自動車解体業の許可基準について

自動車解体

使用済自動車又は解体自動車の解体を行う自動車解体業を営むためには、事業所の所在地を管轄する都道府県知事に対して申請し、その許可を受ける必要があります。この許可を受けるためには、施設基準及び能力基準のいずれの基準にも適合させることが要求されており、相応に厳しいハードルが設けられています。

そこで本稿では、これから解体業を営もうとされる皆さまに向けて、解体業許可を取得するために求められている許可基準について詳しく解説していきたいと思います。

前提条件

許可の前提として「欠格事由」が定められており、解体業者として相応しくない者については、許可を受けることができない旨の規定が設けられています。

具体的に、申請者等(申請者・役員・使用人・法定代理人・発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する株主又は出資の額の100分の5以上の額に相当する出資をしている者)について、以下のいずれの事由がある場合には、許可を受けることができません。

  • 精神の機能の障害により業務を適切に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 自動車リサイクル法、廃棄物処理法、浄化槽法その他生活環境の保全を目的とする法令で政令で定めるもの若しくはこれらの法令に基づく処分若しくは暴力団対策法の規定に違反し、又は刑法上の一定の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  • 自動車解体業、廃棄物処理業又は浄化槽清掃業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(許可を取り消された者が法人である場合においては当該取消しの処分に係る通知があった日前60日以内に当該法人の役員であった者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む)
  • その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
  • 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
  • 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合においてはその役員を含む)が上記のいずれかに該当するもの
  • 法人でその役員又は政令使用人のうちに上記のいずれかに該当する者のあるもの
  • 法人で暴力団員等がその事業活動を支配するもの
  • 個人事業の政令使用人のうちに上記のいずれかに該当する者のあるもの

施設基準

解体業者には、自動車を解体するための適切な施設と設備が必要です。具体的にこの施設は、以下の基準をすべて満たすものであることが求められています。

  • 解体作業場以外の場所で使用済自動車又は解体自動車を保管する場合にあっては、みだりに人が立ち入るのを防止することができる囲いがその場所の周囲に設けられ、かつ、その場所の範囲が明確であること
  • 解体作業場以外の場所で廃油及び廃液が漏出するおそれのある使用済自動車を保管する場合にあっては、その場所が1に掲げるもののほか次に掲げる要件を満たすものであること(保管に先立ち使用済自動車から廃油及び廃液を回収することその他廃油及び廃液の漏出を防止するために必要な措置が講じられることが標準作業書の記載から明らかな場合はこの限りでない)
    • 廃油及び廃液の地下浸透を防止するため、床面を鉄筋コンクリートで築造することその他これと同等以上の効果を有する措置が講じられていること
    • 廃油の事業所からの流出を防止するため、油水分離装置及びこれに接続している排水溝が設けられていること
  • 解体作業場以外の場所で使用済自動車から廃油(自動車の燃料に限る)を回収する場合にあっては、その場所が次の要件を満たすものであること
    • 廃油の地下浸透を防止するため、床面を鉄筋コンクリートで築造することその他これと同等以上の効果を有する措置が講じられていること
    • 廃油の事業所からの流出を防止するため、ためますその他これと同等以上の効果を有する装置及びこれに接続している排水溝が設けられていること
  • 次の要件を満たす解体作業場を有すること
    • 使用済自動車から廃油(自動車の燃料を除く)及び廃液を回収することができる装置を有すること(手作業により使用済自動車から廃油及び廃液が適切かつ確実に回収されることが標準作業書の記載から明らかな場合はこの限りでない)
    • 廃油及び廃液の地下浸透を防止するため、床面を鉄筋コンクリートで築造することその他これと同等以上の効果を有する措置が講じられていること
    • 廃油の事業所からの流出を防止するため、油水分離装置及びこれに接続している排水溝が設けられていること(解体作業場の構造上廃油が事業所から流出するおそれが少なく、かつ、廃油の事業所からの流出を防止するために必要な措置が講じられることが標準作業書の記載から明らかな場合はこの限りでない)
    • 雨水等による廃油及び廃液の事業所からの流出を防止するため、屋根、覆いその他床面に雨水等がかからないようにするための設備を有すること(その設備の設置が著しく困難であり、かつ、雨水等による廃油及び廃液の事業所からの流出を防止するために十分な処理能力を有する油水分離装置を設けることその他の措置が講じられる場合はこの限りでない)
  • 解体作業場以外の場所で使用済自動車又は解体自動車から分離した部品のうち廃油及び廃液が漏出するおそれのあるものを保管する場合にあっては、当該場所が次の要件を満たすものであること(保管に先立ちその部品からの廃油及び廃液の漏出を防止するために必要な措置が講じられることが標準作業書の記載から明らかな場合は、この限りでない)
    • 廃油及び廃液の地下浸透を防止するため、床面を鉄筋コンクリートで築造することその他これと同等以上の効果を有する措置が講じられていること
    • 雨水等による廃油及び廃液の事業所からの流出を防止するため、屋根、覆いその他その部品に雨水等がかからないようにするための設備を有すること

