静岡の特定遊興飲食店営業許可申請について│ナイトクラブ・ライブハウス等
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)では、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る)で、午前6時後翌日の午前0時前の時間においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものを除く)を特定遊興飲食店営業と定義しています。
この条件を満たす営業であれば、スポーツバー、ナイトクラブ、ライブハウス、ショーパブなど、営業形態の別を問わず特定遊興飲食店に該当し、営業をはじめようとするときは、公安委員会(警察)からの許可が必要となります。
特定遊興飲食店営業は、風営法に優先して各自治体の条例の影響を受ける営業形態であるため、都道府県ごとに規制の厳しさや、手続きの難易度が異なるのが特長となっています。
そこで本稿では、これから静岡県内において特定遊興飲食店営業をはじめようとされる皆さまに向けて、特定遊興飲食店営業をはじめるにあたり必要となる基礎知識や許可の申請方法について詳しく解説していきたいと思います。
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目 次
特定遊興飲食店営業
冒頭の回りくどい表現を分かりやすく分解すると、以下4つの条件をすべて満たす営業が、特定遊興飲食店営業に該当することになります。
- 遊興設備を設けていること
- 客に遊興をさせること
- 客に酒類を提供すること
- 深夜帯に営業すること
そもそもこれらの飲食店を規制する目的は、飲酒と遊興による享楽的な雰囲気が深夜まで及ぶことに起因するトラブルを未然に防止することにあるため、逆に言えば、客に遊興をさせる設備のある店舗であっても、お酒を提供しない店舗であったり、深夜帯に営業を行わない飲食店であれば、この規制の対象からは除外されることとなります。
遊興について
遊興とは、文字どおり「遊び興じさせること」を意味しますが、警察庁の通達(解釈運用基準)によれば、具体例として以下の行為が遊興に該当するものとして明示されています。
- 不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の興行等を見せる行為
- 不特定の客に歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏等を聴かせる行為
- 客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為
- のど自慢大会等の遊戯、ゲーム、競技等に不特定の客を参加させる行為
- カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客に歌うことを勧奨し、不特定の客の歌に合わせて照明の演出、合いの手等を行い、又は不特定の客の歌を褒めはやす行為
- バー等でスポーツ等の映像を不特定の客に見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為
- 上記のほか、営業者側の積極的な働き掛けにより不特定の客に遊び興じさせる行為
ポイントは、これらの行為がすべて飲食店側から積極的に働きかけているものであるという点にあります。このため、単に店内で映像を流しているだけの場合や、店内にカラオケ機器を設置しているだけの状態であれば遊興には該当しません。
なお、客に遊興をさせない飲食店であっても、深夜帯に酒類をメインに提供する営業は深夜酒類提供飲食店に該当し、営業所所在地を管轄する警察署に対して届出を行う必要があります。
