漬物製造業許可の申請と許可基準について
食品衛生法改正に伴い、令和3年6月から、漬物を製造して販売しようとするときは、漬物製造業として営業許可を取得することが求められています。
これには3年間の経過措置期間が設けられていましたが、令和6年5月31日をもってこの期間も満了し、現在では、新たに漬物製造業をはじめようとするときは、必ず営業許可を取得しなければならないようになりました。
関連法令においては、食品衛生法上の業種ごとに施設設備等の基準を設けて衛生管理の徹底化を図っていますが、業種の違いや手続きの必要性を理解しないまま無許可営業を行ってしまい、行政処分の対象となってしまう事例も数多く散見されます。
そこで本稿では、漬物を自家で製造し、これを販売しようと検討されている皆さまに向けて、必要となる漬物製造業許可の基準や手続きについて、詳しく解説していきたいと思います。
漬物とは
漬物とは、通常副食物として、そのまま摂食される食品であって、野菜、果実、きのこ、海藻等を主原料として、塩、しょう油、みそ、かす(酒かす、みりんかす)、こうじ、酢、ぬか(米ぬか、ふすま等)、からし、もろみ、その他の材料に漬け込んだものをいいます。
これらは、漬け込み後熟成させ、塩、アルコール、酸等により保存性をもたせたもの(熟成後調味のための加熱工程のあるものを除く)と浅漬(一夜漬:生鮮野菜等(湯通しを経た程度のものを含む)を食塩、しょう油、アミノ酸液、食酢、酸味料等を主とする調味液、又は、酒粕、ぬか等を主材料とする漬床で短時日漬け込んだもので、低温管理を必要とするもの)のように保存性に乏しいものに分類されます。
塩漬 | 野菜等を前処理した後、塩を主とした材料で漬け込んだもの | らっきょう塩漬、つぼ漬、しょうが塩漬、梅干、梅漬、白菜漬、高菜漬、広島菜漬、野沢菜漬等 |
しょう油漬 | 野菜等を前処理した後、しょう油を主とした材料に漬け込んだもの | 福神漬、割干漬、しば漬、しょうがしょう油漬、山菜しょう油漬、朝鮮漬、高菜漬、広島菜漬、野沢菜漬、松前漬等 |
みそ漬 | 野菜等を前処理した後、みそを主とした材料に漬け込んだもの | 山菜みそ漬、大根みそ漬等 |
かす漬 | 野菜等を前処理した後、かすを主とした材料に漬け込んだもの | 奈良漬、山海漬、わさび漬、野菜わさび漬、しょうがかす漬、セロリーかす漬等 |
こうじ漬 | 野菜等を前処理した後、こうじを主とした材料に漬け込んだもの | べったら漬、三五八漬等 |
酢漬 | 野菜等を前処理した後、食酢、梅酢又は有機酸を主とした材料に漬け込んだもので、pH4.0以下のもの | 千枚漬、らっきょう漬、はりはり漬、梅酢漬、はじかみ漬等 |
ぬか漬 | 野菜等を前処理した後、ぬかを主とした材料に漬け込んだもの | みずなぬか漬、たくあん漬等 |
からし漬 | 野菜等を前処理した後、からし粉を主とした材料に漬け込んだもの | なすからし漬、ふきからし漬等 |
もろみ漬 | 野菜等を前処理した後、しょう油又はみそのもろみを主とした材料に漬け込んだもの | こなすもろみ漬、きゅうりもろみ漬等 |
その他の漬物 | 上記以外の漬物(乳酸はっ酵したものを含む) | すんき漬、サワークラウト等 |
漬物製造業とは
漬物製造業とは、その名のとおり、漬物を製造する営業をいいます。「漬物」については上記のとおりですが、これには漬物を主原料として調味加工した漬物加工品(高菜漬炒め、味付けザーサイ等も含まれます。
あくまでも「営業」であることから、営利目的をもって漬物を反復継続して漬物を製造することが漬物製造業に該当し、漬物を自家製造することについてはこれに含まれません。また、飲食店営業許可を取得している飲食店は、その許可の範囲内において漬物を飲食物として提供することができます。
漬物製造業許可
漬物製造業を営もうとするときは、施設設備等を都道府県知事等が定めた基準に適合させた上で製造場所の所在地を管轄する保健所に対して申請し、その許可を受ける必要があります。
ここでは代表的な許可基準を抜粋して掲載していますが、施設設備等について求められる基準は自治体ごとに異なるため、基準の詳細については、各自治体のホームページ等でしっかりと確認するようにしてください。
共通基準
食品衛生法上の営業許可を受けるためには、飲食店であれ漬物製造業であれ、営業用の施設設備を以下の基準すべてに適合させる必要があります。
- 営業の施設は衛生上支障のない場所に設置すること
- 営業の施設は住居その他営業の施設以外の施設と明確に区分すること
- 作業場は使用目的に応じて適当な広さを有し、かつ、十分な明るさを確保することができる照明の設備及び換気を十分に行うことができる設備を設けること
- 作業場の床は次に掲げる要件を備えること
- 排水溝を有すること
- 清掃が容易にできるよう平滑であり、かつ、適当な勾配のある構造であること
- 水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料(厚板、モルタルその他水により腐食しにくいもの)で造られていること
- 作業場の床面と内壁面との接合部分及び排水溝の底面の角は、適度の丸みをつけ、清掃が容易にできる構造であること
- 作業場の内壁は清掃が容易にできる構造とし、床面からの高さが1.5mまでの部分及び水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料で造られていること
- 作業場の天井は隙間がなく、清掃が容易にできる構造であること
- 営業の施設は、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ構造であること
- 営業の施設及び機械、器具類は、製造量、販売量、来客数等に応じて十分な規模及び機能を有するものを設けること
- 器具の洗浄、消毒、水切及び乾燥の設備を設けること
- 洗浄の設備は、熱湯を十分に供給できるものであること
