転売ヤーは何が問題?│違法ではないのに嫌われる理由と、法律に触れる転売の境界線

人気のゲーム機が発売されれば店頭から一瞬で消え、限定のフィギュアやトレーディングカードは定価の何倍もの値段でフリマアプリに並ぶ、コンサートのチケットは発売開始と同時に売り切れ、気づけば転売サイトで高値がついている。こうした光景を目にするたびに、「転売ヤー」と呼ばれる人々への怒りの声がSNSにあふれます。
実は、転売という行為そのものを一般的に禁じる法律は、日本にはありません。安く仕入れて高く売るのは商売の基本であり、それだけで罪に問われることはありません。一方、転売をめぐっては、チケットの高額転売を禁じる法律や、コロナ禍のマスク、令和の米騒動のときに設けられた緊急の転売規制など、特定の場面に限って転売を罰する仕組みが用意されています。
さらに、転売を商売として続けるのであれば、扱う商品によっては、古物商許可や酒類販売業免許といった許可や免許が必要になることもあります。「転売は合法」という言葉を鵜呑みにして始めた結果、知らないうちに無許可営業になっていた、というケースは決して珍しくありません。
本稿では、転売ヤーが嫌われる理由を整理したうえで、チケット不正転売禁止法や緊急時の転売規制など、法律に触れる転売の境界線を明らかにし、転売を事業として続けるために必要な古物商許可などの手続きまで、行政書士が詳しく解説していきます。
目 次
転売そのものは違法ではない
まず押さえておきたいのは、転売という行為そのものは、原則として違法ではないという点です。店で買った商品を、より高い値段で別の人に売る行為は、小売店が問屋から商品を仕入れて利益を上乗せして売る行為と、本質的には何ら変わりません。自分の物をいくらで売るかは本人の自由であり、買い手がその値段に納得して買う以上、取引そのものに問題はないというのが、法律の基本的な考え方です。
「転売ヤー」という言葉は、転売を商売にする人を指す「転売屋」をもじったもので、2000年代にはすでに、秋葉原のパソコンショップの開店日の行列などで、特価品を転売目的で買い占める人を指す言葉として使われていました。今では、品薄の人気商品を買い占めて高値で売りさばく人を批判的に呼ぶ言葉として、広く定着しています。ただし、法律の上では、転売ヤーという特別な分類があるわけではなく、その行為が法律に触れるかどうかは、何をどのような方法で、どのくらいの頻度で売っているかによって、一つひとつ判断されることになります。
実際、フリマアプリやネットオークションでは、日々膨大な数の商品が転売されており、その多くは何の問題もない取引です。使わなくなった服や読み終えた本を売るのも、広い意味では転売ですし、人気商品を発売日に並んで買い、欲しい人に少し上乗せした値段で譲るのも、それだけで直ちに罪になるわけではありません。
転売ヤーへの批判がやまないのは、法律上の問題とは別の社会的な問題を生んでいるからであり、その問題が深刻になった分野では、国が法律で転売を規制するようになりました。
転売ヤーが嫌われる理由
転売ヤーが嫌われる最大の理由は、本当に欲しい人の手に商品が届かなくなることです。発売と同時に転売目的の買い占めが起きれば、ファンや子どもが定価で手に入れる機会が奪われ、どうしても欲しい人は、転売ヤーが付けた高値で買うしかなくなります。好きなアーティストのライブに行きたいファンや、子どもにゲーム機を買ってあげたい親にとって、転売ヤーは自分たちの楽しみを横取りする存在に映るのです。
二つ目の理由は、メーカーや作り手の意図がゆがめられることです。メーカーは、多くの人に手に取ってもらうために、あえて手ごろな定価を設定していることがあります。ところが、その差額は転売ヤーの利益となるだけで、メーカーやアーティストには一円も入りません。それどころか、「高くて買えない」という不満が作り手に向けられ、ブランドのイメージを損なうことさえあります。
三つ目の理由は、店や社会への負担です。人気商品の発売日には、転売目的の客が店頭に殺到して混乱を招いたり、購入制限をかいくぐろうとして店員とトラブルになったりすることがあります。自動購入プログラムを使ってネット通販の在庫を一瞬で買い占めるといった手口も、一般の消費者にとっては不公平に感じられるでしょう。
