水産製品製造業許可について│水産物の加工・製造に必要となる手続きとは
水産製品製造業とは、魚介類その他の水産動物若しくはその卵を主原料とする食品を製造する営業をいいます。食品衛生法の改正により追加された新しい許可業種であり、旧法では許可不要であった干物、しらす干し、明太子、鰹節等の水産動物(ワカメ等の海藻は含まない)を主原料とする食品を製造する営業も水産製品製造業に含まれます。
水産物を取り扱う業種には、他にも魚介類販売業や魚介類競り売り業等がありますが、これから水産製品を取り扱おうとする上で混乱をきたすことのないように、本稿ではこれらとの対比を行いつつ、水産製品製造業とその営業許可について解説していきたいと思います。
目 次
水産製品製造業とは
水産製品とは、魚介類その他の水産動物もしくはその卵を主原料とする食品のことを指します。「魚介類その他の水産動物」の対象範囲は広く、魚、貝類、イカ、タコ等に加え、クジラ、カエル、カメ等も含まれます。ただし、ワカメ等の海藻は対象外となっています。
水産製品製造業とは、上記の水産製品を製造又は当該食品と併せて水産動物等を使用したそうざい(煮物や揚げ物)を製造する営業をいいます。かまぼこや魚肉ハム、魚肉ソーセージの製造も対象となるほか、魚肉すり身の製造を専業とするものも含みます。
水産製品製造業許可
水産製品製造業を営む際には、水産製品製造業許可を受ける必要があります。また、許可を受けた施設において製造した水産製品を店頭販売することは、飲食店の営業許可を受けることなく行えるようになっています。
魚介類を取り扱う業種には、他にも魚介類販売業と魚介類競り売り業があります。採用する販売方法の違いはあれど、これらはいずれも魚介類を保管し販売する営業です。
魚介類販売業の許可を受けた施設で附帯的に魚介類を茹でる、焼くなどの調理を行うことや、施設で調理した魚介類を販売することは可能ですが、魚介類をがっつり加工して流通させるためには水産製品製造業許可が必要であるという点についてはご注意ください。
水産製品の製造 | 水産製品製造業許可 |
水産動物等を使用したそうざいの製造 | 水産製品製造業許可またはそうざい製造業許可 |
店舗を設けて鮮魚介類を販売する営業 | 魚介類販売業許可 |
包装された既製品の販売 | 届出 |
魚介類競り売り業 | 魚介類競り売り業許可 |
店舗を設けることなく鮮魚介類を販売する営業 | 魚介類行商の届出 |
調理した魚介類の販売 | 許可 |
許可申請の手続方法
水産製品製造業許可の申請は、都道府県知事が定める基準に適合させた上で営業地を管轄する保健所に対して行います。申請先が保健所であっても、許可処分自体は都道府県知事が下します。
手続きの流れ
漬物製造業の営業をはじめるために必要となる手続きは以下のとおりです。
① | 事前相談及び準備 | 工事着工前 |
② | 申請書類等の提出 | 開店の2週間前までに |
③ | 食品衛生監視員による施設調査 | 申請後数日 |
④ | 許可書の交付 | |
⑤ | 営業開始 |
事前相談及び準備
施設の工事前に、施設平面図(機器配置を含む)等を出店地を管轄する保健所に持参し、施設基準等の説明を受けます。
「営業施設の基準」と「公衆衛生上講ずべき措置の基準」が自治体の条例で定められているので必ず確認するようにしてください。
必要となる書類
営業予定地を管轄する保健所に対し、以下の書類を開店のおおむね10日前までに提出します。
- 食品営業許可申請書
- 営業施設の大要
- 施設の平面図及び付近案内図
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(原本)
- 営業許可申請手数料
- 発行後6カ月以内の登記簿謄本の原本(法人)
水質検査成績書
店舗内で貯水槽や井戸水を利用する場合には、「水質検査成績書」の提出が必要になります。オーナーさんが検査を済ませていると思われますので確認しておきましょう。
食品衛生責任者と食品衛生管理者
通常、食品衛生法上の営業許可を受けた施設では食品衛生責任者を配置する必要があります。水産製品製造業の施設においても基本的には営業所ごとに食品衛生責任者を配置することになります。
ただし、加工または製造する製品の種類によっては、食品衛生責任者よりも取得のハードルが高い食品衛生管理者を配置しなければならなくなるケースがあります。
食品衛生責任者
水産製品製造業の営業所ごとに食品衛生責任者を配置します。食品衛生責任者は、都道府県の食品衛生協会が開催する講習を受講すれば、誰でも取得することができる資格です。講習科目は、食品衛生学・衛生法規・公衆衛生など(約6時間)で、受講料は1万円程度です。
食品衛生管理者
食品衛生管理者は、製造又は加工の過程において特に衛生上の考慮を必要とする食品又は添加物等の製造又は加工を行う施設ごとに、専任で置かなければならないとされている有資格者のことです。
水産製品製造業においては、魚肉ハム、魚肉ソーセージを製造する場合に食品衛生管理者の設置が義務づけられます。
すでにお伝えしているように、こちらは簡単に取得することのできる資格ではありません。魚肉ハムや魚肉ソーセージを製造する場合には食品衛生管理者が必置であるという点を頭に入れつつ、取得方法等については以下の記事でしっかりと確認するようにしてください。
許可の基準
食品衛生法上の営業許可基準は各自治体ごとに異なっています。また、食品を取り扱う営業のすべてに求められる共通基準と水産製品製造業にのみ求められてる業種別基準がありますが、これらの基準はすべてクリアする必要があります。
なお、本稿においては兵庫県における基準を下敷きに記述していますので、他地域については各地域の担当部署に必ず確認するようにしてください。
共通基準
食品衛生法上の営業許可を受けるためには、飲食店であれ水産製品製造業であれ、営業用の施設設備を以下の基準すべてに適合させる必要があります。
