自動車運転代行業開業ガイド│自動車運転代行業認定申請について
現代社会において、自動車が日常生活に不可欠なインフラのひとつであることについては、もはや異論を差し挟む余地のない事実です。他方、取締りが厳しくなったとはいえ飲酒運転に起因する事故は後を絶たず、自動車が人命を脅かす凶器となりうる存在であるということも、また事実として受け入れる必要があります。
出先での飲酒と自動車の輸送という相反するふたつの要請に応える形で誕生した自動車運転代行業ですが、1960年代頃には地方都市を中心として既にサービスとして存在していたものの、法整備が遅れていたことから、交通事故の多発や、不適正業者の跋扈(ばっこ)といった問題点が指摘されていました。
2002年に自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律(自動車運転代行業法)が施行されたことによりようやく法整備がなされ、現在では自動車運転代行業に該当するサービスを行うためには、都道府県公安委員会から認定を受けることが必須の条件になっています。
そこで本稿では、これから自動車運転代行業の開業を検討する皆さまに向けて、タクシーとの対比を交えながら、開業の際に必要となる基礎知識について詳しく解説していきたいと思います。
目 次
自動車運転代行業
自動車運転代行業とは、他人に代わって自動車を運転する役務を提供する営業であって、以下のいずれにも該当するものをいいます。
- 主として、夜間において酔客に代わって自動車を運転する役務を提供するものであること
- 酔客その他の役務の提供を受ける者を乗車させるものであること
- 常態として、当該自動車に当該営業の用に供する自動車が随伴するものであること
自動車運転代行業とタクシーとの違いは、自動車運転代行業が車両を提供するサービスではなく、あくまでも利用者の自動車を代わりに運転する者を提供するサービスであるという点にあります。
また、単独で運行するタクシーとは異なり随伴用自動車を随伴(ずいはん:お供としてつき従うこと)させるため、役務を提供するにあたっては、必ず2名以上の運転者が必要になります。
これらを踏まえ、以下のような行為や事業については、自動車運転代行業には該当しないものとして取り扱われています。
- 長期的な契約に基づき、自家用自動車の運転、整備又は燃料や備品の管理等を請け負う事業(自家用自動車管理業)
- 顧客の依頼に応じ自動車の輸送を行う事業(陸送業)
- タクシーで酔客等を運送するとともに、酔客等の自動車を別の運転者が輸送するもの(タクシー代行)
- 無償で運転を代行する行為
- 他人が酒気を帯びている場合に、当該他人の自動車に当該他人を乗車させて運転し、これにより謝礼を受け取る行為であって、反復継続性のないもの
自動車運転代行業の認定
自動車運転代行業を営もうとする者は、主たる営業所を管轄する警察署を経由し、都道府県公安委員会に対して以下の書類を提出することにより申請を行います。
- 認定申請書
- 欠格事由に該当しない者であることを誓約する書面
- 精神機能の障害に関する医師の診断書
- 安全運転管理者及び副安全運転管理者の住民票の写し及び履歴書
- 安全運転管理者の自動車の運転の管理に関する経歴を記載した書面(公安委員会の認定を受けた者を除く)
- 副安全運転管理者の自動車の運転の管理に関する経歴を記載した書面(自動車の運転の管理に関し一年以上実務の経験を有する者)
- 安全運転管理者及び副安全運転管理者の公安委員会の認定証(公安委員会の認定を受けた者)
- 損害を賠償する措置が基準に適合していることを証する書類
- 未成年登記簿の謄本(未成年)
- 相続に関する書類(成年と同一の能力がない未成年)
- 登記事項証明書(法人)
- 定款又はこれに代わる書類(法人)
申請書類を公安委員会が審査し、知事の同意を得て認定がされた場合は認定証が交付されます。なお、申請から認定まではおおむね40〜50日程度の日数を要します。
★認定の取消し
都道府県公安委員会は、自動車運転代行業者について、次のいずれかの事実が判明したときは、その認定を取り消すことができるものとされています。
- 偽りその他不正の手段により認定受けたこと
- 欠格事由に該当していること
- 正当な理由がないのにもかかわらず、認定を受けてから6 か月以内に営業を開始せず、又は引き続き6か月以上を休止し、現に営業を営んでいない者
- 3か月以上所在不明であること
認定の要件
