風俗営業許可申請に必要な図面の書き方と作成上のポイントについて

キャバクラ、ラウンジ、雀荘、パチンコ店及びゲームセンター等、これから風俗営業の許可を申請しようとされる方の前に大きな壁となって立ち塞がるのが「図面の作成」ではないかと思います。
もちろん、その他にも留意すべきポイントはたくさんありますが、図面作成が風俗営業許可申請の手続きにおいて最も多くの手間と労力を要する作業であることは間違いありません。
そこで本稿では、全国各地のさまざまな繁華街で数多くの許可申請を代行した実績のある行政書士が、実務上でも応用可能な図面を用いて、作成上のポイントを解説していきたいと思います。
途中ところどころ、お助けリンクを差し挟んでおりますので、エスケープの際はどうぞお気軽にお問い合わせください^^
目 次 [非表示]
風俗営業について
風俗営業とは、「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するために規制を行う必要があるもの」として、風営法に定められている以下の5つの営業形態のことを指します。
1号営業 | キャバレー、待合、料理店、カフェその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業 | キャバクラ、ラウンジ、ホストクラブ |
2号営業 | 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計った営業所内の照度を10ルクス以下として営むもの | 低照度飲食店 |
3号営業 | 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5㎡以下である客席を設けて営むもの | 区画席飲食店 |
4号営業 | まあじゃん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業 | 雀荘、ぱちんこ店 |
5号営業 | スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業 | ゲームセンター、アミューズメント施設 |
それぞれ施設の構造要件や規制内容について少しずつ違いがありますが、いずれも公安委員会からの許可を必要とし、営業することができる場所や時間に制限が設けられるなど、許可後も警察の監視下に置かれその監督を受ける営業形態になります。
許可申請に必要となる書類
所轄警察署や5つの営業形態の別に若干求められる書類が異なりますが、おおむね以下のものが風俗営業許可申請時に共通して必要となる書面です。
- 風俗営業許可申請書
- 営業の方法
- 住民票の写し
- 欠格事項に該当しない旨の誓約書
- 誠実に業務を行う旨の誓約書
- 身分証明書
- 営業所使用権原を証明する書類
- 賃貸契約書の写し
- 営業所の使用承諾書
- 建物登記簿謄本
- 違法建築物でない旨を疎明する書類
- 用途地域を証明する書類
- 各種図面
- 営業所周辺の概略図
- 周辺施設の概略図
- 営業所の設備配置図
- 求積図
- 照明・音響・防音設備の配置図
- 飲食店営業許可書の写し
- 料金表・メニュー表の写し
- 定款・登記事項証明書(法人)
- 管理者の写真
ここからは上記の必要書類のうち、「風俗営業許可申請書」と「営業の方法」について解説しますが、その他の書類については、以下のリンク先ページ内で詳しく解説しているので併せて確認するようにしてください。
風俗営業許可申請書
表紙となる風俗営業許可申請書には、申請者や営業所の基本情報について記載していきます。
申請者が個人であれば、その住所は住民票の表記のとおりに記載し、法人であれば、登記簿の表記のとおりに記載します。

客室が1室のみの単室構造の店舗であれば床面積が問題になることはありませんが、社交飲食店(1号営業)であって、VIPルーム等の個室を別に設けようとするときは、各客室はそれぞれ16.5㎡(和室の場合は9.5㎡)以上確保する必要があるという点は注意が必要になります。

営業の方法
社交飲食店であれば接待の提供方法、ゲームセンターであれば使用する遊技機等、具体的な営業の方法について記載していきます。

カラオケやダーツ等の遊興をさせる場合は、その内容及び時間帯を記載しますが、多くの場合は条例により遊興をさせることが出来る時間帯が定められているため、事前にしっかりと確認しておくようにしましょう。

図面作成のポイント
実査(実地検査)では、おもに図面に基づくヒヤリングと調査によって手続きが進行するため、図面は当初から精密なものを用意する必要があります。
不動産屋の間取図や飲食店営業許可の添付図面が使えるかどうかという質問を受けることがありますが、残念ながらこれらの図面はほぼ使えません。
ちなみにフリーハンド(手書き)の図面でも構いませんが、現場ではちょっと嫌な顔をされますし、どのみち高い確率で補正を命じられることになるので、補正にも対応しやすいようJW-CAD等フリーウェアのCADを使用することをお薦めしておきます。
営業所周辺の概略図
まずは営業所の位置関係を示す見取図を作成します。弊所ではコンビニで簡単に入手(400円)することができるゼンリンの地図に印を入れたものを使用していますが、他の図面に流用することも可能であるため、原本としてひとつ必要に応じてコピーできるように保管しておくと便利です。
用途地域を証明する書類
インターネット上でも用途地域が記載されている地図を検索して印刷することはできますが、所轄警察署によっては、市町村が発行したことを確認できる地図や、場合によっては「用途地域証明書」を添付するように求められます。
市町村の都市計画課(もしくは建築指導課)では、用途地域を示した地図をプリントアウトすることができるようになっているので、弊所は建築確認済証等を取得するタイミングで併せてこちらも取得するようにしています。(100〜200円)
周辺施設の概略図
風俗営業の営業所には、学校や入院施設のある病院等の保全対象施設から一定距離以上離れて(もしくは超えて)設置しなければならないという場所的要件が存在しています。
このため申請時には、営業所の周囲に存在する保全対象施設から一定の距離離れていることを疎明する書類として、周辺施設の概略図を添付する必要があります。
この図面は、営業所周辺の概略図に用いたゼンリンの地図上に、営業所を中心に制限距離を半径とする円を描き、周辺の対象施設の位置に①②③…と番号を振って作成します。
ここでは「仮に」弊所が間借りするオフィスビルでラウンジ(1号営業)を営もうとする場合を例にした以下の表と図面を用いて解説を続けます。
弊所所在地の用途地域は工業専用地域であることから、兵庫県条例による地域区分では第2種地域に該当するため、風俗営業が禁止される第1種地域ではないことが判明しました。

