自動車解体業の標準作業書について

マニュアル

使用済自動車又は解体自動車の解体を行う自動車解体業を営むためには、事業所の所在地を管轄する都道府県知事に対して申請し、その許可を受ける必要があります。この許可を受けるためには、施設基準及び能力基準のいずれの基準にも適合させることが要求されており、相応に厳しいハードルが設けられています。

そこで本稿では、これから解体業を営もうとされる皆さまに向けて、解体業許可を取得するために求められている能力基準のうち、常備すべき標準作業書について詳しく解説していきたいと思います。

能力基準

申請者には、事業を的確に、かつ、継続して行うに足りる能力を有することが求められています。この能力を担保するために、具体的には、「標準作業書を常備し、従事者に周知していること」及び「事業計画書又は収支見積書から判断して、解体業を継続できないことが明らかでないこと」が必要とされます。

施設基準

解体業者には、自動車を解体するための適切な施設と設備が必要です。具体的にこの施設は、以下の基準をすべて満たすものであることが求められています。

  • 使用済自動車又は解体自動車の解体を行う解体作業場以外の場所で使用済自動車又は解体自動車を保管する場合にあっては、みだりに人が立ち入るのを防止することができる囲いがその場所の周囲に設けられ、かつ、その場所の範囲が明確であること
  • 解体作業場以外の場所で廃油及び廃液が漏出するおそれのある使用済自動車を保管する場合にあっては、その場所が1に掲げるもののほか次に掲げる要件を満たすものであること(保管に先立ち使用済自動車から廃油及び廃液を回収することその他廃油及び廃液の漏出を防止するために必要な措置が講じられることが標準作業書の記載から明らかな場合はこの限りでない)
    • 廃油及び廃液の地下浸透を防止するため、床面を鉄筋コンクリートで築造することその他これと同等以上の効果を有する措置が講じられていること
    • 廃油の事業所からの流出を防止するため、油水分離装置及びこれに接続している排水溝が設けられていること
  • 解体作業場以外の場所で使用済自動車から廃油(自動車の燃料に限る)を回収する場合にあっては、その場所が次の要件を満たすものであること
    • 廃油の地下浸透を防止するため、床面を鉄筋コンクリートで築造することその他これと同等以上の効果を有する措置が講じられていること
    • 廃油の事業所からの流出を防止するため、ためますその他これと同等以上の効果を有する装置及びこれに接続している排水溝が設けられていること
  • 次の要件を満たす解体作業場を有すること
    • 使用済自動車から廃油(自動車の燃料を除く)及び廃液を回収することができる装置を有すること(手作業により使用済自動車から廃油及び廃液が適切かつ確実に回収されることが標準作業書の記載から明らかな場合はこの限りでない)
    • 廃油及び廃液の地下浸透を防止するため、床面を鉄筋コンクリートで築造することその他これと同等以上の効果を有する措置が講じられていること
    • 廃油の事業所からの流出を防止するため、油水分離装置及びこれに接続している排水溝が設けられていること(解体作業場の構造上廃油が事業所から流出するおそれが少なく、かつ、廃油の事業所からの流出を防止するために必要な措置が講じられることが標準作業書の記載から明らかな場合はこの限りでない)
    • 雨水等による廃油及び廃液の事業所からの流出を防止するため、屋根、覆いその他床面に雨水等がかからないようにするための設備を有すること(その設備の設置が著しく困難であり、かつ、雨水等による廃油及び廃液の事業所からの流出を防止するために十分な処理能力を有する油水分離装置を設けることその他の措置が講じられる場合はこの限りでない)
  • 解体作業場以外の場所で使用済自動車又は解体自動車から分離した部品のうち廃油及び廃液が漏出するおそれのあるものを保管する場合にあっては、当該場所が次の要件を満たすものであること(保管に先立ちその部品からの廃油及び廃液の漏出を防止するために必要な措置が講じられることが標準作業書の記載から明らかな場合は、この限りでない)
    • 廃油及び廃液の地下浸透を防止するため、床面を鉄筋コンクリートで築造することその他これと同等以上の効果を有する措置が講じられていること
    • 雨水等による廃油及び廃液の事業所からの流出を防止するため、屋根、覆いその他その部品に雨水等がかからないようにするための設備を有すること

標準作業書

標準作業書は、解体業を営むにあたり必要となる事項をまとめたルールブックです。標準作業書には、以下の事項について、解体作業が環境保全上及び資源の有効利用上必要な配慮を払って行うことを、解体業を実施していく上で守るべき他法令の規制等(廃棄物処理法、消防法など)とともに、具体的に記載する必要があります。

