小売電気事業者の登録│電力小売事業への参入方法について

住宅とコンセントプラグ

小売電気事業とは、一般の需要に応じて電気を供給する事業(一般送配電事業、特定送配電事業及び発電事業に該当する部分を除く)のことを指します。

電気事業法等の一部が改正され、小売電気事業への参入が全面的に自由化されて余年、現在は経済産業大臣の登録を受けることにより、個人・法人の別を問わず、誰でも自由に電気の小売事業が行えるようになっています。

そこで本稿においては、新たに小売電気事業への参入を検討される皆さまのために、電気事業法をベースとして、その概要や手続方法について詳しく解説していきたいと思います。

小売電気事業者とは

冒頭に記述したとおり、小売電気事業者とは、小売電気事業を営むために経済産業大臣の登録を受けた者をいいます。また、平成28年3月以前より電気の小売を行っていた地域電力10社以外の新規参入事業者を指して、「新電力」と呼称することがあります。

電力供給の仕組み

電力供給の仕組み

電力小売全面自由化後も、物理的な電力供給の仕組みに変更はなく、電力は上図の経路をたどって、消費者に供給されています。

発電部門

発電部門とは、水力、火力、原子力、太陽光、風力、地熱などの発電所を運営し、電気を作る部門です。小売部門のみならず、発電部門においても、すでに自由参入が認められています。

送配電部門

送配電部門では、発電所から消費者までつながる送電線・配電線などの送配電ネットワークを管理し、物理的に電気を消費者に届ける役割を担います。また、ネットワーク全体で電力のバランス(周波数等)を調整し、停電を防ぎ、電気の安定供給を守る要となるのもこの部門です。

送配電部門は、安定供給を担う重要なポジションであるため、電力小売全面自由化後も引き続き、政府が許可した企業(東京電力、関西電力等)のみが担当します。このため、どの小売事業者から電気を購入しても、これまでと同じ送配電ネットワークを使って電気は届けられるので、電気の品質や信頼性に変わりはありません。

小売部門

小売部門では、消費者と直接的な取引を行い、料金メニューの設定や、契約手続などのサービスを行います。また、消費者が必要とするだけの電力を発電部門から調達するのもこの部門の役割です。

なお、電気の特性上、電気の需要(消費)と供給(発電)は、送配電ネットワーク全体で一致させないと、ネットワーク全体の電力供給が不安定になってしまいます。 このため、仮に小売部門の事業者が、契約している消費者が必要とするだけの電力を調達できなかった場合には、送配電部門の事業者がそれを補い、消費者に電力が届くように調整がなされます。

電力広域的運営推進機関

電力広域的運営推進機関

電力広域的運営推進機関(OCCTO)とは、電源の広域的な活用に必要な送配電網の整備を進めるとともに、日本における電力の需給調整機能を強化することを目的として設立された、すべての電気事業者を会員とする強制加入団体です。

広域機関は、電気の需給状況を監視し、需給状況が悪化した会員に対する電力の融通を他の会員に指示するなどの役割を担います。(下図)

電力広域的運営推進機関の役割

小売電気事業者の登録にあたっては、申請に先立って、まずは広域機関の会員になる必要があります。広域機関への加入手続きは、以下のサイト上で行うことができます。

このほかにも、各種コードの取得やスイッチング支援システムの利用手続き、電気事業法や託送供給等約款に基づく「供給計画」と「需要調達計画」の受付先となるなど、広域機関は、小売電気事業者登録に関しても重要な役割を担っています。

託送供給契約の締結

小売電気事業者登録の申請後は、各エリアの一般送配電事業者との間で、託送供給契約を締結する必要があります。一般送配電事業者は、小売電気事業者に対し、「30分電力量提供」「確定使用量の通知」「発電30分電力量提供」といったデータを直接提供する義務があります。このため、申請者は、各種データ提供を受けるために必要となる「託送関連データ提供システム」の申請を、各一般送配電事業者に対し行う必要があります。

なお、これらの手続きに関する詳細は、各エリアの一般送配電事業者の公式サイトにてご確認ください。

日本卸電力取引所(JEPX)

日本卸電力取引所とは、電力の現物取引および先渡取引などを仲介する取引所のことです。小売電気事業の自由化によって発電、送電、小売の3事業が独立した事業となったため、相対契約あるいは自己保有の電源を補完するための手段として、事業者の供給量と需要量の季節ごと時間ごとに起こる電力の過不足分を市場で販売・調達できるシステムとなっています。

加入は任意ですが、電力売買を行うために日本卸電力取引所を利用する場合、取引会員の加入申請を行う必要があります。

登録の申請

登録を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を資源エネルギー庁に提出して申請を行います。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  • 主たる営業所その他の営業所の名称及び所在地
  • 小売供給の相手方の電気の需要に応ずるために必要と見込まれる供給能力の確保に関する事項
  • 事業開始の予定年月日
  • 電話番号、電子メールアドレスその他の連絡先
  • その行う小売電気事業以外の事業の概要

登録拒否事由

登録申請には特に資格などは必要ありませんが、申請者が次のいずれかの事由に該当する場合は、小売電気事業者の登録を受けることはできません。

  • 電気事業法又は電気事業法に基づく命令の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 登録を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない者
  • 法人であって、その役員のうちに上記のいずれかに該当する者があるもの
  • 小売供給の相手方の電気の需要に応ずるために必要な供給能力を確保できる見込みがないと認められる者その他の電気の使用者の利益の保護のために適切でないと認められる者
  • 申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているとき

