建築基準法上の耐火構造について

耐火住宅

耐火構造とは、建築基準法施行令で定める技術的基準に適合する耐火性能を持つ建築物の構造を指します。耐火性能は、建物用途や規模等により、建築物の部分ごとに要求されていて、30分から3時間(180分)まで細かく定められています。

また、告示に例示される構造以外の構造を用いて耐火性能が必要な建築物を建築する場合には、国土交通省が指定した性能評価機関で性能が満足することを試験等の結果から確認し、国土交通大臣の認定を取得する必要があります。

おもに建物が密集する都市部では、都市計画法において防火地域が定められており、この地域内における所定の建築物については、火災発生時の被害を最小限に抑えるために、耐火性能を有する建築物である必要があリます

耐力壁と非耐力壁

耐力壁とは、建築物において、地震や風などの水平荷重(横からの力)に抵抗する能力を有する壁のことを指します。逆に、構造的に固定されていない壁を、非耐力壁と呼んでいます。また、木造建築物においては、耐力壁に類似する、固定方法が不完全で抵抗力の低い間仕切壁などを準耐力壁と呼ぶことがあります。

耐力壁であるか非耐力壁であるかは、耐火性能について触れる際は重要なポイントとなりますので、まずはしっかりと理解するようにしましょう。

耐火性能に関する技術的基準

次の建築物の部分については、通常の火災による火熱がそれぞれ表に掲げる時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであることが要求されています。

建築物の部分最上階及び最上階から数えた階数が2以上で4以内の階最上階から数えた階数が5以上で14以内の階最上階から数えた階数が15以上の階
間仕切壁(耐力壁に限る)1時間2時間2時間
外壁(耐力壁に限る) 1時間2時間2時間
1時間2時間3時間
1時間2時間2時間
はり1時間2時間3時間
屋根30分間30分間30分間
階段30分間30分間30分間
壁及び床通常の火災による火熱が1時間(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分にあっては30分間)加えられた場合に、当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること
外壁及び屋根屋内において発生する通常の火災による火熱が1時間(非耐力壁である外壁の延焼のおそれのある部分以外の部分及び屋根にあっては30分間)加えられた場合に、屋外に火炎を出す原因となるき裂その他の損傷を生じないものであること

昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の8分の1以下のものは、階数に算入されないため、これらの屋上部分がある建築物の部分の最上階は、当該屋上部分の直下階となります。この場合、当該屋上部分は、最上階の部分の時間と同一の時間によるものとして取り扱われます。

また、表における階数の算定については、上記の規定にかかわらず、地階の部分の階数は、すべて算入するものとして取り扱われます。

耐火建築物の主要構造部

耐火建築物の主要構造部は、次の①及び②(外壁以外の主要構造部については①)の基準に適合するものであることについて、耐火性能検証法により確認されたものであること、又は基準に適合するものとして国土交通大臣の認定を受けたものであることが要求されています。

  1. 主要構造部ごとに当該建築物の屋内において発生が予測される火災による火熱が加えられた場合に、当該主要構造部が次に掲げる要件を満たしていること
    • 耐力壁である壁、柱、床、はり、屋根及び階段については、当該建築物の自重及び積載荷重(特定行政庁が指定する多雪区域における建築物の主要構造部については、自重、積載荷重及び積雪荷重)により、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること
    • 壁及び床については、当該壁及び床の加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)の温度が可燃物燃焼温度(当該面が面する室において、国土交通大臣が定める基準に従い、内装の仕上げを不燃材料ですることその他これに準ずる措置が講じられている場合にあっては、国土交通大臣が別に定める温度)以上に上昇しないものであること
    • 外壁及び屋根については、屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものであること
  2. 外壁が、当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が1時間(延焼のおそれのある部分以外の部分にあっては30分間)加えられた場合に、次の要件を満たしていること
    • 耐力壁である外壁については、当該外壁に当該建築物の自重及び積載荷重により、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること
    • 外壁の当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)の温度が可燃物燃焼温度(当該面が面する室において、国土交通大臣が定める基準に従い、内装の仕上げを不燃材料ですることその他これに準ずる措置が講じられている場合にあっては、国土交通大臣が別に定める温度)以上に上昇しないものであること

準耐火性能に関する技術的基準

準耐火建築物とは、耐火建築物の条件に準じた耐火性能(準耐火性能)がある建築物のことを指します。建築基準法では、耐火建築物以外の建築物のうち、その主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)が準耐火性能を満たし、かつ、延焼の恐れのある開口部(窓やドア)に防火戸など、火災を遮る設備を有する建築物のことをいいます。

次の建築物の部分については、当該部分に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後それぞれ表に掲げる時間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであることが必要とされています。

間仕切壁(耐力壁)45分間
外壁(耐力壁)45分間
柱・床・はり45分間
屋根(軒裏を除く)30分間
階段30分間
壁、床及び軒裏(外壁によって小屋裏又は天井裏と防火上有効に遮られているものを除く)通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後45分間(非耐力壁である外壁及び軒裏(いずれも延焼のおそれのある部分以外の部分に限る)にあっては30分間)当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること
外壁及び屋根屋内において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後45分間(非耐力壁である外壁(延焼のおそれのある部分以外の部分に限る)及び屋根にあっては30分間)屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものであること

防火性能に関する技術的基準

防火性能とは、建築物の周囲で通常の火災が発生した場合に、延焼を抑制するために必要とされる性能のことで、建築基準法施行令では、「非損傷性」と「遮熱性」の2点を防火性能の条件としています。

耐力壁である外壁建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後30分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること(非損傷性)
外壁及び軒裏建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後30分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること(遮熱性)

不燃性能及びその技術的基準

不燃性能とは、建築材料に求められる性能のひとつであり、この性能を有する建築材料を、不燃材料と呼んでいます。

不燃性能の技術的水準に適合する建築材料には、上から不燃材料、準不燃材料、難燃材料の3ランクが存在し、建築物を準耐火構造や防火構造にする場合には、一定の部位に不燃材料を使う必要があります。

建築材料に、通常の火災による火熱が加えられた場合に、次の要件を満たしていることが不燃材料としての条件とされています。

加熱開始後20分間、燃焼しないものであること
加熱開始後20分間、防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること
加熱開始後20分間、避難上有害な煙又はガスを発生しないものであること(建築物の外部の仕上げに用いるものを除く)

具体的に、以下の建築材料が不燃材料として例示されていますが、こちらに例示されていない材料であっても、上記の条件を満たしていることの確認を指定性能評価機関から受けた上で国土交通大臣から認可されたものについては、不燃材料として使用することができるように取り扱われています。

  • コンクリート
  • れんが
  • 陶磁器質
  • タイル
  • 繊維強化セメント板
  • 厚さが3㎜以上のガラス
  • 繊維混入セメント板
  • 厚さが5㎜以上の繊維混入ケイ酸カルシウム
  • 板鉄鋼アルミニウム金属板
  • ガラス
  • モルタル
  • しっくい
  • 厚さが12㎜以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.6㎜以下のものに限る)
  • ロックウールグラスウール板

まとめ

金融機関や質屋営業をはじめ、入居する建築物に対して耐火性能を求める手続きは、実は数多く存在しています。そうでなくても、これらの基準が人命や財産を保護するために必要な規制であることを踏まえると、万人がもっと興味を持ってしかるべき事項のように思います。

ただし、重要であればあるほど、これらを規定する法令等の適用やその解釈については、難解かつ複雑な仕組みが設けられています。

備えあれば憂いなしですが、ご自身が入居する建築物についても、専門家を交え、改めて見直ししてみてはいかかでしょうか。

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