早期把握・相談体制・研修の整え方│日本版DBSの認定に必要な取組を行政書士が解説

研修の風景

学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(以下、こども性暴力防止法)の認定を受けるには、犯罪事実確認の体制や規程の作成に加えて、子どもの変化に早く気づくための「早期把握」、子どもが被害を打ち明けられる「相談の体制」、従事者に必要な知識を身に付けさせる「研修」の三つを整えることが求められます。

前科の確認だけでは、初めての加害や発覚していない加害を防ぐことはできないため、これらの日々の取組こそが、子どもを性暴力から守る制度の実効性を左右します。

本記事では、こども家庭庁のガイドラインとQ&Aに沿って、日常の観察や面談、アンケートの進め方、相談員と相談窓口の設け方、外部の相談窓口の周知、研修の内容と方法、受講の時期までを行政書士が解説します。

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認定の基準と三つの取組

認定を受けるには、犯罪事実確認の体制、早期把握、相談の体制、児童対象性暴力等対処規程、研修、情報管理という六つの措置を実施する体制を整える必要があります。このうち早期把握、相談の体制、研修の三つは、規程の作成のように書類を整えれば済むものではなく、日々の運用の中で続けていくことが前提となる取組です。

三つの取組は、児童対象性暴力等対処規程とも深く結び付いています。早期把握や相談で疑いを把握したときは、規程に定めた報告ルールと対応ルールに沿って動くことになり、研修では、その規程の内容を従事者に理解させることが求められます。

早期把握

早期把握は、子どもの心身や行動の変化から、性暴力の兆しにできるだけ早く気づくための取組です。ガイドラインは、日常の観察と、子どもの発達の段階や事業の特性に応じた定期的な面談やアンケートを行うことを求めています。

日常の観察

日常の観察では、子どもの心身や行動の変化を、できる限り複数の従事者で見守ることが求められます。違和感を覚えたときは積極的に声を掛け、必要に応じて観察を続けるとともに、従事者どうしが気づいたことを共有しやすい雰囲気をつくっておくことも大切です。

アンケートに答えることが難しい未就学の子どもについては、日常の観察と会話が早期発見の中心となります。保育や預かりを行う事業では、誰がどの子どもを見守り、気づいたことを誰に伝えるかを、日頃から決めておくと、変化を見逃しにくくなります。

面談とアンケート

定期的な面談やアンケートは、子どもの発達の段階や特性、事業の特性に応じて行う必要があります。ガイドラインは実施の頻度を定めていないため、子どもが通う期間や頻度、事業の規模に応じて、事業者が実施の時期と回数を決めることになります。

アンケートは、既存のアンケートに性暴力に関する数問を加える、チェック式にする、家に持ち帰って提出できるようにする、デジタルの手段で答えられるようにするといった工夫で、子どもが答えやすい形にすることが望ましいとされています。障害のある子どもには、点字やイラストを使うといった配慮も求められ、記名か無記名かにかかわらず、回答したことで子どもが不利益を受けないよう、安心して答えられる環境を整える必要があります。

報告ルールとの関係

日常の観察や面談、アンケートで疑いを把握したときに、誰が、誰に、どのように報告するかは、児童対象性暴力等対処規程の報告ルールとして定めておく必要があります。疑いの段階であっても深刻に受け止め、様子を見るだけで済ませないことが大切で、疑われる者が管理者や幹部である場合に備えて、匿名で報告できる窓口を設けておくことも重要とされています。

相談の体制

相談の体制は、子どもや保護者が、性暴力の被害やその不安を打ち明けられる場をつくる取組です。認定を受けるには、事業者の中に相談員を選任するか相談窓口を設けたうえで、外部の相談窓口とあわせて、子どもと保護者に周知する必要があります。

