手作りケーキやクッキーを販売したい│菓子製造業許可│意外に複雑な許可のお話し

「将来なりたいものは何ですか?」というのは、今も昔も小学校低学年の作文における定番のテーマです。最近では「インフルエンサー」という回答が幅をきかせているようですが、私が児童だった頃の男子なら「野球選手」、女子なら「お花屋さん」あたりが王道だった気がします。
そんな中、ひとり「作家さん」と回答していた記憶がある私は、当時から少し斜に構える傾向があったのかもしれません。いや、もしかするとこのサイトを通じて、間接的に当時の夢を叶えている最中とも言えるでしょうか。
さて、今も昔も男女問わず根強い人気を誇るのが「ケーキ屋さん」です。大人になった今でこそ、食べたい時にいつでも手が届きますが、誕生日やクリスマスといった特別な日にしかお目にかかれなかった少年時代、その存在にはある種のプレミア感を抱いていたものです。
では、実際にその「ケーキ屋さん」になるにはどうすればいいのでしょうか。実は、ケーキやクッキーを製造・販売するために必要な手続きは、意外と複雑な側面を持っています。
そこで今回は、お菓子店を開業する際に必要となる資格や営業許可について整理しましたので、開業をご検討中の皆さまはぜひ参考にしてみてください。
目 次
食品衛生法と菓子製造業
食品衛生法は、飲食による衛生上の危害を防止し、国民の健康を守ることを目的とした法律です。飲食店をはじめ、食品に関わる営業はこの法律の規制を受けるため、洋菓子の製造販売も例外ではありません。
具体的に、ケーキやクッキーなどの洋菓子を製造・販売するためには、都道府県知事から「菓子製造業許可」を受ける必要があります。ただし、同じお菓子を作る場合でも、原料や完成品、提供するサービス形態によって取得すべき営業許可が変わってくる点には注意が必要です。
菓子製造業とは
菓子製造業とは、文字通り菓子(あめ、チョコレート、ガム、クッキー、ケーキなど)を製造する営業をいい、これにはパンを製造する営業も含まれます。
単にこれらを袋に詰めたり、盛り付けたりするだけでなく、原材料から加工して「お菓子」という形にする工程が含まれる場合にこの業種に該当します。身近な例でいえば、パティスリーやパン屋、和菓子店などが代表的です。
また、製造したお菓子をその場で販売するだけでなく、他の店舗やネットショップへ卸す場合も、基本的にはこの「菓子製造業」の範疇として扱われることになります。
対象となる食品については、基本的に小麦粉や砂糖などを主原料として加工し、間食として供されるものが該当すると考えて差し支えありません。
| 洋菓子 | ケーキ、シュークリーム、クッキー、チョコレートなど |
| 和菓子 | まんじゅう、どら焼き、せんべい、練り切りなど |
| パン類 | 食パン、菓子パン、惣菜パンなど |
| その他 | スナック菓子、チューインガム、キャンディなど |
区分上の注意点
ここで注意が必要なのは、一見するとお菓子のように思えるものでも、その製法や主原料によっては「そうざい製造業」や「あん類製造業」といった食品衛生法上の別業種に該当するケースがある点です。扱うメニューが多岐にわたる場合は、どの区分に該当するのかを慎重に見極める必要があります。
焼き芋や綿菓子、炒り豆などの簡易な加工や、水飴、もなかの皮、ジャム、クリームといった菓子材料を製造する行為は、基本的に「菓子製造業」には含まれません。ただし、簡易な加工であっても工場形態で大量に製造する場合や、添加物を使用する場合、あるいは露店やキッチンカーでお菓子を製造して販売する行為は、この営業の対象となります。
また、アイスを製造販売するなら「アイスクリーム類製造業」、ホイップクリームなどの乳製品を自前で製造して販売するなら「乳製品製造業」に該当するなど、取り扱う食品によって業種が細かく分かれている点には注意が必要です。
営業形態による注意点
ひと口に「製造販売」と言っても、その形態は、①テイクアウトのみ(デリバリー含む)、②テイクアウトとイートインを併用して提供するパターン、③飲食店の店内で提供するパターンの3つに分けられます。
テイクアウトのみのパターン
ショーケースに商品を陳列してテイクアウトのみを行う場合や、デリバリーのみで店内に飲食スペースを設けない営業形態は、「菓子製造業」のみに該当します。
テイクアウトとイートインを併用するパターン
店頭販売に加え、飲食スペースを設けて菓子を提供するなど、テイクアウト(デリバリー)とイートインを併用する営業形態は、原則として「飲食店営業」の許可があれば、その施設内での製造・販売が可能です。
