東京都大田区における特区民泊│特区民泊の認定(許可)申請について

多摩川の風景

国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例、いわゆる「特区民泊」(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)とは、外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるとともに、施設の使用方法に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業として政令で定める要件に該当する事業とされています。

令和5年8月現在、全国8自治体がこの「特区」に認定されていますが、首都圏内では東京都大田区と千葉市においてこの制度による取組みが実施されています。

他方、手軽な事業であるかのように錯覚されがちな民泊事業ですが、事業計画を甘く見積もると、宿泊客や周辺住民との間でトラブルを生じるケースも多いため、営業をはじめる際は十分な準備が必要です。

また、その事業形態も多岐にわたることから各形態間での混同が生じ、そもそもどの形態で事業をはじめたら良いのか分かりづらいというご意見も耳にすることがあります。

そこで本稿では、これから東京都大田区において民泊事業をはじめようと検討する皆さまに向けて、「民泊」として取り扱われる事業のうち、比較的参入しやすいとされている「特区民泊」に関する基礎知識と実際に必要となる手続きの詳細について分かりやすく解説していきたいと思います。

最下段には、大田区限定の申請代行プランについての案内があります。最後まで閲覧していただければ幸いです。

民泊とは

法令上特に「民泊」を定義する文言はありませんが、住宅の全部または一部を活用して宿泊サービスを提供することを称して「民泊サービス」とするのが一般的とされています。

旅館業法では、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を旅館業として定義しています。人を宿泊させることが旅館業の構成要件であることから、生活の本拠を置くアパートや間借り部屋を賃貸する行為は旅館業には該当しません。また、寝具を提供しない場合や、宿泊料を徴収しない場合も旅館業には該当しないことになります。

これに対して民泊とは、一般的な認識において自宅の一部や空き別荘、マンションの空室などを活用して宿泊サービスを提供するものとされています。さらにひとくくりに民泊とはいっても、実務上は以下の3タイプが混在しており、それぞれの形態に応じた手続きを行う必要があります。

事業形態手続き難易度
簡易宿所許可
特区民泊認定
住宅宿泊事業届出

上記のうち旅館業法の厳密な適用を受ける旅館業は簡易宿所のみであり、特区民泊及び住宅宿泊事業については旅館業とはされていません。

旅館業や民泊(特区民泊、住宅宿泊事業)の許可や届出を行わずに宿泊サービスの提供を行っている場合は旅館業法違反となります。

また、許可や届出を行っていても、その実態が法令の要件に逸脱している場合は行政指導の対象となり、場合によっては旅館業法違反となる可能性があるためご注意ください。

特区民泊

外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるとともに施設の使用方法に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業として政令で定める要件に該当する事業を国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(以下、特区民泊)といいます。

上記は旅館業法にある規定ですが、この定めにより、以下の条件にすべて該当する事業については特例が適用され、旅館業という枠から外れた民泊事業として運営することができるようになります。

  • 外国人旅客の滞在に適した施設であること
  • 賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるものであること
  • 施設の使用方法に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業であること
  • 区長の認定を受けること

なお、特区民泊は外国人旅客の滞在に適した施設を一定期間以上使用させる事業と規定してはいますが、対象施設については外国人だけではなく、日本人でも利用することができます。

他の民泊事業との違い

前述したように民泊といわれる事業は3タイプありますが、おもな違いは以下のとおりです。その規模や地域性によって選択し、それぞれの形態に応じた手続きを行う必要があります。

事業形態概要営業日最低床面積特徴
簡易宿所多数人で共用する構造及び設備を有するもの宿泊日数と年間営業日数が無制限3.3㎡/人以上住居専用地域での営業が不可
特区民泊外国人の滞在ニーズに対応したもの宿泊日数が最低2泊3日以上1居室原則25㎡以上運営可能地域が限定
住宅宿泊事業住宅に人を宿泊させるもの年間180日以内に限り営業可能3.3㎡/人以上住居専用地域での営業が可

