建設業における専任技術者
建設業許可を取得する際に、経営業務の管理責任者(以下、経管)と並んで高いハードルとなるのが専任技術者(以下、専技)の要件です。
建設工事は専門性が高く、適正な施工を図るためには十分な専門知識が必要とされます。経管が経営能力を担保する機関であるならば、専技は技術面を担保する機関です。また、特定建設業においては、一般建設業よりも大規模な専門工事を請け負うことになりますので、さらに高い専門性が要求されます。
今回は建設業許可における専技の要件について案内していきたいと思います。
専技の要件
建設工事に関する請負契約の適正な締結、履行を確保するためには、許可を受けようとする建設業に係る建設工事についての専門的知識が必要になります。見積、入札、請負契約締結等の建設業に関する営業が各営業所で行われることから、営業所ごとに(常勤・専任)許可を受けようとする建設業に関して一定の資格または経験を有した者(専技)を設置することが必要になります。
一般建設業・特定建設業の別、建設業の業種別により、それぞれ必要な資格が異なります。なお、経管と同様に許可取得後に専技が不在となった場合は、許可取消しの事由になりますのでご注意ください。
「専任」について
専任とは、営業所に常勤し、その営業所の技術者として職務に従事することを指します。
経管との兼務や、同一営業所内における複数の建設業種の専技を兼ねることはできますが、他の営業所の専技を兼ねることはできません。
なお、同一法人の同一営業所内であれば、専技が管理建築士や宅地建物取引主任者を兼ねることは可能とされています。
専任と認められないもの
- パート、アルバイト、契約社員
- 現住所と営業所とが著しく遠距離にあり、一般的に考えて通勤することができない者
- 他の会社の常勤役員や従業員
- 他の会社の専任技術者や主任技術者、監理技術者
- 他の会社の管理建築士や宅地建物取引主任者
- 個人事業主 など
一般建設業における専技の要件
指定学科修了者で高卒後5年以上もしくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
- 高校卒業後許可業種に係る建設工事に関する5年以上の実務経験+指定学科の修了
- 大学卒業後許可業種に係る建設工事に関する3年以上の実務経験+指定学科の修了
指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士もしくは高度専門士を称する者
- 卒業後許可業種に係る建設工事に関する5年以上の実務経験+指定学科の修了
- 卒業後許可業種に係る建設工事に関する3年以上の実務経験+指定学科(専門士又は高度専門士を称するもの)
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者
国家資格者
複数業種に係る実務経験を有する者
特定建設業における専技の要件
国家資格者
指導監督的実務経験を有する者
一般建設業の専任技術者要件を満たしている者で、かつ、許可を受けようとする建設業に関して、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4,500万円以上であるものについて2年以上指導監督的な実務経験を有する者
★指導監督的実務経験
建設工事の設計、施工の全般にわたって工事現場主任や現場監督者のような資格で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいいます。なお、指定建設業の許可を受けようとする場合は、この要件に該当していても許可は取得することができません。
大臣特別認定者
指定建設業7業種に関して、過去に特別認定講習を受け、当該講習の効果評定に合格した者若しくは国土交通大臣が定める考査に合格した者(特別認定講習及び考査については、現在は実施なし)
★指定建設業
土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業
解体工事業の新設に伴う経過措置
平成28年6月1日時点において現にとび・土工工事業の技術者に該当する者は、令和3年3月31日までの間に限り、解体工事業の技術者とみなされます。
実務経験
実務経験は、単なる事務作業や工事現場の雑務ではなく、具体的に以下のような許可業種に関する技術上の全ての職務経験のことを指します。
- 建設工事の施工を指揮監督した経験
- 建設工事の施工に実際に携わった経験
- 土工、見習いに従事した経験
- 建設工事の発注にあたって設計技術者もしくは現場監督技術者として監督に従事した経験
実務経験は、許可業種の経験と経験期間の両方を満たす必要があります。また、これらについては複数の事業者での経験を通算することができます。
許可業種の経験
建設業の許可を受けていた事業者であれば、その会社の建設業許可申請書や決算変更届のコピーを提出することで、許可が有効であった期間について実務経験を証明することができます。また、過去に実務経験で専技として証明されている者の場合は、建設業許可申請書や専技の変更届のコピーが証明として認められます。
建設業の許可を受けていない事業者での経験は、実務経験年数分の建設工事の内容、請負金額及び工事期間が確認できる工事契約書、注文書、請書、請求書等により証明します。
なお、地域によって取扱いに違いがありますので、管轄の土木事務所等に対して必ず確認を行うようにしましょう。
経験期間の証明
こちらも地域によって証明方法の取扱いに違いがありますが、おおむね以下のような書面を提出することにより証明を行います。
- 厚生年金加入期間証明書
- 被保険者記録照会回答票
- 雇用保険被保険者証
- 雇用保険被保険者離職票
- 所得税の確定申告書(証明者が個人事業主の場合)
- 証明者の印鑑証明書 など
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