使用済自動車の保管施設

使用済自動車の保管施設は、外部からの人の侵入を防止し、及び保管区域を明確化するため、出入口に施錠等が可能な囲いを設ける必要があります。この囲いの構造、高さ、材質等に具体的な規定はありませんが、少なくとも、容易に乗り越えがたく、くぐり抜けがたく、移動しがたく、及び倒壊しがたい構造を有するものである必要があります。

ただし、小規模な解体事業者にみられるように、使用済自動車を引き受けてその都度解体作業場で解体する場合には、解体するまでの間、使用済自動車を保管する場所を解体作業場とは別に設けるには及ばないことから、この規定は適用されません。

また、事業所全体が外部からの侵入を防止できる囲いで囲まれている場合は、使用済自動車の保管場所の周りにそれとは別に囲いを設ける必要はなく、区域が明確にされたものであれば問題ありません。

廃油及び廃液の漏出防止

老朽化した使用済自動車や事故にあった使用済自動車の中には廃油及び廃液が漏出するおそれがあるものもあるため、これらを解体作業場以外の場所で保管する際に、あらかじめ廃油、廃液の抜き取りが確実に行われることが標準作業書で明らかにされていない場合には、廃油、廃液が漏出した際であっても、外部への流出や地下浸透を防止する構造の保管場所とする必要があります。

廃油、廃液の漏出のおそれのある自動車を、直ちに解体作業場に搬入することで保管場所に代えることもできますが、その場合、その旨を標準作業書に明記する必要があります。

なお、あらかじめ廃油・廃液を適正に抜き取ることが標準作業書に記載されていても、地面に油染みが散見される場合には、床面を鉄筋コンクリート舗装したり、無筋コンクリートで舗装した上に鉄板を敷設する等の措置を講ずるか、もしくは廃油及び廃液の抜き取り方法を見直すことが求められます。

解体施設

使用済自動車を解体するための施設として、燃料抜取場所、解体作業場及び取外部品の保管設備がありますが、これらについてもそれぞれ施設や設備に基準が設けられています。

燃料抜取場所

解体作業を安全かつ環境保全上支障が生じないように行うためには、解体に先立ち、燃料の抜き取りを行う必要があります。燃料の抜き取りにあたっては、万が一燃料がこぼれた場合であっても、燃料が地下に浸透又は外部に流出することを防止するため、こぼれた燃料を速やかに拭き取り、又は降雨の前にため桝から汲み上げておくこと等を標準作業書に記載し、これに則って適正に対処することが求められます。

燃料抜取場所の床面は、燃料の漏出に備え、鉄筋コンクリート舗装したり、無筋コンクリートで舗装した上に鉄板を敷設する等の措置を講じた上で、ため枡その他これと同等以上の効果を有する装置及びこれに接続している排水溝を設ける必要があります。

排水溝に接続するため桝については、必ずしも専用のものを設ける必要はなく、解体作業場の排水を処理するために設けた油水分離装置と共用することも可能ですが、油水分離装置を共有する場合であって、燃料抜取場所に屋根等が設置されていない場合には、そこに降る雨水の量も考慮した上で油水分離装置の能力を定めることが重要です。

抜き取った燃料については、速やかに自家用車、フォークリフト等のタンクに移しかえて再利用する場合以外は、再資源化(再利用を含む)又は適正処理するまでの間、適切に保管する必要があります。

