温泉の採取の許可│温泉をくみあげる事業に必要な手続きについて

温泉に入るニホンザル

温泉を反復継続的にくみ上げようとするときは、「温泉の採取の許可」または「可燃性天然ガスの濃度の確認」のいずれかを受ける必要があります。

温泉の採取の許可申請とは、温泉法の規定に基づいて、温泉のくみ上げの場所ごとに許可を都道府県知事に申請するものです。許可を得るためには、温泉のくみ上げのための施設の位置、構造、設備及びくみ上げの方法が温泉法施行規則で定められた「温泉の採取に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止に関する技術上の基準」に適合するものでなければなりません。

一方、可燃性天然ガスの濃度の確認申請とは、温泉のくみ上げの場所における可燃性天然ガス(メタン)の濃度が環境大臣の定める基準を超えないことの確認を都道府県知事に申請するものです。

どちらを申請すべきかは、温泉のくみ上げの場所における温泉のくみ上げに伴い発生するガス(温泉付随ガス)中の可燃性天然ガス(メタン)の濃度が環境大臣の定める基準を超えるかどうかで決まります。 なお、「確認申請」を行っても都道府県知事から確認が得られない場合は、「温泉の採取の許可申請」を行う必要があります。

また、温泉を浴用や飲用に供する場合には、別に温泉利用許可を取得する必要があります。

温泉の採取に必要となる許可
温泉の採取の許可

温泉源からの温泉の採取を業として(有償無償を問わず反復継続して)行おうとする者は、温泉の採取の場所ごとに、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならないものとされています。ただし、可燃性天然ガスの濃度が環境大臣の定める基準を超えないことの確認を受けた者が当該確認に係る温泉の採取の場所において採取する場合は、許可を受ける必要はありません。許可の申請は、次の事項を記載した申請書を提出して行います。

  • 申請者の住所及び氏名
  • 主たる事務所の所在地及び名称並びに代表者の氏名(法人)
  • 温泉の採取を行おうとする場所
  • 温泉の採取の開始の予定日

許可を受けた者は、温泉の採取のための施設の位置、構造若しくは設備又は採取の方法について可燃性天然ガスによる災害の防止上重要な変更をしようとするときは、都道府県知事に申請して変更の許可を受けなければならないものとされています。

都道府県知事は、温泉の採取に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止上緊急の必要があると認めるときは、採取を行う者に対し、可燃性天然ガスによる災害の防止上必要な措置を講ずべきこと又は温泉の採取を停止すべきことを命ずることができます。

温泉採取許可申請書
許可の基準

都道府県知事は、許可の申請があったときは、申請が次のいずれかに該当する場合を除き、許可をしなければならないものとされています。許可には、可燃性天然ガスによる災害の防止上必要な条件を付し、及びこれを変更することもできます。

  • 申請に係る温泉の採取のための施設の位置、構造及び設備並びに採取の方法が採取に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止に関する環境省令で定める技術上の基準(後述)に適合しないものであると認めるとき
  • 申請者が温泉法の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者であるとき
  • 申請者が許可を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない者であるとき
  • 申請者が法人である場合において、その役員が温泉法の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、若しくはその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者であるとき、又は許可を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない者であるとき
技術的基準

温泉の採取に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止に関する技術上の基準は、具体的には以下のとおりです。

