医療機器製造販売業許可について

パソコンと医療機器

医療機器製造販売業は、医療機器を市場に流通させるための要となる事業形態です。名称からはいまいち伝わってきませんが、製品として医療機器を取り扱う際に、その最終的な責任主体となる重要なポジションを担う事業です。

自社他社海外問わず製造(輸出)された医療機器を製品として流通させる場合には、その大元として、製造販売業許可を受ける必要があります。極めて重大な責任を担う事業であるため、手続きについても一般事業とは比較にならないほど厳しいハードルが設けられています。

本稿では、医療機器に関する事業を行う際に避けては通れない医療機器製造販売業の仕組みとその基礎となる法的知識について、ざっくりと解説させていただきたいと思います。

医療機器製造販売業とは

薬機法においては、「製造販売」を製造(他に委託して製造をする場合を含み、他から委託を受けて製造をする場合を除く)をし、又は輸入をした医薬品(原薬たる医薬品を除く)、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品を、それぞれ販売し、貸与し、若しくは授与し、又は医療機器プログラムを電気通信回線を通じて提供することと定義しています。

医療機器製造販売業とは、自らは製造行為(表示、自社外での補完行為も含む)を行わず、製品の出荷・上市を行うという事業形態です。品質や安全性について積極的に収集・分析・評価を行い、必要な措置を講じることにより製品に関する流通責任を果たします。医療機器の「承認」や「認証」についても申請する役割を担い、まさに医療機器流通の要として位置づけられています。

医療機器製造販売業許可

以下の表にあるとおり、医療機器製造販売業を行う際は、取り扱う医療機器の分類に応じて、厚生労働大臣の(業)許可を受ける必要があります。ただし、実際の許可の事務については、総括製造販売責任者がその業務を行う事務所の所在地の都道府県知事が行っています。

分類クラス許可の区分
高度管理医療機器クラス
Ⅲ、Ⅳ
第一種医療機器製造販売業許可
管理医療機器クラスⅡ第二種医療機器製造販売業許可
一般医療機器クラスⅠ第三種医療機器製造販売業許可

医療機器については、1法人が取得できる製造販売業許可は1つのみになります。つまり、第一種医療機器製造販売業許可と第二種医療機器製造販売業許可とを同時に取得することはできません。

製造または輸入した医療機器は、販売業者・貸与業者にのみ販売、貸与、または授与することができます。医療機関や一般消費者といったエンドユーザーに対するこれらの行為は認められていません。名称こそ「製造販売業」となっていますが、自社製造を行う際には、別に「製造業」の登録を受ける必要があり、また、医療機関や一般消費者といったエンドユーザーに対する販売や貸与等を行う際には、「販売業」「貸与業」の許可を受ける必要があります。

手続きについては、まず総括製造販売責任者がその業務を行う事務所(主たる機能を有する事務所)の所在地の都道府県に業者コードの登録を行い、その後に業許可申請をするという流れになります。

業者コード登録票
ここからは非常に難解な解説に入ります。難解ではありますが、こちらの理解がなければ許可を取得して医療機器の製造販売を取り扱うことはできません。

業許可の要件

許可を取得するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 総括製造販売責任者を設置すること
  2. 管理監督者を配置すること
  3. 管理責任者を配置すること
  4. QMS体制省令に適合すること
  5. GVP省令に適合すること
  6. 申請者、製造に関する業務を行う役員が欠格事由に該当しないこと

製造販売業三役

製造販売業者には、自社製造であるか否かを問わず、製造を管理する能力と責任を担保する必要があります。この責任の範囲は、製造販売後に生じた不具合の情報収集など安全管理に対しても及びます。このため、それぞれの段階における責任者が必要とされており、各段階において配置することが義務付けられるこれら3人の責任者を併せて「三役」と呼んでいます。

役職名役割
総括製造販売責任者製造販売業すべての管理責任
国内品質業務運営責任者QMS体制省令に従い製造管理を行う
安全管理責任者GVP省令に従い安全管理業務を行う

【管理監督者】
 ↓ →【管理責任者】
【医療機器等総括製造販売責任者】
 ↓
【国内品質業務運営責任者(品質保証)】
【医療機器等安全管理責任者(安全管理)】

大まかな組織のイメージとしては、上記のとおりですが、製造業の登録申請を行う場合には、この他にも責任技術者を置く必要があります。

管理監督者の配置

製造販売業者の品質管理システムに係る業務を最上位で管理監督する責任者です。通常は、代表取締役などの役員がその任につきます。

管理責任者の配置

製造販売業者等の役員、管理職の地位にある者その他これに相当する者のうちから製造販売業者等の品質管理監督システムの実施及び維持の責任者として選任し、以下のような業務を担当させます。