★消防法における指定数量

燃料又は廃油以下の数量(指定数量)以上保管する場合には、消防法により、市町村長等の許可を受けた危険物施設以外の場所で貯蔵・取扱いを行うことはできません。

第1石油類ガソリン200l以上
第2石油類軽油等1,000l以上
第4石油類エンジンオイル等6,000l以上

また、市町村の条例では、指定数量の1/5以上から指定数量未満の危険物(例えばガソリンの場合、40l以上200l未満)に関する技術基準、届出等が定められていることが一般的です。(※)消防法に係る内容は、燃料抜取場所以外の危険物貯蔵・取扱場所にも共通

解体作業場

解体作業場の床面についても、鉄筋コンクリート舗装したり、無筋コンクリートで舗装した上に鉄板を敷設する等の措置を講ずることより、廃油や廃液の漏出に備える必要があります。必要な舗装の厚さや構造は、作業の内容や利用する重機の重量等によって異なることから、数値は定められていませんが、実際の作業内容に応じ、容易に破損したり、地下浸透の原因となるひび割れを生じないよう、構造耐力上安全なものとすることが求められています。

また、標準作業書において手作業により使用済自動車から廃油及び廃液が適切かつ確実に回収されることが明記されている場合を除き、使用済自動車から廃油及び廃液を回収することができる装置を設置する必要があります。

油水分離装置
油水分離装置
油水分離装置(グリストラップ)

解体作業場には、油水分離装置及びこれに接続している排水溝を設置する必要がありますが、①横殴りの雨でも侵入を防ぐことができる屋根及び壁等が設けられており、②周囲から解体作業場内に水が流れ込まない構造であり、かつ、標準作業書により、①万一廃油や廃液が床に漏出した場合には布等で速やかに拭き取ること、②解体作業場の清掃に水を用いないこと等が示されている場合については、これらを設置する必要はありません。

設置する油水分離装置は、流入する汚水の量や水質に応じた十分な能力を有することが求められるほか、油水分離装置で処理する排水の量を減らすことも重要視されています。

油水分離装置の機能を十分に発揮させるためには、具体的な管理の方法について標準作業書に記載し、それに則って適正に管理を行う必要があります。

雨水が床面にかからない設備

強雨が連続する場合であっても適正に処理を行うためには、大規模な油水分離装置が必要となることから、解体作業場に屋根、覆いその他雨水が床面にかからない設備を設けることにより、その発生量を極力減らすことが原則となります。

屋根等の設備は、十分な能力を有する油水分離装置を設置すること等により設置は不要とされますが、そもそも屋根等は、作業を円滑に進めるためにも効果があるものであることから、十分な能力を有する油水分離装置を設置すること等により屋根等の設置に代えることができるのは、土地利用規制等により屋根等の設置が著しく困難な場合に限られ、経済的な理由は屋根等の設置が著しく困難な理由としては認められません。

油水分離装置に雨水排水が流入する場合には、構内舗装・排水設計基準(PDF:1.78MB)等を参考に、地域の降水量と敷地の面積等により処理すべき雨水等の量を計算し、その量も勘案した能力とする必要があります。

また、敷地外部から流入する雨水等については、油水分離装置で処理する必要はないため、敷地周囲に排水溝を設置すること等により、油水分離装置へ流入しないようにする工夫を施します。

屋根等がない場合は、降雨のない日時にあらかじめ燃料や廃油や廃液を抜き取り油液類の油水分離装置への流入を最小限に抑えることとし、降雨時には、燃料、廃油、廃液等は抜き取らず、車の引取り、部品の整理等他の業務を行うなどの対応を取ります。

取外部品の保管設備

廃油が付着した部品や鉛蓄電池から廃油や廃液が漏出し、降雨にさらされることにより地下浸透又は外部に流出することを防止するために、これら部品の保管設備として、床面を鉄筋コンクリート舗装等した専用の倉庫を設置する必要があります。

ただし、例えば使用済トラックから取り外した幌付き荷台や、屋根がある場所に備え付けた鋼製の受け皿等であっても、十分な地下浸透防止機能が確認されているものであれば、これを使用することは差し支えありません。

また、保管に先立ち部品の外部に付着した油分を十分に拭き取るとともに、開口部を閉じる等の措置を講じることにより廃油が外部に流出することがないことが標準作業書により明らかにされている部品については、必ずしもこれらの保管場所に保管する必要はありません。