住宅宿泊事業との相違点

特に混同されがちな「住宅宿泊事業」との相違点は以下のとおりです。

特区民泊住宅宿泊事業
根拠法国家戦略特別区域法住宅宿泊事業法
最低宿泊日数2泊3日以上なし
営業日数制限なし年間180日まで
立地「旅館・ホテル」の建築可能な用途地域「旅館・ホテル」の建築可能な用途地域
曜日制限なし小・中学校敷地周囲100m以内では、月曜日正午から金曜日正午まで実施不可(家主不在型の場合)
手続き認定申請届出
玄関帳場不要不要
消防法令宿泊所と同等の基準宿泊所と同等の基準
廃棄物の処理事業系ごみ事業系ごみ
対面説明必要必要
緊急時体制必要必要
近隣住民周知必要必要

大田区における特区民泊の特色

令和5年6月末時点における特区民泊の件数は以下のとおりです。民泊の先進地域とも言える大阪市とは大差がありますが、全国で2番目に特区民泊制度による民泊を受け入れているのが大田区です。

特区民泊の動向

また、大田区において特区民泊の認定を取得した施設、住宅宿泊事業の区条例適合証票を取得した施設、旅館業の許可を取得した施設は、宿泊者のサービス拡充に向けて、区の観光施策との連携として「大田区ウェルカムショップ」「大田区まちかど観光案内所」(外部サイト)への登録が可能になります。

さらに大田区では、特区民泊の効果を地域経済へと波及させ、更なる地域活性化の好循環へと結びつけるため、積極的に区内経済団体等との連携を図っています。

特定認定の申請手順

大田区における認定申請にあたっては、生活衛生課の窓口に図面等の資料を持参した上で、構造設備等の基準、近隣住民への説明の内容や範囲について、事前相談を行うことが求められています。担当者が不在または多忙のこともあるため、事前相談の際は必ず電話にて事前予約をするようにしてください。

認定申請前には、生活衛生課への事前相談のほか、消防署(滞在日数が3日から6日の特区滞在事業を行う場合は、火災時における避難安全性を確保するための措置として一定の要件を備える必要があります。)や建築審査課(03-5744-1388)等の関係部署との調整および近隣住民への説明を終えている必要があります。

特区民泊の申請前手続きについて


申請前手続きをすべて完了した後に認定申請を行い、申請手数料20,500円を納付します。その後書類審査を経て現地調査が実施され、基準に適合していることが確認されると認定となり、認定書が交付され、事業を開始することができるようになります。(区ホームページで施設名称及び所在地の一覧表を公表)

フローシート

★相談・申請窓口

生活衛生課
大田区大森西一丁目12番1号大森地域庁舎
電話:03-5764-0693
FAX:03-5764-0711
メールによるお問い合わせ

特定認定の申請方法

大田区において特区民泊事業を行おうとする者は、申請により、大田区長から、その事業が特区民泊としての要件に該当している旨の認定(特定認定)を受けることができます。この特定認定を受けた認定事業者が行う認定事業については、旅館業法の規定からは適用を除外されます。

特定認定を受けようとする者は、以下の事項を記載した申請書を区長に提出することにより申請を行います。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
  • 行おうとする事業の内容
  • 施設の名称及び所在地
  • 施設の構造設備の概要
  • 施設の各居室の床面積
  • 施設の各居室の設備及び器具の状況
  • 施設内の清潔保持の方法
  • 提供する外国人旅客の滞在に必要な役務の内容及び役務を提供するための体制
  • 特定認定を受けようとする者の電話番号その他の連絡先
  • 施設のホームページアドレス
  • 滞在者が日本国内に住所を有しない外国人であることを確認する方法
  • 施設の周辺地域の住民からの苦情及び問合せを受けるための連絡先