相談員と相談窓口

相談員や相談窓口は、子どもが相談しやすい形で設けることが求められます。ガイドラインは相談員の人数や資格を定めていませんが、性別に配慮して複数の相談員を置くことや、管理部門のように子どもの指導とは別の部門に窓口を設けることを、工夫の例として挙げています。

周知にあたっては、手紙やメール、SNSでも相談できることや、匿名でも相談できること、性暴力以外の悩みも相談できることを明らかにし、相談した後にどのような流れで対応するかもあわせて示す必要があります。

こども家庭庁は、こうした内容を伝えるための保護者向けと子ども向けの周知用資料のひな型も公表しています。

外部の相談窓口の周知

事業者の中の相談員には話しにくい子どももいるため、外部の相談窓口もあわせて周知する必要があります。ガイドラインは、以下の窓口を例として挙げています。

相談窓口連絡先
24時間子供SOSダイヤル0120-0-78310
こどもの人権110番0120-007-110
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター#8891
性犯罪被害相談電話(警察)#8103

国や自治体といった公的機関が設けている窓口は、事前に承諾を得ることなく周知できます。それ以外の民間の窓口を周知する場合は、あらかじめ窓口を運営する団体に確かめておくといった配慮が求められます。

相談を受けるときの心構え

相談を受けたときは、子どもの話をしっかり受け止めて聞くことを第一に考え、共感して寄り添う姿勢が求められます。子どもを責めたり、話を否定したり、言いたくないことを無理に聞き出したりすることは避ける必要があり、聞いた内容は、報告ルールに沿って速やかに報告先に伝えることになります。

研修

研修は、子どもと接する業務に就く従事者に、性暴力を防ぐために必要な知識を身に付けさせる取組です。座学と演習を組み合わせて行う必要があり、原則として、従事者が子どもと接する業務に就く前に終えておくことが求められます。

研修の内容

研修には、ガイドラインが定める以下の八つの事項をすべて盛り込む必要があります。いずれも、早期把握や相談の体制、規程に定めた内容と一体のもので、自らの事業者が定めた不適切な行為の範囲や報告ルールを従事者に理解させることが、制度を現場で機能させる土台となります。

  • 性暴力を防ぐための基礎的な事項(性暴力が起きる要因や、子どもの権利)
  • 児童対象性暴力等と不適切な行為の範囲
  • 早期発見の方法(日常の観察、面談やアンケートの留意点)
  • 相談や報告を受けた後の対応
  • 被害を受けた子どもの保護と支援
  • 犯罪事実確認で求められる対応
  • 防止措置の基礎的な事項
  • 厳格な情報管理の必要性

演習

演習では、目標や方法、内容を定めたうえで、不適切な行為の具体的な内容を理解させることと、疑いが生じたときにとるべき行動を、子どもや保護者、他の従事者から相談を受けた場面を想定して模擬的に体験させることを、必ず盛り込む必要があります。演習は1人で行うこともできますが、従事者どうしで話し合いながら進める形が望ましいとされています。

研修の方法

研修は、以下の三つの方法のいずれかで行うことになり、研修を行う主体は問われません。事業者が自ら研修を行わず、外部の研修を受講させることもできます。

方法内容
標準研修こども家庭庁が作成した標準の研修動画を使う研修。中長期にわたって従事する人は、原則としてこの研修を受講する。
要点研修こども家庭庁が作成した、最低限の内容をまとめた約17分の研修動画を使う研修。不定期に従事する人や短期間だけ従事する人のように、標準研修の受講が難しい人が対象となる。
独自研修事業者や業界団体が、八つの事項を満たす内容で行う研修。外部の有識者による講義や監修を取り入れることが望ましいとされる。

どの方法を選ぶ場合でも、事業者は、従事者が研修を受けたことを確かめる必要があります。研修は一度受ければ終わりではなく、定期的に受講させたり、日々の取組の中に組み込んだりすることが望ましいとされています。

