理・美容所開業準備室│開設届の書き方と保健所の立入調査で注意すべきポイント

ヘアサロンの内装

理・美容の歴史は古く、その起源は約5000年前の古代エジプトにおける儀式としての行為にまで遡ることができます。また、赤白青が特徴的なサインポールは、赤が「血液」、白が「包帯」に由来するものであり、これに「理容師」を表す青を足したことがその起源であるとも言われており、外科医が理容師を兼ねていた中世ヨーロッパ時代の名残りであるとされています。

このように理・美容師は、人類の歴史に深く関わってきた職業であり、なおかつ「髪の毛」という外見を象徴する部位に触れることからも、理・美容所を開設して施術を行う際には、他の業種にはない届出制が採用されているのです。

本稿では、理・美容を開設する際に必要とされる届出についてご案内するとともに、申請書の書き方や保健所の立入調査の際に注意すべきポイントについても詳しく解説していきたいと思います。

美容と理容の違い

ヘアカットする美容師

美容師と理容師は、どちらも国家資格が必要な職種であり、その仕事内容はそれぞれ「美容師法」「理容師法」という別々の法律によって明確に区分されています。これから開業を検討される方にとっては今さら感もあるでしょうが、まずは美容と理容の違いから確認していくことにしましょう。

美容とは

美容とは、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう。美容師とは、厚生労働大臣の免許を受けて美容を業とする者をいう。

(美容師法第2条第1・2項)

美容師の仕事内容は「容姿を美しくすること」とされており、ヘアカットはもちろんのこと、カラーやパーマ、ヘアメイクなど、美容に関するさまざまな施術を行うことができます。特に「まつ毛エクステ(まつエク)」は美容師の独占業務とされているため、美容師を語る際の象徴ともいうべき技術となっています。かつては女性に対するパーマやヘアカラーも美容師の独占業務でしたが、こちらについては現在は緩和され、理容師であっても施術することができるようになりました。

理容とは

理容とは、頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えることをいう。理容師とは、理容を業とする者をいう。

(理容師法第1条の2第1・2項)

理容師の仕事内容は「容姿を整えること」とされており、おもに髪の毛を整える整髪と、シェービングといわれる顔剃りや髭剃りなどの施術を行います。美容師は、眉毛を整えるなど、メイクの一環としての顔剃りに限って一部カミソリの使用を認められてはいますが、理容師のように顔全体をカミソリで剃ることまでは認められていません。対する理容師にこのような制約はなく、このシェービングの技術こそが、理容師の最大の特徴とされています。

理・美容所の開設

サインポール

理・美容所を開設するためには、飲食店のように何らかの許可を受けなければならないという決まりはありませんが、施設の構造設備等の基準を満たした上で、営業地を管轄する保健所に対して届出を行う必要があります。この辺りを「許可申請」と誤認しているサイトも見受けられますが、実際には「届出」という形式の手続きとなります。ただし、届出とはいえ基準を満たさなければ受理されませんし、そのまま営業すれば、無届営業として行政処分の対象となってしまいますので、構造設備等の基準や必要となる手続きについてはしっかりと確認するようにしてください。

開設までの流れ

開設までの流れ

上のフロー図に沿って手続きを進めます。なお、本稿においては兵庫県神戸市における手続きを下敷きにしながら解説をしています。地域や管轄によっては様々なルールが存在しますので、詳細については理・美容所の開設予定地を管轄する保健所に必ず確認するようにしてください。

事前相談

構造設備等が法令の基準に適合しているかどうかを確認するためには、工事着工前、内外装の図面が出来上がったタイミングで事前相談に出向くことがベストです。後述するように、理・美容所の構造設備は設定事項が細部にわたるため、工事完了後に保健所から改善の要請があると、改修のための時間やコストが余分に発生してしまうリスクが存在しているからです。

開設届の提出

後述する必要書類を作成・収集し、開設予定地を管轄する保健所に対して届出を行います。この際には確認検査の日時調節も行いますが、余裕を持たせるために検査希望日の14日くらい前までには届出を済ませるようにしましょう。

