自家製梅酒の製造は違法なの?酒類を自家醸造する際の注意点について
お酒を勝手につくることはできません。
酒類を製造しようとする者は、酒類の品目別、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許を受ける必要があります。
こちらは酒税法に定める酒類製造業に関する規定です。おもに商品として流通させる酒類についての規定ではありますが、少し気になるのが多くの家庭で普通に行われている梅酒等の自家醸造についてです。
自家醸造はやっぱり違法なの?
飲食店で自家製のお酒は出せないの?
ここではそんな声にお答えするため、梅酒等を自家醸造する際の法律的な観点と注意すべき点について詳しく解説していきたいと思います。
自家醸造は違法?
自家醸造とは、お酒を自前で醸造して消費することをいいます。日本では古くから慣習として自宅で梅酒を作る家庭も多く、実際に私の実家でも自家製の梅酒をつくりおきしていました。
さて、ここで問題となるのが冒頭で述べた酒税法による規制との兼ね合いです。基本的には酒類を製造するためには免許が必要になるため、無免許で製造する場合にはやはり原則どおり違法行為となってしまうのでしょうか?
これに関しては、国税庁が以下のように回答しています。
焼酎等に梅等を漬けて梅酒等を作る行為は、酒類と他の物品を混和し、その混和後のものが酒類であるため、新たに酒類を製造したものとみなされますが、消費者が自分で飲むために酒類(アルコール分20度以上のもので、かつ、酒税が課税済みのものに限ります。)に次の物品以外のものを混和する場合には、例外的に製造行為としないこととしています。また、この規定は、消費者が自ら飲むための酒類についての規定であることから、この酒類を販売してはならないこととされています。
(国税庁公式サイトから引用)
少し伝わりづらい文章ですが、酒類に他の物品を混ぜる行為はやはり酒類の製造に当たり、原則として免許を受ける必要があります。ただし、以下の条件を満たしている場合に限り、例外的に製造行為とはみなされないというのがこの文章の主旨のようです。
①消費者が自分で飲むために行う行為であること
②ベースとなる酒類がアルコール分20度以上のもので、かつ、酒税が課税済みのものであること
③一定の物品を混ぜるものでないこと
①については、消費者自身のいわば趣味趣向レベルのものであれば、目くじら立てなくても良いんじゃないの?という「おめこぼし」の部分です。もちろん、自分が飲む場合であっても、他の条件は満たしていなければなりません。
②については、アルコール分20度未満のものは新たに発酵してアルコールを生成する場合が多いことからこのような取扱いがなされているようです。
③については、新たに発酵する可能性の高い物品として、具体的に以下のものを列記しています。
- 米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじ
- ぶどう(やまぶどうを含む)
- アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす
旅館等を営む者に対する特例措置
旅館等で自家製の梅酒を提供することについても、国税庁は以下のように回答し、特例を認めています。
旅館等を営む者が宿泊客等に提供するため、当該旅館で酒類に他の物品を混和する場合等、次の全ての要件を満たすときには、例外的に酒類の製造に該当しないこととし、免許や納税等が不要となる特例措置が平成20年4月30日より設けられています。なお、この特例措置は、この酒類を混和した旅館等において飲食時に宿泊客等に提供するために行う場合に限られ、例えばお土産として販売するなどの譲り渡しはできないこととされています。
(国税庁公式サイトから引用)
このように旅館等を営む者に対しては、自家醸造した酒類を提供する行為に対して免許や納税等を不要とする特例措置が設けられていますが、やはり自由に行うことは認められておらず、特例措置の適用を受けるためには、以下の条件をすべて満たすことが必要とされています。
特例措置の対象者 | 酒場、料理店等酒類を専ら自己の営業場において飲用に供する業を営んでいる者 |
特例措置の適用要件 | 酒場、料理店等の自己の営業場内において飲用に供することを目的とすること |
飲用に供する営業場内において混和を行うこと | |
一定の蒸留酒類とその他の物品の混和であること | |
混和に使用できる酒類 | 蒸留酒類でアルコール分が20度以上のもので、かつ、酒税が課税済のもの |
混和に使用できる物品 | 混和が禁止されている物品以外のもの |
年間の混和に使用できる酒類の数量の上限 | 営業場ごとに1年間(4月1日から翌年3月31日の間)に1kl以内 |
開始申告書の提出 | 混和を開始する日の前日までに営業場の所在地を所轄する税務署長に対して「特例適用混和の開始申告書(PDF/199KB)」を提出すること |
混和に関する記帳 | 混和に使用した蒸留酒類の月ごとの数量を帳簿に記載すること |
混和が禁止されている物品については、一般家庭における自家醸造と同様のものが列記されています。
- 酒類
- 米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじ
- ぶどう(やまぶどうを含む)
- アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす
なお、酒場、料理店等が消費者の求めに応じて消費の直前に混和する場合にも例外的に製造行為としないこととされています。
ビールキットによる自家製ビールの製造
ビールキットとは、麦芽を粉砕して精製し、加熱処理をした液体を詰めた缶に、酵母や砂糖などを添えてセットで販売する商品です。格安であることが多いため、近年は通を中心に売上を伸ばしています。
ただし、こちらにも当然ながら酒税法による規制は及んでいるため、次の点には十分に注意するようにして下さい。
ビールの製造免許は、年間の製造見込数量が60klに達しない場合には受けることができません。
(国税庁公式サイトから引用)
購入された商品については、アルコール分1度以上にならないよう製造方法が取扱説明書に具体的に記載されていると思われますので、その注意書に沿って、アルコール分が1度未満となるようにしてください。
酒類とは、酒税法上、アルコール分1度以上の飲料(薄めてアルコール分1度以上の飲料とすることのできるもの又は溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む)をいい、当該製品により製造されたものがアルコール分1度以上の飲料となる場合は、酒類製造免許が必要になります。
つまり、酒類とみなされることのないように、アルコール分を1度未満に抑えることが無免許で自家製ビールの製造を許されるラインとされています。
まとめ
酒類の製造免許を受けないで酒類を製造した場合は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられるほか、製造した酒類、原料、器具等は没収されることになります。
お酒を巡っては、その性質上古くから多くの規制が存在しています。悪意は無いにせよ、条件を守らない場合にはアウト判定が下ってしまいますので、たとえ自分の飲用のためであっても、お酒を取り扱う場合には違反にならないよう十分に注意するようにしましょう。