  • 温泉の採取に伴い発生する可燃性天然ガスを分離する設備であって、当該設備を通過した後の温泉水から、環境大臣が定める方法により、気体を分離し、当該気体中のメタンの濃度を測定した結果、環境大臣が定める値未満となるもの(ガス分離設備)が設けられていること(温泉を空気に触れることなく地中に還元させる場合又は温泉であって水蒸気その他のガスであるものに採取後水を混ぜることにより温泉水を造成する場合は除く)
  • 次の設備(可燃性天然ガス発生設備)が屋内(可燃性天然ガスが滞留しない構造のものを除く)にないこと(ただし、温泉井戸については、多雪又は寒冷の気象条件により屋外に設置することが適当でない場合において、地上にあり、かつ、人が通常出入りしない場所に設置するときは、この限りでない。)
    • 温泉井戸(自然に湧出している温泉の湧出口を含む)
    • ガス分離設備
    • 温泉井戸又はガス分離設備からの可燃性天然ガスの排出口(ガス排出口)
  • ガス排出口(排出される気体中のメタンの濃度を環境大臣が定める方法により測定した結果、環境大臣が定める値未満となるものを除く)が、次に掲げる場所にないこと
    • 温泉井戸又はガス分離設備のある床面又は地面(関係者以外の者が容易に立ち入ることができないものを除く)からの高さが3m以下である場所
    • 水平距離が3mであり、かつ、垂直距離が上方8m又は下方0.5mである範囲内に、火気を使用する設備、外面が著しく高温となる設備、防爆性能を有しない電気設備、屋内への空気の取入口又は関係者以外の者が容易に立ち入ることができる場所がある場所
  • 温泉井戸からガス排出口までの配管及びガス分離設備からガス排出口までの配管の閉塞を防止するため、次に掲げる措置を講じていること
    • 凍結による閉塞のおそれがある場合においては、凍結を防止するための措置
    • 水の滞留のおそれがある場合においては、水抜き設備の設置及び定期的な水抜きの措置
  • 可燃性天然ガス発生設備に設置された電気設備と制御盤その他のスイッチ類が集中する設備との間の配線に接続箱を設置することその他の方法により、制御盤その他のスイッチ類が集中する設備に可燃性天然ガスが侵入しないようにしていること
  • 可燃性天然ガス発生設備からの水平距離が1m(温泉の採取の場所及びその周辺においてメタンの発生量が温泉の湧出量以上となる場合にあっては2m)であり、かつ、垂直距離が5mである範囲内(水平距離にあっては、可燃性天然ガスを遮断できる壁による迂回水平距離がこれらの距離以上である範囲を除く)において、次に掲げる措置を講じていること
    • 火気を使用する設備又は外面が著しく高温となる設備を設置しないこと
    • 火気を使用する作業を実施しないこと
    • 関係者が見やすい場所に、火気の使用を禁止する旨を掲示すること
    • さくの設置その他の方法により、関係者以外の者の立入りを制限すること
  • 毎月(温泉の採取を行わない月を除く)1回以上、ガス分離設備の内部の水位計及び可燃性天然ガス発生設備の異常の有無を目視により点検し、作業の結果を記録し、その記録を2年間保存すること
  • 次に掲げる事項を定めた採取に係る可燃性天然ガスによる災害の防止に関する規程(採取時災害防止規程)を作成し、これを温泉の採取の場所に備えていること
    • 災害の防止のための措置の実施に係る組織、安全に関する担当者の選任その他の災害の防止のための措置を適正に実施するための体制に関する事項
    • 災害の防止のために行う点検の項目及び方法に関する事項
    • 災害その他の非常の場合にとるべき措置に関する事項
    • その他災害の防止に関し必要な事項
  • 災害その他の非常の場合には、採取時災害防止規程に従って必要な措置を行うこと

温泉井戸(動力が装置されているものを除く)が屋外にあり、かつ、温泉水を屋内又は貯水槽に引き込まない場合には、上記の規定は適用されません。また、温泉井戸が屋内にある場合における技術上の基準は、以下のとおりです。

