魚介類販売業許可について│鮮魚介類販売のために必要となる手続きとは
魚介類販売業とは、店舗を設け、鮮魚介類(冷凍したものを含む)を販売する営業のことをいい、魚介類を生きているまま(活魚)販売する営業、鮮魚介類を専ら包装容器に入れられた状態で仕入れ、そのままの状態で販売する営業及び魚介類競り売り業を除く営業形態を指します。
要するに鮮魚介類の販売を行う営業が魚介類販売業ですが、上記のような定型的な解説文だけでは恐らくあまりピンと来ないように思います。笑
そこで本稿では、これから魚介類販売業に携わろうとされる皆さまに向けて、改めて営業の概要を紹介するとともに、必要となる許可や手続きについて解説していきたいと思います。
目 次
魚介類販売業とは
魚介類販売業をより簡潔に説明すると、「店舗を設けて鮮魚介類を販売する営業」になります。この「鮮魚介類」には、魚介類を活〆、放血、頭・内臓・鱗除去等したもの、切り身又はむき身、生干し等にしたもの、冷凍したものが含まれます。
また、おおむね塩分濃度3%程度以下の塩蔵品や、水分含量50%を超えるようないわゆる「一夜干し」は鮮魚とみなされ、これらを販売する営業は魚介類販売業に該当するほか、鯨肉の販売も魚介類販売業の対象となっています。
ただし、店舗を設けない場合や、魚介類を販売する営業であっても、以下のような方法で販売を行っている場合には、魚介類販売には該当しません。
- 魚介類を生きたままの状態(活魚)で販売する営業
- 鮮魚介類を専ら包装容器に入れられた状態で仕入れ、そのままの状態で販売する営業
- 魚介類競り売り業
生きている魚介類については、そもそも許可を受けることなく誰でも販売することができますし、包装された既製品の魚介類を仕入れたままの状態で販売するだけであれば、こちらも許可は不要です。(ただし、後者の場合は届出が必要です。)
上記の営業方法は、食中毒のリスクが低いものと考えられるため、特に許可制を適用する必要性もないことからこのような取扱いがなされます。
なお、店舗を設けることなく魚介類を販売する場合も魚介類販売業には該当せず許可を受ける必要もありませんが、別途魚介類行商の届出が必要になります。
★通信販売について
昨今はECサイトが充実しているため、弊所にもインターネット等を利用して食品を販売したいというご相談をいただきますが、基本的には通信販売であっても取得すべき許可や手続きは変わらないものとお考えください。
また、自宅を店舗とみなして申請することもできなくはありませんが、その場合には、住居部分とはまったく別のスペースで、後述する設備等の基準を満たす必要があります。
要するに住居部分と店舗部分とは共有することができないので、その点は十分にご留意ください。
魚介類販売業許可
魚介類販売業を営む際には、魚介類販売業許可を受ける必要があります。これを逆に言えば、前章で説明した販売方法(活魚の販売、包装された既製品の販売等)である場合を除き、許可を受けることなく魚介類を販売することはできないということになります。
また、魚介類販売業許可を受けた施設で附帯的に魚介類を茹でる、焼くなどの調理を行うことや、施設で調理した魚介類を販売することは、飲食店の営業許可を受けることなく行えるようになっています。
店舗を設けて鮮魚介類を販売する営業 | 許可が必要 |
活魚の販売 | 許可も届出も不要 |
包装された既製品の販売 | 届出が必要 |
魚介類競り売り業 | 魚介類競り売り業許可が必要 |
店舗を設けることなく鮮魚介類を販売する営業 | 魚介類行商の届出が必要 |
調理した魚介類の販売 | 許可が必要(飲食店営業許可は不要) |
許可申請の手続方法
魚介類販売業許可の申請は、都道府県知事が定める基準に適合させた上で営業地を管轄する保健所に対して行います。申請先が保健所であっても、許可処分自体は都道府県知事が下します。
手続きの流れ
以下は、魚介類販売業の営業許可を取得するために必要となる手続きの流れです。
①事前相談及び準備(工事着工前)
↓
②申請書類等の提出(開業の2週間前までに)
↓
③食品衛生監視員による施設調査
↓
④許可書の交付
↓
⑤営業開始
事前相談及び準備
- 施設の工事前に、施設平面図(機器配置を含む)等を出店地を管轄する保健所に持参し、施設基準等の説明を受けます。
- 食品衛生責任者の資格を取得します。
- 「営業施設の基準」「公衆衛生上講ずべき措置の基準」が都道府県や市の条例で定められていますのでご確認ください。
必要となる書類
- 食品営業許可申請書
- 営業施設の大要
- 施設の平面図及び付近案内図
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(原本)
- 営業許可申請手数料
- 発行後6カ月以内の登記簿謄本の原本(法人)
食品衛生責任者
魚介類販売業の営業所ごとに食品衛生責任者を配置します。食品衛生責任者は、都道府県の食品衛生協会が開催する講習を受講すれば、誰でも取得することができる資格です。講習科目は、食品衛生学・衛生法規・公衆衛生など(約6時間)で、受講料は1万円程度です。
現在はコロナ禍の影響により、食品衛生責任者の講習が開催されにくい状況となっています。この場合、必ず講習を受けることを誓約した誓約書を食品衛生責任者の資格を証明するものの代わりとして添付します。なお、尼崎市においては誓約書の添付ではなく、食品衛生責任者講習の受講申込と受講料(7500円)の納付が求められます。このように、地域ごとに取扱の違いがありますので、必ず所轄の保健所に問い合わせを行うようにしましょう。
水質検査成績書