  • 工程が確立され実施されるとともにその実効性が維持されているようにすること
  • 品質管理監督システムの実施状況及びその改善の必要性について管理監督者に報告すること
  • 全ての施設において法令の規定等及び製品受領者要求事項についての認識が向上するようにすること

総括製造販売責任者の設置

医療機器の品質管理・製造販売後安全管理業務の総括責任者として、以下の要件を満たす総括製造販売責任者を選任する必要があります。 なお、医療機器等総括製造販売責任者は、管理監督者、管理責任者、国内品質業務運営責任者を兼務することができます。

第一種 ・第二種大学or高等専門学校で物理学、化学、生物学、工学、情報学、金属学、電気学、機械学、薬学、医学、歯学の専門課程修了者
高校で物理学、化学、生物学、工学、情報学、金属学、電気学、機械学、薬学、医学、歯学の専門課程修了後、医薬品又は医療機器の品質管理又は製造販売後安全管理の業務に3年以上従事した者
医薬品又は医療機器の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務に5年以上従事した後、厚生労働大臣の登録を受けた者が行う講習を修了した者
厚生労働大臣が認めた者
第三種高校で物理学、化学、生物学、工学、情報学、金属学、電気学、機械学、薬学、医学、歯学の専門課程修了した者
高校で物理学、化学、生物学、工学、情報学、金属学、電気学、機械学、薬学、医学、歯学に関する科目を修得した後、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務に3年以上従事した者
厚生労働大臣が認めた者

総括製造販売責任者の具体的な業務は以下のとおりです。

  • 製品の出荷の決定その他の製造管理及び品質管理に係る業務を統括しこれに責任を負うこと
  • 業務を公正かつ適正に行うために必要があると認めるときは、製造販売業者、管理監督者その他の当該業務に関して責任を有する者に対し文書により必要な意見を述べ、その写しを5年間保管すること
  • 国内品質業務運営責任者を監督すること
  • 管理責任者及び国内品質業務運営責任者(限定第三種医療機器製造販売業者にあっては管理責任者を除く)の意見を尊重すること
  • 安全管理統括部門との密接な連携を図らせること

国内品質業務運営責任者の設置

国内品質業務運営責任者は、医療機器の品質管理業務の責任者として、以下に掲げる市場への出荷判定や回収処理等を担当します。

  • 国内の品質管理業務を統括すること
  • 国内の品質管理業務が適正かつ円滑に行われていることを確認すること
  • 国内に流通させる製品について、市場への出荷の決定をロット(製造番号又は製造記号)ごとに行い、その結果及び出荷先等市場への出荷の記録を作成すること
  • 国内に流通する製品について、当該製品の品質に影響を与えるおそれのある製造方法、試験検査方法等の変更がなされる場合にあっては、当該変更に係る情報を国内外から収集し、かつ、把握するとともに、当該変更が製品の品質に重大な影響を与えるおそれがある場合には、速やかに管理責任者及び医療機器等総括製造販売責任者に対して文書により報告し、必要かつ適切な措置が採られるようにすること
  • 国内に流通する製品について、当該製品の品質等に関する情報(品質不良又はそのおそれに係る情報を含む)を国内外から収集するとともに、当該情報を得たときは、速やかに管理責任者及び医療機器等総括製造販売責任者に対して文書により報告し、記録し、及び必要かつ適切な措置が採られるようにすること
  • 国内に流通する製品の回収を行う場合に、次に掲げる業務を行うこと
    • 回収した医療機器等を区分して一定期間保管した後、適正に処理すること
    • 回収の内容を記載した記録を作成し、管理責任者及び医療機器等総括製造販売責任者に対して文書により報告すること
  • 国内の品質管理業務の遂行のために必要があると認めるときは、管理責任者及び医療機器等総括製造販売責任者に対して文書により報告すること
  • 国内の品質管理管理業務の実施に当たり、必要に応じ、関係する登録製造所に係る製造業者又は医療機器等外国製造業者、販売業者、薬局開設者、病院及び診療所の開設者その他関係者に対し、文書による連絡又は指示を行うこと
  • 安全確保措置に関する情報を知ったときは、安全管理統括部門に遅滞なく文書で提供すること