解体自動車の保管施設

解体自動車の保管施設についても、出入口に施錠等が可能な囲いの設置や、廃油・廃液の漏出防止措置など、基本的には使用済自動車の保管施設と同様の基準が適用されます。

再資源化基準

解体業者が使用済自動車の解体を行うときは、使用済自動車から有用な部品を分離して部品その他製品の一部として利用することができる状態にするなどして、使用済自動車の再資源化を行う必要があります。

保管の方法

部品、材料その他の有用なものを回収することができると認められる使用済自動車又は解体自動車については、部品や材料が破損したり、回収に支障が生じることのないように、適正に保管するよう努めるものとされています。

使用済自動車を山積みにして保管する等の不適正な保管は好ましくないことから、多段積みを行う場合にはラックを用いる等の方法が考えられます。

また、使用済自動車は、廃棄物処理法上の廃棄物として取り扱われることとされているため、保管の数量や保管時の高さについては廃棄物処理法に基づく基準が適用されることから、これらについては使用済自動車の特性を踏まえて別途検討を行う必要があります。

解体の方法

部品や素材として再資源化できる部品や部材については、技術的かつ経済的に可能な範囲で分別回収する必要があるほか、取り外した部品や部材材料については、再資源化を行うまでの間、適正に保管するよう努めるものとされています。

また、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ニッケル・水素電池、タイヤ、廃油、廃液及び室内照明用の蛍光灯については、分別回収するとともに、技術的かつ経済的に可能な範囲で、再資源化を自ら行うか、又は再資源化を業として行うことができる者に引き渡すこととされています。

なお、分別回収した部品等を技術的、経済的な理由で再資源化しない場合には、廃棄物処理法に則って適正に処分する必要があります。

★廃油・廃液の分別回収

廃油・廃液の分別回収とは、使用済自動車から廃油、廃液を適正に抜き取ることができる装置を用いて十分に抜き取ること、又は、適切な時間をかけ手作業により使用済自動車から廃油、廃液を十分に抜き取ることであり、具体的な方法や用いる装置については、標準作業書に記載することとなります。

能力基準

申請者には、事業を的確に、かつ、継続して行うに足りる能力を有することが求められています。この能力を担保するために、具体的には、「標準作業書を常備し、従事者に周知していること」及び「事業計画書又は収支見積書から判断して、解体業を継続できないことが明らかでないこと」が必要とされます。

標準作業書

標準作業書は、解体業を営むにあたり必要となる事項をまとめたルールブックです。標準作業書には、以下の事項について、解体作業が環境保全上及び資源の有効利用上必要な配慮を払って行うことを、解体業を実施していく上で守るべき他法令の規制等(廃棄物処理法、消防法など)とともに、具体的に記載する必要があります。

  • 使用済自動車及び解体自動車の保管の方法
  • 廃油及び廃液の回収、事業所からの流出の防止及び保管の方法
  • 使用済自動車又は解体自動車の解体の方法(指定回収物品及び鉛蓄電池等の回収の方法を含む)
  • 油水分離装置及びためます等の管理の方法(これらを設置する場合に限る)
  • 使用済自動車又は解体自動車の解体に伴って生じる廃棄物(解体自動車及び指定回収物品を除く)の処理の方法
  • 使用済自動車又は解体自動車から分離した部品、材料その他の有用なものの保管の方法
  • 使用済自動車及び解体自動車の運搬の方法
  • 解体業の用に供する施設の保守点検の方法
  • 火災予防上の措置

実際の解体作業手順等は、解体の対象となる車種、解体以降の再資源化方法、当該解体事業場の設備等により多様であることから、標準作業書は、実際の作業内容を踏まえ、文章による詳細な説明の一部に代えて実際の作業工程の写真等を添付するなどして、形式化することがないよう十分留意して作成します。

事業計画書等

作成する事業計画書は、解体実績(使用済自動車の引取り及び解体台数、解体自動車の引渡台数、保管量等)についても含めて記述したものを作成します。

使用済自動車や解体自動車を不適正に大量に保管している実態が明らかであり、使用済自動車等の撤去が事業計画書の中で示されない場合、又は収支見積書により使用済自動車等の撤去を行うための資金的な目途が立たない場合には、解体業を継続できないものとみなされ、許可を取得することはできません。

自動車解体業許可取得サポート

解体業は専門性が高く規制も厳しいことから、許可申請については非常に難易度の高い手続きとなっています。また、申請に必要となる書類も複雑かつ膨大な量で、時間と労力というコストを考えれば、自ら申請を行うことはあまりお薦めできません。

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