古物商の変更届と書換申請について
事業として中古品(古物)を売買しようとする際に古物商許可を取得する必要があることについては、既に多くの方がご存じであるように思います。その一方で、氏名(法人名・屋号含む)や住所等に変更が生じた場合に変更届や書換申請を行う義務があることについては案外見落としがちであるように感じています。
定められた期間内(原則として変更があってから14日以内)に変更届や書換申請の提出ができなかった場合は、後述する「遅延理由書」を提出しなければならなくなるほか、古物商許可の取消事由に該当してしまうケースもあるので要注意です。
そこで本稿では、古物商の変更届や書換え申請といった手続きが必要となるケースや詳しい届出の方法などについて一緒に確認してみたいと思います。
目 次
古物商許可証の記載事項
古物商許可を取得すると、所轄警察署(公安委員会)から以下の事項を記載した古物商許可証が交付されます。
- 名称もしくは氏名
- 居所もしくは住所
- 代表者の氏名
- 代表者の住所
- 行商を行うか行わないかの有無について
古物商許可証は古物商としての身分を証明するための書状ですので、その記載内容は常に適正なものである必要があります。このため、上記の申請内容について変更があった場合、「変更届」のほか、許可証を書き換える「書換申請」が必要になります。
したがって、上記項目以外の項目に変更が生じた場合は「変更届」、上記項目に変更が生じた場合は「変更届」と併せて、「書換申請」を行うことになります。
なお、古物商許可を取得していた個人が法人として許可を切り替えようとする場合(法人成り)には変更届や書換申請ではなく、法人として新たに古物商許可を取得する必要があります。
手続き | 必要となるケース |
---|---|
変更届 | 取扱品目の変更 法人役員の変更 営業所の移転、増設、廃止 営業所名称の変更等 |
書換申請 | 名称もしくは氏名の変更 居所もしくは住所の変更 代表者の氏名の変更 代表者の住所の変更 行商を行うか行わないかの有無についての変更 |
新規許可申請 | 個人許可から法人許可への切替え |
届出を行うべき期間
変更届については変更すべき事由が生じてから14日以内に届け出る必要があります。ただし、登記事項証明書を取得しなければならない場合には、登記事由が発生した日から20日以内までに延長されます。登記の手続きを間にはさむとスケジュールが過密になることが考えられるため、移転前に変更届の手続きを行うことも視野に入れて計画を進めるようにしましょう。
なお、変更届出書及び書換申請書の提出先は営業所を管轄する警察署の防犯係です。提出した届出書や申請書は警察署を経由して公安委員会に届け出るという仕組みになっています。営業所を移転する場合、提出先は移転先を管轄する警察署ではなく、移転元の警察署である点についてはご注意ください。
変更届の手続き
以下の事項について変更がある場合には書換申請こそ不要ですが、変更届を提出する必要があります。なお、変更届のみを行う場合には手数料は発生しません。
- 取扱品目の変更
- 法人役員の変更
- 営業所の増設、移転、廃止
- 営業所名称の変更
取扱品目の変更
古物商許可を申請する際は13品目のうちから主な取扱品目をひとつ選択しますが、主なものを含む取扱品目に変更があった場合には、変更届を提出します。
法人役員の変更
役員が辞任した場合や、新しく役員を追加した場合、役員が交代した場合にも変更届が必要になります。また、役員の氏名や住所に変更があった場合も同様です。なお、代表者についてこれらの変更があった場合は変更届のみでは足りず、書換申請を行う必要があります。
営業所の移転、増設、廃止
営業所について移転、増設、廃止があったときにも変更届が必要になります。このほか、営業所の管理者の氏名や住所が変わった場合、管理者が交代した場合も同様に変更届が必要になります。
名称の変更
営業所の名称(屋号)を変更した場合も変更届が必要になります。逆にいえば手数料も不要なため、いつでも営業所の名称を変更することが可能となっています。
その他にも開設するWebサイトにおいて古物営業を営んでいる場合は、URLの変更やサイトの閉鎖についても変更届が必要になる点は忘れないように注意しましょう。
書換申請の手続き
書換申請は必ず変更届と同時に手続きを行います。この場合には、同一の様式の書類中の変更届と書換申請の両方の欄に○印をつけて使用します。
また、変更届のみであれば手数料は不要ですが、古物商許可証の書換申請を行う場合には、書換申請手数料の1,500円を納付することが必要になります。
添付書類
変更届、書換申請の際には届出書又は申請書を提出する必要がありますが、変更の事実を証明するため、併せて以下の書類を添付する必要があります。
変更の事由 | 必要書類 |
---|---|
個人事業主の氏名や住所の変更 | 戸籍謄本や住民票 |
法人の名称や所在地、代表者、代表者の住所、役員の変更 | 法人の履歴事項全部証明書 |
役員や管理者の追加、変更 | 対象者の住民票、身分証明書、誓約書及び直近5年間の略歴書 |
営業所の移転又は増設 | 新たな営業所に関する賃貸借契約書の写し等 |
遅延理由書
古物商に限ったことではありませんが、変更の届出を怠っていたことを行政機関から指摘された上、遅延理由書の提出を求められてから慌てて弊所まで相談に来られるケースがあります。
この遅延理由書を所定の様式にしている都道府県は少ないでしょうから、文書はすべて営業者側が用意することになります。反省文や始末書ではないので、届出が遅延した理由について簡潔に述べ、日付と営業者の住所氏名を記載して提出します。
許可証の再交付申請
許可証を書き換えしようにも、許可証自体を紛失してしまったというケースはあるあるです。そもそも許可証を紛失したまま古物営業を続けていると、それだけで違法状態となってしまいます。これは運転免許証を失ったまま自動車を運転することと同様です。
このような場合は、許可証の交付を受けた警察署(移転後に紛失した場合には営業所の所在地を管轄する警察署)に対して許可証を再交付するための申請を行う必要があります。
再交付申請は営業者本人であることを確認することのできる運転免許証などを持参し、再交付申請書を提出することにより行います。また、申請手数料として1,300円を納付します。
許可証の返納届
古物営業を廃止した場合のほか、たとえば個人で取得していた古物商許可を法人許可に切り替えようとする場合、既に取得している許可証を返納する必要があります。この手続きについても忘れがちになるようですが、任意ではなく義務となっているため必ず届け出るようにしましょう。
★個人許可と法人許可の同時保持
個人許可を保持したまま法人の役員として法人許可を取得することができるのかという点については、管轄の警察署により判断が分かれるようです。たとえば自宅を営業所、自分自身を管理者として申請し個人許可を取得していたケースにおいて、その個人が別の場所に所在する法人の営業所の常勤管理者として就任することは実務上困難であるものと考えられます。よって、このケースでは法人許可は取得することができないものと解釈します。
ただし、経験上必ずしもこの取扱いがなされているわけではなく、警察署が把握した上で個人許可と法人許可を同時に保持しているケースを確認しています。
いずれにせよ不明な点があれば自己判断は避け、管轄の警察署に対して問い合わせを行うよう心がけましょう。
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