品質管理業務には、専門性の高い知見が要求されているため、以下のすべての要件を満たす者がその任に就きます。また、国内品質業務運営責任者は、管理責任者を兼務することができます。

  1. 製造販売業者における品質保証部門の責任者であること
  2. 品質管理業務その他これに類する業務に3年以上従事した者であること
  3. 国内の品質管理業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること
  4. 医療機器等の販売に係る部門に属する者でないことその他国内の品質管理業務の適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがない者であること

安全管理責任者の配置

安全管理責任者は、医療機器の安全管理業務の責任者として、取り扱う医療機器に関して安全に関する情報を収集し、医療機器の製造に反映させる業務を担当します。以下のすべてを満たす者がその任に就きます。

高度管理医療機器(クラスⅢ・Ⅳ)
  1. 安全管理統括部門の責任者であること
  2. 安全確保業務その他これに類する業務に3年以上従事した者であること
  3. 安全確保業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有するものであること
  4. 医療機器の販売に係る部門に属する者でないことその他国内の安全確保業務の適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼす恐れがない者であること
管理医療機器(クラスⅡ)・一般医療機器(クラスⅠ)
  1. 安全確保業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有するものであること
  2. 医療機器の販売に係る部門に属する者でないことその他安全確保業務の適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼす恐れがない者であること

QMS省令

QMSとは、Quality Management System(品質マネジメントシステム)の略称で、品質に関して組織を指揮し管理するため、方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステムを意味します。

製造販売業者は、QMS省令にもとづき、QMSの構築を行う必要があります。外部委託先又は購買物品の供給者が登録製造所の場合は、委託先製造所についてもQMS省令を遵守する必要があり、製造販売業者はその管理状況等を確認する必要があります。このように製造販売業者には、自社のみならず各登録製造所との間でも、その関係性に応じた管理体制の確立が要求されています。

GVP省令

GVPとは、Good Vigilance Practice(品質管理の基準)の略称で、製造販売後安全管理の基準のことを指します。医療機器を製造販売した後に、安全管理情報を収集・検討し、必要な安全確保措置を講じるために必要なルールを構築します。

製造販売業者は、GVP省令に従い、製造販売する製品の副作用や不具合といった安全管理情報を収集し、必要な対策を検討し、対策を実施します。また、これらの製造販売後安全管理等を行う体制を自己点検や教育訓練により維持することが要求されています。

欠格事由

申請者、製造に関する業務を行う役員が次の欠格事由に該当する場合は、製造販売業許可を申請することはできません。

  1. 許可・登録を取り消され、取消しの日から3年を経過していない者
  2. 禁錮以上の刑に処され、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった後、3年を経過していない者
  3. 薬機法、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法、その他薬事に関する法令で政令で定めるもの又はこれに基づく処分に違反し、その違反行為があった日から2年を経過していない者
  4. 成年被後見人又は麻薬、大麻、あへん若しくは覚醒剤の中毒者
  5. 心身の障害により業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

申請のために必要な書類

  • 許可申請書
  • 登記事項証明書(法人)
  • 組織図(業務分掌表)
  • 申請者が精神機能の障害がない等の医師の診断書または疎明書
  • 申請者以外の者が総括製造販売責任者であるときは雇用契約書の写しまたは使用関係を証する書類
  • 総括製造販売責任者の資格を証する書類
  • QMSに係る体制に関する書類
  • GVPに係る体制に関する書類
  • 各種図面(概略図・配置図・平面図)
医療機器製造販売業許可の添付書類
業務管掌表
品質管理・製造販売後安全管理に係る体制
雇用証書
図面

まとめ

ざっくりとした解説になりましたが、その難解さだけは存分に伝わったのではないかと思います。医療機器を取り扱う事業を検討する際は、製造販売業に関する基礎知識を看過することはできません。

QMS?GVP?

これらひとつ取ってみても、理解するためだけに膨大な時間を要します。実際に書面を作成するとなると、尚更辟易するであろうことは間違いないように思います。医療機器製造販売業については、それだけ重大な責任と高いハードルが課されているということをまずはご理解ください。

手続きの完了までに2〜3年を要するケースもまったく珍しいことではありません。プランがある場合には迅速に着手することも必要ですが、まずはしっかりとした事業計画を練ることが重要です。いつでも専門家に相談を受けることができる環境の整備から着手することをお薦めいたします。

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