建築物ねずみ昆虫等防除業の登録基準と申請方法について
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管理法)では、病原微生物を媒介して人に感染症をもたらす恐れがある害獣(ねずみ、イタチ等)や害虫(ハエ、ゴキブリ等)の防除を重視し、その業務を行う事業者を、建築物ねずみ昆虫等防除業者として事業登録制度の対象としています。
建築物衛生管理業における事業登録制度の全体像については下のリンク先記事に解説を委ねることにして、本稿ではその7号業務である建築物ねずみ昆虫等防除業の登録を受けるために必要となる基準や書類作成上のポイントについて解説していきたいと思います。
目 次
建築物ねずみ昆虫等防除業とは
1号 | 建築物清掃業 | 建築物内の清掃を行う事業(建築物の外壁や窓の清掃、給排水設備のみの清掃を行う事業は含まない。) |
2号 | 建築物空気環境測定業 | 建築物内の空気環境(温度、湿度、浮遊粉じん量、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、気流)の測定を行う事業 |
3号 | 建築物空気調和用ダクト清掃業 | 建築物の空気調和用ダクトの清掃を行う事業 |
4号 | 建築物飲料水水質検査業 | 建築物における飲料水について、「水質基準に関する省令」の表の下欄に掲げる方法により水質検査を行う事業 |
5号 | 建築物飲料水貯水槽清掃業 | 建築物の飲料水貯水槽(受水槽、高置水槽等)の清掃を行う事業 |
6号 | 建築物排水管清掃業 | 建築物の排水管の清掃を行う事業 |
7号 | 建築物ねずみ昆虫等防除業 | 建築物内において、ねずみ昆虫等、人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物の防除を行う事業 |
8号 | 建築物環境衛生総合管理業 | 建築物における清掃、空気調和設備及び機械換気設備の運転、日常的な点検及び補修(以下「運転等」という。)並びに空気環境の測定、給水及び排水に関する設備の運転等並びに給水栓における水に含まれる遊離残留塩素の検査並びに給水栓における水の色、濁り、臭い及び味の検査であって、特定建築物の衛生的環境の維持管理に必要な程度のものを併せ行う事業 |
上に掲げた建築物衛生管理業8業種のうち、建築物ねずみ昆虫等防除業とは、建築物内において、ねずみ昆虫等、人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物の防除を行う事業を言います。したがって、屋外においてこれらの動物の防除を行う事業は、こちらには該当しません。
建築物ねずみ昆虫等防除業の登録
建築物ねずみ昆虫等防除業のうち、後述する基準をすべて満たす事業者は、都道府県知事に対して申請を行うことによって、その登録を受けることができます。
この登録は建築物ねずみ昆虫等防除業を開始するための要件ではありませんが、特定建築物の清掃を受注できたり、公共事業の入札参加資格を獲得できたりといったメリットを享受することができるようになります。
登録の基準
登録は、その営業所ごとに、営業所の所在地を管轄する都道府県知事が行います。登録を受けるためには、登録を受けようとする営業所について、以下の基準をすべて満たすことが求められます。
- 照明器具、調査用トラップ及び実体顕微鏡、毒じ皿、毒じ箱及び捕そ器、噴霧機及び散粉機、真空掃除機、防毒マスク及び消火器を有すること
- 機械器具及び防除作業に用いる薬剤を適切に保管することのできる専用の保管庫を有すること
- 機械器具に残留した薬剤や保管されている薬剤が飛散流出し、及び地下に浸透し、並びに臭気が漏れるおそれのないものであること
- 薬剤による腐食を防止するために必要な措置が講じられていること
- 機械器具及び薬剤を保管するのに適切な規模であること
- 他の用途に用いる機械器具類も併せて保管している倉庫の一部が保管庫となっているような場合には、防除作業に用いる機械器具及び薬剤を保管する場所が独立して設けられており、他のものと誤用するおそれがないようになっていること
- 保管庫は施錠でき、みだりに機械器具及び薬剤を持ち出せないようになっていること
- 営業所ごとに1名以上の防除監督者が配置されていること
- 清掃作業に従事する者が、次の要件に該当する研修を修了したものであること
- 防除作業に従事する者が、次の要件に該当する研修を修了したものであること
