用いる機械器具その他の設備の維持管理に係る苦情及び緊急の連絡に対して、迅速に対応できる体制を整備しておくこと
  • 緊急連絡先の24時間対応可能な電話番号を記入し、24時間対応可能である旨についても明記すること

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建築物飲料水水質検査業登録申請77,000円〜
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