  • 上記に掲げる基準(設備が基準に適合することについて都道府県の職員による実地の確認を受けていること)
  • 温泉井戸、ガス分離設備及びガス排出口並びにこれらの間の配管であって屋内にあるものは、可燃性天然ガスが漏出しない構造であること
  • 温泉井戸が設置された部屋に、次の要件を備えた可燃性天然ガスを含む空気を屋外の空気と交換するための設備(ガス換気設備)が設けられていること(ただし、自然換気によりこれと同等以上の換気が確保される場合は除く)
    • 部屋の内部の空気を一時間につき十回以上屋外の空気と交換する能力を有していること
    • 吸気口及び排気口の位置、部屋の内部の構造物の配置その他の状況により、可燃性天然ガスの排気が阻害されないこと
  • ガス換気設備は、常時運転していること(ただし、長期間にわたり温泉の採取を行わず、かつ、当該ガス換気設備のある建造物における電気の使用を停止している期間は除く)
  • 次の要件を備えた可燃性ガスの警報設備が設けられていること(ただし、長期間にわたり温泉の採取を行わず、かつ、当該警報設備のある建造物における電気の使用を停止している期間は除く)
    • 可燃性ガスの検知器は、温泉井戸、ガス分離設備及びガス排出口並びにこれらの間の配管であって屋内にあるものから漏出した可燃性天然ガスを検知できる適切な位置に設置されていること
    • 警報装置は、空気中のメタンの濃度が爆発下限界の値の10%以上となった場合に関係者が常駐する場所で警報を発すること
    • 空気中のメタンの濃度が表示されること
  • 温泉井戸は、警報設備の検知器が爆発下限界の値の25%以上を検知した場合において、迅速かつ確実に温泉の採取のための動力又は温泉の自噴を停止できる構造であること(ただし、温泉の湧出路の構造上等の理由によりやむを得ない場合は除く)
  • 温泉井戸が設置された部屋において、次に掲げる措置を講じていること
    • 火気を使用する設備又は外面が著しく高温となる設備を設置しないこと
    • 火気を使用する作業を実施しないこと
    • 防爆性能を有しない電気設備(温泉井戸の内部に設置されているものを除く)を設置しないこと
    • 部屋の内部及び入口の関係者が見やすい場所に、火気の使用を禁止する旨を掲示すること
  • 立入りを禁ずる旨の表示その他の方法により、温泉井戸が設置された部屋の内部への関係者以外の者の立入りを制限すること
  • 発生した可燃性天然ガスが温泉井戸の内部に蓄積する構造である場合においては、当該温泉井戸にガス排出口を設けること
  • 携帯型の可燃性ガス測定器及び消火器を備えていること
  • 毎日(気候条件等により点検の作業が不可能な日又は温泉の採取を行わず、かつ、関係者が温泉の採取若しくは利用を行う場所にいない日を除く)1回以上、次に掲げる点検の作業を行うこと
    • 温泉井戸の周辺の空気中のメタンの濃度を携帯型の可燃性ガス測定器を用いて測定すること
    • 温泉井戸及びガス換気設備の異常の有無を目視により点検すること
  • 次に掲げる事項を記録し、その記録を2年間保存すること
    • 警報設備による警報の作動の状況
    • 点検の作業の結果
申請に必要となる書類

上記は兵庫県における温泉採取許可の申請に必要となる書類です。各自治体ごとに条例による規制があり、求められる書類も異なるため、申請の際には所轄の保健所等で必ず事前確認を行うようにしましょう。

なお、メタンの濃度等の測定は、温泉法に基づく登録分析機関等で実施します。

可燃性天然ガスの濃度の確認

温泉源からの温泉の採取を業として行おうとする者は、温泉の採取の場所における可燃性天然ガスの濃度が、測定方法ごとに、温泉の採取に伴い発生するガス(温泉付随ガス)中の環境大臣が定めるメタンの濃度の値を超えないことについて、都道府県知事の確認を受けることができます。

事業の廃止の届出等

許可又は確認を受けた者は、温泉の採取の事業を廃止したときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出る必要があります。

都道府県知事は、許可若しくは確認を受けた者が温泉の採取の事業を廃止したとき、又は許可を取り消したときは、廃止した者又は許可を取り消された者に対し、当該廃止又は取消しの日から2年間は、その者が温泉の採取を行ったことにより生ずる可燃性天然ガスによる災害の防止上必要な措置を講ずべきことを命ずることができるものとされています。

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