そして、こうした問題が最も深刻な形で表れたのが、生活必需品の転売です。コロナ禍の初期には、マスクや消毒液が店頭から消え、ネット上で高値で取引される事態が起きました。命や健康に関わる品物が、転売ヤーの利益のために買い占められる光景は、多くの人の怒りを買い、国が法律で転売を禁止するきっかけとなりました。
転売ヤーにも言い分はある
一方で、転売を擁護する立場からの意見もあります。経済学の観点からは、品薄の商品に高値がつくのは、需要と供給のバランスを反映した自然な現象であり、転売は、どうしても欲しい人と、定価で手に入れた人とをつなぐ役割を果たしているという見方もあります。行列に並ぶ時間のない人が、お金を払って手に入れる機会を得ているともいえるわけです。
また、品薄の根本的な原因は、需要に対して供給が少ないことにあり、転売ヤーだけを責めても問題は解決しないという指摘もあります。メーカーが生産量を増やしたり、抽選販売や購入者の本人確認を導入したりすれば、転売の余地は小さくなります。実際、多くのメーカーや販売店は、転売対策として抽選販売や会員限定販売などの工夫を重ねています。
さらに、「転売」と一口にいっても、限定品を買い占めて何倍もの値段で売りさばく人もいれば、地方では手に入らない商品を仕入れて、届けることに価値を見いだしている人もいます。中古品の買取と販売を手がけるリサイクルショップや古書店も、広い意味では転売を生業としているのであり、すべての転売を悪と決めつけることはできません。
転売の是非をめぐっては、立場によって見方が大きく分かれるからこそ、法律は一律に禁じるのではなく、社会的な影響が特に大きい分野に絞って規制するという形をとっているのです。
法律に触れる転売①│チケットの高額転売
転売が法律で禁じられている代表例が、コンサートやスポーツの試合などのチケットの高額転売です。2019年(令和元年)6月14日、「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」、いわゆるチケット不正転売禁止法が施行されました。
この法律が対象とするのは、すべてのチケットではなく、「特定興行入場券」と呼ばれるチケットです。興行主の同意のない有償での譲渡を禁止する旨が明示され、座席や入場資格者が指定されているなど、一定の条件を満たしたチケットがこれにあたります。そのうえで、業として、興行主の事前の同意を得ずに、販売価格を超える金額で譲渡する「不正転売」と、不正転売を目的としてチケットを譲り受ける「不正仕入れ」とが禁止され、違反した場合は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
この法律は、ネット上での転売も対象となるため、チケット転売サイトやSNSを通じた高額転売も取り締まりの対象です。また、不正仕入れも禁止されているため、実際に転売しなくても、転売目的でチケットを手に入れた時点で処罰される可能性があります。
注意したいのは、特定興行入場券にあたらないチケットであれば、高額転売しても問題ないというわけではない点です。チケット販売の規約で転売目的での購入が禁じられているにもかかわらず、その目的を隠してチケットを購入した場合には、詐欺罪に問われるおそれがあります。実際に、チケット不正転売禁止法の施行後、特定興行入場券として販売されていなかったコンサートのチケットについて、転売目的を隠して購入したとして、詐欺罪で逮捕された事例もあります。
法律に触れる転売②│マスクや米の緊急転売規制
もう一つ、法律で転売が禁じられたのが、生活必需品が不足したときの緊急の転売規制です。その根拠となったのが、物価が著しく高騰し、生活に欠かせない物資が不足するような緊急時に、政令で特定の物資の取引を制限できると定めた「国民生活安定緊急措置法」です。
この仕組みが初めて大きく注目されたのが、コロナ禍のマスクでした。2020年(令和2年)3月15日から、店で購入したマスクを購入価格を超える値段で転売することが禁止され、5月26日からはアルコール消毒製品も対象に加えられました。この規制は事業者だけでなく個人も対象とされ、ネット上での出品はもちろん、フリーマーケットなどで売る場合も禁止の対象となりました。その後、マスクや消毒液の供給が安定したことから、規制は8月29日に解除されています。