また、遊興をさせる対象が「不特定の客」であるものが特定遊興飲食店であり、「特定の客」を対象として遊興させるものは「接待」に該当し、特定遊興飲食店ではなく風俗営業の規制対象となります。
事業性について
営利性と継続性といった事業性があることも特定遊興飲食店営業の該当条件とされているため、たとえば忘年会や結婚式の二次会などのような単発的で非営利な催しや、サッカーのワールドカップのような短期間のイベントに併せて営業を行うことは、その他の条件に当てはまっていたとしても特定遊興飲食店営業には該当しません。
なお、短期間のイベントとは、1回につき一晩のみ開催されるものであって、引き続き6ヶ月以上開催されないものとされています。
遊興させるための設備
遊興設備には、映像を流すモニター、カラオケ機器及びショーのためのステージ等が該当します。ただし、お酒を提供することを前提としないコンサートホールやスタジアムは、設備はあっても他の条件を満たさない限りは特定遊興飲食店営業には該当しません。また、飲食のスペースと遊興のスペースとが明確に区画されているような場合も特定遊興飲食店営業には該当しません。
営業時間
原則として午前0時から午前6時までの間に営業するものが特定遊興飲食店営業に該当します。そもそも午前0時までの営業については、通常の飲食店営業許可の範疇で営業することができるため、深夜営業を行わないライブハウスなどでお酒を提供していたとしても、特定遊興飲食店営業の許可を取得する必要はありません。
また、静岡県内ではその全域において、午前5時から午前6時までの時間帯に特定遊興飲食店営業を営むことはできません。
特定遊興飲食店営業許可
特定遊興飲食店営業を営もうとする者は、後述する許可要件をすべて満たした上で営業所を管轄する警察署を窓口として静岡県公安委員会に対して申請し、その許可を受ける必要があります。
大まかな手続きの流れは以下のとおりですが、そもそも飲食店であることから、特定遊興飲食店営業の許可申請にあたっては、飲食店営業許可を先立って取得することが前提条件となります。
- 物件の事前調査
- 物件の確定・契約
- 飲食店営業許可の申請
- 保健所による現地調査
- 飲食店営業許可の通知
- 特定遊興飲食店営業許可の申請
- 警察(浄化協会)による現地調査
- 審査(申請から約55日)
- 許可の通知
なお、それぞれ行政機関(保健所・警察署)に支払う申請手数料は以下のとおりです。
飲食店営業許可申請 | 16,000円 |
特定遊興飲食店営業許可申請 | 24,000円 |
合計 | 40,000円 |
許可申請に必要となる書類
- 許可申請書
- 営業の方法
- 営業所の平面図
- 営業所の使用権限証明書類
- 使用承諾書
- 賃貸借契約書の写し
- 建物登記簿謄本など
- 申請者・役員の住民票の写し(本籍地記載)
- 誓約書(申請者・役員・管理者)
- 身分証明書(申請者・役員・管理者)
- 管理者の写真
- 飲食店営業許可証の写し
- 定款(法人)
- 登記事項証明書(法人)
許可の要件
特定遊興飲食店営業許可は、都道府県ごとに求められる要件が異なるのが特長ですが、どの地域においても、人的要件、場所的要件及び施設設備の構造要件の3つを満たすことを求められることに違いはありません。
営業が許容されている地域も限定されているため、物件を契約したものの許可が下りない立地条件であったという話しも、ちょくちょく耳にする事実でもあります。
特定遊興飲食店営業をはじめようとする際は安易な見切り発車は避け、所轄の警察署と事前に協議するか、もしくは風営法に精通した行政書士に相談するようにしてください。
場所的要件