また、兵庫県における第2種地域内の社交飲食店に係る保全対象施設との距離制限は下表のとおりです。
用途地域 | 工業専用地域 |
兵庫県の地域区分 | 第2種地域 |
風俗営業の可否 | 地域としては可能 |
距離制限 | 病院・有床診療所から50m超 学校・図書館・保育所・認定こども園から70m超 |
これら諸条件を踏まえ、弊所の位置を中心として50m及び70mの円を描いて作成したものが以下の概略図です。

この概略図上に保全対象施設として疑義のある施設を含めて①②③⋯と番号を振って落とし込み、以下のようにその詳細を一覧として作成します。

この結果、弊所所在地は社交飲食店の営業が可能な場所であることが証明されました。(やったね!)
さて、次からはめでたくラウンジを開業することができるようになった「ラウンジTSUNAGU」さんを例にしながら営業所図面の解説を続けたいと思います。もうお腹いっぱい!の方はどうぞお助けリンクをご活用ください。
営業所図面の作成
図面はすべて方角を揃え、客室と客室外についてはしっかりと色分けして区分するようにしましょう。
一般的に営業所の範囲については青色、客室の範囲については赤色、調理場の範囲については緑色を使用するというルールがありますが、たとえば大阪では客室が赤、営業所を緑で示すよう取り決めがあるなど、地域ごとの取扱いに若干の差が存在しているようです。
店舗内平面図
平面図は、営業所を水平に切断した断面を真上から見た図であり、すべての必要図面の基礎となるものです。

測量は以下のように壁に沿って時計回り又は反時計回りで外枠→壁・柱→家具の順に書き込むようにすると分かりやすいように思います。

営業所の範囲
ところで風俗営業でいうところの「営業所」がどこからどこまでを指すのかはご存じでしょうか?テナントであれば、賃貸契約書に記載されている部分がすべて営業所となるのでしょうか?
たとえばラウンジTSUNAGUさんの営業所にはバルコニーがありますが、このバルコニーにもしも避難用タラップが設置されていれば、他のテナントとの共有スペースとみなされ、営業所には算入しません。

また、床から天井までを支える壁や柱についても営業所面積からは除外しますが、上部又は下部が開口した単なる間仕切りやパーテーションは営業所に含めます。この辺りが少々ややこしい点ですが、実査の際にはつっこまれやすい部分なのでしっかりと把握するようにしてください。

客室と客室以外の区分
風営法では客室の床面積を構造上の重要事項と捉えていることから、客室であるかそうでないかは重要なポイントとなります。この点について客室の定義は「客に飲食をさせ、又は客に遊興をさせるために客に利用させる場所」とされているため、玄関部分やトイレはもちろんのこと、壁、柱、間仕切壁、壁と客席の間に設置されている台や家具を置いているスペース等については客室からは除外して考えます。

上の画像の□部分はカウンターの端に付属した「仕切り」の部分ですが、このような箇所についても客室とはみなされないことが多いので注意が必要です。
営業所 | 客室 | |
---|---|---|
客席 | 含める | 含める |
玄関、調理場、トイレ | 含める | 含めない |
共有するベランダ | 含めない | 含めない |
共有しないベランダ | 含める | 含めない |
壁・柱 | 含めない | 含めない |
間仕切壁、パーテーション、仕切部分 | 含める | 含めない |
家具を設置する場所 | 含める | 含めない |
設備配置図
下書きを基にして、客室内部に設置する設備を平面図上に漏れなく書き込んでいきます。

設置する設備については、長さ、幅及び高さを計測し、別紙に記録するなどして明示する必要があります。また、所轄によっては設備の写真を添付するよう求めてくることもあります。
なお、おおむね100cm(1.0m)を超える設備については、見通しを妨げるものとして客室には設置することが出来ません。