そして2025年(令和7年)には、米の価格高騰を受けて、同じ法律に基づく転売規制が再び導入されました。政府備蓄米の放出が始まる中、2025年6月23日から、小売店で購入した米を購入価格を超える値段で譲渡することが禁止されたのです。違反した場合は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されることとされました。なお、パックご飯や飲食店で出される米飯などの加工品は対象外とされています。
米の転売規制は、令和7年産米の生産量の増加などで需給が緩和したことを受けて、2026年(令和8年)1月22日に解除されました。このように、緊急時の転売規制は、物資が不足している間に限って設けられる一時的な措置です。しかし、いつ、どの物資が対象になるかは、その時々の社会情勢によって決まるため、転売を手がける人は、こうした規制の動きにも常に目を配っておく必要があります。
許可がいる転売│古物商許可
チケットや緊急時の転売規制とは別に、転売ヤーが最も見落としやすいのが、古物営業法に基づく古物商許可です。古物営業法は、盗品の流通を防ぐために、中古品の売買を商売として行う人に、都道府県公安委員会の許可を受けることを求めています。
古物営業法上の古物とは、①一度使用された物品、②使用されていない物品で、使用のために取引されたもの、③これらの物品に幾分の手入れをしたもの、を指します。ポイントは②で、たとえ未開封の新品であっても、一度消費者が使用する目的で購入した物は、その時点で「古物」になるのです。つまり、家電量販店やおもちゃ屋で一般の客として新品を買い、それをフリマアプリで売る場合、その商品は法律の上では古物ということになります。
そのため、店で売られている新品を転売目的で仕入れ、反復継続して売りさばく、いわゆる転売ヤーの典型的な手法は、古物の売買を商売として行う古物営業にあたり、古物商許可が必要になると考えられています。メーカーや卸売業者から直接仕入れた商品であれば古物にはあたりませんが、一般の小売店で買った商品を転売する以上、許可の問題は避けて通れません。
一方で、自分で使うために買った物が不要になって売る場合や、もらった物を売る場合には、古物商許可は必要ありません。古物商許可が必要かどうかを分けるのは、「最初から転売する目的で仕入れているかどうか」と、「それを商売として繰り返しているかどうか」という点にあります。最初は不用品を売っていただけでも、利益が出ることに気づいて仕入れを始めれば、その時点から古物営業にあたる可能性が出てくるのです。
古物商許可を受けずに古物営業を行った場合は、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金という、決して軽くない罰則が定められています。また、許可を受けた古物商には、1万円以上の取引について相手方の本人確認や帳簿への記録を行い、その帳簿を3年間保存すること、18歳未満の者から買い取る場合に保護者の同意を確認することなど、さまざまな義務も課されます。トレーディングカードやゲーム機、ブランド品など、転売の対象となりやすい商品の多くは古物にあたるため、転売を本格的に始める前に、許可の要否を確認しておくことが欠かせません。
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許可がいる転売│酒類など
古物商許可のほかにも、商品によっては別の許可や免許が必要になります。転売ヤーの間で特に問題となりやすいのが、お酒の転売です。プレミアムのついたウイスキーや、入手困難な日本酒・焼酎は、転売の対象として人気がありますが、酒税法は、酒類を継続して販売する場合には、営利目的かどうかや、販売先が特定か不特定かにかかわらず、税務署長の酒類販売業免許を受けることを求めています。
国税庁によれば、自分で飲むために購入した酒や、人からもらった酒のうち、不要になったものをネットオークションなどで売る場合は、通常は継続的な販売にあたらないため、免許は必要ありません。しかし、転売目的で酒を仕入れて継続的に出品・販売する場合には、酒類の販売業にあたり、免許が必要となります。国税庁は、フリマサイトなどを運営する事業者と連携して、酒類の無免許販売への注意喚起を進めています。