  • 使用済自動車及び解体自動車の保管の方法
  • 廃油及び廃液の回収、事業所からの流出の防止及び保管の方法
  • 使用済自動車又は解体自動車の解体の方法(指定回収物品及び鉛蓄電池等の回収の方法を含む)
  • 油水分離装置及びためます等の管理の方法(これらを設置する場合に限る)
  • 使用済自動車又は解体自動車の解体に伴って生じる廃棄物(解体自動車及び指定回収物品を除く)の処理の方法
  • 使用済自動車又は解体自動車から分離した部品、材料その他の有用なものの保管の方法
  • 使用済自動車及び解体自動車の運搬の方法
  • 解体業の用に供する施設の保守点検の方法
  • 火災予防上の措置

実際の解体作業手順等は、解体の対象となる車種、解体以降の再資源化方法、当該解体事業場の設備等により多様であることから、標準作業書は、実際の作業内容を踏まえ、文章による詳細な説明の一部に代えて実際の作業工程の写真等を添付するなどして、形式化することがないよう十分留意して作成します。

標準作業書の書式例

標準作業書には特に定まった様式はありませんが、前記した必要事項を網羅して記載する必要があります。ここでは、環境省が公表する標準作業書ガイドライン(PDF:813KB)を下敷きとして、記載方法について解説しています。

表紙・目次

ここでは解体業の標準作業書について触れていますが、破砕業を兼業するときは、まとめてひとつの標準作業書としても構いません。目次については、必要事項が網羅されていることが分かるよう記載します。また、外国人従業員がいる場合は、その周知方法についても記載します。

表紙・目次

フローチャート

実際の解体手順について、必要事項をすべて盛り込んだチャートにして示しますが、配置図上で示すことにより、これを省略することもできます。

事業場の配置図

施設の配置を図示したものを記載します。作業の流れを「→」で表示すること等により、チャートの代わりとすることができます。

使用済自動車の運搬の方法

使用済自動車は、自社で運搬するほか、一般廃棄物又は産業廃棄物の収集運搬業の許可を有するもの(産業廃棄物収集運搬業者である場合、事業の範囲に金属くず、ガラスくず、廃プラスチック類が含まれていること)に委託することができます。この場合は、委託する事業者の名称や許可番号等についても、しっかりと作業書に記載します。

また、以下のようなフローチャートを作成して記載すると、整理しやすく、見た目にも分かりやすくなります。

使用済自動車の運搬フロー例

事故車など、廃油・廃液の漏出が著しいものは、積込み場所において、廃油・廃液の抜き取り作業を行い、運搬中の漏出事故の防止を図ります。

具体的には、クーラントやオイルのキャップ、各部位のドレンボルトの有無及び破損状況、その他の箇所からの廃油・廃液等の漏出状況を確認し、漏出のおそれがある場合には、ラップやシール材による密封など漏出防止措置を講ずる必要があります。

これらの措置を施しても、まだ廃油・廃液等が漏出する恐れがある場合には、床面から液体が漏れることのない荷台の車両輸送車を使用することや、漏出箇所の下に吸着マットやオイルパンなどを敷いて漏出防止措置を講じて運搬する必要があります。(床面の一部が網状になっている荷台や、タイヤレーンが剥き出しになった荷台の車両輸送車での運搬は好ましくない)

運搬方法については、特に限定されていませんが、車両を運転して運搬するほか、車両輸送専用車(キャリアカー、セルフローダーなど)やクレーン付き平ボディのトラックなどを使用したり、レッカー車での運搬又は牽引による運搬(廃油・廃液の漏出及びそのおそれがない場合に限る)等により行います。

使用済自動車の運搬の方法

使用済自動車の保管

無秩序に使用済自動車や解体自動車が保管され、野積み状態となってしまうことを避けるために、保管の範囲が明確であることが求められます。

囲いの範囲と使用済自動車や解体自動車の保管場所の範囲が一致する場合は、その囲いをもって保管場所の範囲が明確といえますが、事業所全体が囲いで囲まれており、その一部が使用済自動車や解体自動車の保管場所である場合には、例えば以下のような様々な対応が考えられます。

  • 許可申請の際に提出する図面や、標準作業書でその範囲を明確にする
  • 保管場所の境界にカラーコーンを置く
  • ロープ等の目印となるものを地面に固定する
  • 地面に白線等を引いて、その範囲を明確化する

使用済自動車の保管の高さは、屋外においては、囲いから3m以内は高さ3mまで、その内側では高さ4.5mまで、大型自動車にあっては、高さ制限は同様ですが、原則平積みとすることとされています。ただし、ラックを設ける場合であって、保管する使用済自動車の荷重に対して構造耐力上安全であり、適切に積み降ろしができるものにあっては、この高さ制限は適用されません。

また、保管量の上限については、保管場所の面積、保管の高さの上限により形成される空間内に適正に保管できる数量とする必要があります。

保管の高さ、保管量の上限

使用済自動車、未プレス解体自動車の保管にあたっては、他の廃棄物を混入しないこととし、使用済自動車を積み重ねて保管する場合は、隙間のないように積み重ね、各自動車の重心がほぼ重なり、落下することのないよう適正に積み重ねる必要があります。

