個人タクシー開業ガイド│営業許可、譲渡譲受及び事業承継について

個人タクシー

一般乗用旅客自動車運送事業とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業(旅客自動車運送事業)のうち、一個の契約により乗車定員11人未満の自動車を貸し切って旅客を運送する事業をいいます。

個人タクシーは「1人1車制タクシー」とも呼ばれ、個人がこの一般乗用旅客自動車運送事業許可を取得し、自ら1台のタクシー車両を使用して旅客を運送する事業のことを指します。

一般旅客自動車運送事業について

一般乗用旅客自動車運送事業とは、旅客自動車運送事業のうち、一個の契約により乗車定員11人未満の自動車を貸し切って旅客を運送する事業をいいます。タクシー事業はこの一般乗用旅客自動車運送事業に該当し、事業を開始するためには、原則として国土交通大臣から一般旅客自動車運送事業許可(認可)を受ける必要があります。

法人タクシーについて

同じく一般乗用旅客自動車運送事業に該当するタクシー事業であって、企業が経営するタクシーを個人タクシーと区別して「法人タクシー」と通称しています。実際に開業までのプロセスや許可基準に違いがあり、これらは一緒くたにせず分けて考える必要があります。

自動車運転代行業について

類似する事業形態に自動車運転代行業がありますが、こちらは他人に代わって他人の自動車を運転する役務を提供する営業形態であり、車両ごとサービスに含まれるタクシー事業とは開業のためのプロセスも異なります。

介護タクシーについて

一般のタクシーと異なる点は、車いすやストレッチャーのまま乗車できる福祉車両を使用し、移動だけでなく利用者の介助を行うという点にあります。

介護タクシーも一般乗用旅客自動車運送事業の一形態ではありますが、「福祉車両」の限定条件が付いており、手続きも通常のタクシーとは異なります。

開業方法

個人タクシーの開業には、新規で許可を受けて開業する方法(新規許可)と、すでに個人タクシーの許可を得て営業している事業者から事業を譲り受けて開業する方法(譲渡譲受)があります。また、レアケースとして、個人タクシーを営んでいた親族から相続によって事業を継承するパターン(事業承継)もあります。

新規許可

言葉そのまんま、新たに個人タクシーの許可を受けて開業する方法です。新規許可については申請時期や許可時期が定められているため、その時期に合わせて手続きを進めていく必要があります。ただし、タクシー事業は、ほとんどの地方運輸局管内において総量規制がされており、そもそも新規許可の取得が難しいケースが多いのでご注意ください。

なお、時限的な措置ではありますが、特例で個人タクシーの新規許可を認める措置が講じられています。特例を利用した許可の取得も選択肢のひとつとして検討するようお薦めいたします。

譲渡譲受

すでに個人タクシーの許可を得て営業している事業者から事業を譲り受けて開業する方法です。譲渡人と譲受人の間で「譲渡譲受契約」を結び、運輸局から認可を受けることにより事業を開始することができます。

譲渡譲受の認可申請については、通年申請が可能となっています。ただし、認可の基準となる法令試験に合格するタイミングによって手続きの手順は異なります。

譲渡譲受認可申請後に法令試験を受けるパターンであれば試験に合格することにより認可が行われますが、この契約に先立って事前試験を受けた場合、合格後に発行される合格証の有効期間は2年間となります。

この場合、合格してから2年という期限内に譲渡人を探して契約し、管轄の地方運輸局に譲渡譲受認可申請を行い、認可を受けるという流れになります。

事業承継

被相続人(亡くなった親族)の経営していた個人タクシー事業を相続人が引き継いで開業する方法です。

相続人が個人タクシー事業を承継するためには、管轄の地方運輸局に対して申請を行い、相続の認可を受けることが必要になります。また、相続人が複数いる場合において、遺産分割協議などによりタクシー事業の相続人を定めた場合は、その者が認可申請をすることが必要になります。

共通の基準

  1. 営業区域
  2. 年齢及び運転経歴等
  3. 法令遵守状況
  4. 資金計画
  5. 営業所
  6. 事業用自動車
  7. 自動車車庫
  8. 健康状態及び運転に関する適性
  9. 法令及び地理に関する知識
  10. その他

上記が個人タクシー事業の許可と認可に共通する基準についての項目です。以下にそれぞれの基準について詳しく確認していくことにしましょう。

営業区域

営業区域は、営業所所在地を管轄する地方運輸局長が定める区域になります。

年齢及び運転経歴等

個人タクシーを営むためには、有効な二種運転免許(普通免許又は大型免許に限る)を所持している必要があります。また、申請時点において65歳未満であることが条件とされているほか、年齢によって求められる条件が異なりますので、以下でしっかりと確認するようにしてください。