確認検査

保健所の職員が実際に開設予定の店舗に訪問し、基準に照らして構造設備等の確認を行います。確認が終了すると検査確認済証が発行されるので、保健所からの連絡を待って、後日認印を持参して確認済証を受領する流れになります。

必要となる書類

届出に必要となる書類は以下のとおりです。作成のポイントについても、兵庫県神戸市における実際の資料を基に解説していますので、しっかりと確認するようにしてください。

  • 理・美容所開設届
  • 構造及び設備の概要
  • 理・美容所の平面図・付近見取り図
  • 理・美容師の免許証の写し(全員分)
  • 伝染性疾病の有無に関する医師の診断書
  • 登記事項証明書(法人)
  • 管理理・美容師であることを証する書類(管理理・美容師をおく場合)
  • 従業者名簿(従業員を雇用する場合)
  • 外国人登録証明書(外国人)
  • 住民票の写し(外国人)
  • 開設検査手数料

開設届の書き方

理・美容所開設届
理・美容所開設届記入方法

構造及び設備の概要の書き方

構造及び設備の概要
自動車に設備を設けて営業する場合の構造及び設備の概要

図面の書き方

平面図
平面図
見取り図
見取り図

施設の図面は手書きでも設計図面を添付しても構いません。フロアに他の店舗がある場合は、フロア図も用意します。付近の見取り図は、施設の位置がわかるように記載します。インターネット等で地図を印刷し、添付しても構いません。

図面は、詳しく、正確に、わかりやすく記入します。窓口で作業場の面積(待合、バックヤードを除く)を 確認します。作業場の面積の計算に必要な寸法を必ず記入してください。寸法はすべて内のり寸法で記入します。面積が不明な場合は、申請を受け付けられないことがあります。

診断書

診断書

結核や伝染性皮膚疾患などを患ってないかを証明するためのもので、理・美容師免許を取得している従業者全員分の診断書が必要になります。医師名と医師の印があり、発行から3か月以内のものが有効です。

管理理・美容師

管理美容師・管理理容師は、免許取得後3年以上の実務経験がある理・美容師の中で、管理美容師(理容師)講習会を受講して修了した者のみが取得できる免許です。理・美容師の従業員が常時2名以上在籍する場合は、管理理・美容師を1人以上設置する必要があります。

従業者名簿

名簿には従業者全員の氏名・美容師と管理美容師の免許の取得年月日・免許番号を記入しますが、提出する際に原本を提示する必要があります。

開設検査手数料

各自治体により異なります。兵庫県神戸市であれば16,000円を現金で支払います。一旦納入された手数料は返金されませんのでご注意ください。

その他の書類

届出者が法人であれば登記事項証明書の原本(定款若しくは寄付行為の写しでも可)、外国人であれば住民票の写しを添付します。登記事項証明書は6ヶ月以内に発行されたもの、住民票の写しは国籍などが記載されているものでマイナンバーの記載のないものを提出します。

構造設備の基準

構造設備の基準

下記が兵庫県神戸市における構造設備の基準となります。項目は多いですが、開設には必要となる基準ですのでしっかりと確認するようにしましょう。上の図面には確認調査における重要なポイントについてまとめていますので、こちらもよくご覧の上で参考にしてください。