保管場所の面積が広い場合は、火災予防上支障がなく、使用済自動車を容易に取り出せるよう作業用の通路を確保することが望ましいでしょう。

なお、使用済自動車を引き取ってその都度解体する場合は、解体作業場において、直ちに解体するため、特段の保管場所は設けず、保管は解体作業場のみで行います。

使用済自動車の保管方法

このほか、保管場所の床面の構造ごとの保管方法についても、以下のような工夫を施すことが求められます。

床面が鉄筋コンクリート等でなく、廃油・廃液が漏出するおそれがある使用済自動車を保管する場合保管場所には鉄筋コンクリートの床面や油水分離槽などは設けないが、老朽や事故車など、廃油・廃液の漏出するおそれがある車両は、直ちに解体作業場で液抜きを行い、保管場所での廃油・廃液が漏れないように適切に処置した上で保管すること
床面の厚さが15cm以下の場合①保守点検を確実に行い、ひび割れ等が見つかった場合は直ちに補修すること
②重機を用いる場合は鉄板を敷くこと
使用済自動車の保管

廃油及び廃液の回収等

廃油及び廃液の回収等

油水分離装置等の管理の方法

油水分離装置
油水分離装置(グリストラップ)

油水分離装置からの廃油の回収については、連続式の回収装置や吸引による回収などが挙げられます。

油水分離装置等の管理の方法

使用済自動車等の解体の方法

解体の順番は各業者により異なるため、各業者が通常行っている手順に沿って記載します。

解体に伴う廃棄物の処理の方法

産業廃棄物については、以下の基準に沿って保管を行います。

  • 周囲に囲いが設けられていること
  • 産業廃棄物保管場所、保管する産業廃棄物(金属くず、廃プラスチック類等)の種類、保管場所の管理者の氏名名称保管高さの最大値(屋外の場合)を記載した掲示板を掲示すること(大きさは縦横それぞれ60cm以上)
  • 保管の場所から廃棄物が飛散、流出、地下浸透せず、並びに悪臭が発散しないこと
  • ねずみ、蚊、ハエ等の衛生害虫が発生しないこと
  • 屋外に保管する場合にあっては以下の高さ基準を遵守すること
屋外保管場所の高さ基準
バッテリー(鉛蓄電池)の回収・保管バッテリー(鉛蓄電池)を回収し、再資源化を業として行うことができる者に引き渡すこと
廃タイヤの回収・保管・処理タイヤを回収し、再資源化を業として行うことができる者に引き渡すこと
産業廃棄物の引き渡しに先立ち、各処理業者と委託契約を締結すること
産業廃棄物の引き渡しにあたっては、マニフェストを発行し廃棄物処理法に従い適正に運用すること
大量に保管すると、火災予防上問題となるケースがあるので、適正保管量を超えないよ  うにすること
タイヤを屋外に保管する場合、水が貯まることによりボウフラが発生し、蚊等の発生源 となる場合があるので、水が溜まらない工夫(シートで覆いをする、時おり水を捨てて積み替える、薬剤を定期的に散布する等)を図る必要があること
エアバック類の回収・保管・処理車上作動処理で、近隣に住宅がある場合は、住宅から離れた建屋内で行う、夜間は作業を行わない等の音に配慮した措置を記載すること
エアバックの引渡義務の履行について記載すること
解体に伴う廃棄物の処理の方法、有用部品の保管の方法①

有用部品の保管の方法

取外部品例

電装品及び廃油が付着している可能性の高いミッションやエンジン部分については、廃油・廃液や鉛等の有害物質が付着している可能性のないものを除き、屋外に放置することがないよう注意します。

部品の回収フロー例

使用済自動車等から分離した部品等の保管については、残留又は付着している廃油・廃液が流出しないよう、廃油・廃液が残留又は付着している部品とその他のものを区分し、①商品となるもの、②有価物として金属回収業者等に引き渡すもの、及び③その他廃棄物に分け、①②に該当するもののうち廃油・廃液が残留している部品は、鉄筋コンクリート舗装の床など漏出対策の整った場所において廃油・廃液を完全に抜き取り、オイルキャップやドレンボルトなど開口部を確実にふさいだ上で、部品の表面に付着した油分等をウェスなどで拭き取ります。また、必要に応じて、部品をビニールシートなどで包むことも有効です。

解体に伴う廃棄物の処理の方法、有用部品の保管の方法②

解体施設の保守点検の方法

解体施設の保守点検の方法

火災予防上の措置

火災予防上の措置①

解体自動車の運搬の方法

解体自動車の運搬の方法

解体自動車の保管の方法

解体自動車の保管の方法

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