質屋営業における保管設備の基準について
質物を保管する設備の規模及び構造は、火災、盗難等の予防という観点から、質屋営業の根幹をなす極めて重要な事項とされています。このため、各自治体(公安委員会)においては保管設備に関する基準が定められており、管轄下にある質屋は、この基準に従って質物の保管設備を設ける必要があります。
質屋営業許可を取得しようとする際には、この基準が大きなハードルとなって立ち塞がることになるため、本稿においては、大阪府における「質物保管設備の基準に関する規則」を下敷きとし、その基準について詳しく解説していきたいと思います。
なお、各都道府県ごとに定められる基準となるため、本稿はあくまでも参考にとどめ、実際に申請を行う際は、必ず所管の警察署に対して確認を行うようにして下さい。
保管設備
質屋営業における保管設備の規模及び構造は、営業の内容に応じて適正なものでなければなりません。保管設備は、営業所と同一の敷地内に設ける必要がありますが、やむを得ない場合は、近接する他の敷地内に設けることができます。
防火設備
保管設備の主要構造部は、次のいずれかに該当する構造でなければなりません。
- 建築基準法に定める耐火構造
- 土蔵造
- 公安委員会がこれらと同等以上の耐火性能を有すると認めたもの
これに加え、保管設備の開口部には、特別防火設備(甲種防火戸)又は防火設備(乙種防火戸)である防火戸を設ける必要があります。
盗難予防設備
保管設備の開口部には、鉄製扉等盗難防止に有効な設備及び堅ろうな施錠設備を設けなければなりません。また、保管設備には、営業所その他に同様の装置があるものを除き、防犯上有効な非常ベルその他の非常警報装置を設ける必要があります。
防湿設備・防鼠設備
保管設備の内部には、防湿上の措置を講じ、又は設備を設け、その出入口以外の開口部には、ねずみの侵入を防止するための設備を設けることが必要とされています。
仮保管設備
現に質屋営業の許可を受けて質屋営業を行っている者が、保管設備の補修、建替え等のため、当分の間、別に保管設備を設けようとする場合における当該保管設備を「仮保管設備」といいます。
仮保管設備については、あくまでも仮の保管設備であることから、以下のように、正規の保管設備に関するものよりも若干緩和された基準が適用されています。これらの特例は、仮保管設備の使用を開始してから2年間に限り認められている時限措置となっています。
仮保管設備 | 必ずしも営業所と同一の敷地内に設ける必要はない |
防火設備 | 仮保管設備の出入口以外の開口部については、仮保管設備に付随して火災警報装置を設置しているなど防火上の措置が講じられている場合には不要 |
盗難予防設備 | 施錠設備は必要であるが、「堅ろうな」施錠設備である必要はない |
防鼠設備 | 不要 |
まとめ
各警察本部のサイトに添付されている申請書を確認すると、一見して簡単な手続きであるかのように錯覚されがちな質屋営業許可申請ですが、実務上においては、本稿で紹介した保管設備の基準に基づく「構造概要書」を添付する必要があるなど、実は非常に厄介な手続きとなっています。
申請に至るまでの間には、何度も所轄署に足を運んで協議を重ねる必要があり、また、そもそもこの申請そのものが全国的に件数の多い手続きではないため、担当する警察官が必ずしもこの分野に精通していないなどの理由から、申請者と担当者がともに頭を抱え込んでしまうことも珍しくはありません。
施設の構造は、変更しようにも莫大な費用がかかってしまうため、予備知識を得ず気楽に取り組むと、後々になって取り返しのつかない損失を被ることも考えられます。
以上のようなことから、質屋営業許可を申請する際は、綿密な事業計画のもと、建築や法律の各分野の専門家とも連携し、進めていくことを強くお薦めいたします。