求積図
先ほど説明したように、「客室」、「客室外」及び「営業所外」を意識しながら図面に数字を落とし込み、計算式を導き出していきます。1枚に詰め込むのが難しければ、「客室」と「客室外」とを分けるなど工夫しながら、とにかく漏れの無いように記載していきましょう。

ラウンジTSUNAGUさんはなかなか複雑な形状をしていますから、①と②の部分については以下のように別紙に記載することにします。


面積計算の根拠を明らかにするため、計算式は別紙にしっかりと記載していきます。たとえばEの面積を求める際の計算式は以下のとおりです。


求積の詳しい取り方については後述しますが、いずれにせよ「算入する面積」と「控除する面積」とを間違わず、漏れや矛盾が生じないように気をつけるようにしましょう。



照明及び音響配置図

光または音を発するものの位置関係を平面図に落とし込み、余白または別紙に、その種類(下表参照)ごとの電力、数量及び設置箇所を記載していきます。


なお、風俗営業では店舗内の明るさを常時10ルクス超(社交飲食店、低照度飲食店については5ルクス超)に保たなければならないというルールがあり、つまみの調整によりこの照度以下に調整することが可能な調光器(スライダックス)については、設置すること自体が禁止されています。

居抜物件に出向くと「コレ、標準なの?」と勘違いするほど普通に見かける調光器ですが、定められた照度を維持することのできないものが設置されている限り許可は下りません。
この場合、使用不可能な状態にするよう指導を受けた上で、改善したことを証明する書類を追加するよう求められることになります。
業者に依頼すれば割と簡単に取り外してくれますが、大家さんとの間でトラブルに発展しないように、対応は十分に協議するようにしましょう。

求積の方法
求積の取り方については地域ごとに特長がありますが、計算式については概ね統一されています。ここではよく使用する求積の方法について確認していくことにしましょう。
三角形の求積
底辺×高さ÷2
こちらは割と記憶している方が多いと思います。小学算数が見事に役に立つ瞬間です。
台形の求積
(上底+下底)×高さ÷2
少し応用編。ラウンジTSUNAGUさんの図面上にはありませんでしたが、覚えていて損はないように思います。
円形の求積
半径×半径×3.14×(角度/360)
こちらもメジャーな計算式です。ただし、営業所内で真円はあまりお見かけしないので、大体は半円(180/360)だったり4分の1円(90/360)だったりします。
楕円の求積
長径×短径×3.14×(角度/360)
案外知られていませんが、基本的には円形の計算式と考え方は同じです。営業所内では結構な確率でお目にかかる形でもあります。
弓形の求積
弦の長さ×高さ×(2/3)
本来であればコサインを用いて計算しますが、大体はこの簡易計算式でOKとされています。マイナーな計算式の割に、営業所内には結構潜んでいるので、高等数学なんて一生使わない!という考え方が崩壊する瞬間でもあります。
実査について
風俗営業許可申請手続きのメインイベントが、警察署員(もしくは浄化協会)による実査です。地域ごとの訪問スタイルに特長があり、大阪市では2人組、兵庫県では所轄の担当者と浄化協会の担当者とのペアで来訪することが多いです。
実査では店舗内をくまなくチェックされ、計測した数値に0.5cmほどの誤差があれば容赦なく補正を命じられます。図面があまりにも実態とかけ離れている場合には後日再検査となることもあります。
とにかく細かい指摘が飛んできますし、担当者からも「一発OKはあまりしないよ」と聞かされるくらいなので、補正は当初から手続きの一部として考えていた方がいいかもしれません。
行政書士が関わった案件ではおおむね30分から1時間が実査に要する時間の目安ですが、本人申請では2時間以上を要することも珍しくはありません。
とはいえ特別に構える必要はなく、図面をきっちり仕上げてやるべきことをしっかりとこなせば問題はありませんから、十分な準備をして落ち着いて実査に臨むようにしましょう。
まとめ
素直に言うと「こんなに細かい図面を用意する必要があるんやろか」と思うことが多々あります。それを担当者の前で吐露したこともあります。1cmの違いで何か世間に迷惑がかかるとは到底思えませんが、それを言い始めるとキリがありません。とにもかくにも目の前にある山を越えていかなければ道が拓けないのは事実です。
一般的には、本人申請と行政書士が関与したケースとでは、許可までの期間が1か月以上違います。不慣れな手続きで許可までの期間をずるずると延ばすことよりも、1日でも早く許可を取得した方が経済的にもメリットが高まることは間違いありません。ここは風営法に熟達した行政書士に発注し、早めに手続きを完了させる選択肢を強くお薦めして本稿を締めくくりたいと思います。
弊所では、全国各地において風俗営業許可申請の代行を承(うけたまわ)っています。事前調査、書類作成、関係各所とのやり取り及び書類提出に至るまで、まるっとフルサポートさせていただいています。また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。風俗営業許可を取得しようとする際は、弊所までどうぞ安心してご相談ください。