申請時点で35歳未満の場合申請日以前に、申請しようとする営業区域内において同一のタクシーまたはハイヤー事業者に継続して10年以上雇用されていた経験を有すること申請日以前10年間で無事故無違反であること
申請時点で35~40歳未満の場合申請しようとする営業区域内において、自動車の運転を専ら職業(職業ドライバー)としていた期間が10年以上であり、そのうちタクシーやハイヤーとしての運転経験が5年以上、なおかつ3年以上は継続して従事していた経験を有すること申請日以前10年間が無事故無違反の場合は、40歳~65歳未満の要件が適用される
申請時点で40~65歳未満の場合申請日以前25年間で職業ドライバーだった期間が10年以上あり、かつ、申請しようとする営業区域内でタクシーやハイヤーの運転を職業としていた期間が申請日以前の3年以内に2年以上あること

職業ドライバーとしての期間には、バスドライバーやトラックドライバーに従事した期間も含まれますが、一般旅客自動車運送事業以外の職業は50%として換算されるため、トラックドライバーなどに従事していた期間は、たとえば10年であったとしても5年として換算されます。

法令遵守状況

  • 申請日以前5年間及び申請日以降に、以下の処分を受けていないこと(過去にこれらの処分を受けたことがある場合には、申請日の5年前においてその処分期間が終了していること)
    • 道路運送法、貨物自動車運送事業法又はタクシー適正化・活性化特措法の違反による輸送施設の使用停止以上の処分又は使用制限(禁止)の処分
    • 道路交通法の違反による運転免許の取消しの処分
    • タクシー業務適正化特別措置法に基づく登録の取消し処分及びこれに伴う登録の禁止処分
    • 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の違反による営業の停止命令又は営業の廃止命令の処分
    • 刑法、暴力行為等処罰に関する法律、麻薬及び向精神薬取締法、覚せい剤取締法、売春防止法、銃砲刀剣類所持等取締法、その他これに準ずる法令の違反による処分
    • 自らの行為により、その雇用主が受けた道路運送法、貨物自動車運送事業法、タクシー業務適正化特別措置法又はタクシー適正化・活性化特措法に基づく輸送施設の使用停止以上の処分
    • 申請者が一般旅客自動車運送事業又は特定旅客自動車運送事業の許可の取消しを受けた事業者において、取消処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に運行管理者であった者として受けた運行管理者資格者証の返納命令の処分
  • 申請日以前3年間及び申請日以降に、道路交通法の違反がなく、運転免許の効力の停止を受けていないこと(申請日の1年前以前において、点数が1点付されることとなる違反があった場合、又は点数が付されない違反があった場合のいずれか1回に限り違反がないものとみなす)
  • 上記の違反により現に公訴を提起されていないこと

資金計画

資金計画では、所要資金の100%以上の自己資金を確保することが求められます。また、自己資金は申請日から許可取得までの間、資金計画を満たし続ける必要があります。これは手続きにおいて2度確認が行われることを意味します。つまり、いわゆる「見せ金」は通用しないことになります。

設備資金80万円以上
80万円未満で所要の設備が調達可能であることが明らかである場合はその額
運転資金80万円以上
自動車車庫に要する資金新築、改築、購入又は借入等自動車車庫の確保に要する資金
保険料自賠責保険料、任意保険料の12か月分

なお、自己資金の立証には銀行が発行する残高証明書が用いられます。この自己資金は預貯金を原則としていますが、運輸局が個別に判断することにより、その他の流動資産を自己資金に含めることもできる例外的な取扱方法も存在します。

※登録免許税は150,000円になります。

営業所

  • 申請する営業区域内にあり、住居と営業所が同一であること
  • 申請する営業区域内に申請日現在において現に居住しているものであること等、居住の実態が認められるものであること
  • 使用権原を有するものであること

営業所とは、営業所、事務所、出張所などの名称を問わず、個人タクシー事業の営業上の管理を行う事務所を指します。

営業所には使用権原を有することが求められますが、自己保有の場合は登記簿謄本、借用の場合は契約期間が概ね3年以上の賃貸借契約書を提示又は写しを提出することで使用権原を有するものとみなされます。

ただし、賃貸借契約期間が3年未満であっても、契約期間満了時に自動的に契約が更新されるものと認められる場合には、例外的に使用権原を有するものとみなされます。

事業用自動車

事業用自動車は、申請者が使用権原を有するものであることが必要です。まなお、リース車両についてはリース契約期間が概ね1年以上であることとし、契約書の提示又は写しの提出をもって使用権原を有するものとみなされます。

