都市型ハイヤー事業(一般乗用旅客自動車運送事業)の駐車場(車庫)に関する基準について

パーキングスペース

ハイヤーとは、営業所や車庫などを拠点に、要請に応じて配車し、利用客を運送する自動車のことを指します。要請に応じて利用客を運送するという点においてタクシーと同様であり、法律上はどちらも同じ「一般乗用旅客自動車運送事業」という区分に位置づけられています。

このうち都市型ハイヤーとは、都市部においておもに外国人の観光やビジネスでの利用を想定した完全予約制のハイヤーのことをいいますが、現状として、タクシーと都市型ハイヤー以外のハイヤー(その他ハイヤー)は総量規制の枠が一杯であり、新規開業が極めて困難な状況にあるため、一般乗用旅客自動車運送事業を新規ではじめる際は都市型ハイヤーを選択するのが現実的です。

とは言え、都市型ハイヤー事業を営むために必要となる国土交通大臣の許可を取得するためのハードルは極めて高く、難易度の高い手続きとして知られており、このうち駐車場(車庫)に関する基準も、都市型ハイヤー事業の新規参入を阻む障壁のひとつとなっています。

そこで本稿では、これから都市型ハイヤー事業をはじめようと検討されている皆さまに向けて、許可基準のうち、駐車場(以下、車庫)に関するものを抜粋し、要求される内容や重要なポイントについて、できる限り詳しく解説していきたいと思います。

都市型ハイヤーについて

ハイヤーもタクシーも、目的地まで利用客を運送する事業であるという点を同じくしますが、タクシーは街中を流し利用客を乗車させることができる一方で、ハイヤーは街中で利用客を乗車させることができず、営業所から完全予約制で配車する貸切乗用車という位置づけになります。

さらに都市型ハイヤーとは、都市部においておもに外国人の観光やビジネスでの利用を想定した完全予約制のハイヤーのことをいいます。運送の引受けが営業所のみにおいて行われる利用客の運送であって、以下のいずれかに該当するものを都市型ハイヤーとしています。

  • 1日を超える期間を単位として専属で常時運送を提供できることとするための契約(書面によるものに限る)に基づいて締結される運送契約にのみ行われるもの
  • 2時間以上の時間を単位として締結される運送契約のみにより行われるもの

その他ハイヤー

上記の要件に該当しないハイヤーは「その他ハイヤー」として都市型ハイヤーとは別に区分されることになりますが、都市部での営業のみが認められている都市型ハイヤーとは異なり、タクシーと同様の基準により、都市部以外での営業も可能とされています。

他方、その他ハイヤーには、特定地域と準特定地域の制度が適用されており、タクシー事業と同様に新規開業が極めて困難であることから、新規事業として参入を検討することは、あまり現実的ではありません。

許可基準

  • 事業計画が輸送の安全を確保するため適切なものであること
  • その他事業の遂行上適切な計画を有するものであること
  • 事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること

上記が道路運送法に規定する一般乗用旅客自動車運送事業の許可基準ですが、抽象的すぎてこれでは何を準備していいか分かりません。これに対して、各運輸局が公示している許可基準の項目が以下のとおりです。

  1. 営業区域
  2. 営業所
  3. 事業用自動車
  4. 車両数
  5. 自動車車庫
  6. 休憩、仮眠又は睡眠のための施設
  7. 管理運営体制
  8. 運転者
  9. 資金計画
  10. 法令遵守体制
  11. 損害賠償能力

上記各項目ごとにそれぞれ詳細な基準が設定されていますが、このうち本稿では、車庫に係る基準について解説しています。

駐車場基準(車庫)

事業としての性質上、一般乗用旅客自動車運送事業には、使用車両すべてが駐車することができる車庫を確保する必要があります。車庫が自己所有であることまでは求められておらず、賃借した車庫を使用することは特に問題ありません。

ただし、適切な使用権限があることを証明するため、契約上の使用目的が「駐車場」又は「車庫」になっていることを確認することができる書類を添付する必要があり、契約期間についても、自動更新される旨の文言がある場合を除き、許可取得日から1年以上の期間を取る必要があります。

また、車庫の前面道路が私道である場合は、その部分を一般乗用旅客自動車運送事業に使用する車両が通行することについて、書面による承諾を受ける必要があります。

その他にも、車庫についてはいくつかルールがあって、大まかには以下の事項が重要なポイントになります。

  • 営業所からの距離
  • 駐車場の規模(広さ)
  • 駐車場の用途
  • 駐車場の前面道路
  • 法令適合性

営業所からの距離

車庫は、原則として営業所に併設している必要がありますが、併設できない場合には、営業所から直線距離で2kmの範囲内にあり、かつ、運行管理をはじめとする管理が十分可能な場所に限り、営業所から離れた場所に設置することが認められています。

駐車場の規模

かつては車両の点検のためのスペースとして、車両と車両及び車両と車庫の間は、それぞれ50cm以上の間隔を確保する必要がありましたが、令和5年分11月にこの規定は撤廃され、現在は「営業所に配置する事業用自動車の全てを確実に収容できるものであること」というマイルドな規定に変わりました。この規定を解釈すると、車両が車庫の白枠内にさえ入っていれば特に問題ないことになります。

また、許可を取得するためには、最低でも5台〜10台の車両が必要であることから、駐車スペースについても、車両の台数以上分の車庫を準備する必要があります。

駐車場の用途

一般乗用旅客自動車運送事業で使用する車庫は、原則として他の用途に使用される部分と明確に区画されているものである必要があります。かつては「原則として」の文言がなく、明確な区分が絶対的な条件とされてきましたが、たとえば荷物置き場等と車庫を併用する場合であっても、必要台数分のスペースが確保されている場合は、車庫の基準をクリアすることができるようになりました。

また、車庫を使用しない時間帯(ハイヤーが出払っている間)においては、他の用途に車庫を使用することができるほか、他の施設の車庫として供用されている土地を、一般乗用旅客自動車運送事業用の車庫として使用できるようになりました。

前面道路

車庫の出入口に接する道路があまりにも狭い場合、車両がつっかえることにより、交通の安全を確保することかできなくなるリスクが考えられます。このため車庫の出入口前の道路(前面道路)の幅員についても規定が設けられており、具体的には、取り扱う車両の車幅に応じて、一方通行の場合には2.5m~3m以上、相互通行の場合では約5.5m~6.5m以上、もしくは国道であることが条件とされています。

幅員については、原則として、道路管理者が発行する道路幅員証明書を取得することにより行います。ただし、前面道路が国道である場合には、幅員証明書を取得する必要はありません。なお、前面道路が私道である場合の幅員は、私道から最初に出る公道の幅員が基準になります。

法令適合性

適合させるべき法令には、都市計画法、農地法、建築基準法及び消防法といったものが想定されています。営業所と同様に、一般乗用旅客自動車運送事業で使用する車庫を農地上に設置することはできませんが、営業所とは異なり、市街化調整区域であっても、車庫のみを設置することは可能です。

ただし、開発許可等の手続きを行う必要のあるケースも多いことから、地価が安いからといって、市街化調整区域に安易に手を出すことはあまりお薦めできません。なによりも利便性の面においても優れているとは思えません。

また、車庫に天井や隔壁その他の建築物を付属させるような場合には、建築物として建築基準法や消防法令の適用を受けるため、適法な構造を有するものでなければ、車庫として使用することはできません。

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