医療機器修理業許可について

歯科医療機器を操作する手

医療機器の修理は、製造と同等の極めて高い専門的技術力が要求されるため、薬機法においては、修理を行おうとする事業者に厳格な基準を設け、これを運用してその適正化を図っています。

本稿では、医療機器修理業を適正に営もうとされている事業者を対象に、医薬品医療機器等法に基づく法的基礎知識について解説していきたいと思います。

医療機器修理業とは

医療機器修理業とは、文字どおり、医療機器を修理する事業形態を指します。修理の着手までに製造販売業者に文書で修理品の品名、製造番号、故障内容を通知し、製造販売業者から受けた修理指示に基づいて修理を行います。

修理とは、故障、破損、劣化等の箇所を本来の状態・機能に復帰させることをいい、解体の上点検し、必要に応じて「劣化部品」の交換等を行うメンテナンスをも含む概念です。ただし、清掃、校正(キャリブレーション)、「消耗部品」の交換等の保守点検は修理に含まれないものとされています。

医療機器修理業許可

医療機器を反復継続して修理する事業者は、後述する修理区分ごと、事業所ごとに、地方厚生局又は都道府県知事に申請し、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります。また、特定保守管理医療機器については、特に品質と安全性を確保する必要があることから、許可要件や遵守事項が厳しく設定されています。なお、許可の有効期間は5年とされています。

許可が必要となる具体的事例

  • 医療機器(自社製造製品以外)を持ち帰って修理する場合
  • 医療機器(自社製造製品以外)を医療機関等で、出張修理する場合
  • 医療機関等と医療機器(自社製造製品以外)を修理する旨の契約を行う場合(修理の責任が修理業者に発生する場合)

許可が不要となる具体的事例

  • 医療機器製造業者(設計又は最終製品の保管のみを行う製造業者を除く)が製造した医療機器を当該製造業者が修理する場合
  • 清掃、校正(キャリブレーション)、消耗部品の交換等の保守点検のみを行う場合
  • 修理業者を紹介する行為のみを行う場合

変更等の許可

事業所に係る修理区分を変更し、又は追加しようとするときは、厚生労働大臣の許可を受けなければならないこととされています。

修理区分

医療機器修理業の許可は、第1区分から第9区分までの9つの区分に分類されています。この9つの区分は、さらに特定保守管理医療機器とそれ以外の2つに分けられており、計18区に分類されています。

特定保守管理医療機器特定保守管理医療機器以外の医療機器
特管第一区分:画像診断システム関連非特管第一区分:画像診断システム関連
特管第二区分:生体現象計測・監視システム関連非特管第二区分:生体現象計測・監視システム関連
特管第三区分:治療用・施設用機器関連非特管第三区分:治療用・施設用機器関連
特管第四区分:人工臓器関連非特管第四区分:人工臓器関連
特管第五区分:光学機器関連非特管第五区分:光学機器関連
特管第六区分:理学療法用機器関連非特管第六区分:理学療法用機器関連
特管第七区分:歯科用機器関連非特管第七区分:歯科用機器関連
特管第八区分:検体検査用機器関連非特管第八区分:検体検査用機器関連
特管第九区分:鋼製器具・家庭用医療機器関連非特管第九区分:鋼製器具・家庭用医療機器関連

なお、特定保守管理医療機器(特管)第1区分の許可を取得していても、特定保守管理医療機器以外(非特管)第1区分に該当する医療機器は修理できませんので、特管及び非特管の第1区分に該当する医療機器を修理する場合は、両方の区分の許可を取得する必要があります