自動車車庫

  • 申請する営業区域内にあり、営業所から直線距離で2km以内であること
  • 計画する事業用自動車の全体を収容することができるものであること
  • 隣接する区域と明確に区分されているものであること
  • 土地・建物について3年以上の使用権限を有すること
  • 建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触していないこと
  • 事業用自動車の出入りに支障がなく、前面道路が車両制限令に抵触していないこと
  • 車庫前面道路が私道の場合は私道について使用権原を有する者の承諾があり、かつ私道に接続する道路が車両制限令に抵触していないこと
  • 法令及び地理の試験合格後の関東運輸局長が指定する日(申請前に法令及び地理の試験に合格している者にあっては申請時)までに確保できるものであること

自己保有の場合は登記簿謄本、借用の場合は契約期間が概ね3年以上の賃貸借契約書の提示又は写しの提出をもって、使用権原を有するものとみなされます。

ただし、賃貸借契約期間が3年未満であっても、契約期間満了時に自動的に契約が更新されるものと認められる場合には、使用権原を有するものとみなされます。

なお、車庫前面道路については、出入りに支障がないことが明らかな場合を除き、道路幅員証明書の添付を求められます。

健康状態及び運転に関する適性

  • 公的医療機関等の医療提供施設において、胸部疾患、心臓疾患及び血圧等に係る診断を受け、個人タクシーの営業に支障がない健康状態にあること
  • 独立行政法人自動車事故対策機構等において、運転に関する適性診断を受け、個人タクシーの営業に支障がない状態にあること

法令及び地理に関する知識

地方運輸局長が実施する法令及び地理の試験に合格する必要があります。ただし、申請する営業区域において、申請日以前継続して10年以上タクシー又はハイヤー事業者に運転者として雇用されている者で、申請日以前5年間無事故無違反であった者又は申請する営業区域において、申請日以前継続して15年以上タクシー又はハイヤー事業者に運転者として雇用されている者については、地理試験が免除されます。

法令試験は毎月1回実施されます。試験は正誤式、語群選択式、記述式で30問以内で出題され、正解率が80%以上で合格となります。なお、試験時には限定的ですが書籍等を持ち込むことができます。

不合格の場合は1回に限り再試験を受けることができますが、再試験でも合格しない場合には申請は却下され、いちから申請をやり直しする必要が生じます。

その他

申請日前3年間において個人タクシー事業を譲渡若しくは廃止し、又は期限の更新がなされなかった者でないことが求められます。

譲渡譲受の認可基準

基本的には新規許可と同様の基準をクリアした者が譲受人として認可を受けることができます。

譲渡人の資格要件

譲渡人(事業を譲ろうとする者)は、申請日時点において、次のいずれかに該当するとともに、有効な第二種運転免許を有していることが必要です。

ただし、年齢が満75歳に達する日以前に、既に譲渡譲受認可申請がなされ、許可条件が適用されており、従前の許可期限の日を過ぎている場合を除きます。

  • 年齢が65歳以上75歳未満であること
  • 年齢が65歳未満で、傷病等により事業を自ら遂行できない正当な理由がある者であること
  • 年齢が65歳未満で、20年以上個人タクシー事業を経営している者であること

譲受人の資格要件

譲受人(開業しようとする者)は、上記の共通基準を満たす必要があります。

相続の認可基準

  • 被相続人の死亡時における年齢が75歳未満であること
  • 相続人が共通基準を満たす者であること

申請の受付、法令及び地理の試験並びに処分は、随時行われますが、申請は被相続人の死亡後60日以内になされなけれざなりません。

許可申請

一般旅客自動車運送事業の許可を受けようとする者は、営業所を管轄する運輸支局に対し、以下の書類を提出して申請を行います。

  • 許可申請書
  • 運行管理体制
  • 事業の開始に要する資金及びその調達方法
  • 休憩、仮眠又は睡眠のための施設の概要
  • 損害賠償能力を証する書類
  • 1人1車制タクシーである旨を記載した書面
  • 資産目録、戸籍抄本及び履歴書
  • 欠格事由に該当しない旨の誓約書
  • その他必要な書類

また、許可申請書には、次の事項を記載します。提出された申請書は、その後地方運輸局において審査が行われます。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
  • 経営しようとする一般旅客自動車運送事業の種別
  • 路線又は営業区域、営業所の名称及び位置、営業所ごとに配置する事業用自動車の数その他の国土交通省令で定める事項に関する事業計画

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個人タクシー新規許可申請275,000円〜
個人タクシー認可申請198,000円〜
法人タクシー許可申請550,000円〜
介護タクシー許可申請132,000円〜
※税込み

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