- 固定した設備又は移動が困難な設備は、洗浄が容易にできる場所に設けること
- 機械は食品又は添加物に直接接触する部分が不浸透性材料(ステンレス、石、コンクリートその他水が浸透せず、かつ、さびないもの)で造られ、かつ、洗浄及び消毒が容易にできる構造であること
- 器具及び容器包装を衛生的に保管するための設備を設けること
- 添加物を使用する場合は、専用の計量器を備えること
- 原材料、添加物、半製品又は製品を保管する設備は、それぞれ専用のものとし、及び温度、湿度、日光等に影響されない場所に設ける等衛生的に保管ができるものであること
- 冷蔵庫(摂氏10℃以下に冷却する能力を有するものに限る)、冷凍庫その他温度又は圧力を調節する必要のある設備には、温度計、圧力計その他必要な計器を見やすい位置に備えること
- 飲用に適する水を十分に供給できる衛生的な給水設備を専用に設けること
- 十分な容量を有し、不浸透性材料で造られ、清掃が容易にでき、及び汚液、汚臭等が漏れない構造である廃棄物容器を設けること
- 便所には、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ設備を設けるとともに、その出入口及びし尿くみ取口は、衛生上支障のない場所にそれぞれ設けること
- 消毒薬を備えた流水受槽式手洗い設備を、適当な場所に設けること(ただし、魚介類販売業を除き、露店により営業を行う場合又は自動車により営業を行う場合にあってはこの限りでない)
- 従業員の数に応じて、更衣室その他更衣のための設備を設け、及び専用の外衣、帽子、マスク、履物等を備えること
- 露店により営業を行う場合又は自動車により営業(魚介類販売業を除く)を行う場合は、次に掲げる要件を備えること
- 流水受槽式手洗い設備を有しないときは、消毒用アルコール、逆性石けん等を含ませた綿を十分に入れた容器を備えること
- 直接排水ができない場合は、水その他の液体が浸透しにくい材質で、かつ、洗浄が容易にできる排水容器を備えること
- 露店により営業を行う場合は、当該営業に係る施設について、屋根を設け、及び覆いをする等により、調理し、又は加工するための設備にほこり、ちり等が入らない構造とすること
- 自動販売機は、屋内に設置すること。ただし、ひさし等により雨水を防止できる場合にあっては、この限りでない
- 自動販売機の設置場所の床面は、不浸透性材料で造られ、かつ、清掃が容易にできる構造であること
業種別基準
漬物製造業については、上記の共通基準に加え、施設設備等を以下すべての基準に適合させる必要があります。
- 原材料の保管及び前処理並びに製品の製造、包装及び保管をする室又は場所を有すること。なお、室を場所とする場合にあっては、作業区分に応じて区画されていること
- 原材料の前処理及び製品の製造をする室又は場所は、必要に応じて洗浄、漬け込み、殺菌等をする設備を有すること
- 浅漬けを製造する場合にあっては、製品が摂氏十度以下となるよう管理することができる機能を備える冷蔵設備を有すること
食品衛生責任者
漬物製造業の営業所においては、営業所における食品衛生について責任を負う食品衛生責任者の配置が義務付けられています。
食品衛生責任者は、各自治体の食品衛生協会が開催する講習)を受講すれば誰でも取得することができる資格ですが、調理師等の有資格者をこれに当てることもできます。
講習を受ける際の受講料は1万円程で、食品衛生学、衛生法規及び公衆衛生等の科目を座学で約6時間受講します。
手続きの流れ
漬物製造業の営業をはじめるために必要となる手続きは以下のとおりです。
① | 事前相談及び準備 | 工事着工前 |
② | 申請書類等の提出 | 開店の2週間前までに |
③ | 食品衛生監視員による施設調査 | 申請後数日 |
④ | 許可書の交付 | |
⑤ | 営業開始 |
事前相談及び準備
施設の工事前に、施設平面図(機器配置を含む)等を出店地を管轄する保健所に持参し、施設基準等の説明を受けます。
「営業施設の基準」と「公衆衛生上講ずべき措置の基準」が自治体の条例で定められているので必ず確認するようにしてください。
必要となる書類
営業予定地を管轄する保健所に対し、以下の書類を開店のおおむね10日前までに提出します。
- 食品営業許可申請書
- 営業施設の大要
- 施設の平面図及び付近案内図
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(原本)
- 営業許可申請手数料
- 発行後6カ月以内の登記簿謄本の原本(法人)
まとめ
食品に対する衛生管理については、食品衛生法をはじめとする関連法令が改正されるごとに厳格化しています。漬物は加熱加工を施すことが少ない食品であり、事実O-157による食中毒死亡事故も発生しています。
厳格化することについて反発する声もありますが、最低限規制の目的を知り、ご自身の事業についてしっかり説明できるようにしておいてください。
弊所では、兵庫大阪全域にわたり、漬物製造業の営業許可申請の代行を承(うけたまわ)っております。保健所との事前協議から書類の作成と提出、及び保健所による検査の立会いに至るまで、しっかりまるっとサポートいたします。下記の報酬は、市場価格を反映したものですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。漬物製造業の手続きでお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
漬物製造業新規許可申請 | 66,000円〜 |
更新申請 | 33,000円 |
変更届等 | 22,000円~ |
漬物製造業許可申請のご相談はお気軽に♬
兵庫大阪の全域に対応可能です。
☎平日9時〜18時、📩は24時間365日対応!
06-6415-9020 または 090-1911-1497
メールでのお問い合わせはこちら。