認定申請に必要となる書類

  • 認定申請書
  • 定款又は寄附行為及び登記事項証明書(法人)
  • 住民票の写し(個人)
  • 賃貸借契約及びこれに付随する契約に係る約款(日本語並びに役務の提供において使用する外国語)
  • 各階ごとの平面図に事業に供する居室とそれ以外の居室を明示(色分けや目印でも可)したもの
  • 事業の用に供する各居室の間取り、床面積、便所、浴室、台所、洗面所等の位置を明らかにした図面
  • 施設の周辺地域の住民に対する説明の方法及びその記録
  • 施設の周辺地域の住民からの苦情及び問合せに適切に対応するための体制及びその周知方法
  • 消防法令適合通知書

特定認定の基準

特定認定を受けるためには、以下の基準をすべて満たす必要があります。

  • 事業の用に供する施設の所在地が国家戦略特別区域にあること
  • 施設を使用させる期間が(2泊)3日から(9泊)10日までの範囲内において施設の所在地を管轄する都道府県(保健所設置市又は特別区の区域にある場合にあっては保健所設置市又は特別区)の条例で定める期間以上であること
  • 施設が構造設備基準をみたすこと
  • 施設の使用の開始時に清潔な居室が提供されること
  • 施設の使用方法に関する外国語を用いた案内、緊急時における外国語を用いた情報提供その他の外国人旅客の滞在に必要な役務が提供されること
  • 施設、事業者の事務所及び事業者から滞在者名簿の備付けに係る事務を受託した者の事務所に滞在者名簿が備えられ、これに滞在者の氏名、住所、職業並びに滞在者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは国籍及び旅券番号が記載されること
  • 特定認定の申請前に、施設の周辺地域の住民に対し、施設が特区民泊の用に供されるものであることについて、適切な説明が行われていること
  • 施設の周辺地域の住民からの苦情及び問合せについて、適切かつ迅速に処理が行われること
  • 事業の一部が旅館業に該当するものであること
★滞在者名簿

滞在者名簿には、滞在者の氏名、住所、職業並びに滞在者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは国籍及び旅券番号を記載し、その作成の日から3年間保存することが義務付けられています。

構造設備基準

施設の各居室は、以下の基準にすべて適合するものであることが求められています。

  • 一居室の床面積は25㎡以上であること(都道府県知事等が、外国人旅客の快適な滞在に支障がないと認めた場合を除く)
  • 出入口及び窓は鍵をかけることができるものであること
  • 出入口及び窓を除き、居室と他の居室、廊下等との境は壁造りであること
  • 適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備を有すること
  • 台所、浴室、便所及び洗面設備を有すること
  • 寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理のために必要な器具又は設備及び清掃のために必要な器具を有すること

住民に対する説明

特定認定の申請前には、以下の範囲に該当する施設の周辺地域の住民に対し、施設が特区民泊の用に供されるものであることについて、適切な説明が行われていることが要件とされています。

  • 事業を行おうとする施設がある建物に他の施設が存する場合、その施設の使用者すべて
  • 事業を行おうとする施設がある建物の敷地の境界線に接する敷地に存する建物の使用者
  • 事業を行おうとする施設がある建物の敷地の境界線から道路、公園等の施設を挟んで隣接する建物の敷地の境界線までの水平距離が原則として10m以下である建物の使用者
  • 私道を共有する等の生活圏を密にする範囲の敷地に存する建物の使用者
  • 事業を行おうとする施設が区分所有建物である場合、管理を主体として実施している団体(管理組合、管理会社等)
説明・周知の対象となる近隣住民

なお、マンションで特区民泊、住宅宿泊事業を実施する場合は、管理規約でこれらの事業が禁止されていないことや、管理組合でこれらの事業を禁止する決議がなされていないこと等の確認が必要になります。

説明の内容

周辺地域の住民に対して周知すべき事項は以下のとおりです。説明方法については、説明会の開催、個々の住民を訪問しての説明及び文書による説明などを含みますが、トラブル防止の観点から説明会や戸別訪問による説明に加えて書面でも説明することが望ましいものとされています。