以前は両方の許可が必要とされるケースが一般的でしたが、法改正により、飲食店営業の許可施設内で菓子を製造し、その場で直接消費者に販売する(テイクアウト含む)のであれば、重ねて「菓子製造業」の許可を取得する必要はなくなりました。
ただし、製造した菓子をネット通販で全国に発送したり、他の店舗へ卸したりする場合には、引き続き「菓子製造業」の許可が必須となるため注意が必要です。
飲食店の店内で提供するパターン
食品衛生法において、食品を調理したり設備を設けて客に飲食させたりする営業が「飲食店営業」と定義されており、ケーキやクッキーなどの調理もその範疇に含まれます。そのため、飲食店が店内で菓子を提供する場合、必要な許可は「飲食店営業」のみとなります。
許可の基準
菓子製造業を営もうとするときは、営業所を食品衛生法に基づき都道府県知事が定める基準に適合させた上で申請し、その許可を受ける必要があります。
この営業許可を得るためには、大きく分けてヒトに関する(人的基準)と施設設備に関する(施設要件)の2つの基準を満たす必要があります。
かつては都道府県ごとに基準が異なっていましたが、2021(令和3)年の法改正以降、全国一律の基準(共通基準)と、業種ごとの特性に応じた基準(特定基準)に整理されています。
人的要件
各施設には、資格を有する「食品衛生責任者」を最低1名置くことが義務付けられています。原則として施設ごとに専任である必要がありますが、同一敷地内(あるいは同一建物内)であれば、飲食店の食品衛生責任者がこれを兼任することも可能です。
誰でも食品衛生責任者養成講習会」を受講(1日程度)すれば取得することが可能ですが、衛生系の国家資格者(調理師、製菓衛生師、栄養士、管理栄養士、船舶料理士、と畜場法に規定する衛生管理責任者・作業衛生責任者又は食鳥処理衛生管理者)又は医学・薬学・獣医学等の専門職(獣医師、医師、歯科医師、薬剤師)は、無講習で食品衛生責任者となることができます。
施設に係る共通基準
以下は、食品衛生法上のすべての許可業種に共通する基準であり、どのような形態の営業であっても最低限クリアしなければならない必須条件です。
| 施設全体 | 施設は、屋外からの汚染を防止し、衛生的な作業を継続的に実施するために必要な設備、機械器具の配置及び食品又は添加物を取り扱う量に応じた十分な広さを有すること |
| 作業区分に応じ、間仕切り等により必要な区画がされ、工程を踏まえて施設設備が適切に配置され、又は空気の流れを管理する設備が設置されていること(作業における食品等又は従業者の経路の設定、同一区画を異なる作業で交替に使用する場合の適切な洗浄消毒の実施等により、必要な衛生管理措置が講じられている場合を除く) | |
| 住居その他食品等を取り扱うことを目的としない室又は場所が同一の建物にある場合、それらと区画されていること | |
| 施設の構造及び設備 | じん埃、廃水及び廃棄物による汚染を防止できる構造又は設備並びにねずみ及び昆虫の侵入を防止できる設備を有するこ と |
| 食品等を取り扱う作業をする場所の真上は、結露しにくく、結露によるカビの発生を防止し、及び結露による水滴により食品等を汚染しないよう換気が適切にできる構造又は設備を有すること | |
| 必要に応じて、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ設備及び侵入した際に駆除するための設備を有すること | |
| 原材料を種類及び特性に応じた温度で、汚染の防止可能な状態で保管することができる十分な規模の設備を有すること | |
| 施設で使用する洗浄剤、殺菌剤等の薬剤は、食品等と区分して保管する設備を有すること | |
| 廃棄物を入れる容器又は廃棄物を保管する設備については、不浸透性及び十分な容量を備えており、清掃がしやすく、汚液及び汚臭が漏れない構造であること | |
| 製品を包装する営業にあっては、製品を衛生的に容器包装に入れることができる場所を有すること | |
| 更衣場所は、従事者の数に応じた十分な広さがあり、及び作業場への出入りが容易な位置に有すること | |
| 食品等を洗浄するため、必要に応じて熱湯、蒸気等を供給できる使用目的に応じた大きさ及び数の洗浄設備を有すること | |
| 添加物を使用する施設にあっては、それを専用で保管することができる設備又は場所及び計量器を備えること | |