- ねずみ、昆虫等の防除作業に従事する者のすべてが受講できるものであること
- 登録を受けようとする者又は厚生労働大臣の登録を受けた者が実施主体となって定期的に行われるものであること
- 研修の内容が、ねずみ等の防除作業に用いられる機械器具及び薬剤の種類及び使用方法並びに防除作業の安全及び衛生に関するものであること
- 研修の指導にあたる者は、指導するのに適当と認められる者(建築物環境衛生管理技術者等)であること
- ねずみ、昆虫等の防除作業及びねずみ、昆虫等の防除作業に用いる機械器具その他の設備の維持管理の方法が、厚生労働大臣が次に定める基準に適合していること
毒じ皿・毒じ箱
毒じ皿(毒餌皿)は、転倒しないように安定した、食品用ではない容器を使用します。また、注意を促すために色付き容器の使用が推奨されています。毒じ箱(毒餌箱)については、鍵付きの箱の使用が推奨されています。
保管庫としての自動車
原則として自動車を保管庫とすることはできませんが、作業件数がきわめて多く、その都度機械器具の積み降ろしをすることが繁雑な場合には、次の要件を満たしている場合に限り、保管庫として認められることがあります。
- 機械器具に残留した薬剤や保管されている薬剤が飛散流出し、及び地下に浸透し、並びに臭気が漏れるおそれのないものであること
- 薬剤による腐食を防止するために必要な措置が講じられていること
- 機械器具及び薬剤を保管するのに適切な規模であること
- 自動車防除作業専用であって、他の用途には用いないこと
- 自動車を適切に保管できる車庫(施錠でき、屋根、壁、シャッターなどで囲まれ、みだりに人が出入りすることができない構造のもの)を有すること
- 冬季等長期にわたって作業のない時期に機械器具を自動車から降ろす場合には、別途専用の保管場所が用意されていること
- 薬剤については、別途専用の保管庫において保管されていること
維持管理の方法の基準
- ねずみ等の発生場所、生息場所及び侵入経路並びにこれらによる被害の状況を調査し、当該調査の結果に基づき、建築物全体について効果的な作業計画を策定し、適切な方法により、防除作業を行うこと
- 食料を取扱う区域並びに排水槽、阻集器及び廃棄物の保管設備の周辺等特にねずみ等が発生しやすい箇所について、2か月以内ごとに1回、その生息状況等を調査し、必要に応じ、発生を防止するための措置を講ずること
- 防そ防虫網その他の防そ防虫設備の機能を点検し、必要に応じ、補修等を行うほか、ねずみ等の侵入を防止するための措置を講ずること
- 殺そ剤又は殺虫剤を用いる場合は、使用及び管理を適切に行い、これらによる作業者並びに建築物の使用者及び利用者の事故の防止に努めること
- 上記の薬剤は施錠できる保管庫等に保管すること
- ねずみ等の防除作業終了後は、必要に応じ、強制換気や清掃等を行うこと
- ねずみ等の防除作業に用いる機械器具その他の設備について、定期に点検し、必要に応じ、整備又は修理を行うこと
防除作業監督者
防除作業監督者は、防除作業監督者講習会を修了した国家資格者であり、登録しようとする営業所について、1名以上配置する必要があります。また、1人の防除作業監督者を2以上の営業所又は業務の監督者等とすることや、特定建築物における建築物環境衛生管理技術者との兼務は認められていません。
必要となる書類
- 登録申請書(WARD:46KB)
- 付近見取図、施設平面図等
- 設備・機器名簿
- 監督者等名簿
- 研修実施状況(計画)
- 作業実施方法等
- 登記簿謄本(法人)
- 機械器具の写真
- 機械器具等の納品書、リース契約書など、登録しようとする営業所にて所有、占有していることを証する書類
- 保管庫の写真(施錠できることが確認できるもの)
- 保管庫での機械器具及び防除作業に用いる薬剤の保管状況のわかる写真
- 防除作業監督者(再)講習会修了証書の写し及び原本(原本照合のため)
- 防除作業監督者の健康保険証の写し又は従事証明書(雇用されていることが証明できるもの)
- 建築物環境衛生管理技術者の免状の写し等、研修の指導にあたる者が、指導者として適当であることを証する書類(登録を受けようとする者が研修を行う場合)
- 厚生労働大臣の登録を受けた者が実施主体となって行う従事者研修を受講した場合は、修了証書の写し
- 登録手数料35,000円〈都道府県収入証紙〉
また、登録期間中に登録申請事項に変更が生じた場合には、変更があった日から30日以内に変更の届出を行う必要があります。
書類作成のポイント