医療機器修理業許可の要件

  • 構造設備要件を満たすこと
  • 営業管理者を設置すること
  • 欠格事由に該当しないこと

医療機器販売業・貸与業を営むためには、上の3つの要件をすべて満たす必要があります。

構造設備要件

  • 構成部品等及び修理を行った医療機器を衛生的かつ安全に保管するために必要な設備を有すること
  • 修理を行う医療機器の種類に応じ、構成部品等及び修理を行った医療機器の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること(修理業者の他の試験検査設備又は他の試験検査機関を利用して自己の責任において試験検査を行う場合であって、支障がないと認められるときを除く)
  • 修理を行うのに必要な設備及び器具を備えていること
  • 修理を行う場所は、次に定めるところに適合するものであること
    • 採光、照明及び換気が適切であり、かつ、清潔であること
    • 常時居住する場所及び不潔な場所から明確に区別されていること
    • 作業を行うのに支障のない面積を有すること
    • 防じん、防湿、防虫及び防そのための設備を有すること(修理を行う医療機器により支障がないと認められる場合を除く)
    • 床は、板張り、コンクリート又はこれらに準ずるものであること(修理を行う医療機器により作業の性質上やむを得ないと認められる場合は除く)
    • 廃水及び廃棄物の処理に要する設備又は器具を備えていること
  • 作業室内に備える作業台は、作業を円滑かつ適切に行うのに支障のないものであること

医療機器修理業の営業所は、その構造や設備について、上の要件をすべて満たす必要があります。営業所の構造や設備については、実際に実地検査による確認が行われますので、しっかりと整えておくようにしましょう。特に衛生面は重要視されていますので、医療機器の保管庫周囲は重点的にチェックするようにしておきましょう。

責任技術者の設置

医療機器修理業者は、一定の資格要件を満たした者を責任技術者として配置し、医療機器による保健衛生上の危害の発生の防止に必要な措置を講ずることとされています。特定保守管理医療機器とそれ以外で、それぞれ以下のように異なる資格要件が設けられています。

特定保守管理医療機器の修理業
  1. 医療機器の修理に関する業務に3年以上従事した後、厚生労働大臣の登録を受けた者が行う基礎講習及び専門講習を修了した者
  2. 医師、歯科医師、薬剤師
  3. 第1種医療機器製造販売業の総括製造販売責任者の資格を有する者
  4. 医療機器製造業の責任技術者の資格を有する者
  5. 医療機器修理業の責任技術者の資格を有する者
  6. その他1.と同等以上の知識経験を有すると厚生労働大臣が認めた者
特定保守管理医療機器以外の修理業
  1. 医療機器の修理に関する業務に3年以上従事した後、厚生労働大臣の登録を受けた者が行う基礎講習を修了した者
  2. 上記と同等以上の知識経験を有すると厚生労働大臣が認めた者(現在のところ該当なし)

欠格事由

以下の事由に該当する場合は、医療機器修理業許可を申請することはできません。

  • 許可又は登録を取り消され、取り消しの日から3年を経過していない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった後3 年を経過していない者
  • 薬機法、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法その他薬事に関する法令等に基づく処分に違反し、その違反行為があった日から2年を経過していない者
  • 麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
  • 精神の機能の障がいにより医療機器修理業の業務を適正に行うにあたって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
  • 医療機器修理業者の業務を適切に行うことができる知識及び経験を有すると認められない者

医療機器修理業許可申請手続き

新たに医療機器修理業の許可を申請する場合、許可申請の前にe-Gov電子申請サービスで厚生労働省に業者コードを登録する必要があります。同一の製造所名称及び所在地について他の業態で既に登録済みの場合は必要ありません。

業者コード登録票

やむをえず電子申請が行えない場合は、申請様式に必要事項を入力し、ファクシミリにて厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課(03-3597-0332)あてに申請を行います。

許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を厚生労働大臣に提出することにより申請を行います。なお、医療機器修理業許可申請の事務処理期間は60日とされています。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名
  • 事業所の構造設備の概要
  • 法人にあっては、薬事に関する業務に責任を有する役員の氏名
  • 欠格事由に該当しない旨その他厚生労働省令で定める事項

必要となる書類

経過表
経過表記載例
使用関係証明書
使用関係証明書記載例

まとめ

医療機器修理業は、実質的に製造業と同レベルの高い専門性が要求されます。このため、許可を受けるための手続きは、非常に難解かつ複雑な仕組みが採用されています。事業としても、決して安易な考えで取り組むことができるものではありません。

いずれにせよ、手続き以前にしっかりと専門知識や技能を磨き、法令の要請にはしっかり応えて、正しい事業運営を心がけるようにしましょう。

弊所では、医療機器取扱事業に関する手続きのサポートを承っております。「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんでの柔軟な対応にも自信を持っています。医療機器取扱事業に関するお手続きでお困りの際は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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