港湾水域占用許可│港湾の利用に関する許可の申請について
港湾は、河川や森林と同様に、本来であれば誰でも自由に利用することができる公共用地です。その一方で、港湾は国内外における物流の拠点であり、また、防災の重要性という観点からも、港湾区域内又は港湾隣接地域内において、一定の行為をしようとする者については、港湾管理者の許可を受ける必要があります。
あまり一般的な手続きとは言えず、情報量も乏しく、それゆえいざ手続きが必要となった場合、情報を得ることはなかなか困難であるように思います。
そこで本稿では、港湾を利用する際に必要とされる許可について、どのようなケースが該当するのか等、港湾にまつわる様々な規定を紹介しつつ詳しく解説していきたいと思います。
目 次
港湾とは
港湾とは、天然の地勢や防波堤などの人工構造物によって、風浪を防いで船舶が安全に停泊し、人の乗降や荷役を行うことができる海域と陸地をいいます。また、港湾法という法律においては、港湾を以下のように区分しています。
区分 | 概要 |
---|---|
国際戦略港湾 | 重要港湾の中でも東アジアのハブ化目標とする港湾 |
国際拠点港湾 | 重要港湾の中でも国際海上輸送網の拠点として特に重要な港湾 |
重点港湾 | 重要港湾のうち国が重点して整備・維持する港湾 |
重要港湾 | 国際海上輸送網または国内海上輸送網の拠点となる港湾で今後も国が整備を行う港湾 |
その他の重要港湾 | 国際海上輸送網または国内海上輸送網の拠点となる港湾など |
地方港湾 | 重要港湾以外で地方の利害にかかる港湾 |
56条港湾 | 港湾区域の定めがなく都道府県知事が港湾法第56条に基づいて公告した水域 |
避難港 | 小型船舶が荒天・風浪を避けて停泊するための港湾 |
港湾区域とは
港湾区域とは、水域を経済的に一体の港湾として管理運営するための必要最小限度の区域であり、その区域に隣接する水域を地先水面とする地方公共団体の利益を害しない等の要件を満たすものとして、国土交通大臣又は都道府県知事の認可を受けた水域をいいます。
地先水面
海に面する土地の地番先の水面を指します。
港湾隣接地域とは
港湾隣接地域とは、港湾区域に隣接する地域であって港湾管理者の長が指定する地域をいいます。
臨海地区とは
臨港地区とは、港湾区域を地先水面とする地域において、その港湾の管理運営に必要な最小限度のものとして都市計画に定められた地区又は港湾管理者が国土交通大臣の認可を受けて定めた地区をいいます。また、分区とは、港湾地区内の土地利用の適正化を図るために港湾管理者が臨港地区内に指定した以下の区域をいいます。
- 商港区
- 特殊物資港区
- 工業港区
- 鉄道連絡港区
- 漁港区
開発保全航路とは
開発保全航路とは、港湾管理者が管理する港湾区域及び河川法に規定する河川区域以外の水域における船舶の交通を確保するため開発及び保全に関する工事を必要とする航路をいいます。後述するように、開発保全航路において水域の占用、土砂採取等を行おうとする場合は、港湾管理者ではなく国土交通大臣の許可を受ける必要があります。瀬戸内海においては、現在のところ以下の航路が政令によって開発保全航路に指定されています。
- 備讃瀬戸北航路
- 備讃瀬戸南航路
- 鼻栗瀬戸航路
- 来島海峡航路
- 音戸瀬戸航路
港湾管理者とは
港湾を管理運営する主体であり、港務局や地方公共団体などが港湾管理者にあたります。実際には港務局が港湾管理者を務める港湾は新居浜港のみであり、そのほとんどを地方公共団体が務めています。
港湾の利用
港湾区域内又は港湾隣接地域内において、水域(公共空地)の占用、港湾の開発、利用又は保全に著しく影響を与える恐れのある一定の行為をしようとする者は、港湾管理者の許可を受けてこれを行う必要があります。
港湾法には、これらの行為が、港湾の利用若しくは保全に著しく支障を与え、又は港湾計画の遂行を著しく阻害し、その他港湾の開発発展に著しく支障を与えるものであるときは、「許可をしてはならない」と定められているため、実態として許可を受けるためのハードルは非常に高いものとなっています。したがって、許可を受ける際には、事前調査や事前協議が重要なポイントとなってきます。
港湾水域占用許可
港湾区域内の水域(公共空地)の占用をしようとする場合には、港湾管理者の許可を受ける必要があります。また、開発保全航路において水域の占用を行おうとする場合は、港湾管理者ではなく、国土交通大臣の許可が必要となります。
こちらはいわゆる「違法係留」に対する規制が主な目的です。港湾における民間の慣習がいまだに存在していることもありますが、港湾管理者から許可を受けていないのであれば、否応なく違法係留の状態となります。直ちに港湾管理者に対して申請し、適切にその指示に従うようにしましょう。
港湾区域内の工事等の許可
港湾区域内において又は港湾区域に隣接する地域であって港湾管理者が指定する区域内において、土砂の採取や水域施設、外郭施設、係留施設、運河、用水きよ又は排水きよの建設又は改良を行おうとする場合も、港湾管理者の許可が必要となります。また、開発保全航路においてこれらの行為を行おうとする場合は、港湾管理者ではなく、国土交通大臣の許可が必要となります。
港湾管理者は、これらの行為が、港湾の利用若しくは保全に著しく支障を与え、又は港湾計画の遂行を著しく阻害し、その他港湾の開発発展に著しく支障を与えるものであるときは、「許可をしてはならない」と定められています。
許可申請手続き
既述の通り、まったくの新規での許可取得のハードルは非常に高く、各港湾によって環境や慣習も異なることから、この申請は定型的、類型的なものとはなりません。このため、事前の現場調査や港湾管理者との協議が、欠かすことのできない重要なポイントになってきます。
まずは現場や水域を調査、確認した上で協議用の資料を作成し、港湾管理者との協議に臨むことになります。この協議を経ることにより、ようやく承認の可否の見通しが立ち、必要な書類や手続きの内容などが確定することになります。また、場合によっては他の港湾利用者に対する説明や承諾を求められるケースもあります。大まかな流れは以下のとおりです。
①現場調査と事前協議の資料作成
②港湾管理者との事前協議
③申請書の提出→補正や追加資料の添付
④港湾管理者による現地調査等
⑤許可の決済→許可書の交付
⑥着手届の提出
⑦事業開始→事業完成
⑧完成届の提出→完成の決済
まとめ
公共物や公共用地に関する許可は、管理する行政官庁の裁量が大きく反映される手続きです。また、港湾という特殊な環境上、古くからの慣習に支配されていることも多いため、すべての許可申請に対して当然に許可が下りる性質のものではありません。船舶の運航や人の乗降に支障があるかどうか、設置物は必要以上に大きなものでないかなど、個別具体的な事情に対応させた資料を提示して港湾管理者との協議に臨むことになります。
弊所では、港湾に関する面倒な許可申請の代行を承っております。個別の事情や難易度、求められる資料の数等に応じてお見積りをさせていただきます。初回相談と見積もりは無料で対応しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。