| (床面、内壁及び天井) | 床面、内壁及び天井は、清掃、洗浄及び消毒を容易にすることができる材料で作られ、清掃等を容易に行うことができる構造であること(取り扱う食品や営業の形態を踏まえ、食品衛生上支障がないと認められる場合を除く) |
| 床面及び内壁の清掃等に水が必要な施設にあっては、床面は不浸透性の材質で作られ、排水が良好であること | |
| 内壁は、床面から容易に汚染される高さまで、不浸透性材料で腰張りされていること | |
| (照明設備) | 照明設備は、作業、検査及び清掃等を十分にすることのできるよう必要な照度を確保できる機能を備えること |
| (給水設備等) | 水道により供給される水又は飲用に適する水(食品製造用水)を施設の必要な場所に適切な温度で十分な量を供給することができる給水設備を有すること |
| 水道により供給される水以外の水を使用する場合にあっては、必要に応じて消毒装置及び浄水装置を備え、水源は外部から汚染されない構造を有すること | |
| 貯水槽を使用する場合にあっては、食品衛生上支障のない構造であること | |
| (手洗い) | 従業者の手指を洗浄消毒する装置を備えた流水式手洗い設備(水栓は洗浄後の手指の再汚染が防止できる構造であること)を必要な個数有すること |
| (排水設備) | 十分な排水機能を有し、かつ、水で洗浄をする区画及び廃水、液性の廃棄物等が流れる区画の床面に設置されていること |
| 汚水の逆流により食品又は添加物を汚染しないよう配管され、かつ、施設外に適切に排出できる機能を有すること | |
| 配管は十分な容量を有し、かつ、適切な位置に配置されていること | |
| (冷蔵又は冷凍設備) | 食品又は添加物を衛生的に取り扱うために必要な機能を有する冷蔵又は冷凍設備を必要に応じて有すること |
| 製造及び保存の際の冷蔵又は冷凍については、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)(外部リンク)に定められた規格又は基準に冷蔵又は冷凍について定めがある食品を取り扱う営業にあっては、その定めに従い必要な設備を有すること | |
| (便所) | 要件を満たす便所を従業者の数に応じて有すること |
| 作業場に汚染の影響を及ぼさない構造であること | |
| 専用の流水式手洗い設備を有すること | |
| 機械器具 | 食品又は添加物の製造又は食品の調理をする作業場の機械器具、容器その他の設備は、適正に洗浄、保守及び点検をすることのできる構造であること |
| 作業に応じた機械器具等及び容器を備えること | |
| 食品又は添加物に直接触れる機械器具等は、耐水性材料で作られ、洗浄が容易であり、熱湯、蒸気又は殺菌剤で消毒が可能なものであること | |
| 固定し、又は移動しがたい機械器具等は、作業に便利であり、かつ、清掃及び洗浄をしやすい位置に有すること | |
| 組立式の機械器具等にあっては、分解及び清掃しやすい構造であり、必要に応じて洗浄及び消毒が可能な構造であること | |
| 食品又は添加物を運搬する場合にあっては、汚染を防止できる専用の容器を使用すること | |
| 冷蔵、冷凍、殺菌、加熱等の設備には、温度計を備え、必要に応じて圧力計、流量計その他の計量器を備えること | |
| 作業場を清掃等するための専用の用具を必要数備え、その保管場所及び従事者が作業を理解しやすくするために作業内容を掲示するための設備を有すること |
業種別基準
共通基準に加えて、菓子製造業の許可を得るためには、さらに以下の固有の基準を満たす必要があります。
| 施設 | 原料処理場、製造場及び包装場を設けること(ただし、製造工程の特性により、食品衛生上の支障がないと認められる場合は、これらの場所を同一の場所に設けることができる) |
| 設備 | 原材料を洗浄するための流水式洗浄設備を設けること |
| 器具、容器包装等を洗浄するための流水式洗浄設備を設けること | |
| 必要に応じて、器具、容器包装等の殺菌設備を設けること | |
| 菓子を放冷するための専用の場所又は設備を設けること |
また、パンを製造する場合、菓子製造業の許可範囲に含まれますが、その工程や設備に関しては、一般的な菓子製造とは異なる特有の基準や実務上の留意点があります。
| 原材料の保管 | 原材料の種類や特性に応じた温度で、汚染を防げる状態で保管できる設備(冷蔵・冷凍庫等)を有すること |
| 製造場所 | 原材料の前処理、調合、製造、包装を、作業区分に応じて適切に行える場所があること |
| 製品の保管 | 完成したパンを衛生的に保管できる設備を有すること |
