食品の移動販売をはじめませんか?キッチンカー、フードトラック、移動屋台の営業許可について

キッチンカー

昨今の世情の変化によって改めて注目を浴びているのが、キッチンカーやフードトラックといわれる移動販売による飲食店営業です。店舗を持たず場所も選ばないので、比較的コストがかからない営業形態であることも魅力のひとつです。

本稿では、これから移動販売による飲食店営業に乗り出そうとされる皆さまのために、営業に必要となる資格や許可について解説していきたいと思います。新規開業を目指す方はもちろんのこと、既存の店舗型飲食店からの業態変更をお考えの方も、しっかりと確認してぜひ参考にしてみてください。

移動販売とは

江戸時代以前より存在する営業の手法であり、特定の店舗を持たず、商品自体を運搬して販売を行う営業形態のことを指します。いわゆる無店舗販売の一種であり、広義には行商も移動販売に含まれます。現代においては、自動車(キッチンカー・フードトラック)を用いた移動販売が主流であり、さらにこちらは販売するメニューによって「食品営業自動車業」「食品移動自動車」の2つに大別されます。

食品営業自動車業
(調理営業)
自動車に施設を設け、車内で調理、加工および販売する形態
食品移動自動車
(販売業)
自動車に施設を設け移動して食品を販売する形態

営業許可の種類

自動車を用いた移動販売については先述した2タイプの営業形態があることを説明しましたが、実際に必要とされる営業許可の種類は、販売するメニューにより更に細かく分かれます。

食品営業自動車(調理営業)

食品営業自動車とは、自動車に施設を設け、車内で調理、加工および販売する営業形態を指します。取得すべき営業許可は、次の3つの業種の中から実際に販売するメニューに対応したものとなります。

飲食店営業食事系メニューを販売する場合(生ものを除く)
菓子製造業スイーツ系メニューを販売する場合
喫茶店営業アイスクリームやソフトドリンクを販売する場合

食品移動自動車(販売業)

食品移動自動車(販売業)とは、自動車に施設を設け移動して食品を販売する営業形態を指します。取得すべき営業許可は、次の業種の中から実際に販売するメニューに対応したものとなります。移動スーパーのように、その場で調理する必要のない食品を取り扱う際はこちらに該当します。

食料品等販売業包装されたパンやおにぎりを販売する場合
食肉販売業包装された鳥獣の肉を販売する場合
乳類販売業包装された牛乳や乳飲料を販売する場合
魚介類販売業包装された魚介類を販売する場合

どの営業許可も有効期限は5年間であり、5年ごとに更新を行う必要があります。

必要となる資格

自動車を用いた移動販売において必要となる資格は次の3つです。

運転免許

自動車を使用するわけですから、当然ながら運転免許が必要になります。客を乗車させるわけではないので二種免許までは必要とされず、普通自動車免許の取得だけで足ります。

食品営業許可

本稿で説明するとおり、提供するメニューに応じた営業許可を取得する必要があります。なお、野菜の訪問販売のみを行う場合は許可を必要としませんが、これらを加工したり味付けする場合には許可を取得する必要があります。

食品衛生責任者

食品を取り扱う営業を行う場合、その営業所ごとに1名以上、食品衛生上の管理運営を行う食品衛生責任者を設置する必要があります。各都道府県の食品衛生協会が開催する講習を受講すれば、誰でも取得できる資格です。講習は、食品衛生学・衛生法規・公衆衛生など約6時間、受講料は1万円程です。また、次の資格を有する者については、この講習を受講することが免除されます。

  • 栄養士
  • 調理師
  • 製菓衛生師
  • と畜場法に規定する衛生管理責任者
  • と畜場法に規定する作業衛生責任者
  • 食鳥処理衛生管理者
  • 船舶料理士
  • 食品衛生管理者、もしくは食品衛生監視員となることができる資格を有する者

営業許可の申請

一般的な飲食店の営業許可申請であれば、営業地を管轄する保健所に対して許可を申請する流れになりますが、キッチンカーの営業許可の場合には、少々この流れが異なります。

申請先について

移動販売における営業許可の申請は、「販売する地域を管轄する保健所」に対して各市町村ごとに行います。したがって、同一の都道府県内であっても、販売を行う場所が複数の市町村にまたがる場合には、それぞれの市町村において許可を受ける必要があるのです。