  1. 床及び腰板にはコンクリート、タイル、リノリューム又は板等不浸透性材料を使用すること
  2. 洗場は、流水装置とすること
  3. ふた付きの汚物箱及び毛髪箱を備えること
  4. 理・美容師が理・美容のための直接の作業を行う場合の作業面の照度を100ルクス以上とすること
  5. 理・美容所内の空気1Lあたり中の炭酸ガスの量を5立方センチメートル以下に保つこと
  6. 作業場は屋内に設けること
  7. 隔壁により外部と区分すること
  8. 室内空気を汚染する構造の燃焼器具がある場合には、換気上有効な機械換気設備を設けること
  9. 待合所を設ける場合は、作業場と明確に区分すること
  10. 理容所の作業場の床面積は、作業いす2脚までは9.9㎡以上とし、作業いす2脚を超えて1脚を増すごとに2.5㎡以上を増すこと
  11. 美容所の作業場の床面積は、作業いす2脚までは9.9㎡以上とし、作業いす2脚を超えて1脚を増す ごとに1.65㎡以上を増すこと
  12. 作業場の床面は、清掃が容易に行える構造とすること
  13. 作業場には、器具を消毒する場所を設け、消毒器、薬品等を備え付けること
  14. 作業場には、石けん又は消毒液が備え付けられている流水式手洗い設備を設けること
  15. 作業場には、温水を供給することのできる洗髪設備を設けること
  16. 作業場には、客に接する布片、紙片、消毒済の器具等を収納することができる容器又は戸棚を設けること
  17. 理容所の作業場は、理容に関係のない用途に使用しないこと(当該理容所の理容師の全員が美容師の免許を有する場合であって、当該理容所と同一の場所に美容所が開設され、かつ、当該理容所の理容師が当該作業場を美容の用途に使用するときは、この限りでない)
  18. 美容所の作業場は、美容に関係のない用途に使用しないこと(当該美容所の美容師の全員が理容師の免許を有する場合であって、当該美容所と同一の場所に理容所が開設され、かつ、当該美容所の美容師が当該作業場を理容の用途に使用するときは、この限りでない)
  19. 作業場には、作業中の客以外の者をみだりに出入りさせないこと
  20. 昆虫等の駆除に努めること
  21. 使用水は、原則として上水道を使用し、井戸水等を使用するときは、飲用に適する旨の確認を受けておくこと
  22. 外傷に対する応急処置に必要な薬品及び衛生材料を常備すること
  23. 自動車に設備を設けて理・美容の業を行う理容所については、次の措置を行うこと
    • 換気上有効な機械換気設備を設けること
    • 飲用に適する水を供給する200L以上の容量の給水タンクを設けること
    • 給水タンクと同容量以上の排水タンクを設けること
    • 作業場の床は、作業中は支柱その他の設備により水平に固定しておくこと

出張理容・出張美容

理・美容師は、原則として届出をした理・美容所以外の場所で業務を行うことはできませんが、特別の事情がある場合に限り、例外としてこれが認められています。出張理容・出張美容については、各自治体ごとに異なる取扱がなされており、出張による営業を行う際には事前に届け出ることを義務付けている自治体も存在しています。なお、わが尼崎市においては、「ねたきり老人理美容サービス」という独自の訪問サービスを行っており、非課税世帯に属する要介護4以上の要介護者であって、かつ介護保険を利用していない者に対する整髪料金の補助事業を行っています。

このように、各自治体ごとに異なる制度が存在することは珍しいことではありません。まずは出張予定地を管轄する保健所に対して確認を行うなどして、事前に情報を仕入れる習慣をつけるようにしましょう。

まとめ

思春期にヘアスタイルにこだわり始めることはよくあるお話しですが、「チャラチャラするなよ」と私をたしなめていた父が、古い写真の中で横分けパンタロン姿でにこやかに笑っているのを眺めていると、ついこちらまで微笑んでしまうのは、既に亡き父と同年齢に達してしまったからでしょうか。

歴史を紐解いてみると、ヘアスタイルのトレンドの変遷は、時代世代を反映した文化の象徴そのものであるとさえ感じます。歴史の重みから察しても、理・美容業界がまだまだAIに侵食されない存在感を放ち続けることは間違いありません。これからも理・美容師の皆さまが文化の立役者としてご活躍されることを祈念して本稿をしめさせていただきたいと思います。

弊所では理容所・美容所に関する届出を、代行によってサポートさせていただいております。保健所との事前協議や確認調査の立会いもサービスに含まれますので、どうぞご遠慮なくご活用ください^^

理・美容所開設届55,000円~
44,000円
変更届等22,000円
構造設備確認と図面作成のみ19,800円
※税込み

理容所も美容所も開設の届出のご相談はお気軽に♬

尼崎市、西宮市、芦屋市、神戸市、伊丹市、宝塚市、川西市、大阪市、豊中市を中心に兵庫大阪の全域に対応可能です。

平日9時〜18時、📩は24時間365日対応!

06-6415-9020 または 090-1911-1497

メールでのお問い合わせはこちら。

お問い合わせフォーム

事務所の最新情報をお届けします