登録申請書
法人の場合、登録申請書の氏名欄には、登記簿に記載されている名称及び代表者氏名に加え、代表者住所を漏れなく記入します。
付近見取図、施設平面図等
営業所の所在地がわかる付近見取図と、事務所及び保管場所を記載した施設平面図を添付します。
設備・機器名簿
- 機械器具等は営業所ごとに所有、占有されていること
- 登録要件である機械器具等の名称をすべて記載し、すべての写真を添付すること
- 型式の欄には、製造会社名と型式の両方が記載され、添付する写真で確認できること
- 購入年月日欄には、納品書等の日にちが記入され、納品書等の写しが添付されていること
監督者等名簿
- 防除作業監督者は、2以上の営業所又は業務の監督者等として登録されていないこと
- 防除作業監督者は、特定建築物における建築物環境衛生管理技術者を兼務していないこと
研修実施状況(計画)
研修は、清掃作業監督者又は清掃作業監督者と同等以上の知識、技能を有する者(建築物環境衛生管理技術者等)が、1年に1回以上、ねずみ等の防除作業に従事する者すべてを対象にして、ねずみ等の防除作業に用いる機械器具の使用方法及び薬剤の種類及び使用方法並びに防除作業の安全及び衛生について指導を行うものです。
日にちは分けて実施しても構いません。研修の時間数については、おおむね7時間とされています。
新規登録の場合は過去1年間、再登録の場合は過去6年間の研修実績を、今後1年間の研修計画とともに記載します。なお、研修計画の参加従事者数については記載する必要はありません。
作業実施方法等
- 同一の監督者が2以上の班を編成していることがないようにすること
- 告示に定める基準に合致する作業及び機械器具等の維持管理の方法を記入すること
- 告示に定める基準に次の内容を含ませること
- 作業工程(事前調査及び事後調査の方法に関する事項を含む。)
- 使用する薬剤の種類
- 薬剤の保管方法
- 機械器具等の点検の方法
- 保管庫の管理責任者の氏名
- 作業報告作成の手順・記入する内容(作業報告書の添付に替えることも可能。)
- 点検等の定期的に行われなければならない項目については、明確に実施回数を記載すること(例 : ○月に○回以上)
- ねずみ等の防除作業及びねずみ等の防除作業に用いる機械器具その他の設備の維持管理は原則として自ら実施すること
- 業務委託の有無を○で囲むこと
- やむを得ず業務を委託する場合は、以下の内容を記入すること
- 委託を受ける者の氏名(法人は名称)、委託する業務の範囲及び業務を委託する期間を建築物維持管理権原者に通知するとともに、受託者から業務の実施状況について報告を受けること等により、受託者の業務の方法が告示に定める基準に掲げる要件を満たしていることを常時把握すること
- 委託を受ける者の氏名(法人は名称)
- 委託する業務の範囲
- 受託者の業務の方法が、告示に定める基準に掲げる要件を満たしていることを把握する方法
- やむを得ず業務を委託する場合で、委託先が建築物衛生管理業の登録を受けている場合は、登録番号を記入し、登録証明書の写しを添付すること
- やむを得ず業務を委託する場合で、委託先が登録を受けていない場合は、業務が正しく行われていることを把握するために、委託先にも「設備・機械名簿」「監督者等名簿」「監督者としての資格を証明するもの」「研修実施状況(計画)」「作業実施方法等」の必要書類を提出してもらい、それらを添付すること
- 建築物維持管理権原者又は建築物環境衛生管理技術者からのねずみ等の防除作業及びねずみ等の防除作業に用いる機械器具その他の設備の維持管理に係る苦情及び緊急の連絡に対して、迅速に対応できる体制を整備しておくこと
- 緊急連絡先の24時間対応可能な電話番号を記入し、24時間対応可能である旨についても明記すること
まとめ
ねずみ昆虫等防除業は、人に感染症をもたらす恐れがある害獣害虫等を駆除し、衛生的かつ快適な建物内環境の維持向上に資するものです。本稿で説明した複雑な登録制度は、その事業者の資質や能力を公的に証明するための制度でもあり、任意ながら、経営面においても存分にメリットを発揮する制度であるといえます。
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建築物ねずみ昆虫等防除業登録申請 | 77,000円〜 |
変更届等 | 22,000円 |
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