探偵業の変更届について
探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)では、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務を探偵業務として定義し、探偵業務を営業しようとする者には届出を行うことを義務付けています。この点に関しては、探偵業を志す方であればある程度把握されているように思います。
その一方で、氏名(法人名・屋号含む)や住所等に変更が生じた場合に変更届を行う義務があることについては、案外見落としているか、もしくは軽んじがちであるように感じています。
定められた期間内(原則として変更があってから10日以内)に変更届の提出ができなかった場合は、後述する「遅延理由書」を提出しなければならなくなるほか、営業停止や営業廃止の事由に該当してしまうケースもあるので要注意です。
そこで本稿では、探偵業の変更届が必要となるケースや詳しい届出の方法などについて一緒に確認してみたいと思います。
目 次
探偵業の届出事項
探偵業を営もうとする者は、営業所ごとに、その営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(管轄の警察署を経由)に対して、以下の事項を記載した届出書を提出します。
- 商号、名称又は氏名及び住所
- 営業所の名称及び所在地並びにその営業所が主たる営業所である場合にあってはその旨
- 営業所において広告又は宣伝をする場合に使用する名称があるときはその名称
- 法人の役員の氏名及び住所(法人)
わざわざ届出を義務付けているわけですから、届出の内容は常に適正なものである必要があります。このため、上記の項目について変更があった場合には、「変更届」を行うことが必要になります。
なお、探偵業を営んでいた個人が法人として許可を切り替えようとする場合(法人成り)には変更届ではなく、法人として新たに届出を行う必要があります。
届出を行うべき期間
変更届については変更すべき事由が生じてから10日以内に届け出る必要があります。ただし、登記事項証明書を取得しなければならない場合には、登記事由が発生した日から20日以内までに延長されます。登記の手続きを間にはさむとスケジュールが過密になることが考えられるため、移転前に変更届の手続きを行うことも視野に入れて計画を進めるようにしましょう。
なお、変更届出書の提出先は営業所を管轄する警察署の保安係です。提出した届出書や申請書は警察署を経由して公安委員会に届け出るという仕組みになっています。営業所を移転する場合、提出先は移転先を管轄する警察署ではなく、移転元の警察署である点についてはご注意ください。
変更届の手続き
探偵業の変更届は、以下の書類をそろえて管轄の警察署に提出することにより行います。
- 探偵業変更届出書
- 探偵業届出証明書
- 手数料1,600円(収入印紙不可)
- 添付書類(変更事項に係る書面)
名称(商号)又は氏名の変更
探偵業を営む個人の氏名や法人名、又は営業所の名称(屋号)を変更した場合も変更届が必要になります。また、営業所において広告又は宣伝をする場合に使用する名称がある場合においてその名称を変更しようとするときも同様です。
法人役員の変更
役員が辞任した場合や、新しく役員を追加した場合、役員が交代した場合にも変更届が必要になります。また、役員の氏名や住所に変更があった場合も同様です。
営業所の移転、増設、廃止
営業所について移転、増設、廃止があったときにも変更届が必要になります。このほか、主たる営業所を他の営業所へ変更する場合も同様に変更届が必要になります。
疎明書類
変更届を行う際には届出書を提出する必要がありますが、変更の事実を疎明(証明)するため、併せて以下の書類を添付する必要があります。
変更の事由 | 必要書類 |
---|---|
個人事業主の氏名や住所の変更 | 戸籍謄本や住民票 |
法人の名称や所在地、代表者、代表者の住所、役員の変更 | 法人の履歴事項全部証明書 |
役員の追加、変更 | 対象者の住民票、身分証明書、誓約書及び履歴書 |
営業所の移転又は増設 | 新たな営業所に関する賃貸借契約書の写し等 |
遅延理由書
探偵業に限ったことではありませんが、変更の届出を怠っていたことを行政機関から指摘された上、遅延理由書の提出を求められてから慌てて弊所まで相談に来られるケースがあります。
この遅延理由書を所定の様式にしている都道府県は少ないでしょうから、文書はすべて営業者側が用意することになります。反省文や始末書ではないので、届出が遅延した理由について簡潔に述べ、日付と営業者の住所氏名を記載して提出します。
探偵業届出証明書の再交付申請
探偵業を営んでいるのであれば、最初に探偵業届出証明書が交付されることはよくご存じのように思います。本来であれば交付された探偵業届出証明書は、営業所の見やすい場所に掲示しなければならないものとされていますが、この探偵業届出証明書を紛失してしまったことが変更届を行う際に発覚するケースは意外にあるあるです。そもそも探偵業届出証明書を紛失したまま探偵業を続けていると、それだけで違法状態となってしまいます。これは運転免許証を失ったまま自動車を運転することと同様です。
このような場合は、探偵業届出証明書の交付を受けた警察署(移転後に紛失した場合には営業所の所在地を管轄する警察署)に対して探偵業届出証明書を再交付するための申請を行う必要があります。
再交付申請は営業者本人であることを確認することのできる運転免許証などを持参し、再交付申請書を提出することにより行います。また、申請手数料として1,100円を納付します。
探偵業届出証明書の返納届
探偵業を廃止した場合のほか、たとえば個人で営んでいた探偵業を法人で行うように切り替えようとする場合、既に取得している探偵業届出証明書を返納する必要があります。この手続きについても忘れがちになるようですが、任意ではなく義務となっているため必ず届け出るようにしましょう。
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