警備業の変更届と書換申請について
警備業は企業、財産、情報といった価値ある対象のセキュリティを担う重要な事業であるため、警備業者として認定を受けるためには厳しいハードルが用意されています。これは既に警備業を営んでいる事業者の皆さまであればもはや常識といえる事実ですが、その一方で、認定の際に申請した事項に変更が生じた場合に変更届や書換申請を行う義務があることについては案外見落としがちであるように感じています。
定められた期間内(原則として変更があってから10日以内)に変更届や書換申請の提出ができなかった場合は、後述する「遅延理由書」を提出しなければならなくなるほか、警備業認定の取消事由に該当してしまうケースもあるので要注意です。
そこで本稿では、警備業の変更届や書換え申請といった手続きが必要となるケースや詳しい届出の方法などについて一緒に確認していきたいと思います。
目 次
申請事項の変更
警備業の認定申請を行う際は、提出する申請書の中に以下の事項を記載するものとされています。
- 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
- 主たる営業所その他の営業所の名称、所在地及び当該営業所において取り扱う警備業務の区分
- 営業所ごと及び当該営業所において取り扱う警備業務の区分ごとに、選任する警備員指導教育責任者の氏名及び住所
- 役員の氏名及び住所(法人)
これらはいずれも警備業者としての要件に関わる事項であるため、変更が生じた場合には、所轄警察署(公安委員会)に対して届出を行う必要があります。
警備業認定証の記載事項
警備業の認定を受けると、所轄警察署(公安委員会)から認定警備業者の住所及び氏名(名称)を記載した警備業認定証が交付されます。
警備業認定証は警備業者としての身分を証明し、かつ、依頼者に対して信用を担保する証書であるため、警備業者は、認定証をその主たる営業所の見やすい場所に掲示しなければならないものとされています。
その記載内容は常に適正なものである必要があるため、認定証に記載されている警備業者の住所及び氏名(名称)について変更があった場合は、「変更届」のほかに、認定証を書き換える「書換申請」が必要になります。
したがって、上記項目以外の項目に変更が生じた場合は「変更届」、上記項目に変更が生じた場合は「変更届」と併せて、「書換申請」を行うことになります。
なお、認定警備業者であった個人が法人として許可を切り替えようとする場合(法人成り)や、警備業務の区分を追加しようとする際には、変更届や書換申請ではなく、新たに警備業の認定を受ける必要があります。
手続き | 必要となるケース |
---|---|
変更届 | 法人代表者の氏名の変更、役員の変更、役員の氏名又は住所の変更、主たる営業所その他の営業所の名称の変更、取り扱う警備業務の区分の変更、警備員指導教育責任者の氏名又は住所 |
書換申請 | 名称もしくは氏名の変更 住所の変更 |
新規許可申請 | 個人許可から法人許可への切替え、警備業務の区分変更 |
届出を行うべき期間
変更届については変更すべき事由が生じてから10日以内に届け出る必要があります。ただし、登記事項証明書を取得しなければならない場合には、登記事由が発生した日から20日以内までに延長されます。登記の手続きを間にはさむとスケジュールが過密になることが考えられるため、移転前に変更届の手続きを行うことも視野に入れて計画を進めるようにしましょう。
なお、変更届出書及び書換申請書の提出先は営業所を管轄する警察署の保安係です。提出した届出書や申請書は警察署を経由して公安委員会に届け出るという仕組みになっています。営業所を移転する場合、提出先は移転先を管轄する警察署ではなく、移転元の警察署である点についてはご注意ください。
変更届の手続き
以下の事項について変更がある場合には書換申請こそ不要ですが、変更届を提出する必要があります。なお、変更届のみを行う場合には手数料は発生しません。
- 代表者の氏名
- 役員の変更
- 役員の氏名又は住所
- 主たる営業所その他の営業所の名称、所在地又は当該営業所において取り扱う警備業務の区分
- 警備員指導教育責任者の氏名又は住所
書換申請の手続き
書換申請は必ず変更届と同時に手続きを行います。また、変更届のみであれば手数料は不要ですが、認定証の書換申請を行う場合には、書換申請手数料の2,200円を納付することが必要になります。
添付書類
変更届、書換申請の際には届出書又は申請書を提出する必要がありますが、変更の事実を証明するため、併せて以下の書類を添付する必要があります。
変更の事由 | 必要書類 |
---|---|
個人事業主の氏名や住所の変更 | 戸籍謄本や住民票 |
法人の名称や所在地、代表者、代表者の住所、役員の変更 | 法人の履歴事項全部証明書 |
役員や指導教育責任者の変更 | 対象者の住民票、身分証明書、誓約書及び略歴書 |
営業所の移転又は増設 | 新たな営業所に関する賃貸借契約書の写し等 |
遅延理由書
警備業に限ったことではありませんが、変更の届出を怠っていたことを行政機関から指摘された上、遅延理由書の提出を求められてから慌てて弊所まで相談に来られるケースがあります。
この遅延理由書を所定の様式にしている都道府県は少ないでしょうから、文書はすべて営業者側が用意することになります。反省文や始末書ではないので、届出が遅延した理由について簡潔に述べ、日付と営業者の住所氏名を記載して提出します。
認定証の再交付申請
認定証は主たる営業所の見やすい場所に掲示する義務があるため本来はありえないのですが、稀に認定証を紛失してしまったというケースがあります。
そもそも認定証を掲示しないまま警備業を続けていると、運転免許証を失ったまま自動車を運転することと同様に、それだけで違法状態となってしまいます。
このような場合は、認定証の交付を受けた警察署(移転後に紛失した場合には営業所の所在地を管轄する警察署)に対して認定証を再交付するための申請を行う必要があります。
再交付申請は営業者本人であることを確認することのできる運転免許証などを持参し、再交付申請書を提出することにより行います。また、申請手数料として2,000円を納付します。
認定証の返納届
警備業を廃止した場合のほか、たとえば個人で営んでいた警備業を法人経営に切り替えようとする場合、既に保有している認定証を返納する必要があります。この手続きについても忘れがちになるようですが、任意ではなく義務となっているため必ず届け出るようにしましょう。
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