営業許可の単位

営業許可については、実際に移動販売を行う車両ごとに取得することになります。つまり、複数の車両を用いて移動販売を行う際は、それぞれの車両ごとに営業許可を受ける必要があるということです。店舗こそ存在しないものの、使用する車両を「営業所」と見立てることによって、「営業所たる車両」としての許可を求めるというのがその主旨となります。なお、要件を満たしている限りは、1台に対して複数の営業許可を取得することも可能です。例えばクレープ(菓子製造業)とフライドポテト(飲食店営業)を同じ車両で同時に販売するケースなどがこれに該当します。

事前協議

営業形態や販売したいメニューを決め、申請先を確認した後は申請先の保健所に出向いて事前協議を行います。食品を取り扱う業種では、地域や担当者によって求められる事項が変わってくるのが特徴なので、必ずこの手続きを経るようにしましょう。保健所が提示してくる条件を把握することで、販売できるメニューやキッチンカーの仕様の擦り合わせが可能となるので、申請の際もスムーズに話しを進めることができるようになります。

車両の入手

キッチンカーの入手や改造は保健所との事前協議を経た後に行いましょう。せっかく車両を購入しても、許可を取得することができない内部構造であれば改造や車両の変更を余儀なくされることとなります。このようなことにならないように、やはりしっかりと事前協議を行うようにしましょう。なお、使用する車両は必ずしも自己所有である必要はありませんが、改造を行うことが必至であるため、中古車を安く購入する方法をお薦めしておきます。

許可の基準

許可の基準は全国一律ではありません。その基準は各自治体ごとに異なっています。本稿においては大阪府における基準を下敷きに記述しておりますので、他地域については、各地域の担当部署に必ず確認するようにしてください。

共通基準

  1. 営業の施設は衛生上支障のない場所に設置すること
  2. 営業の施設(作業場)は住居その他営業の施設以外の施設(運転席)と明確に区分すること
  3. 作業場は使用目的に応じて適当な広さを有し、かつ、十分な明るさを確保することができる照明の設備及び換気を十分に行うことができる設備を設けること
  4. 作業場の床は次に掲げる要件を備えること
    • 排水溝を有すること
    • 清掃が容易にできるよう平滑であり、かつ、適当な勾配のある構造であること
    • 水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料(厚板、モルタルその他水により腐食しにくいもの)で造られていること
    • 作業場の床面と内壁面との接合部分及び排水溝の底面の角は、適度の丸みをつけ、清掃が容易にできる構造であること
  5. 作業場の内壁は清掃が容易にできる構造とし、床面からの高さが1.5mまでの部分及び水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料で造られていること
  6. 作業場の天井は隙間がなく、清掃が容易にできる構造であること
  7. 営業の施設は、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ構造であること
  8. 営業の施設及び機械、器具類は、製造量、販売量、来客数等に応じて十分な規模及び機能を有するものを設けること
  9. 器具の洗浄、消毒、水切及び乾燥の設備を設けること
  10. 洗浄の設備は、熱湯を十分に供給できるものであること
  11. 固定した設備又は移動が困難な設備は、洗浄が容易にできる場所に設けること
  12. 機械は食品又は添加物に直接接触する部分が不浸透性材料(ステンレス、石、コンクリートその他水が浸透せず、かつ、さびないもの)で造られ、かつ、洗浄及び消毒が容易にできる構造であること
  13. 器具及び容器包装を衛生的に保管するための設備を設けること
  14. 添加物を使用する場合は、専用の計量器を備えること
  15. 原材料、添加物、半製品又は製品を保管する設備は、それぞれ専用のものとし、及び温度、湿度、日光等に影響されない場所に設ける等衛生的に保管ができるものであること
  16. 冷蔵庫(摂氏10℃以下に冷却する能力を有するものに限る)、冷凍庫その他温度又は圧力を調節する必要のある設備には、温度計、圧力計その他必要な計器を見やすい位置に備えること
  17. 飲用に適する水を十分に供給できる衛生的な給水設備を専用に設けること
  18. 十分な容量を有し、不浸透性材料で造られ、清掃が容易にでき、及び汚液、汚臭等が漏れない構造である廃棄物容器を設けること
  19. 便所には、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ設備を設けるとともに、その出入口及びし尿くみ取口は、衛生上支障のない場所にそれぞれ設けること
  20. 消毒薬を備えた流水受槽式手洗い設備を、適当な場所に設けること(ただし、魚介類販売業を除き、露店により営業を行う場合又は自動車により営業を行う場合にあってはこの限りでない)
  21. 従業員の数に応じて、更衣室その他更衣のための設備を設け、及び専用の外衣、帽子、マスク、履物等を備えること
  22. 流水受槽式手洗い設備を有しないときは、消毒用アルコール、逆性石けん等を含ませた綿を十分に入れた容器を備えること
  23. 直接排水ができない場合は、水その他の液体が浸透しにくい材質で、かつ、洗浄が容易にできる排水容器を備えること
  24. 露店により営業を行う場合は、当該営業に係る施設について、屋根を設け、及び覆いをする等により、調理し、又は加工するための設備にほこり、ちり等が入らない構造とすること
  25. 自動販売機は、屋内に設置すること(ひさし等により雨水を防止できる場合にあってはこの限りでない)
  26. 自動販売機の設置場所の床面は、不浸透性材料で造られ、かつ、清掃が容易にできる構造であること