- 営業の施設は衛生上支障のない場所に設置すること
- 営業の施設は住居その他営業の施設以外の施設と明確に区分すること
- 作業場は使用目的に応じて適当な広さを有し、かつ、十分な明るさを確保することができる照明の設備及び換気を十分に行うことができる設備を設けること
- 作業場の床は次に掲げる要件を備えること
- 排水溝を有すること
- 清掃が容易にできるよう平滑であり、かつ、適当な勾配のある構造であること
- 水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料(厚板、モルタルその他水により腐食しにくいもの)で造られていること
- 作業場の床面と内壁面との接合部分及び排水溝の底面の角は、適度の丸みをつけ、清掃が容易にできる構造であること
- 作業場の内壁は清掃が容易にできる構造とし、床面からの高さが1.5mまでの部分及び水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料で造られていること
- 作業場の天井は隙間がなく、清掃が容易にできる構造であること
- 営業の施設は、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ構造であること
- 営業の施設及び機械、器具類は、製造量、販売量、来客数等に応じて十分な規模及び機能を有するものを設けること
- 器具の洗浄、消毒、水切及び乾燥の設備を設けること
- 洗浄の設備は、熱湯を十分に供給できるものであること
- 固定した設備又は移動が困難な設備は、洗浄が容易にできる場所に設けること
- 機械は食品又は添加物に直接接触する部分が不浸透性材料(ステンレス、石、コンクリートその他水が浸透せず、かつ、さびないもの)で造られ、かつ、洗浄及び消毒が容易にできる構造であること
- 器具及び容器包装を衛生的に保管するための設備を設けること
- 添加物を使用する場合は、専用の計量器を備えること
- 原材料、添加物、半製品又は製品を保管する設備は、それぞれ専用のものとし、及び温度、湿度、日光等に影響されない場所に設ける等衛生的に保管ができるものであること
- 冷蔵庫(摂氏10℃以下に冷却する能力を有するものに限る)、冷凍庫その他温度又は圧力を調節する必要のある設備には、温度計、圧力計その他必要な計器を見やすい位置に備えること
- 飲用に適する水を十分に供給できる衛生的な給水設備を専用に設けること
- 十分な容量を有し、不浸透性材料で造られ、清掃が容易にでき、及び汚液、汚臭等が漏れない構造である廃棄物容器を設けること
- 便所には、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ設備を設けるとともに、その出入口及びし尿くみ取口は、衛生上支障のない場所にそれぞれ設けること
- 消毒薬を備えた流水受槽式手洗い設備を、適当な場所に設けること(ただし、魚介類販売業を除き、露店により営業を行う場合又は自動車により営業を行う場合にあってはこの限りでない)
- 従業員の数に応じて、更衣室その他更衣のための設備を設け、及び専用の外衣、帽子、マスク、履物等を備えること
- 露店により営業を行う場合又は自動車により営業(魚介類販売業を除く)を行う場合は、次に掲げる要件を備えること
- 流水受槽式手洗い設備を有しないときは、消毒用アルコール、逆性石けん等を含ませた綿を十分に入れた容器を備えること
- 直接排水ができない場合は、水その他の液体が浸透しにくい材質で、かつ、洗浄が容易にできる排水容器を備えること
- 露店により営業を行う場合は、当該営業に係る施設について、屋根を設け、及び覆いをする等により、調理し、又は加工するための設備にほこり、ちり等が入らない構造とすること
- 自動販売機は、屋内に設置すること(ただし、ひさし等により雨水を防止できる場合にあっては、この限りでない)
- 自動販売機の設置場所の床面は、不浸透性材料で造られ、かつ、清掃が容易にできる構造であること
水産製品製造業の業種別基準
水産製品製造業については、上記の共通基準に加え、施設設備等を以下すべての基準に適合させる必要があります。
- 営業施設は、 必要に応じて陳列場、 処理場及び冷蔵庫に区画されていること
- 鯨肉、ゆでだこ、ゆでがに( 飲食に供する際に加熱を要しないものに限る)、生食用鮮魚介類( 切り身又はむき身にした鮮魚介類であって生食用のものに限る) 又は生食用かきを販売する場合は、摂氏10度( 冷凍の鯨肉等にあっては、摂氏零下15度)以下に保存できる設備があり、見やすい箇所に温度計を備えていること
- 冷凍魚介類を販売する場合は、摂氏零下15度以下に保存できる設備があり、見やすい箇所に温度計を備えていること
- 生食用魚介類を調理する場合は、専用の調理台、合成樹脂製又は合成ゴム製で洗浄しやすい構造のまな板及び調理器具を備えていること
- 生食用魚介類を販売する場合は 専用の陳列設備があること
- 冷凍魚介類を解凍して販売する場合は、 解凍設備があること
水産製品製造業許可申請サポート
弊所では、兵庫大阪全域にわたり、水産製品製造業の営業許可申請の代行を承(うけたまわ)っております。保健所との事前協議から書類の作成と提出、及び保健所による検査の立会いに至るまで、しっかりまるっとサポートいたします。下記の報酬は、市場価格を反映したものですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。水産製品製造業の手続きでお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
水産製品製造業許可申請 | 66,000円〜 |
魚介類販売業許可申請 | 55,000円〜 |
魚介類行商届 | 22,000円 |
各種届出 | 22,000円 |
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