実際に、過去には、酒類販売業免許を持たない会社員などが、入手困難な焼酎を転売目的で継続的に仕入れ、ネットオークションなどで高額で売りさばいていたとして、国税当局から多額の所得隠しや申告漏れを指摘されたことが報じられています。無免許での販売という問題に加えて、転売で得た利益の申告を怠れば、税金の面でも大きな代償を払うことになるのです。
このほかにも、医薬品やたばこなど、販売そのものに許可や登録が必要な商品は少なくありません。フリマアプリでは、こうした商品の出品が規約で禁じられていることも多く、出品が削除されたりアカウントが停止されたりすることもあります。「店で普通に買える物だから、売るのも自由だろう」という思い込みは、思わぬ法律違反につながりかねません。
転売を事業として続けるなら
ここまで見てきたように、転売そのものは違法ではないものの、扱う商品や方法によっては、さまざまな法律の規制がかかってきます。転売を一時的な小遣い稼ぎではなく、事業として続けていくのであれば、まず取り組むべきは、自分の扱う商品にどのような許可や免許が必要かを確認し、必要な手続きを済ませることです。
その中心となるのが、古物商許可です。古物商許可は、主たる営業所の所在地を管轄する警察署を通じて、都道府県公安委員会に申請します。ネットで転売を行う場合でも営業所を定める必要があり、自分のホームページを使って取引を行う場合には、そのURLを届け出たうえで、ホームページに氏名または名称、許可をした公安委員会の名称、許可証の番号を表示することが、古物営業法で義務づけられています。許可を受けておけば、こうした表示を通じて、取引先や買い手からの信用も高まります。
転売で得た利益は所得として課税の対象となり、1か所から給与を受けて年末調整を済ませている会社員であっても、給与以外の所得、つまり売上から仕入れなどの経費を差し引いた金額が年間20万円を超えれば、確定申告が必要になります。また、20万円以下で確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別に必要になることがあります。事業として本格的に取り組むのであれば、個人事業主として開業届を出し、仕入れや売上を帳簿で管理しておくことが大切です。
転売ヤーという言葉には、どうしても悪いイメージがつきまといますが、必要な許可を受け、法律を守り、適正な価格で商品を届けている事業者は、決して非難されるべき存在ではありません。中古品の売買は、古くから古物商として社会に根づいてきた立派な商売です。違法な転売ヤーと、合法な古物商とを分けるのは、法律を知り、正しい手続きを踏んでいるかどうか、それだけです。
古物商許可申請サポート
古物商許可の申請は、申請書のほか、住民票や身分証明書、営業所の使用権限を証明する書類、URLを届け出る場合はその使用権限を示す資料など、多くの書類をそろえることになります。特に、自宅を営業所とする場合や、ネット販売を中心に営業する場合には、賃貸契約の内容や、ホームページの扱いなどで、確認すべき点が少なくありません。
また、扱う商品によって、13の区分の中からどの品目で許可を受けるかを決めることになり、管理者の選任や、営業開始後の帳簿の記録、本人確認の方法など、許可を受けた後に守るべきルールも数多くあります。最初の申請の段階でこうした点を整理しておけば、営業を始めてから慌てることもありません。
弊所では、古物商許可の申請をはじめ、酒類販売業免許など、転売や物販に関わる各種許認可の手続きを幅広く取り扱っています。フリマアプリやネットオークションでの販売を始めたい方から、トレーディングカードやブランド品の買取店を開業したい方まで、事業の内容に合わせてサポートしています。自分の転売に許可が必要かどうか分からないという段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。
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