供給能力基準

上記の「小売供給の相手方の電気の需要に応ずるために必要な供給能力を確保できる見込みがないと認められる者その他の電気の使用者の利益の保護のために適切でないと認められる者」とは、具体的に以下に該当する者をいいます。

  • 見込まれる小売供給の相手方の「最大需要電力(電気の需要の最大値)」を適切に見込んでいない場合
  • 出力変動を考慮せずに太陽電池発電設備または風力発電設備を供給能力として見込んでいる場合
  • 卸電力取引市場の過去の約定量等に照らし、市場からの調達量を供給能力として過大に見込んでいる場合
  • その他の理由で、最大需要電力に応じるための必要な供給能力を確保できる見込みがない場合
  • 小売電気事業を適正かつ確実に遂行できる見込みがない場合
  • 小売供給の業務方法または小売供給に係る料金その他の供給条件に関する小売供給の相手方からの苦情や問合せを適切かつ迅速に処理できる体制が整備される見込みがない場合

申請に必要となる書類

  • 小売電気事業登録申請書
  • 登録拒否事由に該当しない旨の誓約書
  • 小売電気事業遂行体制説明書
  • 苦情等処理体制説明書
  • 定款、登記事項証明書、最近の事業年度末の貸借対照表及び損益計算書並びに役員の履歴書(法人)
  • 定款及び役員となるべき者の履歴書(法人の発起人)
  • 小売電気事業を営むことについての議決に係る議会の会議録の写し(地方公共団体)
  • 申請者が推進機関に加入する手続をとったことを証する書類(申請者が推進機関の会員でない場合)
  • 他の者からその小売電気事業の用に供するための電気の供給を受ける場合における当該電気の供給に係る契約書の写しその他の必要と認める書類

変更登録等

小売電気事業者は、小売供給の相手方の電気の需要に応ずるために必要と見込まれる供給能力の確保に関する事項を変更しようとするときは、以下のような軽微な変更を行う場合を除き、経済産業大臣の変更登録を受ける必要があります。

  • 変更後の供給能力として見込まれる値(変更がない場合にあっては直近供給能力値)を変更後の最大需要電力として見込まれる値(変更がない場合にあっては直近需要電力値)で除した値が減少しないもの
  • 変更後供給能力値を変更後最大電力値で除した値が減少するものであって、当該値が1.08以上であり、かつ、変更後供給能力値のうち、卸電力取引市場からの調達に係る値を除いた値が変更後最大電力値以上であるもの

ただし、次のいずれかに該当する変更については、通常どおり、経済産業大臣の変更登録を受ける必要があります。

  • 変更後最大電力値が150万kw以上増加し、又は変更後最大電力値が直近需要電力値の2倍を超えるもの
  • 変更後供給能力値が150万kw以上減少し、又は変更後供給能力値が直近供給能力値の2分の1を下回るもの
  • 沖縄県及び離島(沖縄県に属するものを除く)の需要に応ずるために必要な供給能力の確保に関するもの

直近需要電力値とは、直近で登録された最大需要電力の値をいい、直近供給能力値とは、直近で登録された供給能力の値をいいます。

変更の届出

小売電気事業者は、小売供給の相手方の電気の需要に応ずるために必要と見込まれる供給能力の確保に関する事項を除く届出事項に変更があったとき、又は上記の軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出る必要があります。

小売電気事業者は、小売電気事業変更届出書に、変更を必要とする理由を記載した書類を添えて、経済産業大臣に提出します。

事業の休止・廃止

小売電気事業者は、その事業を休止し、又は廃止したときは、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出る必要があります。小売電気事業者たる法人が合併以外の事由により解散したときは、その清算人(解散が破産手続開始の決定による場合にあっては破産管財人)がこの届出を行います。

また、その事業を休止し、又は廃止しようとするときは、あらかじめ、その小売供給の相手方に対し、その旨を周知させることも必要とされています。小売電気事業者は、小売電気事業休止(廃止)届出書に、その小売供給の相手方に対し周知させるために行った措置の内容を記載した書類及び事業の休止(廃止)の理由を添えて、経済産業大臣に提出します。

登録の取消し・抹消

経済産業大臣は、小売電気事業者が次のいずれかに該当するときは、登録を取り消すことができるものとされています。

  • 電気事業法又は電気事業法に基づく命令若しくは処分に違反した場合において、公共の利益を阻害すると認めるとき
  • 不正の手段により登録又は変更登録を受けたとき
  • 申請者又は法人の役員が、電気事業法又は電気事業法に基づく命令の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者に該当するに至ったとき

また経済産業大臣は、小売電気事業の廃止若しくは解散の届出があったとき、又は登録の取消しをしたときは、当該小売電気事業者の登録を抹消します。

小売電気事業者登録申請サポート

弊所では、兵庫大阪京都全域にわたり、小売電気事業者登録申請の代行を取り扱っております。面倒な書類作成や各種機関とのやり取りまで、しっかりとサポートいたします。下記の報酬は、市場価格を反映したものですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」です。さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応には自信があります。小売電気事業者の登録申請でお困りの際は、ぜひ弊所までお気軽にご相談ください。

小売電気事業者新規登録495,000円
小売電気事業者変更登録220,000円
変更の届出33,000円
※税込み

事務所の最新情報をお届けします