受講の時期

座学と演習は同じ日に行う必要はありませんが、どちらも、従事者が子どもと接する業務に就く前に終える必要があります。認定を受けようとする事業者では、申請の前から従事している人に研修を受けさせる必要があり、申請の前後に内定した人には、従事させるまでに受講させれば足りるとされています。

急な欠員を埋めるためにいとま特例を使って従事させる人にも、特例の趣旨や講じるべき措置とあわせて、性暴力の防止に関する研修を受講させる必要があります。犯罪事実確認が済んでいない分、研修による備えはより重要になります。

他の研修を受けた人の扱い

研修の義務は事業者ごとに課されますが、別の事業者で研修を受けた人は、その受講を自らの事業者での受講として扱うことができ、受講したことを確かめれば足ります。同じ事業者が複数の事業を営む場合は、研修をまとめて行うことができ、事業を引き継いだ場合も、引き継ぐ前に受講した従事者が改めて受講する必要はありません。

ただし、教員による性暴力の防止に関する法律に基づく研修を受けた人は、扱いが異なります。その研修では、こども性暴力防止法の概要、犯罪事実確認で求められる内容、防止措置の基礎、厳格な情報管理の必要性の四つが扱われていないため、これらについては、標準の研修動画を使って追加で研修を行う必要があります。

認定申請と研修実施計画書

認定を申請する際は、研修を実施することや受講したことを証する書類として、研修実施計画書を提出する必要があります。計画書を作る際は、誰に、いつ、どの方法で研修を行うかを整理し、採用や人事異動のたびに、新たに従事する人が業務に就く前に受講を終えられるよう、計画を組み立てておくことが大切です。

あわせて、早期把握や相談の体制についても、申請の際に、認定の基準に適合していることを証する資料を提出することになります。面談やアンケートの実施時期、相談員や相談窓口の設け方、周知の方法は、申請の前に具体的に決めておく必要があります。

Q. 面談やアンケートはどのくらいの頻度で行えばよいですか?
A. ガイドラインは頻度を定めておらず、子どもの発達の段階や事業の特性に応じて、事業者が決めることになります。未就学の子どもについては、日常の観察と会話が中心となります。


Q. 相談員は何人置けばよいですか?
A. ガイドラインに人数の定めはありません。性別に配慮して複数の相談員を置くことや、子どもの指導とは別の部門に窓口を設けることが、工夫の例として挙げられています。


Q. 研修は事業者が自ら行う必要がありますか?
A. 研修を行う主体は問われず、こども家庭庁の研修動画や外部の研修を使うこともできます。ただし、従事者が受講したことは、事業者が確かめる必要があります。


Q. 短期間だけ働くアルバイトにも研修が必要ですか?
A. 短期間や短時間で働く人も、研修を受ける必要があります。標準研修の受講が難しい場合は、約17分の要点研修の動画で受講させることができます。


Q. 研修はいつまでに受けさせればよいですか?
A. 原則として、子どもと接する業務に就く前に、座学と演習の両方を終えておく必要があります。

こども性暴力防止法の認定申請サポート

日本版DBSの認定を受けるには、日常の観察と定期的な面談やアンケートによる早期把握、事業者の中の相談員や相談窓口と外部の相談窓口を組み合わせた相談の体制、座学と演習を組み合わせた研修を整える必要があります。これらは認定を受けた後も続けていく取組であり、新たに従事する人が業務に就く前に研修を終えられるよう、計画的に運用していくことが求められます。

弊所では、こども性暴力防止法の認定申請を代行しています。面談やアンケートの進め方の整理から、相談の体制と周知の方法の設計、研修実施計画書の作成、児童対象性暴力等対処規程と情報管理規程の作成、申請書と添付書類の作成に至るまで、しっかりまるっとサポートいたします。さらに、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。学習塾やスポーツクラブ、放課後児童クラブ、認可外保育施設で体制づくりにお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

さらに、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。学習塾やスポーツクラブ、放課後児童クラブ、認可外保育施設で認定の取得をお考えの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

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