業種別基準

共通基準に加えて、提供するメニューに応じた業種ごとに定められた基準をみたすことも必要とされます。本稿では割愛しますが、営業をしようとお考えの方は、許可を受ける予定の保健所に対して、事前に必ず確認するようにしましょう。

ポイント解説

そもそも営業許可は、衛生管理を徹底させて食中毒を防ぐための制度です。以下のような点が許可を受ける際の重要なポイントとなりますので、しっかりと確認するようにしてください。

調理場

運転席と調理場は、別の空間として明確に区画する必要があります。車両がバンタイプである場合、運転席と調理場とが区分されていないことが多いのでお気をつけください。

シンク

シンクの大きさや必要とされる数は地域によってさまざまなルールが存在しています。こちらについてもキッチンカー入手前に必ず確認するようにしましょう。

給水・排水タンク

自動車は自由に水を給排水することができないため、十分な容量の給水・排水タンクを設置する必要があります。給水・排水タンクの容量は、取り扱う品目や各保健所によって異なります。容量が基準よりも多い場合は問題ありませんが、少ない場合は営業許可が下りませんので注意しましょう。

換気扇

換気に関しては、自動車の窓からの換気のみでは足りません。営業許可を受けるためには、車内には必ず換気扇を設置する必要があります。また、換気扇から虫などが侵入することを防ぐために、網戸付きの空気穴を設けるなどの工夫も必要になります。

一次加工先

一次加工先とは、メニューとなる食品の下準備を行う仕込み場所の施設をいいます。一次加工を食品衛生法上の許可を受けた屋内施設で行うことを義務付ける保健所は多いので、こちらについても各保健所の指示に従うようにしてください。営業所としての許可を受けていない自宅で下準備をした食品を販売することは認められていませんので、飲食店を間借りするかシェアキッチン(ゴーストレストラン)をレンタルするなどして場所を確保することとなります。

ゴーストレストランについて

ゴーストレストラン?新しい飲食店のカタチ

許可申請手続

以下は、食品移動販売の営業許可を取得するために必要となる手続きの流れです。

①事前相談及び準備(車両入手前)

②申請書類等の提出(開店の2週間前までに)

③食品衛生監視員による車両調査(持込)

④許可書の交付

⑤営業開始

食品衛生責任者講習

現在はコロナ禍の影響により、食品衛生責任者の講習が開催されにくい状況となっています。この場合、必ず講習を受けることを誓約した誓約書を食品衛生責任者の資格を証明するものの代わりとして添付します。なお、尼崎市においては誓約書の添付ではなく、食品衛生責任者講習の受講申込と受講料(7500円)の納付が求められます。このように、地域ごとに取扱の違いがありますので、必ず所轄の保健所に問い合わせを行うようにしましょう。

必要となる書類

  • 食品営業許可申請書
  • 営業設備の大要(一次加工又は材料供給承認書含む)
  • 自動車営業設備の平面図
  • 一次加工先の食品営業許可証の写し
  • 許可を取得する車両の車検証の写し
  • 登記事項証明書(法人・コピー可)
  • 申請手数料

まとめ

外食産業にとって厳しい状況が続く中、さまざまな工夫によってこれを乗り切ろうとする流れが出てきました。キッチンカーを利用した移動販売の手法も、正に外食産業の新時代に合致するビジネスモデルなのではないでしょうか。外食をこよなく愛する行政書士としては、これからも業界の動向を注視し、情報を発信し続けたいと思います。

弊所では食品に関する営業許可取得を代行によりサポートしています。保健所との事前協議もサービスに含まれますので、どうぞご遠慮なくご活用ください^^

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申請先が増えるごとに+22,000円/1か所
業種が増えるごとに+27,500円/1業種
※税込み

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