林地開発許可制度│森林の利用に関する許可の申請について
森林は、地球環境を保全する機能のほかに、水を蓄えたり、土壌を保全し土砂災害を防止するなどの機能も備えています。人類文明との関わり合いも深く、古来より様々な文化芸術の舞台として登場し、また、森林そのものに癒やしの効果があるものとされています。
その一方で、狭小な国土を有効利用することも重要な政策的課題とされており、このようなことからも森林法という法律においては、無秩序な森林の開発を防止し、その適正な利用を図るため、林地開発許可制度が設けられています。
本稿では、森林を利用する際に必要とされる許可について、どのようなケースが該当するのか等、森林にまつわる様々な規定を紹介しつつ詳しく解説していきたいと思います。
目 次
林地とは
森林とは、次のものをいう。ただし、主として農地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地及びこれらの上にある立木竹を除く。
一.木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹
二.一.の土地の外、木竹の集団的な生育に供される土地
(森林法第2条第1項第1・2号)
上記が森林法における「森林」の定義です。さらに「林地」とは、森林を構成している土地のことをいいます。また、「森林所有者」とは、権原に基いて林地上に木竹を所有し、及び育成することができる者を指し、「国有林」については国、「民有林」については国以外の者が「森林所有者」となります。
分収林とは
分収林とは、契約に基づいて造林・保育したのち伐採して、その収益を分け合う森林のことです。
保安林とは
保安林とは、公益の目的を達成するために、伐採や開発に制限が加えられた森林のことをいい、目的に合わせて17種の保安林が定められています。
林地開発許可制度
林地への無秩序な開発を防止し、森林の適正な利用を図るため、林地開発には許可制度が採用されています。具体的には、1ha(10,000㎡)を超える森林の開発をしようとするときは、この制度の手続きに従って、都道府県知事の許可を受ける流れになります。
許可対象となる森林
許可制度の対象となる森林は、地域森林計画の対象となっている民有林です。兵庫県においては、ほとんど全ての民有林が地域森林計画の対象となっています。開発をしようとするときは、必ず事前に管轄の農林(水産)振興事務所で確認してください。
なお、保安林については、伐採、開発行為に関して別の規制が設けられていますので、本制度の対象からは除かれています。
許可対象となる開発行為
許可が必要となる開発は、その対象となる森林内において「土石又は樹根を掘り出したり、林地を開墾するなど土地の形質(形状及び性質)を変更したりする行為」であって、その面積が1haを超えるものをいいます。また、2者以上が共同で開発を行うときは、それぞれの開発する面積は1haに満たなくても、全体の面積が1haを超える場合は許可が必要になります。
土地の形質を変更する行為の具体例としては、以下のような行為が想定されますが、開発の内容によっては、分類される開発行為の目的が異なる場合がありますので、詳しくは、管轄の農林(水産)振興事務所で確認してください。
- 別荘地の造成
- スキー場の造成
- ゴルフ場の造成
- 宿泊施設の設置
- レジャー施設の設置
- 工場、事業場の設置
- 住宅団地の造成
- 土石等の採掘
- 太陽光発電施設の設置
- 残土処分場など
総合治水条例
兵庫県においては、総合治水条例に基づいて、雨水の流出増を伴う1ha以上の開発行為を行う際には、重要調整池の設置が義務づけされているため、河川部局(所管する土木事務所)との協議が必要になります。ただし、協議の結果により設置が不要となっても林地開発許可制度により必要となる場合があるのでご注意ください。
開発行為の届出
面積が1ha以下の開発行為については許可を受ける必要はありませんが、森林を伐採する日の90日から30日前までに管轄市町に「伐採及び伐採後の造林の届出書」を提出する必要があります。また、面積が0.8ha以上の規模の開発行為については、「小規模開発計画」を県に提出します。
1haを超える開発行為 | 許可が必要 |
雨水の流出増を伴う1ha以上の開発行為 | 重要調整池の設置も必要 |
1ha以下の開発行為 | 管轄市町への届出 |
0.8ha以上の開発行為 | 県への届出 |
許可申請手続き
開発行為をしようとする者は、都道府県知事に対して申請し、その許可を受ける必要があります。都道府県知事は、許可の申請があった場合において、次のいずれにも該当しないと認めるときは、これを許可しなければならないとされています。
- 当該開発行為をする森林の現に有する土地に関する災害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあること(災害の防止)
- 当該開発行為をする森林の現に有する水害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水害を発生させるおそれがあること(水害の防止)
- 当該開発行為をする森林の現に有する水源の涵養の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水の確保に著しい支障を及ぼすおそれがあること(水の確保)
- 当該開発行為をする森林の現に有する環境の保全の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれがあること(環境の保全)
まとめ
林地開発許可制度は、行政官庁の裁量が大きく反映される手続きのひとつであり、すべての許可申請に対して当然に許可が下りる性質のものではありません。まずは現場や周辺地を十分に調査、確認した上で協議用の資料を作成し、農林(水産)振興事務所との協議に臨むことになります。許可を受けるためには災害や水害の防止、水の確保、環境保全といった観点をしっかりと組み込んだ個別具体的な資料を提示できるように準備しましょう。
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