店舗内で貯水槽や井戸水を利用する場合には、「水質検査成績書」の提出が必要になります。オーナーさんが検査を済ませていると思われますので確認しておきましょう。
許可の基準
食品衛生法上の営業許可基準は各自治体ごとに異なっています。また、食品を取り扱う営業のすべてに求められる共通基準と魚介類販売業にのみ求められてる業種別基準がありますが、これらの基準はすべてクリアする必要があります。
なお、本稿においては大阪府における基準を下敷きに記述していますので、他地域については各地域の担当部署に必ず確認するようにしてください。
共通基準
- 営業の施設は衛生上支障のない場所に設置すること
- 営業の施設は住居その他営業の施設以外の施設と明確に区分すること
- 作業場は使用目的に応じて適当な広さを有し、かつ、十分な明るさを確保することができる照明の設備及び換気を十分に行うことができる設備を設けること
- 作業場の床は次に掲げる要件を備えること
- 排水溝を有すること
- 清掃が容易にできるよう平滑であり、かつ、適当な勾配のある構造であること
- 水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料(厚板、モルタルその他水により腐食しにくいもの)で造られていること
- 作業場の床面と内壁面との接合部分及び排水溝の底面の角は、適度の丸みをつけ、清掃が容易にできる構造であること
- 作業場の内壁は清掃が容易にできる構造とし、床面からの高さが1.5mまでの部分及び水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料で造られていること
- 作業場の天井は隙間がなく、清掃が容易にできる構造であること
- 営業の施設は、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ構造であること
- 営業の施設及び機械、器具類は、製造量、販売量、来客数等に応じて十分な規模及び機能を有するものを設けること
- 器具の洗浄、消毒、水切及び乾燥の設備を設けること
- 洗浄の設備は、熱湯を十分に供給できるものであること
- 固定した設備又は移動が困難な設備は、洗浄が容易にできる場所に設けること
- 機械は食品又は添加物に直接接触する部分が不浸透性材料(ステンレス、石、コンクリートその他水が浸透せず、かつ、さびないもの)で造られ、かつ、洗浄及び消毒が容易にできる構造であること
- 器具及び容器包装を衛生的に保管するための設備を設けること
- 添加物を使用する場合は、専用の計量器を備えること
- 原材料、添加物、半製品又は製品を保管する設備は、それぞれ専用のものとし、及び温度、湿度、日光等に影響されない場所に設ける等衛生的に保管ができるものであること
- 冷蔵庫(摂氏10℃以下に冷却する能力を有するものに限る)、冷凍庫その他温度又は圧力を調節する必要のある設備には、温度計、圧力計その他必要な計器を見やすい位置に備えること
- 飲用に適する水を十分に供給できる衛生的な給水設備を専用に設けること
- 十分な容量を有し、不浸透性材料で造られ、清掃が容易にでき、及び汚液、汚臭等が漏れない構造である廃棄物容器を設けること
- 便所には、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ設備を設けるとともに、その出入口及びし尿くみ取口は、衛生上支障のない場所にそれぞれ設けること
- 消毒薬を備えた流水受槽式手洗い設備を、適当な場所に設けること(ただし、魚介類販売業を除き、露店により営業を行う場合又は自動車により営業を行う場合にあってはこの限りでない)
- 従業員の数に応じて、更衣室その他更衣のための設備を設け、及び専用の外衣、帽子、マスク、履物等を備えること
- 露店により営業を行う場合又は自動車により営業(魚介類販売業を除く)を行う場合は、次に掲げる要件を備えること
- 流水受槽式手洗い設備を有しないときは、消毒用アルコール、逆性石けん等を含ませた綿を十分に入れた容器を備えること
- 直接排水ができない場合は、水その他の液体が浸透しにくい材質で、かつ、洗浄が容易にできる排水容器を備えること
- 露店により営業を行う場合は、当該営業に係る施設について、屋根を設け、及び覆いをする等により、調理し、又は加工するための設備にほこり、ちり等が入らない構造とすること
- 自動販売機は、屋内に設置すること(ただし、ひさし等により雨水を防止できる場合にあっては、この限りでない)
- 自動販売機の設置場所の床面は、不浸透性材料で造られ、かつ、清掃が容易にできる構造であること
魚介類販売業の業種別基準
- 原材料の保管及び処理並びに製品の包装及び保管をする室又は場所を有すること(室を場所とする場合にあっては、作業区分に応じて区画されていること)
- 原材料の処理をする室又は場所は、鮮魚介類の処理に必要な設備等を有すること
- 生食用鮮魚介類を取り扱う施設にあっては、生食用鮮魚介類の処理をするための専用の器具を備えること
- かきを処理する場合は、次に掲げる要件を満たすこと
- 必要に応じて浄化設備を有すること
- かきの前処理をする室又は場所は、殻付きかきの洗浄に必要な設備を有すること
- かきの処理をする室又は場所は、むき身の処理、洗浄及び包装に必要な設備を有すること
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魚介類販売業許可申請 | 44,000円 |
魚介類行商届 | 17,500円 |
各種届出 | 17,500円 |
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