自動車運転代行業として認定を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。なお、随伴用自動車の台数については特に定めがないため、最低1台あれば事業をはじめることができます。
- 二種免許を取得している者を配置すること
- 安全運転管理者を配置すること
- 基準に適合した損害賠償保険に加入していること
- 欠格要件に該当しないこと
二種免許の取得
顧客車(代行運転自動車)を運転する者は、二種免許を所持している者である必要があります。二種免許を所持せずに顧客車を運転した場合、運転者が当然に無免許運転となるほか、二種免許のないことを知りつつ業務に就かせた場合は、使用者等も無免許運転の下命・容認違反として処罰されることになります。
ただし、これはあくまで顧客車の運転者に限られることであり、随伴用自動車の運転者については二種免許を所持することを要求されていません。
安全運転管理者の設置
自動車運転代行業者は、営業所ごとに、過去2年以内にひき逃げや飲酒運転など重度の違反行為をしていない者であって以下のいずれかに該当する者のうちから、交通安全教育の実施、運転計画や運転日誌の作成、点呼等の実施、及び安全運転の指導等の業務を行う者として、安全運転管理者を選任し配置する必要があります。
- 自動車の運転管理の実務経験が2年以上ある者
- 自動車の運転管理の実務経験が1年以上ある者であって、公安委員会が行う教習を修了した者
- 自動車の運転管理に関し、上記の者と同等以上の能力を有する者として公安委員会が認定した者
また、10台以上の随伴用自動車を使用する営業所については、以下のとおり、その営業所ごとに使用する随伴用自動車の台数に応じて、副安全運転管理者を選任して配置する必要があります。
随伴用自動車の台数 | 副安全運転管理者 |
---|---|
~9 | 0 |
10~19 | 1 |
20~29 | 2 |
30~39 | 3 |
40~49 | 4 |
損害賠償保険への加入
自動車運転代行業者は、顧客車運転中の事故損害に対する賠償に備え、以下の金額を最低保障額とする代行運転自動車保険に加入する必要があります。
対人 | 8,000万円(1人につき) |
対物 | 200万円(1事故につき) |
車両 | 200万円(1事故につき) |
欠格事由
次のいずれかの事由に該当する者は、自動車運転代行業の適格性を欠く者として、認定を受けることはできません。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 禁固以上の刑に処せられ、又は自動車運転代行業の業務の適正化に関する規定により、若しくは道路運送法(無許可旅客運送事業の禁止)の規定、若しくは道路交通法第75条第1項(使用者の義務の規定)の規定に違反し、若しくは同法第75条第2項、若しくは同法第75条の2第1項の規定による命令に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者
- 最近2年間に自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の規定により、営業の停止、営業の廃止の命令に違反する行為をした者
- 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
- 精神機能の障害により自動車運転代行業の業務を適正に実施するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
- 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者(その者が自動車運転代行業の相続人であって、その法定代理人が1~5及び9のいずれにも該当しない場合を除く)
- 代行運転自動車の運行に生じた利用者その他の者の生命、身体又は財産の損害を賠償するための措置が国土交通省令で定める基準に適合すると認められないことについて相当の理由がある者
- 安全運転管理者を選任すると認められないことについて相当の理由がある者
- 法人でその他の役員のうち1~5までのいずれかに該当する者があるもの
自動車運転代行業約款
自動車運転代行業者は、その営業の開始前に、利用者の正当な利益を害するおそれがないものであって、以下の事項を記載した自動車運転代行業約款を定め、あらかじめ国土交通大臣に届け出た後、これをその営業所において利用者に見やすいように掲示する必要があります。
- 料金の収受又は払戻しに関する事項
