風俗営業の変更届と書換申請について│風営法許可取得後に必要となる手続きとは
この記事にたどり着いたということは、既に事業として風俗営業に携わっておられる皆さまではないかと察します。したがって、キャバクラ(1号営業)、雀荘、パチンコ店(4号営業)、ゲームセンター(5号営業)を営業しようとする際に風俗営業許可を取得する必要があることについては「何をいまさら」といったところではないかと思います。
その一方で、氏名(法人名・屋号含む)や住所等に変更が生じた場合に変更届や、許可証の書換申請を行う義務があることについては案外見落としているか、軽んじているようにも感じています。
定められた期間内に変更届や書換申請書の提出ができなかった場合は、後述する「遅延理由書」を提出しなければならなくなるほか、風俗営業許可の取消事由に該当してしまうケースもあるので要注意です。
そこで本稿では、風俗営業の変更届や書換え申請といった手続きが必要となるケースや詳しい届出の方法などについて一緒に確認していきたいと思います。
目 次
風俗営業の変更に関する手続き
風俗営業の変更に関する手続きとひとことで表現しても、案外その手続きは複雑です。「何を」「どの程度」変更するのかによって、求められる手続きは以下のように異なります。
変更の事由 | 必要な手続き |
---|---|
営業者の氏名又は住所の変更 | 変更後10日以内の届出 |
営業所の名称の変更 | 変更後10日以内の届出 |
管理者の氏名又は住所の変更 | 変更後10日以内の届出 |
法人の名称又は住所の変更 | 変更後20日以内の届出 |
法人代表者の氏名又は住所の変更 | 変更後20日以内の届出 |
法人役員の氏名又は住所の変更 | 変更後20日以内の届出 |
営業所の構造又は設備の軽微な変更 | 変更後1か月以内の届出 |
営業所の構造又は設備の変更 | あらかじめ承認が必要 |
営業者の変更 | 新規申請 |
営業所の移転 | 新規申請 |
また、変更した事項が風俗営業許可証の記載事項である場合には、「変更届」と併せて、許可証の「書換申請」を行う必要があります。
構造及び設備の承認申請
風俗営業者は、増築、改築その他の行為による営業所の構造又は設備の変更をしようとするときは、軽微な変更に該当する場合を除き、あらかじめ都道府県公安委員会の承認を受けることを義務付けされています。
具体的には、営業所の構造又は設備について以下の変更を行おうとする際にあらかじめ承認を受ける必要が生じます。
- 大規模の修繕(建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕)又は大規模の模様替に該当する変更(建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替)
- 客室の位置、数又は床面積の変更
- 壁、ふすまその他営業所の内部を仕切るための設備の変更
- 営業の方法の変更に係る構造又は設備の変更
なお、軽微な変更に当たらない変更のうち「営業の方法の変更に係る構造又は設備の変更」とは、雀荘をパチンコ屋に変更する場合、和風料理店を洋風カフェに変更する場合等、営業の種類を変えることにより営業の方法に基本的な変更がある場合は、これに該当することとなります。したがって、許可証に記載の「営業の種類」を異にする営業方法の変更については、公安委員会の承認が必要になります。
軽微な変更
上記に該当しない構造又は設備の変更については、「軽微な変更」として承認申請の対象外となりますが、変更後1か月以内に、所轄の警察署に対して変更届を提出する必要があります。
具体的には、営業所の小規模の修繕又は模様替、食器棚その他の家具(作り付けのものを除く)、飲食物の自動販売機その他これに類する設備の設置又は入替え、照明設備、音響設備又は防音設備の変更、遊技設備(パチンコ屋等営業に係る遊技機を除く)の増設又は交替(遊技設備の区分ごとの数の変更がある場合に限る)等が軽微な変更に該当します。
★ポイント
構造設備基準については常に新規許可申請の際と同様の基準が適用されるため、変更時においてこの基準に適合していなければ承認を受けることはできません。
