日本卸電力取引所(JEPX)と取引会員の加入申請について
日本卸電力取引所(JEPX:外部サイト)とは、加入者間における電力の現物取引及び先渡取引等を仲介する取引所のことです。小売電気事業の自由化によって発電、送電、小売の3事業が独立した事業となったため、相対契約あるいは自己保有の電源を補完するための手段として、事業者の供給量と需要量の季節ごと時間ごとに起こる電力の過不足分を市場で販売・調達できるシステムとなっています。
加入は任意ですが、インバランスリスク対応において電力売買を行うために日本卸電力取引所を利用する場合は、取引会員の加入申請を行う必要があります。
そこで本稿では、新たに日本卸電力取引所(JEPX)の取引会員の加入申請を検討される皆さまのために、日本卸電力取引所の概要や、加入するための手続方法について、詳しく解説していきたいと思います。
インバランスリスク
インバランス(imbalance)とは、本来「不安定」や「不均衡」を意味する単語であり、電気事業ではこれを「電力の需要量(使用される電力量)と供給量の差分」を指す言葉として使用しています。インバランス料金とは、この差分として発生した料金をいいます。
電力には、そもそも需要量と供給量とは同量でなければならないという大前提がありますが、需給計画に対し実績との間にズレが生ずることは珍しくないため、当初からインバランスが発生することも計画に組み入れて、不測の事態に備える必要があります。(計画値同時同量制度)
需要(発電)計画と需要(発電)実績との間に差がなければインバランス料金は発生しませんが、電気の需要量を正確に予測することは難しく、発電量(太陽光発電等の再生可能エネルギー)についても天候等の諸条件に影響を受けることから、差分の発生を完全に回避することは困難です。
インバランスリスクとは、事前に想定して準備していたインバランス料金と、実際に請求されたインバランス料金との間にズレが生ずることにより発生する事業の安定性を脅かすリスクのことを言います。
インバランスと日本卸電力取引所
インバランス制度では、計画と実績との間に発生した需要と供給の差分について、一般送配電事業者が不足分を補填し又は余剰分を買い取ることで調整を行い、その調整コストをインバランス料金として算出して清算します。
取引会員の加入こそ任意ですが、日本卸電力取引所は計画と実績の差分を電力の売買により調整する機能も有するため、インバランスリスクに対応するためには、日本卸電力取引所の活用は大きな選択肢のひとつです。
需要(発電)計画 | 小売電気事業者等が、あらかじめ一般送配電事業者に提出する、電力の需要量や発電量を想定した計画値 |
需要(発電)実績 | 実際に対象地点で使用・発電された需要量や発電量の実績 |
スポット市場と1時間前市場
日本卸電力取引所には、「スポット市場」と「1時間前市場」の市場があり、両市場ともに24時間を30分単位に区切った48商品の取引を行います。
小売電気事業者等は、市場を選択して過不足が生じた電力の購入量や売却量を確認して入札しますが、これにより、計画と実績の調整が可能になります。
スポット市場(一日前市場) | 翌日の24時間分を取引する市場 | 24時間を30分単位に区切った48商品の取引 |
1時間前市場(当日市場) | 毎日17時から翌日の取引を行う市場(各商品について受渡しの1時間前まで取引可能) | 24時間を30分単位に区切った48商品の取引(商品(30分)ごとの取引) |
また、そもそもインバランス料金の単価は、一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則(第27条)に基づき、日本卸電力取引所の市場価格に連動し、「不足インバランス料金(計画に対する実績の不足分を一般送配電事業者が補填した費用)」と余剰インバランス料金(計画に対する実績の余剰分を一般送配電事業者が買取りした費用)の別に、30分ごとで決まるため、インバランス料金は、各市場の「加重平均値」から多大な影響を受けます。
★加重平均値
加重平均値とは、一般的な平均を求める方法では値が偏ってしまう場合に、数値の重みを考慮した算出方法により得られる平均値を言います。
申請方法
日本卸電力取引所の取引会員への加入を希望する者は、まずは取引所事務局との間で、事前相談を行う必要があります。
日本卸電力取引所事務局
TEL:03-5765-5477
日本卸電力取引所の取引会員への加入申請は、以下の書類を日本卸電力取引所に提出することにより行います。
- 取引会員加入申込書(様式101)及びその写し
- 取引会員適格誓約書(様式102)
- 定款
- 登記簿謄本・抄本又は登記事項証明書
- 印鑑証明書
- 純資産額調書(様式105)
- 上記純資産額確認用の貸借対照表および損益計算書
- 取引会員代表者届出書(様式103)
- 取引ユーザ登録申請書(様式104)
- 受渡契約の登録申請書(様式031-2)
- 取引に関する依頼証明書(様式106-1)(受渡契約の登録申請書で自社以外の契約を届け出る場合)
なお、入会費に11万円(税込み)、会費として36万円(12か月)の経費がかかるという点は注意が必要になります。
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