基準が厳しいため、よくある「ケーキやお菓子を自宅で製造して販売したい」という要望については、相当ハードルが高く困難であるものとご理解ください。
地域別の基準
厚生労働省が省令で「標準的な基準」を定め、各自治体は原則としてこれを参考に条例を制定しています。
これにより全国一律化が進んだとはいえ、地域の実情(特産品や気候、過去の食中毒事例)に応じて、条例で独自の独自の「上乗せ基準」や「解釈」を設けている場合があります。
たとえばシンクについて数やサイズが指定されている場合や、床・内壁の素材が指定されている場合があり、また、申請手数料についても自治体ごとにばらつきがあります。
特に都市部では、運用基準について独自の指導方針を持っている場合があるため、申請の際には自治体が公開している最新のガイドラインを確認することをお勧めします。
許可申請手続
申請先の保健所の違いにより細かな差異はありますが、食品衛生法上の営業許可を取得する際の大まかな流れは以下のとおりです。
- 事前相談及び準備(工事着工前)
- 申請書類等の提出(開店の約2週間前)
- 食品衛生監視員による施設調査
- 許可書の交付
- 営業開始
事前相談及び準備
営業施設に係る基準は多岐にわたり複雑なため、施設の着工前に、まずは製造工程を反映した図面を持参して所轄保健所の窓口で事前相談を行います。
この事前協議では、計画の細部や具体的な作業工程について精査されます。場合によっては設備の増設を指導されることもあるため、着工後の大規模な補修工事という事態を避ける意味でも、事前相談は欠かせない工程です。
菓子製造業を開始するにあたっては、何よりも保健所との事前協議が重要となります。検討している営業形態を漏れなく正確に伝え、許可基準についても詳細まで確認しておく必要があります。そもそも、計画している場所や設備では許可を受けることができないケースも想定されるため、必ずこの手続きを経てから進めるようにしてください。
申請に必要となる書類
自治体ごとに多少の差異はありますが、申請はおおむね以下の書類を保健所に提出することにより行います。
申請後には食品衛生監視員による調査が実施されるので、これを見越して少なくとも開店のおおむね10日前までには申請を行うようにしてください。
- 食品営業許可申請書
- 営業施設の大要
- 施設の平面図及び付近案内図
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(原本)
- 営業許可申請手数料
- 発行後6カ月以内の登記簿謄本の原本(法人)
水質検査成績書
ビルのフロアを借りて営業するケースなどで、貯水槽や井戸水を利用する場合には、営業許可申請の際に「水質検査成績書」を提出することになります。これは、水道法などの規定に基づき、飲料水の安全性を客観的に証明するための書類です。
多くの場合、貯水槽の清掃や水質検査は建物のオーナーや管理会社が定期的に実施しているため、まずは管理側に「営業許可の申請で必要になる」旨を伝え、直近の検査結果の写しを提供してもらえるか確認しておくのがスムーズです。
ただし、給水方式が水道本管から直接供給される「直結給水」である場合には、この成績書の提出自体が不要となることもあります。また、独自の井戸水を使用する場合などは、営業者自らが検査機関へ依頼し、飲用適の判定を受けた書類を用意することになります。検査項目や有効期限については、管轄の保健所によって運用が異なる場合があるため、事前に詳細を精査しておくのが確実です。
飲食店営業許可申請
飲食店に該当する場合は、飲食店営業許可を取得する必要があります。こちらも申請先は営業地を管轄する保健所になります。
飲食店についても営業所ごとに食品衛生責任者を設置する必要があります。飲食店営業の具体的な申請の流れや一般的な施設基準については、以下の記事に詳細をまとめていますので、そちらを確認してください。
まとめ
業態の多様化によって、食品に関する許可制度は複雑になっています。どのような形態で何を販売するのかについては、少なくとも明確に説明できるように整理しておくべきです。その上で必要な資金を試算し、調達方法などの計画もしっかり立ててから事前協議に臨みましょう。
弊所では菓子製造業許可の取得代行をサポートしています。保健所との事前協議もサービスに含まれますので、どうぞご遠慮なくご活用ください^^
| 菓子製造業許可申請 | 66,000円〜 |
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