また、説明書面については、A3版以上の大きさで施設の設置予定地の近隣住民から見易い場所に掲示する必要があります。

周知の内容

施設の周辺地域の住民に対する説明は、認定申請までに完了し、申請時の添付書類には事前説明の日時、対象範囲、方法等実施状況を記載するとともに、対象範囲が記載できない場合は地図等の添付により対象範囲を明示します。

標識(ステッカー)の掲示

大田区では、特区民泊の認定を受けた施設に対して、施設名称や緊急連絡先を記載できる以下のステッカー(大・小2種類)を配布し、施設の郵便受け、玄関のとびら付近等の公衆が認識しやすい位置に掲示するよう指導しています。

標識(大)
(標識・大)縦17cm×横12cm
標識(小)
(標識・小)縦5.5cm×横8cm

変更認定及び変更の届出

認定事業者は、特定認定の申請事項を変更しようとするときは、後述する軽微な変更であるときを除き、区長の認定を受ける必要があります。

変更の認定を受けようとする認定事業者は、あらかじめ、以下の事項を記載した申請書に変更に係る書類を添付して区長に提出することにより申請を行います。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
  • 特定認定の年月日
  • 変更の内容
  • 変更の理由
  • 変更しようとする年月日

また、実際に(後述する軽微な変更を含む)変更をしたときは、遅滞なく、その旨を区長に届け出るものとされています。

要するに変更前と変更後の2度にわたり手続きを行う必要があります。

軽微な変更

以下の事項についての変更は、軽微な変更に当たるものとして変更認定は不要となりますが、変更の日から10日以内に、変更届出書に変更に係る書類を添付して区長に提出する必要があります。

変更の内容届出書の記載事項
1.施設の名称又は所在地の変更(地域の名称の変更又は地番の変更に伴う変更に限る)
2.認定事業者の電話番号その他の連絡先の変更

3.施設のホームページアドレスの変更
①氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
②特定認定の年月日
③変更の内容
④変更の理由
⑤変更の年月日

廃止の届出

認定事業者は、認定事業を廃止したときは、その日から10日以内に、以下の事項を記載した届出書を区長に提出する必要があります。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
  • 特定認定の年月日
  • 廃止の理由
  • 廃止の年月日
★特定認定の取消し

区長は、以下のいずれかに該当するときは、特定認定を取り消すことができるものとされています。

  • 特定事業として国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業を定めないこととする旨の認定区域計画の変更の認定があったとき
  • 特定事業として国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業を定めた認定区域計画の内閣総理大臣認定が取り消されたとき
  • 認定事業者が行う認定事業が要件に該当しなくなったと認めるとき
  • 認定事業者が不正の手段により特定認定を受けたとき
  • 認定事業者が変更認定申請又は変更の届出を怠たったとき
  • 区長が認定事業の実施状況について報告を求めた場合において、認定事業者が報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき

特区民泊事業認定申請サポート

弊所では、大阪府を中心とした国家戦略特区全域にわたり、特区民泊事業認定申請手続きの代行を承(うけたまわ)っております。民泊については首都圏もがっちりと対応範囲内で、当地の行政書士とも密に連携した上、面倒な書類の作成から、関連機関との調整並びに申請及び立入調査の同行に至るまで、しっかりとサポートいたします。下記は市場価格を反映して設定した報酬額ですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。大田区における特区民泊事業認定申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

新規認定申請220,000円~
変更認定申請110,000円~
変更届77 ,000円~
※税込み
★注意点

弊所は先払い原則、不許可の場合は書類取得等に要した実費を除く全額返還のお約束で業務を請け負っております。最近は支払いが数ヶ月にわたって滞る事案もあり、相応の措置を採らざるを得ないケースも発生しております。大変恐縮ではありますが、この点のみご了承いただければ幸いです。

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