営業所設置許容地域は、各都道府県の条例において告示されており、定められた地域内でなければ営業所を設けることができません。静岡県では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(PDF:481KB)により、以下のとおり、限られた一部の繁華街や観光地においてのみ営業が許容されているにとどまります。
市区町名 | 地域 |
---|---|
下田市 | ⼀丁⽬(13番〜15番までを除く)〜三丁目、⻄本郷⼀丁⽬及び東本郷⼀丁⽬の商業地域 |
伊東市 | 銀座元町、寿町、幸町、桜⽊町⼀丁⽬、桜⽊町⼆丁⽬、猪⼾⼀丁⽬、猪⼾⼆丁⽬、宝町、⽵の内⼆丁⽬、中央町、東松原町、松川町、松原本町、松原湯端町、弥⽣町、湯川⼀丁⽬、湯川三丁⽬及び和⽥⼀丁⽬の商業地域 |
熱海市 | 上宿町、銀座町、咲⾒町(7番を除く)、清⽔町、昭和町、⽥原本町、中央町、渚町及び和⽥浜南町の商業地域 |
三島市 | ⼀番町、⼤宮町三丁⽬、芝本町、中央町、広⼩路町及び本町の商業地域 |
沼津市 | 上⼟町、⼤⼿町⼀丁⽬〜五丁⽬まで、鵰町、幸町、⻄条町、⿂町、三枚橋町、下本町、⽩銀町、新宿町、新町、末広町、浅間町、添地町、⼤⾨町、⾼島本町、⾼沢町、⾼島町、通横町、仲町、⼋幡町、東宮後町、本町、真砂町及び町⽅町の商業地域 |
御殿場市 | 新橋の商業地域のうち、県道沼津⼩⼭線、県道御殿場停⾞場線、市道0216号線、市道4242号線及び市道1514号線に囲まれた地域並びに県道沼津⼩⼭線、県道御殿場停⾞場線、市道1502号線及び市道1480号線に囲まれた地域 |
富⼠市 | 富⼠町、平垣、平垣本町及び本町の商業地域のうち、東海旅客鉄道東海道本線北側の地域並びに今泉⼀丁⽬、中央町⼀丁⽬〜三丁⽬まで、伝法、錦町⼀丁⽬、御幸町、吉原⼀丁⽬〜五丁⽬まで、依⽥原及び依⽥原町の商業地域 |
富⼠宮市 | ⼤宮町1番、⼤宮町2番、⼤宮町8番、⼤宮町10番、⼤宮町12番〜32番、貴船町1番、貴船町2番、中央町2番〜5番、中央町7番〜9番、中央町12番〜15番、⻄町1番〜5番、⻄町10番〜17番、⻄町25番〜27番、東町13番、東町14番、東町21番〜23番、東町30番及び宮町4番〜10番までの商業地域 |
静岡市清⽔区 | 相⽣町、旭町、江尻町、江尻東⼀丁⽬〜三丁⽬、⼤⼿⼀丁⽬、⼩芝町、銀 座、袖師町、宝町、千歳町、辻⼀丁⽬、巴町、富⼠⾒町、本郷町、真砂町、万世町⼀丁⽬、万世町⼆丁⽬、港町⼆丁⽬及び宮代町の商業地域並びに⼊船町、島崎町、新港町、清開⼀丁⽬、清開三丁⽬、⽇の出町、松原町及び港町⼀丁⽬ |
静岡市葵区 | 安倍町、梅屋町、⼤鋸町、追⼿町、上⽯町、川辺町⼀丁⽬、川辺町⼆丁⽬、⾦座町、⾞ 町、黒⾦町、紺屋町、呉服町⼀丁⽬、呉服町⼆丁⽬、駒形通⼀丁⽬から駒形通三丁⽬まで、栄町、桜⽊町、七間町、昭和町、新通⼀丁⽬、駿河町、⼤⼯町、鷹匠⼀丁⽬〜三丁⽬、茶町⼀丁⽬、天王町、伝⾺町、常磐町⼀丁⽬〜三丁⽬、研屋町、中町、⻄⾨町、⾺場町、⼈宿町⼀丁⽬、⼈宿町⼆丁⽬、⽇出町、富⼠⾒町、双葉町、宮ヶ崎町、本通⼀丁⽬〜⼗丁⽬、本通⻄町、御幸町、弥勒⼀丁⽬、⼋千代町、横⽥町、吉野 町、両替町⼀丁⽬及び両替町⼆丁⽬の商業地域のうち、安倍町の県道井川湖御幸線⻄側かつ県道静岡環状線北側、鷹匠三丁⽬の県道静岡環状線東側及び横⽥町の市道御幸町柚⽊旧東海道線北側を除く地域 |
静岡市駿河区 | 泉町1番〜3番、泉町6番〜9番、稲川⼀丁⽬1番〜7番及び南町1番〜11番までの商業地域 |
掛川市 | 駅前、紺屋町、肴町、中町及び連雀の商業地域 |
浜松市中区 | 旭町、池町、板屋町、海⽼塚町、海⽼塚⼀丁⽬の市道⻯禅寺雄踏線北側、海⽼塚⼆丁⽬の市道⻯禅寺雄踏線北側、尾張町、鍛冶町、北⽥町、北寺島町の市道早出寺脇線⻄側及び市道飯⽥鴨江線北側、元⽬町、紺屋町、栄町、肴町、塩町、下池川町の⼀般国道152号線東側かつ市道植松和地線南側、神明町、砂⼭町の市道海⽼塚砂⼭1号線北側かつ市道砂⼭34号線⻄側かつ市道砂⼭北寺島2号線北側、⼤⼯町、⾼町、⽥町、千歳町、中央⼀丁⽬、中央三丁⽬、伝⾺町、利町、常盤町、平⽥町、成⼦町、旅籠町、⼋幡町、早⾺町、東⽥町、松城町の市道松城栄1号線東側、元⿂町、元城町の⼀般国道257号線東側及び市道⾺込住吉線南側、元浜町、⼭下町並びに連尺町の商業地域 |