新規許可が必要なケース
営業者の変更についてはそもそも許可の対象者が変わるため、変更届を提出するだけでは足りず、新規許可を取得し直す必要があります。個人から別の個人が営業者となるケースはもちろんのこと、営業していた個人が法人を設立し、その法人が営業者となるケースでも新規許可を取得する必要があります。
また、風俗営業許可は営業所に対する許可であるため、許可の根拠(要件)となった営業所を移転する場合も、移転先において新たに許可を取得し直す必要があります。
変更届の手続き
承認申請書、変更届出書及び書換申請書の提出先は営業所を管轄する警察署の保安係です。提出した届出書等は警察署を経由して公安委員会に届け出るという仕組みになっています。
★変更後10日以内の届出
- 営業者の氏名又は住所の変更
- 営業所の名称の変更
- 管理者の氏名又は住所の変更
★変更後20日以内の届出
- 法人の名称又は住所の変更
- 法人代表者の氏名又は住所の変更
- 法人役員の氏名又は住所の変更
管理者の変更については、14日以内に管理者を選任して、変更した日から10日以内に届出が必要となります。
★変更後1か月以内の届出
- 営業所の構造又は設備の軽微な変更
書換申請の手続き
許可証の記載事項でもある営業者の氏名や名称、営業所の所在地や名称に変更が生じた場合には、変更届と併せて許可証の書換えを申請する必要があります。
また、変更届のみであれば手数料は不要ですが、風俗営業許可証の書換申請を行う場合には、書換申請手数料の1,500円を納付することが必要になります。
事後連絡
以下の事項について変更を行う際には原則として変更届は不要ですが、事後的に所轄警察署に連絡することが望ましいものとされています。特に椅子やテーブルの位置や配置の変更については、所轄警察署によっては届出を行うよう指導しているところも多いので気をつけましょう。
- 軽微な破損個所の原状回復
- 電球の交換程度の設備の更新
- ゲーム機のソフトのみの入れ替え(5号営業)
- 遊技設備の位置の変更
- 椅子やテーブルの位置や配置の変更
添付書類
変更届、書換申請の際には届出書又は申請書を提出する必要がありますが、変更の事実を証明するため、併せて以下の書類を添付する必要があります。
変更の事由 | 必要書類 |
---|---|
個人事業主の氏名や住所の変更 | 戸籍謄本や住民票 |
法人の名称や所在地、代表者、代表者の住所、役員の変更 | 法人の履歴事項全部証明書 |
役員や管理者の追加、変更 | 対象者の住民票、身分証明書、誓約書 |
遅延理由書
風俗営業に限ったことではありませんが、変更の届出を怠っていたことを行政機関から指摘された上、遅延理由書の提出を求められてから慌てて弊所まで相談に来られるケースがあります。
この遅延理由書を所定の様式にしている都道府県は少ないでしょうから、文書はすべて営業者側が用意することになります。反省文や始末書ではないので、届出が遅延した理由について簡潔に述べ、日付と営業者の住所氏名を記載して提出します。
許可証の再交付申請
許可証を書き換えしようにも、許可証自体を紛失してしまったというケースはあるあるです。そもそも許可証を紛失したまま風俗営業を続けていると、それだけで違法状態となってしまいます。これは運転免許証を失ったまま自動車を運転することと同様です。
このような場合は、許可証の交付を受けた警察署(移転後に紛失した場合には営業所の所在地を管轄する警察署)に対して許可証を再交付するための申請を行う必要があります。
再交付申請は営業者本人であることを確認することのできる運転免許証などを持参し、再交付申請書を提出することにより行います。また、申請手数料として1,200円を納付します。
許可証の返納届
風俗営業を廃止した場合のほか、たとえば個人で取得していた古物商許可を法人許可に切り替えようとする場合、既に取得している許可証を返納する必要があります。この手続きについても忘れがちになるようですが、任意ではなく義務となっているため必ず届け出るようにしましょう。
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