ソーラーパネルを設置する場合の手引き│太陽電池発電設備の設置について

太陽光パネル

太陽光発電システムは、太陽光という半永久的無尽蔵なエネルギー源を利用した、人類にとってまさに究極のクリーンエネルギー供給システムです。幼少の頃、太陽電池を内蔵したミニカーを買ってもらったときの、あのワクワク感が脳裏に蘇ります。

さて、そんな太陽光発電システムですが、ソーラーパネルに代表される太陽電池発電設備を設置する際には、複雑で煩わしい手続きが必要とされています。

本稿では、太陽電池発電設備を設置する際に求められている技術基準や、必要とされる手続きなどについて詳しく解説していきたいと思います。

太陽電池発電設備とは

太陽電池とは、シリコンなどの半導体で作られた太陽の光エネルギーを吸収して直接電気に変えるエネルギー変換素子をいいます。「電池」という名称がついてはいるものの、太陽電池発電設備には電気をためる機能はありません。また、太陽光を受けている瞬間のみ発電が可能なため、日中、晴れ間のある時間帯にしか発電することができないという大きな特徴があります。

人工衛星に電力を供給するなど、宇宙事業において活用されていた歴史がありますが、近年では一般的な建築設備としてその設置が計画されるまで普及は広がりつつあります。

法制上の取り扱い

電気事業法上の取扱は、その出力に応じて下記のようになっています。なお、太陽電池発電設備の出力は、太陽電池モジュールの合計出力で判断しますが、太陽電池モジュールとパワーコンディショナーの間に電気を消費又は貯蔵する機器(蓄電池等)を接続しない場合は、パワーコンディショナーの出力で判断することができます。(下図参照)

太陽電池発電設備の出力(原則)
太陽電池発電設備の出力(例外)

出力50kW以上の発電設備

電気事業法上は、「自家用電気工作物」に該当し、設置する者には以下のような義務が発生します。設置の工事にあたっては、第一種電気工事士又は認定電気工事従事者が作業を行う必要があるほか、電気工事にあたっては、電気工事業の登録等を行った工事業者が施工する必要があります。

  1. 後述の技術基準に適合するように電気工作物を維持すること
  2. 電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するため、保安規程を定めて届け出ること
  3. 電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるために、電気主任技術者を選任して届け出ること
  4. 太陽電池発電設備が出力2,000kW以上の場合は、設置工事の30日前までに工事計画届出書を届け出ること
  5. 太陽電池発電設備が出力500kW以上2,000kW未満の場合は、使用の開始前に技術基準に適合することを自ら確認し、その結果を届け出ること

なお、太陽電池発電設備が高圧以下で連系する出力2,000kW未満の場合は、経済産業大臣又は産業保安監督部長の承認を得て自家用電気工作物に関する保安管理業務を外部に委託することもできます。

自家用電気工作物に該当する太陽電池発電設備を設置する場合は、発電設備を設置する地域の監督部に対して届出を行います。ただし、複数の監督部にまたがって設置する場合は、経済産業省が届出先となります。

出力50kW未満の発電設備

電気事業法上は、「一般用電気工作物」に該当し、設置の工事にあたっては、電気工事士(第一種又は第二種)が作業を行う必要があります。

届出等の手続きは不要ですが、後述の技術基準に適合させる義務があります。ただし、自家用電気工作物と太陽電池発電設備の間に電気的な接続がある場合は自家用電気工作物として扱われます。また、施設方法によっても自家用電気工作物となる場合がありますのでご注意ください。

設備に関する技術基準

発電用太陽電池設備に関する技術基準

令和3年4月1日、経済産業省令において発電用太陽電池設備に関する技術基準が制定されました。この省令では、人体に危害を及ぼし、物件に損傷を与えるおそれがないように施設することを規定するほか、公害の発生や土砂流出等の防止を規定するとともに、太陽電池モジュールを支持する工作物の構造等について、各種荷重に対して安定であることや使用する材料の品質など、満たすべき技術的要件を規定しています。

改正以前に設備を設置された方も、以下のサイトをご参照いただいた上、安全確保に万全を期すよう心がけるようにしましょう。

経済産業省公式サイト(外部リンク)

発電用太陽電池設備に関する技術基準

小出力発電設備について

小出力発電設備(太陽光50kW未満、風力20kW未満)の所有者は、電気主任技術者の選任や保安規程の届出が免除されますが、所有する発電設備を上記の技術基準に適合させる義務があり、経済産業省職員による立入検査を受けることがあります。また、令和3年4月1日より、小出力発電設備についても事故報告が義務化されました。

立入検査の結果などから技術基準に適合していないことが判明した場合には、補修等を命じられることがあるほか、設備の状態によっては、稼働の一時停止を命じられることもあります。これらを行わないまま稼働を継続した場合、「技術基準適合命令」が発令され、その事実が経済産業省のホームページなどで公表されることとなるほか、技術基準に適合していない場合には、電気事業者の認定が取り消されることもありますので十分ご注意ください。

設置までの流れと手順

最後は実際に太陽電池発電設備を設置する場合の手順について解説いたします。

①設置計画の策定

設置場所や施設の構造などによっては、残念ながら太陽電池発電設備を設置することができないケースもありえます。まずは設置の可否や設備規模、発電量等を具体的にシミュレーションして設置計画を進めます。この際は、実際に施工する業者や下請とも密に連携することが重要です。

②補助金の申請

太陽光発電を導入する場合には、補助金が交付される場合があります。2014年を最後に国の補助事業はストップしていますが、地方自治体レベルでは活用できる補助金も現存するため、その交付を受けるための申請を行います。補助事業によって必要とされる書類や手続きは異なるため、事前確認と事前準備はしっかりと行うようにしましょう。

③事業計画認定の申請

太陽光発電で作った電力を電力会社に売却することができる「固定価格買取制度」という制度があります。この制度の適用を受けるためには、経済産業省の資源エネルギー庁に対して事業契約認定の申請をする必要があります。認定には電力会社との受給契約締結が前提条件となりますが、必ずしも申請時に契約が締結されている必要はなく、事業計画が認定されるまでの間に契約が完了していれば問題はありません。

④設置工事の施行

既に説明したように、太陽電池発電設備の出力によって施工を行う者は異なります。設置工事の完了後は、設置した機器を正常に動作させるために電気配線の工事も行います。

⑤電力受給契約・系統連系確認

固定価格買取制度を希望する者は、電力会社との受給契約の締結を完了させます。また、太陽電池発電設備は、電力会社の配線設備と接続することによってようやく稼働させることができるようになります。この際、電力が不足する場合には不足分を供給してもらうこともできます。

⑥運転開始

家主の立会いのもと業者による確認作業が行われ、設置した機器がすべて正常に作動していることが確認されると、正式に発電と売電が開始されることになります。

まとめ

ソーラーパネルに代表される太陽電池発電設備の設置事業は、現在の社会情勢から推し測っても、これからの伸び代が期待される新時代に適合したエネルギー産業です。ビジネスとして捉えた場合も、新規参入の余地はまだまだ残されているように思います。

電気を取り扱うということで、耳慣れない専門用語が多く、かえって複雑な解説になってしまったように思います。ソーラーパネルの設置に関する手続きについてご不明な点やご不安な点があれば、ぜひ一度弊所までご相談ください。

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