さらには都道府県ごとに、特定遊興飲食店営業の営業所からの影響を受けないよう配慮すべき施設として保全対象施設が指定されており、特定遊興飲食店営業の営業所は、この保全対象施設からも一定の距離を置いて設置する必要があります。
静岡県では、以下の施設が保全対象施設に指定されており、特定遊興飲食店営業の営業所は、これらの施設(保全対象施設の⽤に供するものと決定した⼟地を含む)つから50mを超えて離れた場所でなければ営業を行うことができません。
- 病院又は有床診療所
- 児童福祉法第7条第1項に規定する児童福祉施設(保育所及び幼保連携型認定こども園(いずれも午前6時〜翌⽇の午前0時までの時間においてのみ保育を⾏うものに限る)、児童厚⽣施設、児童発達⽀援センター並びに児童家庭⽀援センターを除く)
ただし、常態として移動する施設において営まれるものや、3か⽉以内の期間を限って営まれるものについては、特例的に以下の地域において特定遊興飲⾷店営業を営むことが認められています。
市区町名 | 地域 |
---|---|
三島市 | ⼤宮町⼆丁⽬、三島⼤社境内 |
富⼠市今井 | 妙法寺境内 |
富⼠宮市宮町 | 浅間⼤社境内 |
静岡市清⽔区⻄久保 | 秋葉⼭神社境内 |
静岡市葵区宮ヶ崎町 | 静岡浅間神社境内 |
焼津市焼津⼆丁目 | 焼津神社境内 |
島⽥市 | 厳室神社境内(⾦⾕) ⼋雲神社境内(金谷河原) |
磐⽥市 | 府⼋幡宮神社境内(中泉) ⽮奈⽐売神社境内(⾒付) |
浜松市中区鴨江四丁⽬ | 鴨江寺境内 |
人的要件
風営法には、特定遊興飲食店営業許可を行うことができない者についての定めがあります。具体的に、申請者(法人の場合は役員)又は管理者が以下のいずれかの事由(欠格事由)に該当する場合は、特定遊興飲食店営業許可を受けることができません。
- 成年被後見人・被保佐人
- 破産者で復権を得ないもの
- 1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は無許可風俗営業、刑法等一定の法律に違反して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられてから5年が経過しないもの
- 風俗営業許可を取り消されて5年を経過しないもの
- アルコール・麻薬・大麻・アヘン・覚せい剤の中毒者
また、申請者(法人の場合は役員)又は管理者が外国人である場合は、以下の在留資格のいずれかを有する者のみが特定遊興飲食店営業許可を申請することができます。
- 日本人の配偶者等
- 永住者、特別永住者、永住者の配偶者等
- 定住者
- 経営・管理
構造要件
特定遊興飲食店営業の施設や設備については、以下の要件をすべて満たすことが要求されています。
- 客室の床面積は、1室につき33㎡以上とすること
- 客室に見通しを妨げる設備(1mを超える間仕切りなど)がないこと
- 営業所内の照度が10ルクス以下とならないよう維持されるため必要な設備を有すること
- 風俗を害するおそれのある写真・装飾等の設備がないこと
- 騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないよう維持されるため必要な設備を有すること
- 客室の出入口(営業所外に直接通ずる出入口は除く)に施錠の設備を設けないこと
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