- 代行運転役務の提供に関する事項
- 代行運転役務の提供の責任の始期及び終期
- 免責に関する事項
- 損害賠償に関する事項
ただし、自動車運転代行業者が、国土交通大臣が定めて公示した標準自動車運転代行業約款と同一の自動車運転代行業約款を定め、又は現に定めている自動車運転代行業約款を標準自動車運転代行業約款と同一のものに変更し、掲示をしたときは、その自動車運転代行業約款については、届出をしたものとみなされます。
★自動車運転代行業約款の届出
自動車運転代行業約款の届出をしようとする者は、自動車運転代行業約款の実施予定期日の30日前までに、以下の事項を記載した自動車運転代行業約款設定(変更)届出書を、主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事に提出します。
- 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
- 設定又は変更をしようとする自動車運転代行業約款(変更の届出の場合にあっては新旧の自動車運転代行業約款(変更に係る部分に限る)を明示すること)
- 実施予定期日
- 変更の届出の場合にあっては変更を必要とする理由
標識の表示義務
代行運転自動車を運転する場合は、車体の前後に、代行運転自動車標識を表示する必要があります。ただし、代行運転自動車の車体の材質又は状態その他の事情に照らして、代行運転自動車標識を付けることが困難又は不適当であると認めるときは、標識を代行運転自動車の前面の見やすい箇所(ダッシュボード上を想定)に掲示することをもってこれに代えることができます。
同様に随伴用自動車についても、自動車運転代行業者の名称(又は記号)、認定を行った都道府県公安委員会の名称、認定番号及び「代行」「随伴用自動車」の文字を車体に表示する必要があります。
変更の届出等
以下の事項に変更があったときは、その日から10日以内に、主たる営業所を管轄する(警察署を経由して)都道府県公安委員会に対し、変更の届出を行う必要があります。
- 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
- 主たる営業所その他の営業所の名称及び所在地
- 損害賠償保険に関する事項
- 安全運転管理者等の氏名及び住所
- 法人にあっては役員の氏名及び住所
- 随伴用自動車の自動車登録番号、車両番号、標識の番号又は車台番号(これらが存しない場合の車台番号を含む)
また、以下のいずれかの事由に該当したときは、その日から10日以内に、(警察署を経由して)都道府県公安委員会に対し、認定証を返納する必要があります。
- 廃業したとき
- 認定を取り消されたとき
- 認定証の再交付を受けた後、亡くした認定証を発見したとき(発見した認定証を返納)
- 個人認定の場合、代表者が亡くなったとき(同居の親族又は法定代理人が返納)
- 法人認定の場合、合併により消滅したとき(合併後の法人代表者が返納)
まとめ
自動車運転代行業は、車両1台と本人を含む2名の従業員から営業することが可能なことから、比較的開業のハードルが低い事業形態であるといえます。ただし、保険料を含んだ車両の維持費や人件費なども考慮すると、ランニングコストはそれなりに必要になるほか、酔客相手の業務であることから、トラブルにも巻き込まれやすい事業形態であるともいえます。色々な意味で体力が必要な業種であることは間違いないため、開業にはこういった要素も踏まえた上で、しっかり準備を進めるようにしましょう。
弊所では、事前調査から面倒な書類作成、警察署とのやり取り及び申請の代行に至るまで、自動車運転代行業認定申請をまるっとサポートさせていただいています。尼崎市や神戸市といった阪神間でのサポートをはじめ、兵庫県内、大阪府及び京都府の各域で申請の実績があります。
以下に報酬額を掲示しますが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」です。さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応には自信があります。自動車運転代行業の認定申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
新規認定申請 | 77,000円~ |
変更届 | 22,000円~ |
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